場の空気を壊さず提案する秘訣
キャパオーバーに陥った際、1人で問題を抱え込むことは最も避けるべき状況です。上司や同僚に助けを求めることは決して「逃げ」ではなく、プロジェクトを円滑に進めるために必要なスキルの1つです。しかし、「どのように伝えれば、相手に負担をかけず、場の空気を壊さずに済むだろうか」と悩む人も少なくないでしょう。
ここで有効なのが「アサーション」というコミュニケーションスキルです。アサーションとは、相手を尊重しながらも、自分の気持ちや意見を率直に、その場に合った適切な方法で伝えることを指します。
このアサーションを実践する上で効果的なフレームワークが「DESC法(デスク法)」です。DESC法は、以下の4つのステップで構成されます。
D (Describe)・・・事実を客観的に説明する例:「現在、AとBのプロジェクトを並行して進めており、Cのタスクの着手が遅れている状況です」
E (Explain/Express)・・・自分の感情や考えを伝える例:「このままではCのタスクの品質を担保することが難しく、プロジェクト全体にご迷惑をおかけしてしまうのではないかと懸念しております」
S (Specify)・・・具体的な提案をする例:「つきましては、Cのタスクの一部を、どなたかにご協力いただくことは可能でしょうか。もしくは、Aプロジェクトの納期を調整いただくことはできますでしょうか」
C (Choose)・・・相手の選択を促し、応答を求める例:「もし難しい場合は、他にどのような方法が考えられるか、一緒に検討させていただけますでしょうか」
このように「事実」「感情」「提案」「選択」の順で伝えることで、一方的に要求を突きつけるのではなく、相手への配慮を示しながら、問題解決に向けた建設的な対話を生み出すことができます。
また、日頃から進捗状況をこまめに共有しておくことも重要です。すべての作業が完成してから報告するのではなく、2割程度の進捗段階で一度上司や関係者に共有し、方向性の確認を取ることをお勧めします。これにより、手戻りを防ぎ、認識のズレを早期に修正できるため、結果的に全体の効率が向上します。
健全なSOSを発信することは、自分自身を守ると同時に、チームのリスク管理にもつながるのです。
ギリギリでやることで、結果的にキャパシティが広がることも
キャパオーバーという困難な状況は、見方を変えれば、自分自身の能力を拡張するための絶好の機会と捉えることができます。人間は、自分の能力を少しだけ超える「ストレッチゾーン」に身を置くことで成長します。もし今、あなたが「キャパオーバーかもしれない」と感じているのであれば、それはまさに成長のチャンスの入り口に立っているのかもしれません。
もちろん、無理は禁物です。自分の能力をはるかに超える「パニックゾーン」に留まり続けることは、心身の健康を損なうだけです。しかし、ストレッチゾーンでの挑戦は、あなたのキャパシティを確実に広げてくれます。
重要なのは、キャパオーバーの状態をどのように捉え、次へと繋げていくかです。株式会社ウィルフォワード代表の成瀬拓也氏と、『今日からできるゼロストレス営業』の著者である河合克仁氏の対談では、キャパシティの拡張について興味深い視点が語られています。
河合:あります! キャパを超えて引き受けていきながら、気づいたらちょっとキャパが広がっているみたいな。いいのかどうかはわからないんですけれど、例えば今回のこういったセミナーにしても、本当は成瀬さんやいろんな方々と事前打ち合わせをしたほうがいいのかもしれませんけど。
今、僕を必要としていただけるのなら100パーセントどころか120パーセントでも引き受けながら、調整していくということがあります。その中で、自分じゃなくてもできることがあるならば、質問者さまの後輩育成という観点も持ちながら、「仕事を引き受けることで自然と応援されたり、助けてもらうことがあるんだよ」と伝えつつ、後輩の方に仕事をパスしていくと。(中略)
ある程度キャパを超えたとしても「大丈夫かな、どうなのかな」というギリギリでやっていくほうが、結果的にキャパは広がっていくと思うんですね。
引用:「まあ、ちょっと……」の濁した返答が、キャパオーバーを招く これ以上仕事を受けられない時の「さりげなくかわす技術」(ログミーBusiness)
この言葉が示すように、少し背伸びをした挑戦を続ける中で、仕事をうまくかわす技術や、周囲に協力を仰ぐスキルが自然と身についていきます。そして、気づいた時には以前よりも大きな仕事量をこなせるようになっているのです。
キャパオーバーは苦しい経験ですが、それはあなたが新しい領域に足を踏み入れている証拠でもあります。適切な休息を取り、周囲のサポートをうまく活用しながら、この挑戦を乗り越えることで、ビジネスパーソンとしてより一層たくましく成長することができるでしょう。