大きなタスクに起きがちな先延ばしを解消する「分解」の技術
「企画書を作成する」「イベントを準備する」といった、やるべきタスクが大きくて曖昧なものであると、どこから手をつけてよいかわからず、「めんどくさい」という気持ちが勝ってしまいがちです。また、「企画書作成」という1つの大きな括りで捉えてしまうと、時間的にまだ余裕があるように錯覚し、先延ばししやすい状態に陥ってしまいます。
このような状況を避けるために非常に有効な方法として、グロービズ経営大学院の鈴木麻希氏は、大きなタスクを具体的で小さな作業に「分解」していく技術を紹介しています。タスクを細かく分解することには、多くのメリットがあります。まず、一つひとつの作業のハードルが下がるため、心理的な抵抗が減り、格段に手をつけやすくなります。「企画書を作成する」という漠然としたタスクでは腰が重くても、「関連資料を3つ集める」「目次案を5つ書き出す」「競合の事例を調べる」といった具体的な小タスクであれば、すぐに行動に移せるはずです。
さらに、タスクを分解することで、作業全体の進捗状況が「見える化」されます。完了した小タスクにチェックを入れていけば、「全体の30パーセントが終わった」「あと5つの作業で完成だ」というように達成度合いが明確になり、モチベーションの維持につながります。
さらに、
手帳セラピストのさとうめぐみ氏は、ToDoリストを作成する際に「時間の見積もり」と「必要回数」を書き加えることを推奨しています。例えば、オンラインレッスンの準備という大きなタスクがある場合、「メルマガを2回配信する」「PowerPointを2回に分けて作成する」というように、必要回数を書き込んで作業を分割します。一気にすべてをやろうとすると気持ちが疲れてしまいますが、このようにあらかじめ分割しておくことで、心の抵抗を減らし、着実に行動を進めることができるのです。
この時、締め切り日や時間の見積もりも細かく書き込むことで、より計画的にタスクに取り組めるようになります。
心を大事にし、行動への抵抗感をいかに減らすかという視点でタスクを管理することが、先延ばしを防ぐ上で重要なポイントとなります。
「やる気」頼りを卒業する、科学的に正しい行動の始め方
多くの人が「やる気が出たら始めよう」と考え、行動のきっかけを「やる気」に求めてしまいがちです。しかし、
『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ』の著者である大平信孝氏は、「やる気は天から降ってこない」と断言します。「今日はなんだかやる気がみなぎる」と感じる日はごく稀で、ほとんどの日は「やる気が出ないな」と感じるのが普通です。やる気が自然に湧いてくるのを待っていては、いつまで経っても行動に移すことはできません。
実は、「やる気にならないと人は動けない」という考え方は、脳のメカニズムから見ると誤解です。やる気は行動の「前」に生まれるのではなく、「後」からついてくるものなのです。この順番を理解することが、「やる気待ち」を卒業するための重要なカギとなります。
では、どうすれば行動を始めることができるのでしょうか。その答えは、脳の「やる気スイッチ」である側坐核をオンにすることにあると大平氏は語ります。そして、このスイッチを入れる方法は驚くほどシンプルで、「小さく動くこと」ただそれだけです。
やる気スイッチを入れるためにできることとしておすすめなのが「10秒アクション」です。これは、先延ばしにしている行動の「最初の10秒でできること」を具体的に設定し、それだけを実行するという方法です。
例えば、フルマラソン完走のために「週3回、朝30分走る」という目標を立てても、心理的なハードルが高く、なかなか実行できないかもしれません。しかし、「ジョギングシューズを履く」という10秒でできるアクションに目標を置き換えるとどうでしょうか。「それくらいなら」と、気軽に行動に移せるはずです。そして、一度シューズを履いてしまえば、そのまま外に出て歩き始め、体が温まるにつれて自然と走り出す、という流れが生まれます。
この10秒アクションは、脳科学的にも非常に理にかなっています。大平氏によると、脳は大きな変化を嫌いますが、10秒程度の小さな変化であれば、現状維持を好む脳の防衛本能のアラートをかいくぐることができるのです。この小さな行動が側坐核への刺激となり、行動の“着火剤”の役割を果たします。最初の10秒がきっかけとなり、結果的に3分、5分、15分と行動が続いていきます。
さらに効果的なテクニックとして、「前日にちょっとだけ着手しておく」ことも挙げられます。翌朝に取り組む面倒な仕事の資料を、寝る前に1〜2分だけパラパラと読んでおく。たったこれだけでも、睡眠中に脳内で情報が整理され、朝起きた時にアイデアが浮かびやすくなるなど、翌日の作業への着手をスムーズにしてくれます。
気合いや根性に頼るのではなく、脳の仕組みを利用した小さな工夫で、タスクの先延ばしをなくすための第1歩を踏み出してみましょう。