【3行要約】
・手帳は単なる予定表ではなく、夢や理想を可視化し自己実現するための強力なツールであることが見過ごされています。
・手帳術の専門家・高田晃氏は「手帳は目標やタスクの管理、頭の中の情報整理のツール」と指摘し、計画型と記録型の使い方を提案しました。
・「夢を明確にする」「年単位の目標設定」「行動計画の立案」という3ステップで手帳を活用し、人生の舵取りツールとして使いこなしましょう。
手帳が続かない人の共通点
手帳を購入したものの、「いつの間にか使わなくなってしまった」という経験を持つ人は少なくないのではないでしょうか。その背景には、いくつかの共通した特徴が見られます。
手帳を活用しきれていない人の多くは、「手帳はスケジュール管理をするためのもの」という固定観念に縛られていることが多いです。この考え方では、予定がある時しか手帳を開かなくなり、予定が少ない時期には手帳が空白のままになります。結果として、手帳を使う意義を見失い、次第に遠ざかってしまうのです。
また、手帳を使うこと自体が目的化してしまっているケースも散見されます。仕事ができるビジネスパーソンが手帳を使っていると聞き、かたちから入ったものの、手帳本来の役割であるタスク管理や予定の整理に繋がらず、ただ「空白を埋めるだけ」の作業に終始してしまうのです。
これでは、手帳が自身の生活や仕事をどのように助けてくれるのかという本質的なメリットを実感することはできません。
さらに、自身の目的や用途に合わない手帳を選んでしまっていることも、継続を妨げる一因です。例えば、アイデアを頻繁に書き留めたいのにメモ欄が小さい手帳や、緻密な時間管理をしたいのに週単位の予定が書きにくいレイアウトの手帳では、使うたびにストレスを感じてしまいます。
そして重要な点として、予定やタスクを記録するだけで満足し、定期的に「振り返る」という習慣が欠如していることが挙げられます。書いた内容を見返し、反省点や改善点を見つけ、次の行動に活かすというサイクルを回せていないのです。
手帳をうまく使っている人の思考法
一方で、手帳を上手に使いこなしている人は、手帳に対する根本的な捉え方が異なります。彼らにとって手帳は、単なるスケジュール帳ではなく、「目標やタスクの管理をはじめ、頭の中の情報を整理するためのツール」です。
期限のあるタスクの確認、仕事での目標設定、日々の反省点や改善点、ふとした瞬間に浮かんだアイデアなどを記録する、多目的なパートナーとして活用しています。
手帳を使う目的も明確です。手帳の使い方は大きく「計画型」と「記録型」の2種類に分けられます。「計画型」は未来の時間を計画し管理するための使い方であり、手帳が本来持つスタンダードな機能です。対して「記録型」は、過去を振り返り、充実感を得たり、改善点を見つけたりするために、その日に行ったことを書き留めておく使い方です。
デジタルデバイスが普及した現代において、紙の手帳の価値はむしろ「記録型」へとシフトしているとも言われています。
手帳を最大限に活用するためには、こうした思考の転換が必要です。手帳はスケジュール以外の情報を書いても良い、むしろ積極的に書くべき場所なのです。
仕事の目標、日々意識していること、上司や顧客からの言葉、失敗した時の気持ちまで、思いつくままに書き留めてみましょう。「なんでも書いてみる」ことこそが、手帳を真の相棒にするための第1歩と言えます。
手帳を活用した「自己実現」のための3ステップ
手帳の価値は、日々の予定管理に留まりません。その真価は、自分の「ありたい姿」を実現するための自己マネジメントツールとして機能する点にあります。手帳を使うことで、漠然とした夢や理想を具体的な目標に落とし込み、着実に行動へと繋げていくことが可能になります。
これは、いわば「自分の人生を自らの手でデザインする」行為に他なりません。この自己実現のプロセスは、大きく3つのステップに分けることができます。
ステップ1は、「ありたい姿=夢を明確にする」ことです。自分がどのような人生を歩みたいのか、どのような自分になりたいのかを具体的に描き出すことからすべてが始まります。
この段階で将来像が明確に描けない、自分が何をやりたいのかわからないという人も少なくないでしょう。その場合は、まず3つの観点から自分の内面を掘り下げてみることをお勧めします。それは「欲しいもの」「やりたいこと」「なりたい状態」です。
