【3行要約】
・タイムマネジメントが下手な人には共通の特徴があり、多くのビジネスパーソンが「明日からがんばろう」と先延ばしにする悪循環に陥っています。
・パーキンソンの法則により、終了時間を決めないと仕事は与えられた時間すべてを使い切り、「なんとなく残業」が常態化してしまいます。
・効率化で生まれた時間を「良いサボり」として自己投資に回し、小さな行動実験から始めることで「More with Less」な働き方を実現できます。
タイムマネジメントができない人が陥る思考の罠
なぜ多くの人が時間を有効に使いたいと願いながらも、ついダラダラと過ごしてしまったり、重要なタスクを先延ばしにしてしまったりするのでしょうか。その原因は、単なる意志の弱さだけではなく、脳の仕組みと深く関係していることが指摘されています。
タイムマネジメントが苦手な人が陥りがちな原因は、大きく4つに分類することができます。
1つ目は「計画が不正確で、実行途中で挫折してしまう」という問題です。これは、脳の前頭葉が担う「実行機能」という高度な働きと関連しています。実行機能とは、目標達成のために計画を立て、それを遂行する能力のことです。
この機能がうまく働かないと、行き当たりばったりで非効率な行動を取ってしまったり、仕事の全体像が掴めず進捗状況を正しく把握できなかったりします。結果として、周りからは「マネジメントができない人」と見なされ、信頼を損なうことにもなりかねません。
2つ目は「時間の見積もりが不正確」であることです。これは、体内の時間感覚を司る小脳の働きと関係していると言われています。
「この作業は10分で終わるだろう」と見積もったものが実際には30分かかってしまう、といったズレが頻繁に起こると、そもそも計画を立てること自体が無意味に感じられ、計画倒れを繰り返すことになります。
3つ目は「『急ぎます』『がんばります』といった精神論に頼ってしまう」ことです。自分のキャパシティを超えた仕事量を安易に引き受けてしまうと、時間軸を無視した無理な進行にならざるを得ません。本当に急ぐ必要がある場面では、仕事の要点を理解し、省略できる部分を見極めてタスクを「圧縮」する能力が求められます。
しかし、完璧主義の傾向がある人は、要点を掴んだり作業を省略したりすることが苦手な場合があり、精神論だけでは乗り切れなくなってしまいます。
4つ目は「ギリギリ癖の誘惑」です。「締め切り直前にならないとやる気が出ない」という感覚は、脳内で快楽物質が分泌されるためと言われています。しかし、この「見せかけの達成感」は、長期的には計画性の欠如につながり、仕事の質を低下させ、周囲からの信頼を失う原因となります。
これらの原因を理解することは、自分自身のタイムマネジメントの問題点を客観的に把握し、具体的な対策を講じるための第1歩となるでしょう。
仕事の「重要度」と「緊急度」の見極め方
多くのビジネスパーソンは、日々の業務に追われる中で、タスクを「重要度」と「緊急度」という2つの軸で整理しようと試みます。しかし、一般的な95パーセントの社員と、高い成果を出し続けるトップ5パーセントの社員とでは、このマトリクスの使い方に決定的な違いが見られます。
多くの人は、重要度も緊急度も高いタスク、つまり「締め切りが迫っている重要な仕事」に最も注意を払い、その管理に注力しがちです。もちろん、これは最優先で処理すべきタスクであり、疎かにはできません。
しかし、トップ5パーセントの社員は、このようなタスクは「誰でも勝手にやるものだから、あえてマネジメントする必要はない」と考えています。彼らが本当に重視しているのは、そこではありません。
彼らが特に巧みに対処しているのは、「重要度は低いが緊急度が高いタスク」です。例えば、突然の社内からの問い合わせや、さほど重要ではない会議への出席依頼などがこれにあたります。
多くの人がこうしたタスクに振り回されがちですが、トップ5パーセントの社員は、これを自分でやるべきではないと判断すれば、断ったり、後回しにすることを相手に明確に伝えたりします。これにより自分の時間を守り、本当に重要なことに集中できる環境を自ら作り出しているのです。
