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ロジカルシンキング(全1記事)

ロジカルシンキング(論理的思考法)とは? AI時代に差がつく思考の鍛え方 [2/2]

問題解決能力を高める思考プロセス

ロジカルシンキングがビジネスパーソンにとって必須のスキルとされる最大の理由の1つは、その問題解決能力への直接的な貢献にあります。物事の因果関係を正確に捉え、体系的に整理する思考法は、複雑な問題の構造を解き明かし、的確な解決策を見出すための強力な羅針盤となるからです。

ロジカルシンキングを活用した問題解決は、一般的に以下のような一連のプロセスをたどります。

1. 問題の明確化
まず、解決すべき問題や課題、達成すべき目標を具体的に定義します。「何をもって成功とするか」を定めるこの最初のステップが、その後のすべての活動の方向性を決定づけます。

2. 情報の収集と分析
問題に関連する事実、データ、統計、専門知識などを多角的に収集します。そして、集めた情報を構造化し、要素間の関係性やパターンを分析することで、問題の本質に迫ります。

3. 仮説の策定と検証
分析結果に基づいて、「この問題の根本原因はこれではないか」「この施策を実行すれば解決できるのではないか」といった仮説を立てます。仮説は思いつきであってはならず、データによる裏付けがその説得力を担保します。そして、その仮説の妥当性や実行可能性を検証し、最も効果的な解決策を選択します。

4. 実行と評価
策定した解決策を実行に移します。実行後はその結果を客観的に評価し、目標の達成度や効果を検証します。ここで得られた反省点や改善点を、次の問題解決に活かしていくのです。

この問題解決のプロセスを考える上で、問題には大きく分けて2つの種類があることを理解しておくことが重要です。それは「見えている問題」と「見えていない問題」です。

「見えている問題」とは、すでに発生している具体的な問題や不具合を指します。「売上が目標に未達である」「顧客からのクレームが多発している」「業務ミスが起きた」といった、いわば「発生型」の問題です。

多くの企業で従来行われてきた問題解決研修は、この「見えている問題」をいかに効率的に解決するかに焦点を当ててきました。「What(問題は何か)」「Where(問題が起きているのはどこか)」「Why(なぜ問題が起きているのか)」というフレームワークで原因を特定し、それを除去するというアプローチです。

しかし、この手法には「悪いところ探し」に陥りがちで、組織の強みを伸ばす視点が欠けやすいという限界があります。また、特定した原因が自分たちの手でコントロール不可能な場合、手詰まりになってしまうリスクも抱えています。

一方で、「見えていない問題」とは、現状が特に悪いわけではないものの、あるべき姿やより高い目標との間に存在するギャップを指します。「設定型」の問題とも言われ、「もっと顧客満足度を高めることはできないか」「もっと組織の生産性を向上させられるはずだ」「新たな市場を開拓して成長できるのではないか」といった、未来に向けた成長可能性を探る視点です。

変化の激しい現代において、企業や個人が持続的に成長していくためには、この「見えていない問題」を自ら発見し、課題として設定する能力が極めて重要になります。

そのためには、現状を客観的に構造化した上で、「このまま進むと将来どうなるか?」という未来を想像したり、「そもそも我々の目的は何だったか?」と原点に立ち返ったり、「我々が無意識に囚われている前提はないか?」と自らを疑ったりする、より深く、本質的な問いと向き合う必要があるのです。

何を問題として捉えるか、その「論点設定」の質こそが、これからのリーダーに求められる核心的な能力と言えるでしょう。

説得力を高め、円滑なコミュニケーションを実現する

ロジカルシンキングは、個人の思考を深めるだけでなく、他者とのコミュニケーションを円滑にし、その質を劇的に向上させる効果を持ちます。ビジネスにおける多くの問題は、コミュニケーションの齟齬から生じると言っても過言ではありません。論理的に考え、伝える力を鍛えることは、組織全体のパフォーマンスを高める上で不可欠な要素です。

コミュニケーション能力は、大きく「伝える力」と「聴く力」に分けられますが、ロジカルシンキングは両方の能力を同時に向上させます。なぜなら、論理とは「話の筋道」そのものであり、筋道の通った話は、伝える側にとっては整理しやすく、聞く側にとっては理解しやすいからです。

では、なぜ私たちの話は相手にうまく伝わらないのでしょうか。その原因は主に3つ考えられます。

1つ目に、「言葉の曖昧さ」です。「なるべく早く対応します」「しっかり検討します」といった表現は、話し手と聞き手で時間や程度の感覚が異なるため、意図のズレを生みやすくなります。誰が聞いても同じイメージを持てるように、具体的な言葉で表現することが重要です。

2つ目に、「論理の飛躍」です。主張と根拠の間に適切なつながりがなく、「なぜそう言えるのか?」という聞き手の疑問に答えられていない状態です。これでは話に説得力が生まれず、相手を納得させることはできません。

