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リーダーシップとマネジメント(全1記事)

リーダーシップとマネジメントの違い・関係性とは? 目的へ導く力と成果を出す仕組みの本質 [2/2]

チームの力を最大化させるための具体的なマネジメント要素

マネジメントの究極的な目的が「チームの力を最大化する」ことにあるとすれば、そのためにマネージャーが具体的に取り組むべき要素は2つに大別できます。1つは、チームが活動しやすい「環境を整える」ことであり、もう1つは、チームを構成する「個人を活かす」ことです。これら2つの要素が両輪となって機能することで、チームのパフォーマンスは飛躍的に向上します。

まず、環境整備の観点から最も重要視されるのが、「心理的安全性の高い職場」を作ることです。心理的安全性という言葉は広く使われるようになりましたが、その本質をより具体的に理解することが重要です。これは単に「ぬるい職場」や「仲良しクラブ」を意味するのではありません。

心理的安全性が高い職場とは、第1に、メンバーが「ここに来たい」と思える場所であることです。安心して自分の居場所だと感じられる環境があってこそ、メンバーは前向きに業務に取り組むことができます。

第2に「言いたいことが言い合える」職場であることです。立場や役職に関係なく、建設的な意見や、時には反対意見、あるいは不満さえも率直に表明できる風土が不可欠です。このような環境では、問題が早期に発見され、多様な視点から解決策が生まれるため、チーム全体の意思決定の質が向上します。

次に、「個人を活かす」という観点では、「個人の才能と情熱を解き放つ」ことが求められます。チームは個人の集合体であり、その一人ひとりが持つ才能や情熱が最大限に発揮されて初めて、チームとしての力も最大化されます。

マネージャーの役割は、メンバー一人ひとりの強みや弱み、関心事やキャリアへの想いを深く理解し、彼らが最も輝けるような役割や挑戦の機会を提供することです。これは、トップダウンで指示を与えるのではなく、メンバーとの対話を通じて、彼らの内なる動機を引き出し、自律的な行動を促すコーチング的なアプローチに近いと言えます。

これらの「心理的安全性の確保」と「個人の才能と情熱の解放」は、結局のところ、すべてコミュニケーションに行き着きます。チームは人の集団であり、その集団が成果を上げていくためには、質の高いコミュニケーションが欠かせません。

ゴールを設定し共有すること、ゴールまでのプロセスを明確にすること、そしてチームの力を最大化すること。これらマネジメントのすべての要素は、マネージャーとメンバー、あるいはメンバー同士の円滑で建設的なコミュニケーションによって支えられています。

したがって、優れたマネージャーとは、卓越したコミュニケーターであり、対話を通じてチームの環境を整え、個人の力を引き出すことに長けた人物であると言えるでしょう。

アドバイスの前に不可欠な「合意形成」という対話の順序

多くのマネージャーが、良かれと思って部下に行うアドバイスやフィードバックが、なぜか響かない、あるいは部下が期待通りに動いてくれないという壁に直面します。コーチングスキルを学んだにもかかわらず、対話が噛み合わないという悩みも少なくありません。

この問題の根源には、多くの場合、「合意形成」という極めて重要なプロセスが抜け落ちていることがあります。

マネージャーは、その視座の高さから、部下には見えていない課題や改善点を容易に発見できます。例えば、「このままでは目標達成は難しい。もっと別のやり方を試すべきだ」と判断したとします。そして、すぐに「もっとこうやったほうがいいよ」とアドバイスをしたり、「なぜ目標に届いていないんだ?」と問い詰めたりします。

しかし、もし部下自身が「このままでは目標に到達しない」という危機感を共有していなければ、上司からのどんな言葉も「自分ごと」として捉えることができず、単なる指示や詰問として受け取られてしまいます。

真に機能するマネジメント対話の第1歩は、いきなりアドバイスや解決策を提示することではなく、まず部下と「同じ景色を見る」ことから始めることです。これは、キャリア支援の現場で「車の助手席に座る」と表現されるように、相手が世界をどのように見ているのか、物事をどう捉えているのかを深く理解し、その認識を共有するプロセスです。

