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ファシリテーション(全1記事)

ファシリテーションに重要なこととは 会議の成果を最大化する技術とスキルの身につけかた [2/2]

論点のズレと話の脱線を防ぐ「見える化」の技術

会議が非効率に陥る典型的なパターンとして、「話が脱線する」「論点がずれていく」という問題があります。議論が白熱するあまり、本来の目的とは関係のない話題で盛り上がってしまったり、参加者がそれぞれ異なる前提で話しているために議論が噛み合わなかったりすることは少なくありません。

こうした状況を防ぎ、参加者全員が同じ土俵で議論を進めるために不可欠なのが、「見える化(可視化)」の技術です。

「見える化」の最も基本的な実践は、会議の冒頭でアジェンダや目的、これまでの経緯といった「前提情報」を、口頭で説明するだけでなく、書き起こしたものを見せながら共有することです。

人間の「聞く」という行為は想像以上に負荷が高く、一瞬注意が逸れただけで重要な情報を聞き逃してしまう可能性があります。資料を画面共有したり、ホワイトボードに書き出したりすることで、視覚情報が聴覚情報を補い、参加者全員の認識を確実に揃えることができます。

この前提共有を丁寧に行うことで、参加者は「この会議で自分は何をすべきか」という見通しを持って議論に参加できるようになり、論点のズレを未然に防ぐことができます。

会議の最中においては、議論の内容そのものをリアルタイムで見える化していくことが重要です。参加者から出た意見やアイデア、決定事項などをホワイトボードや共有ドキュメントに書き出していくことで、議論の全体像が常に参加者の目に触れる状態になります。これにより、今何について話しているのか、どの論点が残っているのかが一目瞭然となり、話が脱線しそうになった時にも「今議論すべきなのはこのポイントですよね」と本筋に引き戻しやすくなります。

特にオンライン会議では物理的な場の共有がないため、議事メモを画面共有しながら議論を進めるなど、意識的に見える化を徹底することが、認識のズレを防ぐ上で極めて効果的です。

会議の最後には、その日の議論で「決まったこと」と、次に「やるべきこと(ToDo)」を明確にリストアップし、全員で確認することも重要な見える化の一環です。誰が、いつまでに、何をするのかを具体的に書き出し、担当者と期日をその場で合意することで、会議の成果が具体的な行動へとつながることを確実にします。

このように、会議の開始から終了まで一貫して情報を「見える化」し続けることが、参加者の集中力を維持し、論点をブラさず、生産性の高い議論を実現するための鍵となるのです。

全員の納得感を生む「合意形成」への導き方

ファシリテーションの最終的なゴールは、単に議論をまとめることではなく、参加者全員が納得できる結論、すなわち「合意形成」に到達することです。会議で決定された事項がスムーズに実行されるためには、参加者一人ひとりがその結論に対して「自分も意思決定に関わった」という当事者意識と納得感を持っていることが不可欠です。

この納得感、いわゆる「腹落ち感」を生み出すことこそ、ファシリテーターに課せられた最も重要な任務の1つと言えます。

納得感のある合意形成を実現するための大前提は、会議のプロセスにおいて、参加者全員が意見を出し尽くしたと感じられる状況を作ることです。一部の人の意見だけで結論が導かれたり、言いたいことがあったのに言えずに終わってしまったりすると、参加者の中に不満や疑念が残り、決定事項へのコミットメントが低下してしまいます。

したがって、ファシリテーターは、参加者全員から自然とまんべんなく意見が出るような、話しやすい空気を作ることが何よりも重要になります。グロービス経営大学院の鈴木麻希氏は、この点について次のように述べています。
この、「自然とまんべんなく意見が出る」というのがポイントになります。「たくさん意見が出ちゃうと、ファシリするのが大変だよ」と思う方もいるかもしれません。ただ、そこはもらった意見から論点をうまく抽出して、問いかけをしたりして、流れを整理していけばOKです。参加者全員が言い残したことはないという状態になれば、誰もが納得できる結論に着地できます。

そして、その仕事を実行する上で、「何を誰がいつまでにやればいいか」という結論が出れば、やりたい仕事をより簡単に、かつ納得感を持ちながらみんなが実行することができます。

引用:「誰もが納得する結論」に着地させるファシリテーターの特徴 みんなで一緒に考えるメリットを最大化させるファシリ術(ログミーBusiness)

意見が出つくした後は、それらを整理し、収束させていくプロセスに入ります。ここでは、多様な意見の中から共通点や相違点を明らかにし、議論の全体像を構造化するスキルが求められます。意見が対立した場合には、どちらか一方を切り捨てるのではなく、両者の意見の根底にある価値観や懸念を深く理解し、双方にとって受け入れ可能な第三の道、いわゆる妥協点や創造的な解決策を模索する手助けをします。

この時、ファシリテーターは決して自らの意見で結論を誘導するのではなく、あくまで中立的な立場で、参加者自身が合意点を見つけ出せるようにサポート役に徹することが重要です。最終的に結論が出たら、その決定事項と今後のアクションプランを明確に言語化し、全員で共有・確認することで、会議は高い納得感とともに締めくくられます。

