1onミーティングは、部下と上司が1対1で行う定期的な面談で、コミュニケーションを深める重要な機会として導入する企業が増えています。また、部下の成長や意欲の向上を促進できれば、離職防止や組織の生産性向上につながる可能性がある施策として注目されています。
一方、部下側・上司側ともに、1on1ミーティングに苦手意識を持つ方は少なくありません。そこで本記事では「1on1がつらい」「話すことがない」と感じる要因や、実施する際の課題、効果的な1on1を行うための具体的な方法を解説します。
■1on1の目的
1on1の目的は、コミュニケーションの強化、業務の進捗確認、キャリア開発の支援、モチベーションの向上、そして組織文化の醸成です。これらの目的を達成することで、企業全体のパフォーマンス向上につながります。
1. コミュニケーションの強化
オープンな対話: 上司と部下の間で自由に意見や感情を交換することで、信頼関係を築きます。
フィードバックの提供: 部下の業務に対する具体的なフィードバックを行い、成長を促します。
2. 業務の進捗確認
目標の確認: 現在の業務やプロジェクトの進捗状況を確認し、必要なサポートを提供します。
課題の特定: 部下が直面している課題や問題を把握し、解決策を一緒に考えます。
3. キャリア開発の支援
キャリア目標の確認: 部下のキャリアに関する目標や希望を理解し、成長のためのサポートを行います。
スキルの向上: 必要なスキルや知識を身につけるためのアドバイスやリソースを提供します。
4. モチベーションの向上
感謝の意を示す: 部下の努力や成果を認め、感謝の意を伝えることで、モチベーションを高めます。
エンゲージメントの向上: 部下が自分の意見や感情を表現できる場を提供することで、職場へのエンゲージメントを向上させます。
5. 組織文化の醸成
オープンな文化の促進: 1on1を通じて、オープンで協力的な組織文化を育むことができます。
心理的安全性の確保: 部下が安心して意見を述べられる環境を整えることで、心理的安全性を高めます。
■1on1で話すことがない・つらいと感じる6つの要因
1on1ミーティングは、上司と部下のコミュニケーションを深める貴重な機会ですが、多くの人がこの時間をつらいと感じることがあります。その要因は多岐にわたり、コミュニケーションのギャップや心理的なハードル、フィードバックへの不安などが影響しています。ここでは主な要因を6つご紹介します。
1. コミュニケーションが苦手
自己表現が難しい: 自分の意見や感情をうまく表現できないため、1on1での会話が苦痛に感じることがあります。
緊張しやすい: 上司との対話に対して緊張感を持ち、思うように話せないことが多いです。
・解決策事前準備を促す: 1on1の前に話したいことや質問をリストアップするように部下に促します。これにより、話す内容が明確になり、緊張を和らげることができます。
ロールプレイを実施: 1on1の前に、模擬的な会話を行うことで、実際の対話に対する自信を高めます。
参考記事:雑談が苦痛で、「最近どう?」と聞かれても戸惑う… 1on1の専門家が語る、職場コミュニケーションで起きがちな問題“なんでも言って”と言われたのに、5分もすれば業務の話に… 上司との1on1がつらいと感じた時のヒント週1回の1on1よりも、毎日5分のムダ話のほうが効果的 新人研修を成功に導くコミュニケーションのポイント1on1が「薄い雑談」で終わる、マンネリ化してしまう… 上司と部下の「対話」の質を高めるためには 2. フィードバックに対する不安
ネガティブなフィードバックを恐れる: 自分の業務に対する批判や改善点を指摘されることに対して強い不安を感じる人がいます。
自己評価が低い: 自分の能力に自信が持てず、フィードバックを受けること自体がストレスになることがあります。
・解決策ポジティブなフィードバックを重視: まずは良い点を褒めることで、部下の自信を高め、ネガティブなフィードバックを受け入れやすくします。
フィードバックの目的を明確にする: フィードバックが成長のためのものであることを説明し、改善点を具体的に示すことで、部下の不安を軽減します。
参考記事:1on1が営業の“詰め会”……若手が「ダサい」と去っていく会社 古い組織体質を変えるために、営業トップに求められる観点 3. 上司との関係が築けていない
信頼関係が薄い: 上司との信頼関係が築かれていない場合、1on1が形式的なものに感じられ、話しづらくなります。
オープンなコミュニケーションがない: 日常的にコミュニケーションが取れていないため、1on1での対話がぎこちなくなることがあります。
