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静かな退職(全1記事)

静かな退職とは? 現場で起きている実態と企業が取るべき対応策 [2/2]

無理にモチベーションを上げようとしない「共存戦略」という視点

「静かな退職」という現象に直面した時、多くの企業はそれを「悪」と捉え、いかに排除するか、あるいは意欲のない従業員のモチベーションをいかに向上させるかという点に注力しがちです。

しかし、価値観が多様化する現代においては、異なるアプローチが求められます。それが、「静かな退職」を完全に排除するのではなく、組織全体のバランスを保ちながら共存し、適切に活用していくという「共存戦略」です。

この戦略には、3つの基本原則があります。

1. 多様性の受容
従業員一人ひとりの働き方や価値観、考え方の違いを認め、受け入れることが出発点です。すべての従業員に高いエンゲージメントを求めるのではなく、多様な働き方を許容する組織文化を醸成します。

2. 最低基準の確保
多様性を受容する一方で、組織に属する以上、守るべき最低限のラインを設定します。業務の品質、求められる成果、行動規範など、「これだけは担保してほしい」というボーダーラインを明確にすることで、組織としての規律を保ちます。

3. 全体最適の追求
多様な価値観を持つ従業員が集まる中で、組織全体のパフォーマンスを最大化するにはどうすればよいか、という視点を持ちます。適材適所の考え方に基づき、それぞれの特性を活かせる役割分担を模索します。

例えば、組織の理想的な構成バランスとして「高エンゲージメント層(牽引役):30%」「中程度エンゲージメント層(安定層):50%」「静かな退職層(基盤層):20%」といった比率を許容することも一つの考え方です。

その上で、高エンゲージメント層にはイノベーションの創出や組織変革といった創造的な役割を、静かな退職層には基幹業務の安定遂行や品質管理、ノウハウの蓄積といった、組織の土台を支える役割を任せることで、全体最適を図ることができます。

このような共存を前提としたマネジメントにおいては、特に静かな退職者への接し方が重要になります。株式会社PDCAの学校の中山拓哉氏は、推奨される行動と非推奨の行動を次のようにまとめています。
静かな退職者に対する具体的なマネジメントとして推奨するのは、明確な業務指示と期待値を設定する。「最低限でいいや」になってしまっているので、具体的に「これはお願いしますね」というところは、組織に属している以上、指示・命令を出していただく。

定期的な業務確認とフィードバック。ハイパフォーマーはわざわざ事細かに確認せずとも勝手にPDCAを回して、どんどん業務は進められるかなと思います。ただ、進捗がきちんとうまくいっているのか、順調に進んでいるのか、最低限を下回っていないかといった確認も含めて、定期的な業務確認やフィードバックも重要になってきます。最後のポイントとしては、価値観を尊重してあげるということですね。

非推奨としましては、無理くりモチベーションを上げようとしないことです。「自分の考えそのものを否定されてしまった」という感覚に陥りかねないので、無理くり上げようとはしない。(中略)

あと、これは静かな退職者に対するマネジメントに限らないんですけれども、従業員との比較・競争ですね。ふだんのマネジメントでもしていただきたくはないんですが、「なんでAさんはできているのに、あなたはできていないの?」というのはメンツが潰れてしまうので、基本的には比較はしない。

価値観の否定というのは考えの否定になりますので、極論、最終的には人格否定につながってしまう可能性がありますので注意が必要でございます。

引用:職場にいる“静かな退職者”と共存するための3原則 適切な仕事の与え方とマネジメントのポイント(ログミーBusiness)

静かな退職者を無理に変えようとするのではなく、彼らの価値観を尊重しつつ、明確な役割と期待値を設定し、淡々と業務を遂行してもらう。このような冷静なマネジメントこそが、多様な人材が共存する組織を健全に運営するための鍵となるのです。

転職や昇格で迷わないための「やる気の源泉」を見つける方法

組織が「静かな退職」にどう向き合うかを考える一方で、従業員一人ひとりが自身のキャリアとモチベーションをどうマネジメントしていくかという視点も極めて重要です。特に、漠然としたキャリアへの不安や仕事へのむなしさを感じている時、その解決策を転職や起業といった環境の変化にのみ求めてしまうと、「やりたいことジプシー」に陥る危険性があります。

「やりたいことジプシー」とは、表面的な「やりたいこと」に次々と飛びつくものの、どれも長続きせず、結果として「自分には何もない」という自己肯定感の低下を招いてしまう状態です。

これを避けるために提案したいのが、「やりたいこと」そのものを探すのではなく、自分を突き動かす根本的な「やる気の源泉」を見つけるというアプローチです。この源泉は「ディープドライバー」とも呼ばれ、個人の内面にある、変わることのない動機を指します。

「やりたいこと」は、年齢や環境、人との出会いによって変化する「地図」のようなものです。行き先は変わっても問題ありません。一方、「やる気の源泉」は、常に自分の方向性を示してくれる「コンパス」です。