「欲しいもの」は、物質的な欲求です。「3LDKの新築マンションが欲しい」「新しい車が欲しい」といった具体的なアイテムをリストアップします。
「やりたいこと」は、体験したいことです。「海外旅行をする」「田舎暮らしをする」など、自分が経験してみたいことを書き出します。
そして「なりたい状態」は、自身のスキルや状態に関する目標です。「年収1,000万円になりたい」「英会話を習得したい」「10キロ痩せたい」などがこれにあたります。
この時、「こんなのは無理だろう」といったフィルターをかけず、思いつくままに自由に書き出すことが重要です。
ステップ2は、明確にした夢の実現に向けて、「年単位の目標を設定する」ことです。例えば「3年後に独立する」という夢があるなら、「今年は関連資格を取得する」「1年間で100万円貯金する」「業界内の人脈を50人以上作る」といったように、夢から逆算して直近1年で達成すべき具体的な目標を立てます。
ステップ3では、「目標を達成するために必要な行動計画を立てる」ことです。年間の目標を達成するために、月単位、週単位で何をすべきかをさらに細分化していきます。この一連のステップを手帳に書き記していくことで、夢が単なる憧れではなく、達成可能な計画へと変わっていくのです。
ライフコーチであり、『決定版 手帳で夢をかなえる全技術』著者の高田晃氏は、夢や理想を見つけるための具体的な方法について次のように語っています。
高田:やはりなかなか自分の将来像が描けないとか、自分が何をやりたいのかわからない人は多いですよね。その場合は、3つの観点でご自身がやりたいことを書き殴っていただくのが、お勧めの方法です。3つの観点とは「欲しいもの」「やりたいこと」「なりたい状態」ですね。
「欲しいもの」とは、例えば「3LDKの新築マンションを買いたいな」「新しい車を買いたいな」「こんな春服を買いたいな」とか。2点目の「やりたいこと」は、「〇〇に旅行する」とか「田舎暮らしをする」という、体験したいこと。
3点目の「なりたい状態」は、例えば「年収いくらになりたい」「英会話ができるようになりたい」「10キロ痩せてドレスが似合う体になりたい」「料理上手になりたい」とかですね。
引用:手帳で夢をかなえる技術 年収・業績アップ…目標達成するための3ステップ(ログミーBusiness)
このプロセスを通じて、自分でも気づかなかった願望が可視化され、人生の方向性が明確になります。書き出したリストをさらに時間軸に落とし込む「10年ビジョン」を作成することも有効です。
リストアップした項目を「1年後」「3年後」「5年後」「10年以上先」に振り分けることで、「5年後にはこういう状態になっていたい」という具体的なイメージが湧き、そこから逆算することで目標を設定しやすくなるでしょう。
目標を現実に落とし込む、手帳でのスケジュール計画術
夢を明確にし、年単位の目標を設定したら、次はその目標を日々の行動レベルにまで落とし込む具体的な計画作りが不可欠です。このプロセスにおいて、手帳は極めて強力なツールとなります。
年間目標を月間、週間、そしてデイリーのタスクへと着実にブレイクダウンしていくことで、壮大な目標も現実的な1歩の積み重ねとして捉えることができるようになります。
まず、年間の目標を達成するために、四半期(3ヶ月)ごとの目標を設定します。多くの企業が四半期ごとに計画を立てるように、個人でもこの期間で目標を区切ることは非常に有効です。年間の大きな目標から逆算し、最初の3ヶ月で達成すべき中間目標を定めます。
次に、その四半期目標を踏まえて、今月の目標を立てます。マンスリーページのカレンダーの余白などに、その月の目標を書き込みます。この月間目標は、年間目標や四半期目標と一貫性があることが重要です。
月間目標が決まったら、それを達成するために今週何をするべきかを考え、週間の目標を設定します。週間バーチカルタイプの手帳であれば、スケジュールの横に目標を書き込む欄が設けられているものもありますが、そうでなくても余白や付箋を活用して書き込むと良いでしょう。
この週間スケジュールを計画する上で極めて効果的なのが、「色分け」と「時間の天引き」という考え方です。予定を3色で管理します。
