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権限委譲(全1記事)

権限委譲とは? 丸投げとの違い・失敗しないために乗り越えるべき壁・進め方の5ステップを解説 [2/2]

権限委譲を成功に導く「5つの実践プロセス」

権限委譲は、単に仕事を割り振る行為ではなく、部下の成長と組織の成果を最大化するための体系的なプロセスです。以下の5つのステップを意識して進めることで、その効果を確実に高めることができます。

権限委譲のステップ1 目的とゴールの共有

まず、「なぜこの業務を委譲するのか」という目的と、目指すべきゴールを部下と徹底的にすり合わせます。権限委譲の主な目的は、部下の成長支援と組織の生産性向上です。この目的を最初に共有することで、「仕事を丸投げされた」といった部下の誤解を防ぎ、モチベーションの低下を回避します。

また、業務のゴール(目標)を具体的に示すことで、部下は何を基準に計画を立て、行動すればよいのかが明確になります。このゴールの認識がずれていると、期待とは異なる方向に労力が費やされ、双方の不満につながるため、極めて重要なステップです。

権限委譲のステップ2 権限範囲の明確化

次に、委譲する権限の範囲を具体的に共有します。「ここまではあなたの判断で進めて良い」「このラインを超えたら必ず相談してほしい」といった線引きを明確に定めます。これにより、部下はどこまでが自分の裁量なのかを理解し、安心して意思決定を行えるようになります。

権限の範囲が曖昧なままでは、部下は判断に迷い、結局は上司に都度確認することになり、権限委譲のメリットである意思決定の迅速化が損なわれてしまいます。

権限委譲のステップ3 実行支援とリソース提供

仕事を任せた後は、「あとはよろしく」と放置するのではなく、部下が業務を遂行するために必要な支援を行います。例えば、関連部署のキーパーソンを紹介しておく、必要な情報やデータへのアクセス権限を付与するなど、上司が事前に障壁を取り除いておくことが重要です。

他部署との調整が必要な場合は、上司が根回しをすることで、部下はスムーズに業務を進めることができます。これは「お膳立て」であり、部下が能力を最大限に発揮できる環境を整えるリーダーの役割です。

権限委譲のステップ4 状況把握と適切なサポート

権限委譲後も、上司は業務の進捗状況を定期的に把握する必要があります。ただし、これはマイクロマネジメントとは異なります。部下のやり方を尊重しつつ、進捗を確認し、困っていることがないかを見守る姿勢が大切です。

部下から相談があった際には、すぐに答えを与えるのではなく、解決策のヒントを提示するなど、部下自身が考えることを促すようなサポートを心がけます。部下が相談しやすい雰囲気を作ることも、このステップでは重要です。

権限委譲のステップ5 フィードバックによる内省と成長促進

業務が一通り完了したら、必ずフィードバックの機会を設けます。良かった点、改善すべき点を具体的に伝え、なぜそう評価するのか理由も添えます。特に、改善点については、部下自身が次につながる学びを得られるよう、建設的なアドバイスをすることが重要です。

このフィードバックを通じて、部下は自身の行動を振り返り(内省)、次の成功に向けたモチベーションを高めることができます。権限委譲は、このフィードバックのサイクルを回すことで、初めて育成として完結するのです。

組織の成長に合わせたマネジメントの進化

権限委譲は、一度行えば終わりという静的なものではなく、組織の成長段階に応じてその在り方を進化させていくべき動的なプロセスです。特に、従業員数が10人、30人、100人といった節目を迎える時、組織は質的な変化を求められ、マネジメント手法の見直しが不可欠となります。

経営学者のラリー・E・グライナーが提唱した組織成長モデルは、この進化の過程を理解する上で非常に示唆に富んでいます。

このモデルによれば、権限委譲には大きく分けて4つの段階的なステップが存在します。

権限委譲の第1ステップ 行動による管理

組織が小規模で、リーダーが全メンバーを直接見られる段階を超えると、最初の権限委譲が必要になります。この段階では、「やってほしいこと」を1から10まで行動レベルで規定し、そのマニュアル通りに実行させる管理方法が有効です。