優れたファシリテーターに共通する「傾聴」と「質問」

優れたファシリテーターは、生まれ持った才能やセンスだけでその役割を果たしているわけではありません。彼らは意識的なトレーニングによって磨かれた、いくつかの核となるスキルを駆使しています。

その中でも特に重要とされるのが、「傾聴力」と「質問力」、そしてそれらの土台となる「共感力」です。これらの対人関係スキルは、参加者の心理的安全性を確保し、本音の意見を引き出し、建設的な対話を生み出すための根幹をなすものです。

「傾聴力」とは、単に相手の話を聞くことではありません。相手の言葉の背景にある感情や意図まで深く理解しようと努め、全身で「あなたの話に関心を持っています」というメッセージを伝える姿勢そのものです。

具体的には、発言者に体を向け、アイコンタクトを取り、適切なタイミングで相槌やうなずきを入れるといった非言語的なコミュニケーションが挙げられます。また、相手の発言を「つまり、〇〇ということですね」と要約して返すことで、自分の理解が正しいかを確認すると同時に、相手に「しっかりと受け止めてもらえている」という安心感を与えることができます。

この傾聴の姿勢が、参加者が安心して発言できる雰囲気を作り出す第一歩となります。

「質問力」は、傾聴によって得られた情報を基に、議論をさらに深め、広げるためのスキルです。参加者の発言が抽象的でわかりにくい場合には、「もう少し具体的に教えていただけますか?」と問いかけて明確化を促します。議論が停滞している時には、「もし〇〇という視点から見るとどうでしょうか?」と新たな論点を提示して思考を刺激します。

また、発言の少ない参加者に対しては、「〇〇さんはこの分野に詳しいと思いますが、いかがですか?」と名指しで話を振ることで、議論への参加を促すこともできます。

このように、状況に応じて適切な質問を投げかけることで、ファシリテーターは議論の流れを巧みにコントロールし、より本質的な結論へと導いていくのです。

そして、これら2つのスキルの根底にあるのが「共感力」です。参加者が今どのような感情を持っているのかを敏感に察知し、その立場に立って物事を考えようとする姿勢が、信頼関係の構築につながります。ファシリテーターが共感的な態度で接することで、参加者は「この場では何を言っても受け止めてもらえる」と感じ、よりオープンに自分の考えを表現できるようになります。

この「傾聴」「質問」「共感」という三位一体のスキルこそが、ファシリテーションの質を決定づける最も重要な要素であると言えるでしょう。

心理的安全性がファシリテーションの成否を分ける

ファシリテーションの技術やスキルについてどれだけ学んでも、それらが効果的に機能するための土台がなければ、会議は決して成功しません。その最も重要な土台こそが「心理的安全性」です。

心理的安全性とは、チームのメンバーが誰に対しても安心して自分の意見や感情を気兼ねなく発言できる状態を指します。この心理的安全性が確保された場であって初めて、参加者は失敗を恐れずに本音を語り、建設的な意見対立を交わし、創造的なアイデアを生み出すことができるのです。

ファシリテーターの最大の役割の1つは、この心理的安全性の高い場を創り出すことです。参加者が「こんなことを言ったら否定されるかもしれない」「無知だと思われるのが怖い」といった不安を感じている状態では、多様な意見を引き出すことは不可能です。特に、異なる意見や反対意見は、場の空気を壊すことを恐れて表明されにくくなります。

しかし、イノベーションの源泉は、まさにそうした多様な知と知のぶつかり合いにあります。したがって、ファシリテーターは、どのような意見も歓迎され、尊重されるという空気を意図的に醸成しなければなりません。

株式会社Funleash CEO兼代表取締役の志水静香氏は、意見を引き出すための場の作り方について、以下のようにその重要性を語っています。
志水:あえて違う意見が引き出されるように空気を作っていくことがすごく大事。包容力みたいなものも大事ですし、そこにいらっしゃる方たちが、「あ、自分でも気がつかないうちに、すごく本音を話していた」みたいな感じで帰っていかれるような場にしていくことは、まだまだできていないかなと思いますね。

引用:“もったいない”ファシリテーションのパターン 入山章栄氏が語る、司会進行よりも大事なポイント(ログミーBusiness)

心理的安全性を高めるために、ファシリテーターができる具体的な行動は数多くあります。例えば、会議の冒頭で「今日はどんな意見でも歓迎します」「間違いというものはありません」といったグランドルールを共有すること。参加者の発言に対しては、決して否定から入らず、まずは「なるほど」「おもしろい視点ですね」といった肯定的な言葉で受け止めること。これは、たとえその発言の意味が完全には理解できなくても、まずは受け止める姿勢を示すことが重要です。

また、ファシリテーター自身が率先して自己開示を行ったり、適度なアイスブレイクを取り入れたりすることも、場の緊張を和らげ、話しやすい雰囲気を作るのに役立ちます。

テクニック以前のこの心構えこそが、ファシリテーションの成否を分ける最も本質的なポイントと言えるでしょう。

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