自律的な成長を促す「キャリアデザイン」と「自己受容」
セルフマネジメントは、日々の業務パフォーマンスを向上させるだけでなく、より長期的な視点での自己実現、すなわち自律的なキャリア形成においても中心的な役割を果たします。
終身雇用制度が揺らぎ、変化の激しい時代を生き抜くためには、会社に依存するのではなく、自分自身でキャリアを設計し、主体的に行動していく「キャリアデザイン」の考え方が不可欠です。
キャリアデザインとは、自分が将来どのような仕事をしたいのか、どのような働き方を実現したいのかという理想像を描き、その実現に向けて計画的に行動を積み重ねていくことを指します。このプロセスは、「自分は本当はどうしたいのか?」という内なる声に耳を傾けることから始まります。
「〜すべき」「〜しなければならない」といった義務感(頭の声)ではなく、「これが好きだ」「これに挑戦したい」という純粋な欲求(心の声)を基に未来を描くことで、日々の仕事に意味を見出し、高いモチベーションを維持することができます。
自分のなりたい姿が明確であれば、目の前のタスクがその未来にどうつながるのかを理解できるため、困難な仕事にも主体的に取り組むことが可能になります。
そして、このような前向きなキャリアデザインを実践する上で、土台となるのが「自己受容」というマインドセットです。
私たちはしばしば、自分の弱みや欠点に目を向けて自己否定に陥りがちです。自己受容とは、そうしたネガティブな部分も含めて、ありのままの自分をニュートラルに受け入れることを意味します。
いきなり「自分はできる」と無理に自己肯定感を高めようとしても、自己否定が強い状態では反発が生まれてしまいます。その前に「今、自分はこう感じているんだな」「こういう弱みがあるんだな」と、まずは自分の感情や状態をそのまま認めるプロセスが重要です。
人間はみんな、いろいろな物事に対して「世の中はこうだ」という概念を作る。それがバイアスになっていく、と。僕がセルフマネジメントとつながると思うのは、まず自分の「こうだ」という概念に気づく。それも身体感覚レベルで気づけるようになるというところから、そのバイアスを外すことができるようになるのではないかと思って聞いていました。
これは本当にビジネスでも言えることだと思っています。多様性、多様性と言われていますが、それも自分のバイアスを意識してできないと、結局はぶつかったままになってしまい、なにも前に進まなくなる。そこを乗り越えるためには、こうしたことがすごく大事だと思います。
引用:人は誰もがバイアスを持っている 思い込みを手放すためのセルフマネジメントの可能性(ログミーBusiness)
自分の感情や思考のクセ、無意識のバイアス(思い込み)に気づき、それを受け入れることで、初めて客観的に自分を見つめ直し、変化への1歩を踏み出すことができます。
自己受容によって心の安定を得て、キャリアデザインによって進むべき方向を定める。この2つが揃って初めて、人はやらされ仕事から脱却し、真に自律的な成長の道を歩み始めることができるのです。
セルフマネジメントが苦手な人の思考と行動パターン
セルフマネジメント能力を高めるためには、まず自分自身の現状を客観的に把握することが重要です。セルフマネジメントが苦手な人には、いくつかの共通した思考や行動のパターンが見られます。
これらの特徴を理解することで、自分がどの点に課題を抱えているのかを認識し、具体的な改善策を考えるきっかけになります。
1つ目の特徴は「こだわりが強く完璧主義」であることです。質の高い仕事を追求する姿勢はすばらしいことですが、完璧を求めすぎるあまり、細部に固執してしまい、タスク全体の優先順位付けや時間配分がおろそかになりがちです。
また、ストイックであるがゆえに、小さなミスや失敗を重く受け止め、精神的な負担を抱えやすい傾向もあります。これにより、モチベーションの低下から立ち直るのに時間がかかり、結果としてパフォーマンスが不安定になってしまいます。
2つ目の特徴は、「人に頼ることが苦手で、自分でタスクを抱え込んでしまう」ことです。責任感が強い人や、他者に迷惑をかけたくないという思いが強い人に見られる傾向です。