管理職は、メンバーが規定の行動を遵守しているかをチェックする役割を担います。これにより、品質を担保しつつ、組織を運営することが可能になります。

権限委譲の第2ステップ 結果による管理

「行動による管理」が徹底されると、メンバーがマニュアルに頼りきりになり、自律的に考えなくなる「自立の危機」が訪れます。これを乗り越えるため、次の段階では「結果による管理」へと移行します。

ここでは、ゴール(目標)だけを明確に設定し、そこに至るプロセスや手法はメンバーの裁量に任せます。いわゆる「自由と自己責任」のスタイルであり、成果に応じたインセンティブ制度とセットで導入されることが多くあります。

しかし、多くの急成長企業では、第1ステップを飛ばして、いきなり第2ステップを導入しようとして失敗します。株式会社人材研究所 代表取締役社長の曽和利光氏は、この問題について次のように指摘しています。
人間は「ゴールさえ与えて自由にしておけば、自発性やクリエイティビティを発揮して、いろいろ動くか?」っていうと、プロやベテランだったらそうなることもありますが、若い人であればあるほど「自由にやっていいよ」って言われると足が止まるだけなんですよね。(中略)

結局、みんな嫌かもしれないし、社会的には望ましくないかもしれないのですがやはり、第1ステップの「行動を1から10まで指示された上で、あとはもう勝手にやって」を経験せずに、第2ステップに早くいきすぎると、足が止まるだけで権限委譲が機能しない。ただ単に「無茶振りをしただけで終わる」っていう状況が訪れたりするんですよね。

引用:部下に権限を与えたつもりが、単なる“無茶振り”で終わる問題 「理想的な権限委譲」のため、飛び越えるべきでない4つの段階(ログミーBusiness)

権限委譲の第3ステップ 計画による管理

「結果による管理」が進むと、今度は各メンバーが自身の目標達成のみを追求する「部分最適」に陥り、「全体最適」が失われるという問題が生じます。この問題を解決するのが「計画による管理」です。

実行前にメンバーから計画を提出させ、経営層が全体最適の観点からリソース配分などを調整します。これにより、組織としての一体感を保ちながら、個々の自律性を尊重することが可能になります。

権限委譲の第4ステップ 文化による管理

最終段階は、「文化による管理」です。企業のミッション・ビジョン・バリューといった理念や価値観を組織全体で深く共有し、それを判断基準としてメンバーが自律的に行動する状態を目指します。これは最も高度な権限委譲のかたちであり、創造性を最大限に引き出すことができます。

重要なのは、これらのステップを順番に踏んでいくことです。組織とメンバーの成熟度を見極めずにステップを飛ばしてしまうと、権限委譲は機能不全に陥ります。自社の現在のフェーズを正しく認識し、適切なマネジメント手法を選択・進化させていく視点がリーダーには求められます。

「失敗しても大丈夫」と思える心理的安全性の醸成

権限委譲を機能させる上で、制度やプロセスと同じくらい重要なのが、部下が安心して挑戦できる組織文化、すなわち「心理的安全性」の確保です。部下が「失敗したらどうしよう」「怒られるのではないか」という恐れを抱いている状態では、せっかく権限を委譲しても、リスクを避ける消極的な行動しか生まれません。

部下の挑戦を促すためには、心理学でいう「効力期待」と「結果期待」を高めるアプローチが有効です。「効力期待」とは、「自分ならこの仕事をやり遂げられそうだ」という自信のことです。「結果期待」とは、「この仕事をやれば、たとえうまくいかなくても、自分にとって良い結果(学びや成長)につながるだろう」という見通しのことです。

この2つの期待感を育むことが、リーダーの重要な役割となります。まず、「効力期待」を高めるためには、いきなり高いハードルを課すのではなく、部下の現在の能力よりも少しだけストレッチした業務から任せることが大切です。小さな成功体験を積み重ねさせることで、部下は「自分にもできる」という自信(効力期待)を育んでいきます。

そして、「結果期待」を高める鍵は、失敗に対する組織の捉え方にあります。「失敗は許されない」という文化では、部下は挑戦をためらいます。逆に「失敗は学びの機会である」「挑戦すること自体に価値がある」という文化が醸成されていれば、部下は失敗を恐れず、前向きに業務に取り組むことができます。

