チームマネジメントとは？　リーダーが知っておきたい成果を出すチーム作りの手法【基本から実践まで】 [2/2]

効果的な会議運営とコミュニケーション

チームマネジメントにおいて、会議は単なる情報共有の場ではなく、意思決定や問題解決、チームビルディングの重要な機会となります。しかし、多くの組織では会議が形骸化し、時間の無駄と感じられていることも少なくありません。効果的な会議運営とコミュニケーションを実現するためには、どのような点に注意すべきでしょうか。

1. 目的と議題の明確化

会議を開催する前に、その目的と達成したい成果を明確にし、参加者と共有することが重要です。また、議題ごとに必要な時間を設定し、優先順位をつけることで、効率的な進行が可能になります。

2. 参加者の適切な選定

会議の目的や議題に関連する人だけを招集することで、不必要な参加者の時間を節約できます。また、意思決定に必要な権限を持つ人が参加していることを確認することも大切です。

3. ファシリテーションの工夫

会議の進行役は、全員が発言できる機会を作り、議論が脱線しないようコントロールする役割を担います。特に、発言が少ないメンバーの意見を引き出す工夫や、建設的な議論を促す質問の投げかけが効果的です。

4. 会議後のフォローアップ

会議で決定した事項や次のアクションを議事録にまとめ、速やかに共有することで、参加者の認識を統一し、実行への移行をスムーズにします。また、決定事項の進捗を次回の会議で確認する仕組みを作ることも重要です。

株式会社コパイロツト プロジェクトマネージャーの長谷部可奈氏は、定例会議の重要性と効果的な運営について、次のように述べています。

「会議後すぐに議事録を共有する。あとToDoの担当各自がすぐに着手する」。ここで完成させる必要はないんですが、とりあえず手をつけてみるところまですぐやっておくということですね。

「例えば、月曜日から金曜日までに実施するToDoがあったとして、月曜日時点で手書きでもよいのでラフな検討メモを共有してもらうといったサポートがあるとToDoが確実に進みやすいかなと思います。手書きメモでよいというかたちで一歩目のハードルを下げることで、対処のスピードをチーム全体として上げていくことが有用です」。

引用元：控えめで他人任せなメンバーを動かすプロジェクトマネジメント　主体性を引き出すためにチームで共有すべき点（ログミーBusiness）

このように、会議後の迅速なアクションが、チーム全体のパフォーマンスを高める上で重要です。特に、メンバーが最初の一歩を踏み出しやすい環境を整えることで、プロジェクトの進行がスムーズになります。

また、会議の質を高めるためには、「直線的なモード」と「曲線的なモード」を使い分けることも効果的です。直線的なモードでは効率性と明確な意思決定を重視し、曲線的なモードでは創造性やメンバーの感情面を重視するというバランスが大切なのです。

チームのパフォーマンスを高める環境作り

チームが高いパフォーマンスを発揮するためには、適切な環境作りが欠かせません。物理的な環境だけでなく、心理的な環境も含めて、メンバーが能力を最大限に発揮できる条件を整えることが重要です。

1. 心理的安全性の確保

チームメンバーが自分の意見や考えを自由に表現でき、失敗を恐れずに挑戦できる心理的安全性の高い環境を作ることが重要です。リーダーが率先して自分の弱みや失敗を共有したり、メンバーの発言に対して謙虚に耳を傾けたりすることで、心理的安全性を高めることができます。

2. 多様性の尊重と活用

チームメンバーの多様な背景、経験、視点を尊重し、それを組織の強みとして活かす文化を育むことも大切です。異なる意見や視点が歓迎される環境では、より創造的な解決策が生まれやすくなります。

3. 学習と成長の促進

チームメンバーが継続的に学び、成長できる機会を提供することも、パフォーマンスを高める上で重要です。業務を通じた学習だけでなく、研修やメンターシップ、相互フィードバックなど、さまざまなかたちでの学習機会を設けることが効果的です。

4. 適切なリソース配分

チームが目標を達成するために必要な時間、情報、ツール、予算などのリソースを適切に配分することも、環境作りの重要な要素です。リソースの不足がパフォーマンスの障害とならないよう、リーダーは常に注意を払う必要があります。

株式会社コパイロツト Project Enablement 事業責任者の米山知宏氏は、チームのパフォーマンスに関する現状の課題について、次のように述べています。

あちこちでプロジェクトがうまくいっていない現象が観測されるのは、やはりプロジェクトの状況に対する理解がアップデートされていないからだなと私たちは見立てています。

まず一番左側ですね。『リーダーが孤独だがメンバーも孤独』という状況がとてもたくさんあります。プロジェクトマネジメントがプロジェクトマネージャー個人のスキルの問題とされていて、プロマネが1人でなんとかするしかない状況。それで「うまくいかないんです」となってしまっているのをたくさん見ます。

