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ティール組織(全1記事)

ティール組織とは? 3つの特徴・移行のやり方・日本企業で実践するための注意点などわかりやすく解説 [2/2]

日本企業でティール組織を実践するために

日本でもティール組織の考え方を取り入れた企業が増えてきています。しかし、日本の企業文化や社会構造の中で、ティール組織を実践するには独自の課題があります。

オルビス株式会社のHR本部本部長である岡田悠希氏は、組織文化の重要性について次のように語っています。
実際に働く環境とか文化次第で、パフォーマンスに3割ぐらいの影響を与えるという論文でも出ているので、文化にアプローチしていくのはフォーカスポイントとしてありだし。

最初の話に戻ると、今後の国内の労働の市況感、トレンドを考えても、ここにアプローチしていくことが重要だと思います。

引用元:働く環境や文化でパフォーマンスに3割もの影響が 社員の力を引き出す組織開発のステップ(ログミーBusiness) 

日本企業がティール組織を実践する際には、日本特有の文化や価値観を考慮する必要があります。例えば、「和」を重んじる文化や、年功序列の考え方などは、ティール組織の自律性や平等性の考え方とは一見相容れない部分もあります。

しかし、これらの文化的背景を理解した上で、日本企業に合ったティール組織のあり方を模索する動きが広がっています。

ティール組織への移行ステップ

既存の組織からティール組織への移行は、一朝一夕にはいきません。段階的なアプローチが必要です。以下に、ティール組織への移行ステップを紹介します。

1. 組織の現状分析

まずは自社の組織がどの段階(レッド、アンバー、オレンジ、グリーン)にあるのかを分析します。組織の特徴や課題を客観的に評価し、ティール組織への移行が適しているかどうかを判断します。

2. ビジョンと目的の明確化

組織の存在目的(パーパス)を明確にし、全メンバーと共有します。パーパスは組織の活動の指針となるものであり、メンバーの自律的な意思決定の基準となります。

3. 情報の透明性確保

意思決定に必要な情報を全メンバーが平等にアクセスできるようにします。情報の透明性は、セルフマネジメントの基盤となる重要な要素です。

4. 意思決定プロセスの再設計

トップダウンの意思決定から、「アドバイスプロセス」などの分散型意思決定へと移行します。アドバイスプロセスとは、意思決定者が関係者からアドバイスを求めた上で、最終的には自らの責任で決定するプロセスです。

5. リーダーシップの再定義

管理者としてのリーダーから、コーチやファシリテーターとしてのリーダーへと役割を転換します。リーダーは指示するのではなく、メンバーの自律性を支援する役割を担います。

英治出版の原田英治氏は、新しいリーダーシップのあり方について次のように述べています。
「シェアド・リーダーシップ」の場合は、チームでリーダーシップをシェアしてみんなで目的に向かっていますから、自分らしいオーセンティックなリーダーシップをみんなでシェアすることができる。

そういう組織と考えると、「このシチュエーショナルリーダーにあなたがなってくれたらいいな」という思いのもと、自分がサーバントリーダーとしてフォローしていったり。「支援をしていくから」というだけではなく、目的をみんなで共有した上で、みんなでリーダーシップをシェアして、みんなで目的に向かっていく。

このシェアド・リーダーシップ型の組織がより美しいというか、よりクリエイティビティが発揮されやすいんじゃないかなと考えるようになりました。

引用元:創造的でワクワクする組織には「余白」がある 自分らしさが発揮される「シェアド・リーダーシップ」のススメ(ログミーBusiness) 


6. 組織構造の見直し

階層構造からチーム単位の自律分散型構造へと再編します。固定的な部門や役職にとらわれず、目的に応じて柔軟にチームを組成できる仕組みを構築します。

7. 評価・報酬制度の再設計

成果だけでなく、プロセスや組織への貢献も評価する新たな制度を導入します。メンバー同士の評価や、自己評価の要素を取り入れることも考えられます。

ティール組織の課題と対応策

ティール組織への移行にはさまざまな課題があります。ここでは、主な課題とその対応策を紹介します。

1. 「何でも自由」と誤解されるリスク

ティール組織は「何でも自由」という誤解を招きやすいですが、実際には明確なルールや秩序があります。この誤解を防ぐために、ティール組織の本質的な考え方や、自律性と責任の関係について丁寧に説明する必要があります。

2. 意思決定の遅延

全員参加型の意思決定は、時間がかかり、迅速な対応が難しくなることがあります。この課題に対しては、「アドバイスプロセス」のような効率的な意思決定方法を導入することが有効です。

3. 責任の所在の不明確さ

自律分散型の組織では、責任の所在が不明確になりがちです。この課題に対しては、役割と責任を明確に定義し、定期的に見直すプロセスを設けることが重要です。

4. 適応の難しさ

すべてのメンバーがティール組織の理念や働き方に適応できるわけではありません。一部のメンバーはより構造化された環境で働くことを好む場合もあります。この課題に対しては、段階的な移行や、多様な働き方の許容が重要です。