赤・・・仕事関係の予定青・・・プライベートの予定緑・・・週間目標に関連する予定ここで重要なのは、スケジュールを埋める順番です。多くの人は、まず仕事(赤)やプライベートの約束(青)を書き込み、余った時間で目標のための行動(緑)をしようと考えがちです。
しかし、この方法では緊急性の高い目の前のタスクに追われ、目標のための時間は後回しにされ、結局確保できなくなってしまいます。
そこで、「時間の天引き」という発想が重要になります。給料から先に貯蓄分を天引きするように、1週間の計画を立てる際に、まず目標達成のための時間(緑)をスケジュール帳に書き込んでしまうのです。
例えば、「資格の勉強を3時間する」「週に2回ジムに行く」といった時間を先に確保します。そして、残った時間で仕事やその他の予定を調整していくのです。目標に関する行動は、自分の「やりたいこと」であり、これを最優先することで、着実に夢に近づくことができます。
最後に、ウィークリーの計画を基に、デイリーページで「今日1日何をするか」をさらに詳しく落とし込みます。「今日1日が終わった時にどうなっていたら理想か」という観点で「1日のゴール」を3つほど書き出し、それを達成するための「今日の重点タスク」をリストアップします。
この日々の計画と実行の繰り返しが、大きな目標達成へとつながるのです。
成果を出すビジネスパーソンの手帳に共通する6つの工夫
仕事で高い成果を出すビジネスパーソンは、手帳を単なる予定の記録帳としてではなく、自己を管理し、生産性を最大化するための戦略的なツールとして活用しています。
彼らの手帳の使い方には、いくつかの共通した工夫が見られます。これらの手帳術を取り入れることで、誰でも仕事の効率と質を向上させることが可能です。
1つ目に、「常に手帳を持ち歩き、定期的に振り返りの時間を設けている」点です。思いついたアイデアや新たなタスク、顧客との会話で得た気づきなどを即座に書き留めることで、情報の漏れを防ぎます。
さらに重要なのが、週末や1日の終わりなどに定期的な振り返りの時間をスケジュールに組み込んでいることです。達成したことや改善すべき点を把握し、次の行動計画へ反映させるこのプロセスが、継続的な成長を促します。
2つ目に、「予定やタスクが具体的かつ詳細に記載されている」ことです。例えば、「資料作成」と書くのではなく、「9月度の予実管理表作成」といったように、誰が見ても内容が明確にわかるレベルで記述されています。
また、場所や時間、目的といった付随情報も細かく書き込まれており、これにより、他の人に作業を依頼する際にもスムーズな情報伝達が可能になります。
3つ目に、「スケジュールを立てる際に意図的に『余白』を設けている」ことです。予定を詰め込みすぎず、予期せぬトラブルや急な依頼に対応できるバッファを確保しています。
タスクにかかる時間を見積もる際には、実際の作業時間だけでなく、その前後の移動や準備にかかる時間も考慮に入れることで、現実的で余裕のあるスケジュールを組んでいます。
4つ目に、「短期的な予定だけでなく、中長期的な視点も持っている」ことです。彼らの手帳には、1ヶ月以上先の予定まで記載されていることが少なくありません。中長期的な目標を常に意識しながらスケジュールを組むことで、目先のタスクに追われることなく、全体の工程を俯瞰し、計画的に物事を進めることができます。
5つ目に、「まずタスクをリストアップし、作業時間を見積もってからスケジュールを立てる」という手順を徹底している点です。スケジュール策定が苦手な人は、作業時間の見積もりが曖昧なまま計画を立てがちです。
成果を出す人は、まずやるべきことをすべて洗い出し、それぞれの作業時間を予測します。その上で、パズルを解くように最も効率的な組み合わせでスケジュールを組み立てていくのです。
最後に、「情報管理ツールを1冊にまとめる」傾向があります。複数のノートやアプリを使い分けると、情報が分散し、かえって混乱や確認漏れの原因となります。手帳1冊に情報を集約することで、一貫した情報管理が可能となり、効率的かつスムーズに情報の整理と見直しが行えるようになります。
これらの工夫は、特別な才能を必要とするものではなく、意識と習慣によって誰でも実践できるものです。