【3行要約】
・効果的なタスクマネジメントは注目されているものの、頭の中だけの管理では抜け漏れや優先順位ミスが起きがちです。
・マッキンゼー出身の田中直道氏らが提唱する手法では、チームにおけるタスクマネジメントではリスペクトに基づくコミュニケーションが成果向上のカギとされています。
・洗い出しから優先順位付け、手順書活用、振り返り習慣まで、体系的なアプローチでタスクマネジメントを見直しましょう。
タスクマネジメントの手順
タスクマネジメントを実践する上で、最初のステップとなるのが、自身が抱えるタスクをすべて洗い出し、それに優先順位をつけることです。頭の中だけで管理しようとすると、作業の抜け漏れや、本来優先すべきでないタスクに時間を費やしてしまうといった事態に陥ってしまうことも少なくありません。
まずは、大小かかわらず「やるべきこと」をリストアップし、業務の全体像を可視化することが重要です。このプロセスを経ることで、自分がどれだけの業務を抱えているかを客観的に把握できます。
その上で、各タスクの重要度や緊急度を評価し、着手すべき順番を決定します。例えば、新規営業と既存顧客への対応というタスクがある場合、多くの人は断られることの多い新規営業から逃げ、比較的楽な既存顧客の対応に時間を使いがちです。しかし、本当に重要なのはどちらなのかを冷静に判断し、大変なことから先に手をつける意識が求められます。
株式会社QUESTO代表の黒田剛氏は、新規のPRを毎日10件行うという大変なタスクを自分に課し、発送作業のような他の人に任せられる業務は依頼することで、自身にしかできない重要なタスクに集中していると述べています。このように、自分にしかできないこと、そして目標達成のために不可欠なことを優先する姿勢が、成果を上げるためのカギとなります。
また、上司から「これやっといて」「なる早で」といった曖昧な指示を受けた際にも、優先順位の確認は不可欠です。自分が抱えている他のタスクを提示し、「今しがたいただいた仕事とどっちを優先すればいいでしょうか?」と相談することで、優先順位の判断ミスを防ぎ、自分自身の責任を軽減することにもつながります。
具体的なタスク管理方法
タスクの洗い出しと優先順位付けができたら、次にそれらを具体的な管理手法に落とし込んでいきます。特に有効なのが「手順書」と「ToDoリスト」の活用です。まず、一つひとつの仕事に対して手順書を作成することは、タスク管理において非常に強力な武器となります。
作家のF太氏が推奨するように、手順書を作る過程で、その仕事に関連する固有名詞が明確になり、頭の中が整理されます。これにより、後でその仕事について他者と会話する際に、必要な言葉が自然に出てきやすくなり、コミュニケーションが円滑になるのです。
また、手順書は上司とのコミュニケーションツールとしても機能します。例えば、新たな仕事を依頼された際に手順書を見せながら、「今、私が抱えている仕事はこれだけあります」と現状を共有し、優先順位を相談することができます。これにより、上司に自身の業務量を正しく認識してもらえるだけでなく、優先順位の判断ミスによる責任を1人で抱え込むリスクを回避できます。
手順書を作成することは、仕事を効率化するだけでなく、自分自身を守る行為にもつながるのです。
一方で、日々のタスク管理にはToDoリストが欠かせません。
株式会社QUESTO代表の黒田剛氏は、前日の夜に翌日の行動をすべて書き出すノート術を実践しています。その特徴は、「トイレに行く」「歯を磨く」といった日常の当たり前の行動まで細かく書き出し、完了したら消していく点にあります。
この行為を通じて、自分が当たり前に行っていることを意識化し、タスクの先延ばしを防ぐ効果があると言います。前日にリストを作成することで、頭の中で翌日のシミュレーションが完了し、当日はスムーズに行動できるのです。
チームでタスクを円滑に進めるためのコミュニケーション術
タスクマネジメントは個人の作業管理に留まらず、チームで業務を進める上では他者との円滑なコミュニケーションが不可欠です。特にマネージャーやリーダーの立場にある人は、メンバーへのタスクの渡し方1つで、その後の遂行度やメンバーのモチベーションが大きく変わることを認識しなければなりません。