例えば、「新しいことを学ぶ」「挑戦する」「人に影響を与える」「うまくいくパターンを作る」といった動詞で表現されるこのコンパスを自分の中に持っておくことで、人生のさまざまな局面で迷いにくくなります。

この「やる気の源泉」を明確にすることで、環境を変えなくても、今の仕事の中でモチベーションを再燃させることが可能になります。

例えば、「うまくいくパターンを作る」ことが源泉である人ならば、営業職でも品質保証でも、あるいは管理職でも、その役割の中で「うまくいくパターン」を見つけ出し、実践することでやりがいを感じられるはずです。

また、キャリアを考える上で有名な「WILL・CAN・MUST」のフレームワークも、自己理解を深める上で有効です。

・WILL ・・・ 自分がやりたいこと
・CAN ・・・ 自分ができること
・MUST ・・・ 自分が求められていること、やるべきこと

仕事の基本は、まず「MUST(求められること)」に応え、組織や顧客に対して価値を提供することです。やりたいかどうかはいったん横に置き、やるべきことを淡々とこなし、できないのであればできるように努力する。

この土台があって初めて、自分の「WILL(やりたいこと)」や「CAN(できること)」を広げていくことができます。最終的にこの3つの円が重なる部分が、いわゆる天職と言えるでしょう。

しかし、いきなりそこを目指すのではなく、まずは自己を理解し、自分の「やる気の源泉」や「WILL・CAN・MUST」の現在地を把握することが、キャリアの迷いを断ち切るための第一歩となるのです。

長く働きたいと思える職場を作るための上司の関わり方

組織として「静かな退職」の蔓延を防ぎ、従業員が意欲的に働き続けられる環境を構築するためには、現場の管理職の役割が決定的に重要です。制度や仕組みの整備ももちろん大切ですが、日々の業務の中で従業員のエンゲージメントを左右するのは、直属の上司との関わり方である場合が非常に多いからです。

株式会社PDCAの学校の宮地尚貴氏は、記事「若手が『長く働きたい』と思える職場の3つの要素 データから見る、部下を伸ばす関わり方」の中で、若手社員に「今の会社で長く働きたいと思いますか?」と質問したところ、「はい」と答えた人の理由として、「やりがい」「自己成長」「上司との関係性」という3つの要素に集約される傾向があったと語っています。

この結果は、上司の接し方次第で、部下のやりがいや成長実感を育むことが可能であることを示唆しています。たとえキャリアパス設計や評価制度が十分に整っていない中小企業であっても、上司が部下一人ひとりに真摯に向き合うことで、若手の定着を図ることは十分に可能なのです。

一方で、「いいえ」と答えた人の理由には、「上司を尊敬できない」「上司が高圧的」「上司の愚痴が多い」といった、上司に対するネガティブな意見が目立ちました。若手社員は、無意識のうちに上司の姿を自身の将来像と重ね合わせる傾向があります。

そのため、尊敬できない上司の下で働くことは、自身のキャリアへの希望を失わせ、離職を考える大きな要因となり得ます。

では、部下から「この上司と働きたい」と思われるためには、何が必要なのでしょうか。上司との相性が「合う」と回答した若手の理由を分析すると、その答えが見えてきます。
「合う」と回答いただいている若手の方の理由です。「わからないことがあればすぐ教えてもらえる」「親身に話になってくれたり、悩みを聞いてくれる」「話を聞いてくれる」「目的、目標を提示してくれる」。

あとは、「仕事の進め方に共感できる」「上司と2人で話す場を積極的に設けてくれる」「忙しいのにもかかわらず丁寧に質問に答えてもらえる」「明るく話してくれる」「わからないところを聞いても嫌な顔1つしない」。この中で、相性の話をしているのというのが、おそらくこの「仕事の進め方に対する考え方に共感できる部分がある」。ここは、相性的なお話なんじゃないかなと思います。

それ以外の理由が、人間性だとか、タイプが合うというよりは、親身になって教えてくれるとか、コミュニケーション頻度が多いとか、感謝しているからなんとなく相性が合うみたいな、そんな回答になっているのかなと思っております。

なので、相性うんぬんではなくて、コミュニケーションが取れているか取れていないかが結果として出ているんだろうなと。

引用:若手が「長く働きたい」と思える職場の3つの要素 データから見る、部下を伸ばす関わり方(ログミーBusiness)

この分析が示すように、部下が上司との相性を「良い」と感じるかどうかは、性格的な相性以上に、上司が部下に対してどれだけ関心を持ち、コミュニケーションの機会を設けているかにかかっています。「忙しいのに丁寧に教えてくれる」「親身に話を聞いてくれる」「定期的に声をかけてくれる」といった具体的な行動が、部下の安心感と信頼を育むのです。

特別なスキルは必要ありません。まずは部下に関心を持ち、「今、困っていることはないか」と声をかける。そうした日々の地道な関わりこそが、部下の成長を促し、静かな退職を防ぎ、ひいては組織全体の活力を生み出すための一歩となるでしょう。

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