そして、彼らの時間術を最も特徴づけているのが、「重要度は高いが緊急度は低いタスク」への注力です。これは、今すぐやる必要はないものの、将来の自分や組織にとって大きなリターンをもたらす活動を指します。
95パーセントの社員は重要度と緊急度が高いものを管理しがちですが、5パーセント社員は「重要度が高くて緊急度が高いものは勝手にやるので、そこはマネジメントの必要がありません」と言っていたのがすごく印象的でした。
重要度が低く緊急度も低いタスクに手を出さないのは、両者共通です。
一方、5パーセント社員は重要度は低いのに緊急度が高いタスクを見つけるのがうまく、自分でやらないと宣言したり、後回しにすることを相手に伝えていましたね。そして何よりも特徴的なのは、「重要度が高くて緊急度の低いタスク」。
彼らは「ここに時間を費やすために無駄なタスクを手放す」と言っていました。例えば、ショートカットキーを覚えるとか、仕組み化でITツールを入れちゃうとか。今やらなくてもいいけれど、将来やっておかなきゃいけないものに時間を費やすことを心がけていましたね。
引用:できる人は今ではなく「未来」の5分10分の時短を意識する トップ5%社員が重視する、時間効率を高める取り組み(ログミーBusiness)
このように、彼らは目先のタスク処理に終始するのではなく、常に「未来の5分、10分を短縮する」ための仕組み化や自己投資に時間を費やしています。面倒な繰り返し作業を自動化するツールを導入したり、PCのショートカットキーを覚えたりといった小さな工夫は、まさに「ローリスク・ローリターン」の積み重ねです。
しかし、この地道な取り組みこそが、将来的に大きな時間の余裕を生み出し、他の人には真似できない高い生産性を実現する源泉となっているのです。
「明日からがんばろう」の脱却
「時間の使い方が下手だ」と感じる人には、共通する2つの特徴が見られます。1つは「優先順位づけが苦手」なこと。その時の気分で手当たり次第にタスクに着手してしまい、結果的に時間が足りなくなるパターンです。
もう1つは「つい楽なほうに流れてしまう」こと。「明日からがんばろう」と先延ばしにし、結局何も進まないまま自己嫌悪に陥る傾向があります。こうした状況から抜け出すためには、具体的で実践的なステップを踏むことが不可欠です。
最初に行うべきは、「やるべきこと、やりたいことを洗い出す」ことです。頭の中で漠然と考えているだけでは、タスクの全体像を把握することはできません。
仕事や家事といった「やるべきこと」はもちろん、キャリアアップのための勉強や健康維持のための運動といった自己投資、さらには家族や友人との交流、趣味の活動といった「やりたいこと」までリストとして書き出すことをお勧めします。この作業によって自分が何に時間を使いたいのか、使うべきなのかが明確になります。
次に重要なのが、「締め切りとゴールを決める」ことです。特に「やるべきこと」に関しては、明確な期限と達成目標がなければ、「面倒だから後でいいや」と先延ばしにしてしまう可能性が高まります。
この事態を防ぐため、「いつまでに、どのような状態になっていたいか」を具体的に設定します。例えば英語の勉強であれば「○月○日のTOEICで△△点を取る」、転職活動であれば「○月までには内定を獲得する」といったように、具体的で測定可能なゴールを定めることが有効です。
リストアップしたタスクとゴールが明確になったら、次は「優先順位をつけて計画を立てる」段階に進みます。時間は有限であるため、すべてをこなすことは不可能です。多くの場合、仕事の時間は固定されているため、それ以外の時間をどのように配分するかを計画します。
優先順位は「やるべきこと」を先に行い、その次に「やりたいこと」を配置するのが基本です。ただし、「やりたいこと」は日々の満足度を高める重要な要素であるため、「やるべきこと」ばかりに偏りすぎないよう、バランスを調整することが大切です。
計画を立てる際は、1日から1週間程度の単位で、具体的な行動をイメージできるレベルまで落とし込むと効果的です。勉強やダイエットのように継続が必要な目標の場合は、中長期的な計画から逆算して1日単位の行動計画を立てることを意識しましょう。
この一連のプロセスを通じて、漠然とした「がんばろう」という意志を、実行可能な具体的なアクションへと転換することができるのです。