・解決策日常的なコミュニケーションを増やす: 1on1以外の場でも、カジュアルな会話を増やし、信頼関係を築く努力をします。
オープンな姿勢を示す: 上司が自分の意見を尊重し、共感を示すことで、部下が安心して話せる環境を作ります。
参考記事:「信頼も尊敬もない上司との1on1は“苦行”でしかない」 広木大地氏 が考える、効果的な1on1を行うためのステップ | ログミーBusiness上司の形式的な1on1を変えたい時に使える「中断のスキル」 有効な「対話」につなげたい、部下からできる働きかけ 4. 目的や意義を感じられない
1on1の目的が不明確:1on1の目的や意義が理解できていない場合、参加すること自体が無意味に感じられ、つらさを感じることがあります。
時間の無駄と感じる: 1on1が業務に対する具体的な成果につながらないと感じると、参加することが苦痛になります。
・解決策1on1の目的を明確にする: 1on1の目的や期待される成果を事前に説明し、部下がその意義を理解できるようにします。
具体的な目標設定: 1on1の中で具体的な目標を設定し、進捗を確認することで、参加の意義を実感させます。
参考記事:今までの1on1は「上司のための時間」になりがちだった “ただの面談”で終わらせない、部下との対話を深めるポイント 5. 過去の経験が影響している
過去のトラウマ: 過去の1on1でのネガティブな経験が影響し、再度の1on1に対して不安を抱くことがあります。
他者との比較: 他の同僚が1on1をうまく活用しているのを見て、自分だけがうまくいかないと感じることがストレスの原因になります。
・解決策過去の経験を振り返る: 部下が過去の1on1でのネガティブな経験を話せる場を設け、感情を整理する手助けをします。
成功体験を共有する: 他の部下の成功事例を紹介し、1on1のポジティブな側面を強調することで、部下の不安を和らげます。
6. プライベートな問題を抱えている
ストレスや悩みを抱えている: プライベートでのストレスや悩みが影響し、1on1に集中できないことがあります。
感情的な負担: 仕事以外の問題が影響し、1on1での対話がさらに負担に感じられることがあります。
・解決策オープンな対話を促す: プライベートな問題についても話しやすい雰囲気を作り、必要に応じてサポートを提供します。
メンタルヘルスのサポートを提供: 必要に応じて、社内のメンタルヘルスサポートやカウンセリングサービスを紹介し、部下が安心して相談できる環境を整えます。
まとめ1on1がつらいと感じる人には、コミュニケーションが苦手、フィードバックに対する不安、上司との関係が築けていない、目的や意義を感じられない、過去の経験が影響している、プライベートな問題を抱えているといった特徴があります。これらの特徴を理解し、適切なサポートを提供することで、1on1の効果を高めることができます。
■1on1でよくある5つの課題と解決策
1on1ミーティングは、上司と部下の関係を強化し、業務の効率を向上させるための重要な手段ですが、実施にあたってはさまざまな課題が存在します。例えば、話すことがない、コミュニケーションのギャップ、フィードバックの受け入れに対する不安、構造化されていない議題、そして心理的なハードルなどが挙げられます。これらの課題は、1on1の効果を減少させる要因となり得ます。
しかし、適切な解決策を講じることで、これらの問題を克服し、より充実した対話の場を作ることが可能です。1on1でよく見られる5つの課題とその解決策について詳しく解説します。
課題1: 上司と部下のコミュニケーションギャップ
上司と部下の間にコミュニケーションギャップが存在する場合、1on1ミーティングが効果的に機能しません。上司が専門用語を多用したり、部下の意見を軽視したりすることで、対話が一方通行になりがちです。また、上司が部下の意見を軽視する場合も、コミュニケーションが円滑に進みません。さらに、部下が上司に対して遠慮しすぎると、本音を隠してしまいがちです。
・解決策オープンなコミュニケーションの促進:これを防ぐためには、上司がオープンでフレンドリーな態度を心がけ、部下の意見を尊重することが大事です。具体的には、部下の意見を尊重し、積極的に質問を投げかけることで、双方向のコミュニケーションを促進しましょう。
トレーニングの実施: 上司に対してコミュニケーションスキルやフィードバックの技術に関するトレーニングを実施し、効果的な対話ができるようにします。
参考記事:部下が愚痴をこぼした時は「同感」せずに「共感」する 1on1コミュニケーションの専門家が教える、上司側の“聞き方”のコツ 課題2: 定期的な実施の習慣化