しかし、自分のキャパシティを超えた業務量を1人で抱え込むことは、心身の消耗につながり、かえって仕事の質を低下させる原因となります。本来のパフォーマンスを発揮するためには、自分の限界を認識し、適切なタイミングで周囲に助けを求めることも重要なスキルです。
3つ目の特徴は、「ストレス解消がうまくできない」ことです。ストレスを溜め込みやすい人は、精神的な不安定さから仕事への集中力やモチベーションを維持することが難しくなります。メンタルヘルスの不調は、パフォーマンスのブレに直結します。
自分なりのストレス発散方法を知らない、あるいは実践する時間を作らないでいると、慢性的なストレス状態に陥り、能力を十分に活かしきれない可能性があります。
これらの特徴は、特に「自由と自律」が求められる現代の働き方において、大きな課題となります。
面白法人カヤックの人事担当者が語るように、自由な環境で成果を出すためには、「何が起きても、誰のせいにもできない」という厳しさを受け入れる必要があります。セルフマネジメントが苦手な人は、この「自由であることの大変さ」に直面しやすく、評価が下がることに対して不満を抱きがちです。自分の思考と行動のパターンを自覚し、改善していく意識を持つことが、自律した働き方を実現するための第1歩となるでしょう。
明日から実践できるセルフマネジメントスキルの向上ステップ
セルフマネジメントは、才能や意志の強さだけで決まるものではなく、正しい知識を学び、日々の実践を繰り返すことで誰でも高めることができるスキルです。
ここでは、明日からでも取り組める具体的なステップを紹介します。これらのステップを意識的に実践することで、自己管理能力を段階的に向上させ、より高いパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
最初のステップは「自身の役割と期待されている成果を明確に理解する」ことです。目指すべきゴールが曖昧なままでは、モチベーションを維持することは困難です。
上司との1on1ミーティングなどを活用し、自分が組織の中でどのような役割を担い、具体的にどのような成果を期待されているのかをすり合わせましょう。目的が明確になることで、日々の業務に意味を見出し、主体的に取り組む意欲が湧いてきます。
次に「ゴールから逆算し、日々のタスクを具体的に分解する」ステップです。大きな目標をそのままにしておくと、どこから手をつけていいかわからず、先延ばしの原因になります。
目標達成までの道のりを細分化し、「今日やること」「今すぐできること」といった小さく具体的なタスクに落とし込みましょう。タスクに着手する際は、先ほど紹介した「10秒アクション」のように、心理的なハードルを極限まで下げることが、行動を始めるための鍵となります。
3つ目のステップは、「自分の行動を定期的に振り返る」ことです。計画を立てて実行するだけでなく、その結果を客観的に評価し、改善点を見つけるプロセスが不可欠です。
「集中力が途切れるのはどんな時か」「どのような仕事でミスが多いか」など、自分のパフォーマンスが落ちる傾向を分析しましょう。自分の強みや弱点を把握することで、より効果的な対策を立てることができます。
最後のステップは、「誘惑に負けない仕組みを作る」ことです。人間の意志力には限界があります。ついスマートフォンを触ってしまうのであれば物理的に遠ざける、集中したい時間帯は通知をオフにするなど、意志力に頼らなくても済むような環境を整えることが重要です。
短期的には、うまいことごまかして会社からお金をくすねている人も、それなりにROIの高い人生が過ごせるかもわからないですけれども。やっぱり自分で自己規律をやっていい仕事を追求するために努力を重ねて勉強も重ねている人と、10年15年経ったときにどうなるかと言ったら、最終的にその2人の間ではもう本当に悲惨なほどの差が生まれちゃうと思うんですね。
引用:山口周氏が語る、リモートワークの落とし穴 10年後、15年後に大差がつく「自己規律」の重要性 (ログミーBusiness)
セルフマネジメント能力は一朝一夕で身につくものではありません。しかし、これらのステップを地道に続けることで、自己規律は着実に身につき、それは10年後、15年後のキャリアに大きな差となって現れるはずです。