3つ目に、「情報の無秩序さ」です。伝えたい結論、その根拠、補足情報、具体例などが整理されないまま提示されると、聞き手の頭の中は混乱してしまいます。

これらの問題を解決し、わかりやすく説得力のあるコミュニケーションを実現するためには、以下のようなロジカルシンキングに基づいたコツを意識することが有効です。

まず、前述の通り「言葉を具体的にする」こと。「早めに」を「明日の15時までに」と言い換えるだけで、コミュニケーションの精度は格段に上がります。

次に「主張と根拠の骨格を作る」ことです。「私の主張は〜です。なぜなら、その根拠は〜だからです」という基本構造を常に意識することで、論理的で説得力のある説明が可能になります。

そして「結論から話す」習慣を身につけることも極めて重要です。これは「ピラミッドストラクチャー」のトップダウンアプローチを実践するもので、まず最も伝えたい結論を提示し、その後に詳細な根拠や具体例を述べることで、聞き手は話の全体像をつかみやすくなり、集中力を維持しやすくなります。

さらに、ビジネス数学教育家の深沢真太郎氏は、「一言で言うと何か?」「一行で表現すると何か?」「一分で話すとしたらどんな構成か?」という「ワン・ワン・ワン」の準備を推奨しています。この訓練を繰り返すことで、思考が整理され、話の内容がクリアになります。
3つ目の方法は「本質的な問いを押さえる」ことです。今、自分が取り組んでいるこの業務は、具体的にどのような課題を解決するためのものなのか、本質的な問いを常に押さえ続けることを意識してみてください。この本質的な問いをしっかりと押さえられず、結果的に仕事が効率的に進まないという例は多くあります。

問いを押さえるためのコツを2つ紹介します。1つ目は「問いを分解する」ことです。例えばみなさんが人事担当者だったとして、上司から「グローバル人材の育成施策を検討してほしい」と言われたとします。

このままの状態だと、問いが漠然としすぎて、何から考えて良いかわかりません。グローバル人材といっても「どんな人材を」「いつまでに」「何人程度」「どれくらいの予算を掛けて」といったように、検討すべき問いを分解してみてください。そうすることで本質的な問いにグッと近づくことができます。

2つ目のコツは「問いの背景を確認する」ことです。問いの背景には、どのような課題があるのか、どういった経緯でこの問いが出てきたのか。こういったことをきちんと把握することも重要です。

引用:言いたいことが相手に伝わらないのは理由がある 説得力がグンと増す、論理的思考力を鍛える4つの方法(ログミーBusiness)

「クリティカルシンキング」と「ゼロベース思考」

ロジカルシンキングは非常に強力な思考ツールですが、決して万能ではありません。その限界を理解し、陥りがちな思考の落とし穴を認識しておくことは、より精度の高い意思決定を行う上で不可欠です。

ロジカルシンキングを過信し、その弱点を補う思考法を怠ると、かえって大きな判断ミスを犯す危険性すらあります。

最大の注意点は、「前提の罠」です。ロジカルシンキングは、あくまで設定された前提の上で論理を組み立てる手法です。そのため、たとえ論理展開が完璧であっても、その出発点となる前提(事実認識や適用するルール)が間違っていれば、導き出される結論も必然的に誤ったものになります。

例えば、ある役員が現場の情報を十分に収集せず、偏ったデータに基づいてロジックを組み立てた結果、どの事業を担当しても業績を悪化させてしまうという事例があります。これは、論理的思考力自体が欠如しているのではなく、インプットとなる情報の質、すなわち「前提」に問題がある典型例です。また、現在は正しいとされている前提も、市場環境の変化などによって将来的には変わる可能性があることを常に念頭に置く必要があります。

次に、「バイアスの罠」です。人間は誰しも、無意識のうちに思考の偏り、すなわち「バイアス」を持っています。代表的なものに、自分の信念や仮説を支持する情報ばかりに注目し、それに反する情報を無視してしまう「確証バイアス」や、「好き・嫌い」といった感情に流されて冷静な判断ができなくなる「感情的判断」などがあります。これらのバイアスに気づかずにいると、客観的な分析を妨げ、誤った結論へと誘導されてしまいます。

これらの思考の落とし穴を回避するために、ロジカルシンキングを補完する2つの思考法が重要となります。

1つ目は、「クリティカルシンキング(批判的思考)」です。これは、物事を無批判に受け入れるのではなく、常に「本当にそうか?」「常識を疑う」「別の視点はないか?」といった批判的な問いを立てる思考法です。ロジカルシンキングによって導き出された結論や、その土台となっている前提そのものに対して、この批判的な視点を向けることで、思考の偏りや見落としを防ぎ、より客観的で頑健な結論にたどり着くことができます。

ロジカルシンキングとクリティカルシンキングは対立するものではなく、両者を組み合わせることで、より効果的な問題解決や意思決定が可能となる、相互補完的な関係にあります。

