【3行要約】
・チームマネジメントは単なる「管理」ではなく、メンバーの能力を最大化し創造的な成果を生み出す手法ですが、多くの組織では「指示待ち」文化や形骸化した会議など、課題が山積みになっています。
・Googleの調査では高パフォーマンスチームには「メンバー間の均等な発言」と「非言語コミュニケーションへの敏感さ」という特徴があります。
・優れたチームマネジメントには、リーダーが自分の限界を認識しつつ、明確な目標設定・心理的安全性の確保・適切なフィードバックを通じてメンバーの主体性を引き出すことが求められています。
チームマネジメントとは何か?
チームマネジメントとは、チームのメンバー一人ひとりが持つ能力を最大限に引き出し、チーム全体のパフォーマンスを向上させるための手法です。単なる「管理」という意味だけではなく、チームが目標達成に向けて効率的に、そして創造的に進んでいくための仕組み作りと実践を指します。
現代のビジネス環境では、一人の天才よりもチームとしての総合力が求められるようになっています。さまざまな知識やスキル、経験を持つメンバーが協力し合うことで、個人では成し得ない大きな成果を生み出すことができるのです。しかし、そのためには適切なチームマネジメントが不可欠です。
チームマネジメントの目的は、単にタスクを分配して進捗を管理するだけではありません。メンバー間の信頼関係を構築し、一人ひとりが自分の役割と責任を理解した上で、主体的に行動できる環境を作ることにあります。特に近年は、働き方の多様化やリモートワークの普及により、従来の対面でのコミュニケーションに頼ったマネジメントスタイルだけでは不十分になってきています。
優れたチームマネジメントによって、次のような効果が期待できます。
- 業務の効率化と生産性の向上
- メンバーのモチベーション向上と主体性の発揮
- 創造的な問題解決と革新的なアイデアの創出
- 個人の成長とチーム全体のスキルアップ
- 組織の目標達成と持続的な成功
テレビプロデューサーの佐久間宣行氏は、チームマネジメントについて次のように述べています。
チーム作りをするためには、まず自分がどれだけできて、できないのか、自分の足りないところと、「これはもう伸びない」という能力を認めないとだめだなと思っていて。
やっぱり30代の前半ぐらいまでは、僕もなんでも自分で決めたがっていたので。同じチームの人たちは、言い方は悪いですけど、どっちかと言うと少し言うことを聞いてくれる人たちとばっかり仕事してた時期が(あります)。
引用元:自分の「もう伸びない能力」を見極めることの大切さ 佐久間宣行氏が語る、チームで成果をあげるためのマイルール(ログミーBusiness)
佐久間氏の言葉からも分かるように、チームマネジメントでは、リーダー自身が自分の限界を認識し、チームメンバーの強みを活かすことが重要です。一人ですべてを完璧にこなそうとするのではなく、チーム全体としての強みを最大化することを目指すべきなのです。
成功するチームの特徴とは
成功するチームには、いくつかの共通した特徴があります。Google社が「Project Aristotle」と呼ばれるプロジェクトで行った調査によると、高いパフォーマンスを発揮するチームには、メンバー間の話す量が均等であることと、非言語コミュニケーションに敏感なメンバーが揃っているという2つの特徴があるとされています。これはつまり、チームメンバーが互いに「聴き合っている」状態を指します。
また、成功するチームでは、単にタスクを完了させることだけでなく、チームとしての一体感や信頼関係を構築することも重視されています。メンバー同士が互いの強みを認め合い、弱みをサポートし合う文化が形成されていることが多いのです。
成功するチームでは、以下のような要素が見られます。
- 明確な目標と方向性の共有
- オープンなコミュニケーションと相互理解
- 役割と責任の明確化
- 信頼関係に基づく協力体制
- 多様性の尊重と活用
- 継続的な学習と改善の文化
- 適切なフィードバックとサポート
これらの要素が組み合わさることで、チームは単なる個人の集合体を超えた、創造的で強力な組織体となります。
Googleの調査結果について、エール株式会社取締役の篠田真貴子氏は以下のように説明しています。
その上でのイノベーションの話なんですが、これはまあまあ有名な事例なので知っているかもしれないです。Googleでプロジェクトアリストテレスと検索すれば出てきますが、10年ぐらい前にGoogleが、社内のパフォーマンスの高いチームは他のチームとどういう特徴や違いがあるのか、特徴量を2年ぐらいねちねち調べていたんです。
(中略)行動面で言うと、(スライドにある)黄色で丸をつけた2つなんだそうです。メンバー間が話す量が均等であることと、もう1つが非言語コミュニケーションに敏感なメンバーが揃っていること。これって、つまり聴き合っているということじゃないですか。
引用元:パフォーマンスが高いチームに見られる“2つの特徴“とは イノベーションを生み出す組織コミュニケーションのポイント(ログミーBusiness)