面白法人カヤック 代表取締役CEOの柳澤大輔氏は、ティール組織への適用について次のように述べています。
何が言いたいかというと、「染めることができないような気がする」というか、「本質的にティールな人」しかティールに合わないような気がするんですよ。学校を見極めたらあるのかもしれないけど、それが教育からきているかって言われると、そういうことではない感じがしてしまいますね。

あとは、会社という組織でティールで動ける人は結局、会社の価値観の中でティールで動くということだから、やっぱり優秀な人のほうがティールな人になりやすい気がします。

引用元:日本がティール組織に慣れないのは教育のせい? カヤック柳澤氏らが説く「本質的にティールな人・組織」の違い(ログミーBusiness)

5. 日本的な組織文化との相性

日本特有の「和」の文化や集団主義的価値観は、ティール組織の個人の自律性重視の考え方と相容れない部分があります。この課題に対しては、日本の文化的背景を尊重しつつ、ティール組織の理念を取り入れるハイブリッド型のアプローチが有効です。

ティール組織が適している状況と業種

ティール組織はすべての企業に適しているわけではありません。特に以下のような状況や業種において、ティール組織のメリットが発揮されやすいと言われています。

  • 創造性やイノベーションが求められる環境
  • 急速な変化への対応が求められる市場
  • 従業員の専門性や自律性が高い組織
  • 多様な視点や価値観が求められる業務
  • 適している業種
  • IT・テクノロジー業界
  • クリエイティブ産業(デザイン、広告など)
  • 研究開発型の企業
  • サービス業(特に顧客との直接的な接点が多い業種)

一方で、標準化や安定性が重視される製造業や、規制が厳しい金融業、医療業などでは、完全なティール組織への移行は難しい場合もあります。ただし、部分的にティール組織の考え方を取り入れることは可能でしょう。

ティール組織の未来と可能性

ティール組織は、現代の複雑なビジネス環境において、より適応力のある組織モデルとして注目されています。デジタル化やグローバル化の進展により、従来の階層型組織では対応しきれない課題が増えており、ティール組織のような柔軟で自律的な組織形態の重要性は今後も高まっていくと考えられます。

ティール組織ラボ 編集長の嘉村賢州氏は、社員の幸せと組織のあり方について次のように語っています。
嘉村:本当に会社が社員の幸せを考えたら、別に離職率ゼロは目指すべきでもなんでもない。もしそこで応援してあげたら、独立した人は「いや、俺はやりたいことが変わって独立したけど、古巣のあの会社は本当にすばらしくて、お前は前の俺の会社に合っていると思うよ」と、たぶん心から言ってくれる。

坂東:確かに。

嘉村:そうすると会社外に採用担当や営業担当がいっぱいいる感じになる。僕は「組織生態系」と呼んでいますけど。離職率にこだわった狭い組織よりも、ちゃんと応援して広い組織生態系を育むほうが、より豊かな未来が待っているんじゃないかなと思うんです。 

引用元:社員の幸せを考えたら「離職率ゼロ」は目指すべきではない 従来の経営の常識を覆す進化型組織の可能性(ログミーBusiness) 

一方で、ティール組織がすべての組織にとっての答えではないことも認識する必要があります。組織の目的や環境、メンバーの特性などに応じて、最適な組織形態は異なります。重要なのは、組織のあり方を固定的なものとして捉えるのではなく、常に進化し続けるものとして捉え、環境の変化に応じて適応していくことです。

より柔軟で創造的な組織へ

ティール組織は、従来の階層型組織とは異なる、自律分散型の組織モデルです。セルフマネジメント、ホールネス、エボリューショナリーパーパスという3つの特徴を持ち、組織を生命体として捉える点が特徴的です。

ティール組織への移行は、一朝一夕にはいかない長期的なプロセスであり、組織の現状分析から始まり、ビジョンの明確化、情報の透明性確保、意思決定プロセスの再設計、リーダーシップの再定義、組織構造の見直し、評価・報酬制度の再設計といったステップを踏む必要があります。

ティール組織にはさまざまな課題もありますが、現代の複雑なビジネス環境においては、その適応力や創造性の高さが評価されています。ただし、すべての組織に適しているわけではなく、組織の目的や環境、メンバーの特性に応じて、最適な組織形態を選択することが重要です。

日本企業がティール組織の考え方を取り入れる際には、日本特有の文化や価値観を考慮したアプローチが必要です。ティール組織の理念を理解しつつ、自社の状況に合わせたハイブリッド型の組織づくりを進めることで、より柔軟で創造的な組織へと進化していくことができるでしょう。

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