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管理職になりたくない(全1記事)

管理職になりたくない若者が増加している理由とは? 次世代リーダー育成のために企業・上司ができる対策 [1/2]

【3行要約】
・管理職になりたくない社員が増加し、次世代リーダー育成が課題となっています。
・日本能率協会マネジメントセンターの調査では、一般社員の約77.3%が管理職を望まず、特に若手層や女性で昇進意欲の低下が顕著になっています。
・企業は管理職の役割再設計や複線型キャリアパスの整備など、心理的ハードルを下げる組織づくりに取り組むべきでしょう。

「管理職になりたくない」人が増えている

近年、多くの企業で「管理職になりたくない」と考える社員が増加しており、次世代リーダーの育成が深刻な課題となっています。

この傾向は感覚的なものではなく、複数の調査データによって裏付けられています。日本能率協会マネジメントセンターが2023年に実施した調査では、一般社員の約77.3%が「管理職になりたくない」と回答しています。これは2018年の調査から4.5ポイント上昇しており、昇進に対するネガティブな意識が年々強まっていることを示唆しています。

株式会社 パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」でも同様の傾向が見られます。「現在の会社で管理職になりたい」と回答した人は全体で17.2%にとどまり、年々減少傾向にあります。

特に注目すべきは若手層の変化です。20代で管理職を希望する人の割合は、2021年の36.4%から2024年には28.2%へと、3年間で8.2ポイントも低下しています。将来の組織を担うべき若い世代ほど、管理職というキャリアパスに魅力を感じなくなっているのです。

この昇進意欲の低さは、国際的に見ても日本の際立った特徴です。パーソル総合研究所が2019年にアジア14カ国・地域を対象に行った調査では、「現在の会社で管理職になりたい」と回答した人の割合は、日本が21.4%で最下位でした。インド(86.2%)やベトナム(86.1%)など、8割以上が昇進に意欲的な国々とは対照的な結果となっています。

この問題は、性別を問わず見られる全般的な傾向ですが、特に女性においてはより顕著です。同調査において、管理職になりたいと答えた割合は男性が26.8%であったのに対し、女性は15.2%と、11.6ポイントもの差がありました。

企業にとって、管理職候補者の不足は、組織の活力を削ぎ、将来的な競争力の低下に直結します。単に個人の価値観の変化として片付けるのではなく、組織の持続可能性を揺るがしかねない経営課題として捉え、その背景にある構造的な問題に目を向ける必要があります。

なぜ若手社員は管理職になりたがらないのか? 

若手社員が管理職への昇進を望まない背景には、彼らの価値観やキャリア観が、従来の組織が前提としてきたものと大きく異なってきている現実があります。

昭和の時代、多くの企業では終身雇用と年功序列が当たり前であり、会社の中で昇進し、より高い役職に就くことが経済的な豊かさや社会的地位の象徴とされていました。しかし、現代の若手社員にとって、このモデルはもはや自明のものではありません。彼らは会社の中でのポストや報酬といった外的動機だけでは、行動のための動機づけがされにくくなっています。

彼らは、終身雇用が保証されない社会を肌で感じており、特定の企業に依存するのではなく、転職市場で評価される専門性やスキルを身に付けたいという意識が強いのです。そのため、就職したタイミングで転職サービスに登録する新入社員が、10年前よりも26倍に増加しているという現象も起きています。

これは、会社内での評価よりも、社外のマーケットで自分がどう評価されるかを常に意識していることの表れと言えるでしょう。

このような価値観の変化は、上司世代との間に深刻な認識のズレを生んでいます。企業や上司が良かれと思って提示する「昇進」というインセンティブが、若手の心には響かず、むしろ離職の引き金になることさえあります。
現場の支店長さんは「最近の若手はストレス耐性が弱いんじゃないか。上司がちょっと叱ったら辞めてしまうな」と悩んでいた。実際辞めたAさんは「資金繰りに困っている企業に融資できなくて、金余りで困っていない企業に無理やり融資営業をする毎日に、自分は何のために働いているのかわからなくなった」と言って辞めたわけです。(中略)

Cさんは、頭取賞も取った優秀な営業パーソンだったんですけど、なんで辞めたかというと、「もっと金融サービスに限らずお客さま支援をしたいと思って、コンサルティング会社に転職を決めたんだけど、人事からの引き止めは『30代からでも支店長に昇進できる。若くて早く抜擢できる人事制度を検討しているから、もうちょっと考え直して待ちなさい。我慢しなさい』と言われた」と。

彼は「ぜんぜん噛み合っていないな」と思って、余計に辞める決意を固くしたわけです。誰も偉くなりたいと言っているわけじゃなくて、「もっとお客さんのために仕事したい」と言っているわけですね。このへんのギャップが強くなってきていると思うんです。