篠田氏の指摘にあるように、チームのパフォーマンスを高めるためには、メンバー間の対話の質が非常に重要です。単に多くの会議を行うことではなく、一人ひとりが均等に発言の機会を持ち、互いの意見に耳を傾けることが大切なのです。
リーダーに求められるスキルと役割
チームマネジメントにおいて、リーダーの役割は非常に重要です。しかし、現代のリーダーシップは従来の「指示・命令」型から、「サポート・育成」型へと変化しています。リーダーはチームの方向性を示し、メンバーの能力を引き出すファシリテーターとしての役割が求められるようになっているのです。
リーダーに求められる主なスキルには、以下のようなものがあります。
1. 目標設定能力
チームの目標を明確に設定し、それをメンバーに分かりやすく伝える能力は、リーダーの基本的なスキルです。組織全体の目標をチームレベルに落とし込み、さらに個人レベルの目標に展開することで、メンバー一人ひとりが自分の役割と責任を理解できるようになります。
2. コミュニケーション能力
リーダーには、チーム内の情報共有を促進し、メンバー間の対話を活性化させる役割があります。一方的に指示を出すだけでなく、メンバーの意見や提案に耳を傾け、建設的なフィードバックを提供することが重要です。
3. コーチング力
メンバーの能力を引き出し、成長を支援するコーチングスキルも、現代のリーダーには欠かせません。指導と助言のバランスを取りながら、メンバーが自ら考え、行動できるよう導くことが求められます。
4. 問題解決能力
チームが直面する課題や障害に対して、冷静に分析し、適切な解決策を見出す能力も重要です。ただし、すべての問題をリーダー自身が解決するのではなく、チームの知恵を集めて解決していくプロセスをファシリテートすることが大切です。
株式会社コパイロツト Project Enablement 事業責任者の米山知宏氏らは、チームマネジメントにおいては、リーダー一人に頼るのではなく、チーム全体でリーダーシップを発揮することの重要性を指摘しています。
伝えたいこと②としては、プロジェクトマネージャー1人ではなく、チーム全員でリーダーシップをシェアしながらプロジェクトを推進することを全編にわたってお伝えしています。そのために鍵にしてほしいのが定例会議だとお伝えしています。
引用元:とりあえず進捗してるフリ・・・メンバーが疲弊し形骸化するプロジェクト スピードや合理性重視のプロマネの盲点(ログミーBusiness)
このように、現代のチームマネジメントでは、リーダー一人にすべての責任を集中させるのではなく、チームメンバー全員が主体的に関わり、それぞれの立場でリーダーシップを発揮することが重要視されています。リーダーの役割は、そのような環境を整え、サポートすることにあるのです。
メンバーの主体性を引き出す方法
チームの成功には、メンバー一人ひとりが主体的に考え、行動することが不可欠です。しかし、多くの職場では「指示待ち」の姿勢が見られ、メンバーの潜在能力が十分に発揮されていないケースが少なくありません。では、どうすればメンバーの主体性を引き出すことができるのでしょうか。
1. 目的の共有と理解
チームの目標だけでなく、「なぜその目標を達成する必要があるのか」という目的や意義を共有することが重要です。メンバーが自分の仕事の意味を理解することで、モチベーションが高まり、主体的な行動につながります。
2. 権限の委譲と裁量の付与
メンバーに適切な権限を委譲し、仕事の進め方に関する裁量を与えることで、責任感と当事者意識が生まれます。最初は小さな範囲からでも、徐々に権限と責任の範囲を広げていくことで、メンバーの成長を促すことができます。
3. 相互理解と信頼関係の構築
リーダーとメンバー、そしてメンバー同士が互いを理解し、信頼し合う関係を築くことが、主体性の発揮には欠かせません。定期的な1on1ミーティングやチームビルディング活動を通じて、相互理解を深めることが大切です。
4. 適切なフィードバックと承認
メンバーの行動や成果に対して、タイムリーで具体的なフィードバックを提供することも、主体性を引き出す上で重要です。特に、ポジティブな行動や成果を積極的に承認し、評価することで、メンバーの自信と意欲を高めることができます。
株式会社コパイロツト プロジェクトマネージャーの長谷部可奈氏は、主体性を引き出すことについて、次のように述べています。
控えめ、他人任せではない主体性は、自分の中から自分の努力で見いだすものではなく、対話を通じてお互いに引き出し合うものだと考えています。これは8章のチーミングのところで触れています。
簡単に言えば、人から期待されれば応えたくなるのが人間の性(さが)ということですね。例えば災害時に自主的に助け合ったりする行動が見られるのも、この一例だと考えています。
引用元:控えめで他人任せなメンバーを動かすプロジェクトマネジメント 主体性を引き出すためにチームで共有すべき点(ログミーBusiness)
このように、主体性は個人の中から自然に湧き出るものというよりも、対話や相互作用を通じて引き出されるものだと考えられています。チームメンバー同士が互いに期待し、信頼し合う関係性を構築することが、主体性を高める上での鍵となるのです。