2つ目は、「ゼロベース思考」です。これは、既存の常識、過去の成功体験、組織の慣習といったあらゆる制約や思い込みを一度すべて取り払い、「白紙(ゼロベース)」の状態から物事を考える姿勢を指します。「前例がないからできない」「うちの会社では無理だ」と考えるのではなく、「どうすればできるのか」を純粋に追求することで、従来の延長線上にはない、革新的なアイデアや解決策を生み出す源泉となります。

ロジカルシンキングは、あくまで目的を達成するための手段です。論理の正しさだけを追求し、人を動かす際には相手の感情への配慮を欠いてしまうと、かえって人間関係をこじらせることもあります。論理と感情のバランスをとり、これらの補完的な思考法を使いこなすことが、真に賢明な判断を下すために求められるのです。

AI時代にこそ輝く、人間ならではの思考力を鍛える

ロジカルシンキングは、一部の才能ある人だけが持つ特殊能力ではなく、適切なトレーニングによって誰もが後天的に習得し、向上させることができるスキルです。日々の業務や生活の中で意識的に実践を繰り返すことが、思考力を鍛える最も効果的な方法と言えるでしょう。

具体的なトレーニング方法としては、以下のようなものが挙げられます。

・仮説思考を習慣化する
日常で起こるあらゆる事象に対して、「なぜこうなっているのだろう?」「もしこうしたら、どうなるだろう?」と常に自分なりの仮説を立てる癖をつけます。闇雲に考えるのではなく、仮説という軸を持つことで、思考がシャープになります。

・セルフディベートを行う
一つのテーマについて、あえて賛成と反対、両方の立場から論理を組み立ててみる訓練です。物事を多角的に見る力が養われ、自分の思考の偏りに気づくきっかけにもなります。

・フェルミ推定に挑戦する
「日本全国にあるマンホールの数は?」といった、正確なデータがない問いに対して、既知の情報を基に論理を積み重ねて概算値を導き出す思考実験です。論理的思考力、仮説構築力、計算力を同時に鍛えることができます。

・「So What? / Why So?」を繰り返す
収集した事実やデータに対して「So What?(だから、何が言えるのか?)」と問い、その本質的な意味合いや結論を抽出します。そして、導き出した結論に対して「Why So?(なぜ、そう言えるのか?)」と問い、その根拠の妥当性を検証します。この2つの問いを繰り返すことで、論理の飛躍がなくなり、思考が深まります。

近年、生成AIの進化は目覚ましく、論理的な文章の生成や情報の構造化といったタスクを得意としています。では、AIが代行してくれるのなら、人間がロジカルシンキングを鍛える必要はなくなるのでしょうか。答えは明確に「いいえ」です。むしろ、AI時代だからこそ、人間ならではの思考力の価値は一層高まると考えられます。

AI時代に人間に求められる思考力には、大きく2つの価値があります。1つは「瞬発力(即興性)」です。会議でのディスカッションや顧客との対話といったリアルタイムの場面で、その場で出てきた情報や相手の発言を瞬時に構造化し、的確な応答や提案を行う能力は、AIには真似のできない人間特有の価値です。

もう1つは「審美眼」です。AIが生成したアウトプットが、本当に目的に合っているのか、その論理構造に違和感はないか、より良い代替案はないかといった品質を判断する力です。この「審美眼」を養うためには、自分自身が構造化のスキルを持っていることが大前提となります。

最後に、思考力は脳だけの働きではないことを理解しておくことも重要です。強いストレスは、創造性や論理的思考を司る脳の前頭前野の働きを弱めることが科学的に知られています。高いパフォーマンスを発揮するためには、十分な睡眠や栄養といった「身体的安全性」と、他者からの批判を恐れずに発言できる「心理的安全性」が確保された環境が不可欠です。

心身のコンディションを整えることもまた、思考力を鍛える上での重要な要素なのです。
だからデザインセンスもまったく一緒で、初めのうちはルール通りやっていくレシピがあるんですけれど、レシピを何回も何回も繰り返して再現しているうちに、そのうち別にレシピなんか見なくても作れるようになるのがデザインなんですよ。まったく一緒です。ただ練習すれば才能なんか要らないっていうのが、デザインセンスに言えることです。(中略)

デザインっていうのは「特定の反応を引き出すための仕掛け」なんですよ。これに流行り廃りなんかないんです。人間心理なんて流行で変わらないですよね。(中略)

みなさんに自分がよくお伝えしているのは基本的に変わらない、人間心理に基づくデザインのルール。なのでみなさんも、やっぱりこの本に書いてある内容ですけれど、そういった時代によって変わらないものを覚えるほうに脳みそのスイッチを変えてもらうと、稼ぎ続けられますし、結果を出し続けられるって言えるかなと思います。

引用:「デザインセンス」は才能ではなく「ロジカルシンキング」と同じ 「結果を出し続けられるデザイン」を身につけるために解くべき5つの誤解(ログミーBusiness)

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