1on1ミーティングが定期的に実施されない場合、部下とのコミュニケーションが疎かになり、信頼関係が築かれにくくなります。
・解決策スケジュールの確保:1on1ミーティングを定期的に行うためのスケジュールを確保し、カレンダーに登録することで、実施を習慣化します。
目標設定: 1on1の目的や目標を明確にし、定期的に進捗を確認することで、ミーティングの重要性を再認識させます。
課題3: 事前準備の不足や、議題が構造化されていない場合
具体的な議題がない場合、ミーティングが漠然としたものになり、生産性が低くなります。議題が不明確だと、進行がスムーズにいかず、時間が無駄になります。さらに、上司と部下が異なる期待を持ってミーティングに臨むと、方向性がブレてしまいます。この結果、重要な話題が取り上げられず、解決策が見つからないことが増えてしまいます。
・解決策議題の事前共有: ミーティングの前に議題を共有し、部下が話したいことや質問をリストアップできるようにします。議題を明確にすることで、話し合いが効果的に進み、双方が納得できる結論が得られます。また、アジェンダを共有し、時間配分を工夫することも重要です。これにより、ミーティングがスムーズに進行します。
フィードバックの記録: 前回の1on1でのフィードバックや課題を記録し、次回のミーティングで振り返ることで、継続的な成長を促します。
参考記事:1on1では「業務進捗」ではなく「業務不安」を話すのがカギ 上司・部下は何をどう話せばいい?対話の悩みを解消するには無意識の「問題解決思考」がピープルマネジメントの妨げに 1on1の専門家が教える、職場コミュニケーション改善のヒント 課題4: 心理的ハードル
部下が1on1ミーティングに対して心理的なハードルを感じることがあります。特に、初めての1on1や上司との関係がまだ築かれていない場合、不安や緊張が伴います。
・解決策リラックスした雰囲気作り: ミーティングの開始時に軽い雑談を交え、リラックスした雰囲気を作ります。これにより、部下が話しやすくなります。
信頼関係の構築: 日常的なコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことが重要です。上司が部下の意見を尊重し、共感を示すことで、心理的なハードルを下げることができます。
課題5: 成果の測定と評価
1on1の効果を測定するための指標が不明確な場合、導入の効果を実感しにくくなります。
・解決策具体的な指標の設定: 1on1の成果を測定するための具体的な指標を設定します。例えば、部下の業務の進捗状況やフィードバックの質、部下の満足度などを定期的に評価します。
定期的なレビュー: 1on1の実施後に定期的なレビューを行い、成果や課題を振り返ることで、改善点を見つけ出し、次回に活かします。
まとめ日本企業における1on1の導入には、コミュニケーションギャップや定期的な実施の習慣化、事前準備の不足、心理的ハードル、成果の測定と評価といった課題があります。これらの課題に対して適切な解決策を講じることで、1on1の効果を最大限に引き出し、部下との信頼関係を深めることができます。
■1on1で話すことがない時の6つの対処法
1on1ミーティングで「話すことがない」と感じることもあります。このような状況は、事前の準備不足や緊張感から生じることが多いです。しかし、話題が尽きた時でも、効果的な対処法を用いることで、充実した会話を引き出すことが可能です。業務内容の詳細を掘り下げたり、今後の目標やキャリアパスについて話し合ったり、プライベートな興味を共有することで、自然な流れで会話を活性化させることができます。
1. 事前に話題を準備する
1on1の前に、話したいことや質問をリストアップしておくことで、会話がスムーズに進行します。部下にも事前に考えておくように促すと良いでしょう。
・方法議題リストの作成: 上司と部下がそれぞれ話したいトピックをリストアップし、ミーティングの前に共有します。これにより、双方が準備を整え、話題が尽きることを防ぎます。
質問集の作成: 具体的な質問集を用意し、部下が答えやすい内容を含めることで、会話を引き出す手助けをします。
2. 最近の業務やプロジェクトについて振り返る
最近の業務やプロジェクトについて振り返ることで、具体的な話題を提供しやすくなります。また、成功体験を共有することでポジティブな雰囲気を作り出します。
・方法進捗状況の確認: 現在進行中のプロジェクトやタスクの進捗状況を確認し、部下が直面している課題や成功体験について話す機会を作ります。
成功体験の共有: 最近の成功体験や達成した目標について話し合うことで、ポジティブな雰囲気を作り出します。