その根底にあるべきなのは、相手への「リスペクト」です。ただ「これやって」とタスクだけを投げ渡すのではなく、そのタスクがなぜ必要なのか、会社全体の目標の中でどのような位置づけにあるのかという目的や背景を、丁寧に説明することが重要です。このストーリーを共有することで、メンバーはタスクの意義を理解し、納得感を持って前向きに取り組むことができます。
また、指示を出す際には、相手のスキルや経験レベルを見極め、伝え方を変える配慮も求められます。経験豊富なシニアスタッフであれば、「解約率が上がっているので原因を突き止めたい」といった背景を伝えるだけで自律的に動けるかもしれませんが、ジュニアスタッフには「データベースにアクセスして顧客データを取得し、それを指定した軸で整理し分析を進めてほしい」というように、具体的なプロセスまで詳しく説明する必要があるでしょう。
さらに、タスクを渡す際のコミュニケーションは、メンバーのモチベーションを大きく左右します。株式会社Betterboundの田中直道氏は、タスクの意義づけの重要性を次のように語っています。
また、ジュニアメンバーにタスクを渡す時も、「金額が小さいからやってよ」と伝えるのではなく、「この金額は小さいかもしれないけど、これは中長期的に非常に重要な投資で、今仕込んでおくことで将来的に成長につながる」といった意義付けをして伝えることが必要です。
さらに、場合によっては、「この前の1on1であなたが伸ばしたいと言っていた部分に、このタスクは役立つと思う。一見小さい仕事かもしれないけど、一生懸命やってみてほしい」と伝えることもあります。「短時間でこれをうまく終わらせることが、あなたのこういうスキルを伸ばす上で非常に重要だ」というかたちで、明確な意義を持たせて渡すことが大切です。
引用:マッキンゼー流・メンバーを活かす「タスクの渡し方」 「どのくらい任せていいか」を判断する2つの軸(ログミーBusiness)
このように、相手の成長につながるという視点を加えて伝えることで、一見地味なタスクであっても、本人のやる気を引き出すことが可能になります。
タスクマネジメントにおけるマルチタスクのデメリット
日々の業務に追われる中で、多くのビジネスパーソンが生産性を上げるために試みるのが「マルチタスク」です。しかし、これはタスクマネジメントにおいて逆効果になる可能性があります。
経営学者でYouTuberの中川功一氏によれば、マルチタスクは脳のリソースをそれぞれの作業に分散させてしまい、楽しむための余力を奪うため、一つひとつの仕事がつまらなくなるだけだと指摘しています。結果として、その瞬間に1つのタスクに集中するシングルタスクのほうが、生産性は向上するのです。
タスクを効率的にこなし、新たな時間を創出するためには、無駄な作業を特定し、それを削減するアプローチが有効です。
そのための具体的な方法として、株式会社クロスリバーの越川慎司氏は「金曜日の午後3時に振り返る」習慣を推奨しています。これは、週の終わりにコーヒーでも飲みながら、自身のカレンダーや手帳を振り返るだけのシンプルな行為です。しかし、この「時間の体重計に乗る」習慣によって、良かれと思ってやったものの成果につながらなかった作業や、非効率な会議、無駄な資料作成といった問題点に気づくことができます。
越川氏によると、実際にこの振り返りを導入した企業では、無駄な作業が11パーセント削減されたというデータもあります。調査によれば、ビジネスパーソンの働く時間のうち、社内会議が39パーセント、資料作成が12パーセントを占めており、顧客対応などの本来価値を生むべき活動の時間が圧迫されている実態があります。振り返りを通じて、こうした時間のかかる作業が本当に成果に結びついているのかを検証し、ダイエットすべきタスクを見極めることが、時間を創出するための第1歩となります。例えばPowerPointで7色の派手なグラフを作ることに時間を費やしていないか、会議のための会議を繰り返していないかといった点を自問自答するのです。
なぜ忙しいのかという理由を追究し、無駄を削ぎ落としていく。この地道な作業こそが、残業の沼から抜け出し、より生産的な活動に時間を使うためのカギとなるのです。