引用:「昇進できる」と引き止める人事と、より辞める決意を固める若手... 上司と部下の「働きがい」が噛み合わなくなっている理由(ログミーBusiness)

若手社員は、ポストや権限そのものよりも、仕事を通じて社会に貢献することや、顧客のために価値を提供することに強い動機を見出します。組織は、こうした彼らの内発的な動機を理解し、それに寄り添ったキャリアパスや成長機会を提供していく必要があります。

女性が管理職をためらう構造的課題

特に子育て中の女性が管理職への道をためらう背景には、個人の意欲の問題だけでなく、根深い組織構造の課題が存在します。

その1つが、仕事と家庭の両立の難しさです。共働き世帯が多数派となった現代においても、育児や介護の負担はまだまだ女性に偏りがちな傾向があります。こうした状況で、業務量が多く責任も重い管理職の仕事と家庭を両立させることに、多くの女性が不安を感じています。

日本の労働市場では、女性の就業率を示す「M字カーブ」の谷は浅くなりましたが、正規雇用率に注目すると、20代後半をピークに下降し続ける「L字カーブ」という問題が依然として存在します。

これは、多くの女性が出産や育児を機に正社員としてのキャリアを中断し、より柔軟に働ける非正規雇用へ移行せざるを得ない現実を示しています。

こうした状況に対し、良かれと思ってなされる上司の「配慮」が、かえって女性のキャリアアップを阻害しているケースも実は少なくありません。特にベテランの男性上司にありがちなのが、「ワーキングマザーは家庭が最優先だろう」というステレオタイプに基づいた思い込みです。

この過剰な気遣いから、責任のある仕事や重要な役割を任せるのをためらったり、本人の意向を確認せずに業務負荷を軽減したりすることがあります。しかし、家庭を大切に思うことと、仕事で成長したい、貢献したいという意欲は、決して二者択一の関係ではありません。

仕事や役割を取り上げられることで、逆にモチベーションが低下し、キャリアへの意欲を失ってしまう方がいるのも事実なのです。必要なのは画一的な「遠慮」ではなく、一人ひとりの状況や意欲に応じた「配慮」です。

さらに、組織内にロールモデルとなる女性管理職が少ないことも、女性が昇進をためらう大きな要因です。身近に多様な働き方をしながら活躍する女性リーダーがいなければ、自身が管理職として働く姿を具体的にイメージすることが難しくなります。

特に、育休からの復帰後に出世コースから外れてしまう、いわゆる「マミートラック」が常態化している組織では、キャリアの先行きに希望を見出すことは困難です。

企業側が、これまで男性中心のキャリアパスを前提とした組織運営を続けてきた結果として、女性にマネジメントを経験させたり、育成したりする機会を十分に提供してこなかったという側面も無視できません。

これらの構造的な課題を解決しない限り、女性管理職の増加は望めないでしょう。

疲弊する上司の姿が「管理職になりたい」意欲を削ぐ

若手や一般社員が管理職になりたいと思えない極めて大きな理由の1つに、彼らが日常的に目にしている上司、つまり身近な管理職の働きぶりが挙げられます。

責任と業務の負担が大きく、心身ともに疲弊している上司の姿は、管理職というポジションを魅力のないものとして映し出し、部下の昇進意欲を著しく削いでいます。

現代の管理職の多くは、「プレイングマネージャー」としての役割を担っています。これは、チームのマネジメント業務だけでなく、自身も1人のプレイヤーとして個人目標や実務を抱えている状態を指します。この二重の役割だけでも負担は大きいですが、近年の環境変化は、管理職の業務をさらに複雑で過酷なものにしています。

例えば、コンプライアンスの徹底、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進、ハラスメント対策、部下との1on1ミーティングの実施、360度評価への対応など、管理職が責任を持って対処すべき事柄は増え続けています。これらの高度なマネジメント業務をこなしながら、プレイヤーとしての成果も出さなければならないのです。

さらに「働き方改革」の推進は、管理職に新たなプレッシャーを与えています。部下の長時間労働を是正するために定時退社を促す一方で、終わらなかった業務や発生したトラブルの対応を管理職自身が引き受け、深夜まで残業するというケースは後を絶ちません。

結果として、部下の労働時間は減っても、管理職の負荷は増大し、ワークライフバランスは崩壊寸前という状況に陥りがちです。

こうした過重な責務に加え、管理職は深刻な「孤独」にも直面しています。上司と部下の板挟みになりながら、自身の悩みやプレッシャーを打ち明けられる相手は組織内にほとんどいません。「すべて自分で解決しなければならない」という重圧の中で、1人で奮闘している管理職は少なくないのです。

このような疲弊した管理職の姿は、部下にとって「逆ロールモデル」として機能してしまいます。「あんなふうにはなりたくない」「管理職になると私生活が犠牲になる」と感じた若手社員が、昇進に対して消極的になるのは、ある意味で当然の帰結と言えるでしょう。

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