引用元：とりあえず進捗してるフリ･･･メンバーが疲弊し形骸化するプロジェクト　スピードや合理性重視のプロマネの盲点（ログミーBusiness）

この指摘にあるように、チームのパフォーマンスを高めるためには、リーダーだけでなくメンバー全員が責任を持ち、互いに協力し合う環境を作ることが重要です。「リーダーが孤独でメンバーも孤独」という状況を脱し、チーム全体で目標に向かって協力し合う文化を醸成することが求められているのです。

チームマネジメントの課題と解決策

チームマネジメントを実践する上では、さまざまな課題に直面することがあります。ここでは、代表的な課題とその解決策について考えてみましょう。

1. メンバーの意欲低下とその対策

長期間同じプロジェクトに取り組んでいると、メンバーのモチベーションが低下することがあります。このような場合、定期的に小さな成功を祝ったり、新しい挑戦の機会を提供したりすることで、意欲を高めることができます。また、メンバー一人ひとりの貢献を具体的に認め、評価することも重要です。

2. コミュニケーション不足の解消

リモートワークの増加などにより、チーム内のコミュニケーションが不足しがちになることがあります。定期的なチームミーティングやオンラインでの雑談の機会を設けるなど、公式・非公式のコミュニケーションチャネルを複数用意することで、情報共有を促進できます。

3. 役割と責任の不明確さへの対応

「誰が何をすべきか」が不明確だと、タスクの漏れや重複が発生し、チームの効率が低下します。プロジェクトの初期段階で役割と責任を明確にし、必要に応じて見直すことが大切です。また、RACIチャートなどのツールを活用して、責任の所在を可視化することも効果的です。

4. 意見の対立とコンフリクト解決

多様なメンバーが集まるチームでは、意見の対立が生じることは自然なことです。重要なのは、対立を避けるのではなく、建設的に解決する方法を身につけることです。相手の立場や視点を理解しようとする姿勢、事実に基づいた議論、共通の目標を見失わないことなどが、コンフリクト解決の鍵となります。

テレビプロデューサーの佐久間宣行氏は、チームの中に「悲観的な人」や「攻撃的な人」がいる場合の対処について、次のような興味深い例を挙げています。

僕がプロデューサー・ディレクターになった頃は、たぶんとにかく自分が働くから（周りが）文句を言えないって感じのディレクターでした。とにかく僕が全部準備してきて、僕が編集も人一倍長くやるから、「まあ、こんなに佐久間が働いてるんだから」と。手を抜けない空気を作るタイプのディレクターだったと思います。

（中略）30代前半はそうでした。まあ、そもそも仕事が好きだったのと、自分で考えた企画を実現するのに自分が最短の能力を持ってるからやるってタイプのディレクターだったんですけど。これは続かないし、やっぱり息苦しいなと思って。

引用元：人一倍働いて「手を抜けない空気」を作る上司だった　佐久間宣行氏が失敗から学んだ、風通しのいい組織の作り方（ログミーBusiness）

佐久間氏の例からわかるように、リーダー自身が働きすぎることで、チームに「手を抜けない空気」を作ってしまうこともあります。これは短期的には効果があるように見えても、長期的にはチームの創造性や持続可能性を損なう可能性があります。リーダーはチームの一員として適切な範囲で働き、メンバーに適切な権限委譲をすることで、より健全なチーム環境を構築することが大切です。

チームマネジメントの実践に向けて

チームマネジメントは、単なる理論や手法の集合体ではなく、実践を通して磨かれるスキルです。本記事で紹介した考え方やテクニックは、あくまでも出発点であり、実際のチームの状況や文化に合わせて柔軟に適用することが重要です。

効果的なチームマネジメントの実践に向けて、以下のポイントを心がけましょう

1. 常に学び続ける姿勢を持つ
2. 自己理解を深める
3. メンバーとの信頼関係を築く
4. 失敗から学ぶ
5. 小さな成功を積み重ねる

チームマネジメントは、チームメンバー一人ひとりの成長と幸せ、そして組織の成功の両方を実現するための重要なプロセスです。リーダーとメンバーが互いに尊重し合い、協力しながら、共通の目標に向かって進んでいく。そんな理想的なチームを作るために、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。

最後に、株式会社Learner’s Learner 代表の黒川公晴氏のリーダーシップに関する考え方を紹介しましょう。

リーダーシップはいろいろと研究の歴史があって、一時は「素質」だと。持って生まれた素質で、その素質を研究して再現性を高めていくべきなんだという研究もあれば、「行動」だと。リーダーが取るべき行動を研究する流派もあったんですけど。

今はコンセプト理論が中心で、「こういう状況ではこういうふうに振る舞うべきだ」ということがさまざまな型で定義されています。

引用元：リーダーシップは後天的に身につけられる「スキル」　新時代のリーダーの“核”となる3つの力（ログミーBusiness）

黒川氏の言葉にあるように、リーダーシップは生まれつきの素質ではなく、後天的に身につけられるスキルです。そして、状況に応じて適切な行動をとることができる「適応型リーダーシップ」が、現代のチームマネジメントにおいては特に重要とされています。

自分自身のリーダーシップスタイルを振り返りながら、チームと組織の状況に合わせて柔軟に進化させていくことが、成功への鍵となるでしょう。