3. 業務外の興味や趣味について話す
プライベートな話題を取り入れることで、リラックスした雰囲気を作り、会話が活性化します。
・方法趣味や最近の出来事: 部下の趣味や最近の出来事について尋ねることで、自然な会話が生まれます。例えば、「最近何かおもしろい映画を観ましたか?」などの質問が効果的です。
共通の興味を見つける: 上司と部下の共通の趣味や関心事を見つけることで、会話が弾みやすくなります。
4. オープンな質問を投げかける
オープンな質問を使うことで、部下が自由に意見を述べやすくなります。
・方法「どう思いますか?」: 部下に対して「このプロジェクトについてどう思いますか?」といったオープンな質問を投げかけることで、意見を引き出します。
「何か困っていることはありますか?」: 部下が抱えている問題や悩みを話しやすくするための質問を用意します。
参考記事:1on1でメンバーの納得感を高めるカギは「拡大質問」 部下に「自己決定感」を持たせるコミュニケーション術質問だけを投げかける1on1は「詰め」になる “話しづらい1on1”に欠けている3つの「型」 5. フィードバックを求める
部下に対してフィードバックを求めることで、会話のきっかけを作ります。
・方法業務に対するフィードバック: 「私のフィードバックで特に役立った点は何ですか?」と尋ねることで、部下が自分の意見を述べる機会を提供します。
改善点についての意見: 「今後の1on1で改善してほしい点はありますか?」といった質問を通じて、部下の意見を引き出します。
6. 業務改善のアイデアや未来の目標や計画について話す
業務プロセスの改善点や新しいアイデアを提案することで、建設的な議論を促します。また、今後の目標や計画について話し合うことで、具体的な話題を提供します。
・方法短期的な目標の確認: 「今後のプロジェクトで挑戦したいことはありますか?」と尋ねることで、部下の目標を明確にします。
キャリアパスについての話し合い: 部下のキャリア目標について話し合うことで、将来の展望を共有し、モチベーションを高めます。
参考記事1on1は“部下を指導する場”ではなく“ともに学ぶ場” 「最近どうなの?」から成長が始まる、問いを立てて考える力部下との対話で本音を引き出すための、5秒〜7秒の沈黙 1on1に悩む管理職が知っておきたい、話の「聴き方」まとめ1on1で話すことがないと感じる場合、事前に話題を準備することや最近の業務を振り返ること、業務外の興味について話すこと、オープンな質問を投げかけること、フィードバックを求めること、未来の目標について話すことが効果的です。これらの解決策を実践することで、1on1の時間をより充実させることができます。
■日本企における1on1の成功事例
最後に、ヤフー株式会社での1on1ミーティングの成功事例をご紹介します。この事例は、1on1がどのように効果的に活用されているかの一例となります。
ヤフー株式会社
ヤフーでは、1on1ミーティングを通じて、部下の意見を積極的に取り入れる文化が根付いています。上司は部下の話をじっくりと聞き、共感を示すことで信頼関係を築いています。このアプローチにより、部下は自分の意見を自由に表現できる環境が整い、業務の効率化やモチベーションの向上につながっています。
参考記事「大人が成長する場面には法則がある」 部下を伸ばす、ヤフー人事直伝1on1の極意「脱皮しない蛇は死ぬ」 第二の創業を機に、ヤフーが1on1を徹底し続ける理由人は「渇望感」がないと物事を体得しようとしない ヤフー人事が語る、成長のきっかけのつくり方週1回30分の1on1を続けたらエンゲージメント偏差値が80超 部下の「今の心情」を定期的に聞くことで得られる3つの効果 ■1on1導入の重要性と従来のやり方の見直し方
企業が1on1ミーティングを取り入れることは、単なるトレンドではなく、組織の成長と社員のエンゲージメントを高めるための重要なステップです。従来の一方通行のコミュニケーションや形式的な評価制度を見直すことで、よりオープンで信頼に満ちた職場環境を築くことができます。
1on1は、上司と部下の関係を深め、部下の意見や感情を尊重する機会を提供します。これにより、社員は自分の意見を自由に表現できるようになり、業務へのモチベーションが向上します。また、定期的なフィードバックを通じて、個々の成長を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。
今こそ、従来のやり方を見直し、1on1を導入することで、社員の声を大切にし、より良い職場環境を実現する時です。これにより、企業は持続的な成長を遂げ、競争力を高めることができるでしょう。