具体的には、「このままだと目標達成しないと私からは見えるんだけど、あなた自身はどう思っている?」あるいは「今の状況について、どう感じている?」といった問いかけから対話を始めます。
キャリア支援やコーチングの現場では、車の助手席に座るように相手と同じ景色、相手と同じ物事の捉え方をして、それからヒアリングをして解決策を提示することが重要と言われています。(中略)

じゃあどうやって進めていくかというと、例えば「このままだと目標達成しないなって私からは見えるんだけど、○○さんはどう思っていますか?」とか「今の現状について○○さんはどう感じてますか? どう思っていますか」とまず聞いてあげる。

そして、「ここが課題だと思っています」(と回答があったら)「私もそう思ってました、じゃあ一緒に考えていきましょう」とか。もし(回答が)上司の基準に達していない場合は「ここが課題だと思うよ」と伝えてあげることも大事かもしれません。

引用:そのアドバイス、「合意形成」をすっ飛ばしていませんか? マネジメントを機能させる“会話の順序”(ログミーBusiness)

この合意形成のプロセスを通じて、上司と部下の間に「私たちは同じ課題認識を持っている」という共通の土台が築かれます。この土台があって初めて、課題解決に向けた具体的なアドバイスやコーチングが意味を持ち始めます。

部下が自らの言葉で課題を認識し、解決への意欲を示したならば、そこから共に解決策を考える協働的な関係が生まれます。もし部下の課題認識が不十分であれば、その時点で上司の見立てを伝え、認識のズレを修正していく必要があります。

この丁寧なすり合わせこそが、部下の自走力を育み、信頼関係を深める鍵となります。アドバイスという「答え」を急ぐ前に、まず「問い」を共有する。この順序を徹底することが、マネジメントを機能させるための絶対条件なのです。

部下の心を動かす、科学的根拠に基づいた5つの原則

「正しいことを言っているはずなのに、なぜか部下が動いてくれない」。これは多くの管理職が抱える悩みです。人は論理的な正しさだけで動くわけではありません。「この人が言うからやろう」と思わせる、いわば説得力がなければ、チームを動かすことは困難です。

心理学者のロバート・チャルディーニ氏は、人が他者の説得に応じる際の心理的なメカニズムを解明し、その原則を提示しています。これらの科学的根拠に基づいた原則を理解し実践することは、部下の心を動かし、チームのパフォーマンスを高める上で非常に有効です。

1つ目の原則は「好意を示す」ことです。人は、自分に好意を示してくれる相手の言うことを聞き入れやすい傾向があります。これは「何を言うか」よりも「誰が言うか」が重要であることの証です。部下との間に好意的な関係を築くためには、まず相手に関心を持ち、雑談などを通じて共通点を見出すことが効果的です。

また、「君だからこの仕事を任せたい」「いつもありがとう」「君ならできると期待している」といった言葉で、相手を認め、感謝し、期待を伝えることも、好意を示す具体的な行動となります。

2つ目の原則は「心遣いを怠らない」ことです。これは「返報性の法則」として知られ、人は親切な行為を受けると、それに応えようとする心理が働きます。部下に対してプレゼントを贈るという話ではなく、彼らが「してもらってうれしいこと」を実践することが重要です。

例えば、忙しい中でも部下の話をじっくりと聞く時間を作ったり、丁寧に仕事を教えたりすることは、多くの人が上司に期待している心遣いです。時にはお菓子を差し入れするなど、些細な行動が大きな信頼につながることもあります。

3つ目の原則は「前例を示す」ことです。人は、自分と似た他者の行動を判断の参考にします。これを社会的証明の原理と呼びます。新しい方針などを部下に受け入れてもらう際には、いきなり全員を説得しようとするのではなく、まずチーム内で影響力のあるメンバーや、他の同僚がすでにその方針に賛同している事実を伝えるのが有効です。

これにより、「あの人も賛成しているなら」という同調心理が働き、受け入れられやすくなります。

4つ目の原則は「言質をとる」ことです。人は一度はっきりと約束したことは守ろうとする一貫性の法則が働きます。部下に何か行動変容を促したい場合、1対1で話すだけでなく、朝礼などの場で自発的に今週の目標などを宣言してもらうのが効果的です。周囲にわかるかたちで約束させることで、その行動へのコミットメントは格段に高まります。