この文化を作るために、リーダー自身が「70点主義」を持つことも有効です。100点満点の完璧な成果を求めるのではなく、「70点で十分。残りの30点は、部下が成長するための投資だ」と考えるのです。取り返しのつかない失敗(会社の信頼失墜や顧客への深刻なダメージ)は避けるべきですが、ほとんどの仕事上の失敗は、改善につながる貴重な「投資」と捉えることができます。

また、リーダーが自身の失敗談や、そこから得た学びを積極的にメンバーに共有することも、リスクを許容する文化の醸成につながります。リーダーが率先して失敗をオープンに語ることで、「この組織では失敗しても大丈夫なんだ」という安心感が広がり、メンバーはより積極的に権限を行使し、挑戦するようになります。

権限委譲は、このような心理的安全性が確保された土壌の上でこそ、真の力を発揮するのです。

権限委譲が拓く、マネージャー自身の新たなキャリア

権限委譲は、部下の育成や組織の生産性向上のためだけに行うものではありません。それは、マネージャー自身の成長とキャリアを新たなステージへと引き上げるための、極めて戦略的な自己投資でもあります。

多くのマネージャー、特にプレイングマネージャーは、日々の業務に追われ、自身の能力開発に時間を割けないという悩みを抱えています。しかし、権限委譲をうまく活用すれば、この状況を打破することが可能です。

これまで自身がプレイヤーとして担ってきた業務を棚卸しし、その一部を部下に委譲することで、新たな時間を創出できます。その空いた時間を使って、マネージャーはより付加価値の高い、本来注力すべき業務に取り組むことができるようになります。例えば、部署の戦略立案、新たなイノベーションの模索、組織全体の仕組み作りなど、より経営に近い視点での仕事に集中できるようになるのです。

部下に仕事を任せること、特に「自分がいなくても回る組織」を作ることは、一見すると自身の存在価値を脅かすように感じられ、怖いことかもしれません。しかし、これは大きな誤解です。株式会社人材研究所 代表取締役社長の曽和利光氏は、この点について逆説的ながらも本質的な視点を提供しています。
むしろ「自分がいなくても回る組織を作れる人」こそが、究極的に最も優秀な人なんじゃないか? と思うわけです。

一番いいのは「このリーダーは『自分がいなくても回る組織』を作れたんだから、今度はさらに上の仕事をやらせてみるか」とか「ちょっと新しいことを挑戦させてみるか」と言って、さらに上から(そのリーダーに)権限が回ってくるというんですか。

逆説的なんですけど「部下に権限委譲すれば、自分にも(もっと上から)権限委譲される」みたいな仕組みもあるわけですよね。

だから「無責任な権限委譲」になっちゃ駄目ですけれど、部下を見ながら「適切な権限委譲」を行って、最終的には「自分がいなくても回る組織」を作る。これって怖いことですけどね。(中略)

でも、そこは恐れることなくて。「自分がいなくも回る組織を作れる人」というのは、会社が手放すわけないぐらい優秀な人ですから。勇気を持って権限委譲を行っていくことで、もっと高みの新たな権限を自分が委譲されていく。

引用:「自分が不在でも回る組織」を作れる人こそ、究極的に最も優秀 部下への“勇気ある権限委譲”が導く、更なるキャリアの高み(ログミーBusiness)

「余人をもって代えがたい」存在になることは、組織の継続性という観点ではリスクです。真に評価されるべきは、仕組みによって成果を生み出し、次世代のリーダーを育成できるマネージャーです。

育休取得をきっかけにメンバーへの権限委譲が進み、結果として組織力が底上げされたという事例もあるように、リーダーの不在が強制的にメンバーの成長を促し、組織を次のステージに引き上げることもあります。

勇気を持って権限委譲を行い、部下と組織を成長させることができるリーダーには、必ず会社からの信頼と、より大きな責任と権限が与えられます。権限委譲は、部下を育て、組織を強くし、そして何よりマネージャー自身のキャリアをより高みへと導くための、最も確かな道筋なのです。

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