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マズローの欲求5段階説(全1記事)

マズローの欲求5段階説とは? ビジネスでの活用法から「6段階目」の欲求まで徹底解剖 [2/2]

「マズローの欲求5段階説」の6段階目

マズローは晩年、従来の5段階の欲求階層のさらに上に、6段階目となる「自己超越欲求」が存在することを示唆しました。これは、自己実現を達成した個人が、次に自己の利益や関心を超えて、他者や社会、あるいは宇宙といったより大きな存在に貢献したいと願う、非常に高次な欲求です。

コンサルティングカンパニー Tanpan & Co. 代表の佐地良太氏は、この自己超越の感覚を「1杯目のビール理論」というユニークな比喩で説明しています。経済学における「限界効用」の考え方を応用したもので、「1杯目のビールの美味しさを、2杯目のビールが超えることはない」という法則に基づいています。

これを人生の幸福に当てはめると、まず「1杯目のビール」として自分自身の欲求を満たすことが重要ですが、ある程度それが満たされると、それ以上自分に投資しても幸福度の増加は鈍化していきます。

その時、人は「2杯目のビール(あるいはウーロンハイ)」として、自分以外の他者、例えば家族や友人、社会といった対象を幸せにすることに、より大きな喜びや満足感を見出すようになる、というのです。

この考え方は、現代社会における幸福論を考える上で重要な視点を提供します。特に、物質的には豊かでありながらも精神的な渇望感を抱える人にとって、幸福の源泉は物質的な所有から精神的な充足へとシフトしています。

物が不足していた戦後の時代とは異なり、現代では多くの人が基本的な物質的欲求を満たしています。そのため、人生の満足度を決定づけるのは、可処分所得や可処分時間といったリソースを、仕事、趣味、家族、自己成長といった精神的な価値にどう配分していくかという問題になります。

この文脈において、自己超越欲求は究極的な精神的欲求と位置づけることができます。自分のためだけでなく、誰かのために行動すること、社会貢献活動に参加すること、利他的な使命感に基づいて行動すること。こうした活動を通じて、人は深い精神的な満足感を得ることができ、真に成熟した幸福に到達できるのかもしれません。

マズローが晩年にたどり着いたこの6段階目の欲求は、現代を生きる私たちにとって、幸福とは何かを再考するための重要なヒントを与えてくれます。

「欲求」以外はすべて「欲望」

ここまでマズローの欲求5段階説について紹介してきましたが、マズローの欲求5段階説は、人間の内なる動機を理解する上で非常に強力なモデルではあるものの、すべての欲求が同質のものではないという視点も存在します。

ファイナンシャルプランナーの井上ヨウスケ氏は、古代ギリシャの哲学者エピクロスの考え方を引き合いに出し、「欲求」と「欲望」を明確に区別することの重要性を説いています。

この考え方によれば、生理的欲求や安全の欲求といった、生命維持に不可欠で自然に生じるものが「欲求」であり、それ以外のものはほとんどが「欲望」に分類されるというのです。

この視点に立つと、社会的欲求や承認欲求、自己実現欲求といった高次の動機は、必ずしも満たさなければならないものではなく、むしろ社会的な相互作用の中で生まれる「欲望」としての側面が強いと捉えることができます。

特に私たちが日常的に抱く「何かが欲しい」という感情の多くは、純粋に自分の内側から湧き出たものではない可能性があります。

フランスの思想家ルネ・ジラールの「欲望の模倣理論」は、この点を鋭く指摘しています。ジラールによれば、私たちの欲望は、自分と対象との直線的な関係で生まれるのではなく、常に「他者(モデル)」を介在させます。つまり、私たちは「それが欲しい」のではなく、「他者が欲しがっているから、それを欲しくなる」のです。

この欲望の三角形の構造は、私たちの消費行動やキャリア選択、さらには人間関係に至るまで、あらゆる側面に影響を及ぼしています。インフルエンサーが推奨する商品が売れたり、ライバルが手に入れた地位を羨んだりするのは、この模倣のメカニズムが働いている典型的な例です。

この理論を解説するルーク・バージスは、この構造について次のように述べています。
つまり、どういうことかと言うと、まず「時計を欲しがる『誰か』」のことを欲望の模倣モデルと言います。「この人が『これ』を欲しがっている」と知って、「『自分』もそれを欲しい」となります。

こういうふうに、「常に僕たちの欲望には誰か対象がいてるよね」というのを、ルネ・ジラールは「欲望の三角形」と言います。何かしらのモデルを介して、僕たちは物やステータスを欲しがるということですね。

この考え方はちょっと「んっ?」と思う部分があるかもしれないんですが、僕たち人間は模倣する生き物なんですね。人の真似をする生き物で、だからこそここまで文化が発展している。模倣する能力がなかったら文化って残らないんですね。

引用:“貯金2億円でも不安”と語る人がいるのはなぜ 資産運用のプロが教える、お金に依存しない人生のヒント(ログミーBusiness)

この視点は、経済的自由を目指す上でも重要な示唆を与えます。多くの欲望が他者の模倣に過ぎないのであれば、その欲望から距離を置き、自分にとって本当に必要な「欲求」を見極めることで、必要なお金の量を減らし、より早く、そしてより本質的な豊かさに到達できる可能性があるのです。

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