これは本人にとっても、目標達成を後押しする「宣言効果」が期待できるため、ポジティブな強制力として機能します。

5つ目の原則は「権威を示す」ことです。これは「偉ぶる」ということではなく、専門家としての信頼性を示すことを意味します。人は専門家の意見に従いやすい傾向があります。マネージャーは、自身の過去の経験や実績、専門知識などを、自慢話にならないように、日頃の会話の中で自然に伝えることが大切です。

これにより、部下は「この人は確かな経験に基づいて話している」と認識し、アドバイスをより真摯に受け止めるようになります。これらの原則は、部下を操作するためのテクニックではなく、信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションを促進するための科学的なアプローチなのです。

状況を見極め、最適な打ち手を選ぶ「実装力」を磨く

リーダーシップとマネジメントは、しばしば対立する概念として語られたり、あるいは混同されたりしますが、本質的には組織を成功に導くための両輪であり、互いに補完し合う関係にあります。リーダーが「Why(なぜ)」と「What(何を)」を問い、進むべき方向性を示すならば、マネージャーは「How(どうやって)」を追求し、その道のりを確実なものにします。

そして、変化の激しい現代において成果を出し続けるリーダーやマネージャーに共通して求められるのは、この両方の視点を持ち合わせ、状況に応じて最適な打ち手を選び、実行に移す「実装力」です。

この実装力の根幹をなすのが、「コンテクスト・リーダーシップ」の考え方です。それは、理想論に固執するのではなく、目の前の現実を直視し、人、チーム、組織と真摯に向き合うことから始まります。

チームメンバーの言動の裏にある本音は何か、チーム内の力学や人間関係はどうなっているのか、組織全体が置かれている状況や外部からの圧力はどのようなものか。これらの複雑な文脈(コンテクスト)を、決めつけや思い込みを排して観察し、可視化することが、すべての打ち手の出発点となります。

状況を可視化する、例えば人物相関図などを描いてみるという行為は、単なる情報整理ではありません。それは、自分自身の認知の解像度を高める行為です。

可視化することで、これまで見えていなかった情報の盲点があぶり出され、思考の渋滞が解消されます。問題の根本原因に関する仮説が立てやすくなり、解決への足がかりが見えてきます。この正確な状況把握なしには、どんな優れた理論や手法も空回りしてしまう可能性が高いのです。
1つ目が、理想に溺れず現実を活かすといったことです。理想を語ることも当然大事だと思っていますが、それだけではなくて、現実を活かして理想に近づける力にフォーカスしていただけるといいかなと思っています。

それで、状況に応じて最善のゴールを柔軟に導くことが、成果を出すところの近道になるんじゃないかなと考えています。

2つ目が、精神論ではなく設計であるというような考え方です。気合い、根性みたいによく言われますけど(笑)。マインドの部分も大事なんですが、リーダーやマネージャーでいくと、状況の把握とか役割の設計、人に合わせたマネジメントが成果に直結するかなと思います。なので、チームを動かす熱意と、あとは構造・仕組みにも着目していただけるとよいかなというところです。

引用:“成果を出すチーム”になるための2つの実践的ヒント “メンバーとチームの観察”でわかるリーダーシップの本質(ログミーBusiness)

結局のところ、リーダーシップもマネジメントも、気合いや根性といった精神論ではありません。それは、状況を的確に把握し、役割を設計し、チームの文脈に応じた勝ち筋を見抜いていく、極めて知的な「設計」の技術です。

どちらのスタイルが優れているかを議論するのではなく、状況や人に応じて両者をどう使い分け、どう組み合わせるかを常に考える。その柔軟な思考と、決断したことを実行に移す力、すなわち実装力こそが、今の時代のリーダーとマネージャーに求められる最も重要な資質と言えるでしょう。

「どう向き合ったら成果につながるのか?」という問いを常に自身に投げかけ、現実と向き合い続ける姿勢が、すべての始まりなのです。

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