目上の人をタクシーに乗せるときの失敗談

小林雅氏(以下、小林):それじゃあ、20代の失敗。平尾さん、どうでしょうか?

平尾丈氏(以下、平尾):そうですね。今、川邊さんの失敗がおもしろかったんで、僕は意外と失敗しないんじゃないかって勘違いされるんです。

派手なやつもあるんですけど、「意外とこんなとこで失敗するんだ、平尾丈」みたいなことをお伝えすると、山岸さんと実は私がリクルート入って新入社員くらいのときにお会いしてるんですけど。その頃くらいに、これはやっぱり学生ベンチャーで勉強できることと、社会人になってから就職して勉強できることの違い。

最近、某若手社長に同じことを、昔自分がリクルートのときの上司に教えてもらった1つのことなんですが。私、学生時代から社長をやってたんで「自分はちょっとほかの人と違うんじゃないか」「何でもできちゃうんじゃないか」「世の中変えられるんじゃないか」というような全能感を持っていました。

リクルートでもトップ入社して、同期の中でも調子に乗ってて、「皆、俺についてこい」みたいな、そんな感じでやってたんですけど、就職すると新入社員ですから一番下っ端になるんですよ。

これがいろんなミスを犯しまして、一番多かったのは目上の方に対してどう接するかということで、ものすごい失敗していて、就職して良かったと本当に思っています。「平尾丈の失敗ちっちゃいじゃん」と思うかもしれないけど、親近感湧いていいのかもしれないと思うのが、タクシーですね。タクシー乗れますか?

質問者(VOYAGE GROUP・イマイ氏):ありがとうございます。タクシー乗れます。

平尾:そうですよね、僕は乗り方をわかっていなかったんですよ。学生起業家でお金は稼いでいましたけど、自分がいつも上座に座って、同級生の子は横に座れよみたいにやってたので(笑)。

そのときはヤフーさんだったかもしれないです。リクルートよりも大きな会社さんの偉い人と自分の局長と先輩と自分の4人でタクシーに乗るというシチュエーションだったんです。

今日よりももっと強い雨降っていました。自分は上座、下座で言えば、偉い人から乗せていけばいいんだと思ってたんで、まずお客様である偉い方に乗っていただいて、次に自分の上長乗っていただいて、後ろに先輩乗っていただいて自分が助手席というふうにしたんですね。

これ、わからない人もいるかもしれないですね。わからない人は社会人になっていろいろ教わっていただければと思うんですけども。

後ろの真ん中の席に上長の一番偉い人乗せてしまって、局長が真ん中でこじんまりとしてて、事故ったときにポーンと前に行っちゃうところですよね。そこにずっと、デスノートのエルみたいな感じで自分の上司の偉い人を座らせてしまって、その横にいた先輩にこっぴどく叱られるっていうことをやってます(笑)。

いっぱい失敗を繰り返した中で、こんなちっちゃなものも、学生起業家のときに失敗できなかったんです。この前も、名前は伏せますが、20代の起業家に同じことをお話しました(笑)。

名刺の渡し方も「御中」の使い方もわからなかった

小林:なるほど。川邊さんもあれですよね、いわゆる学生起業家から普通にヤフーで働くことになったと思うんですけど、そういう経験ってあるんですか?

川邊健太郎氏(以下、川邊):そうですね。ヤフーもベンチャーだったんで、ヤフー時代にそういうことがあったというか、電脳隊のときに大学3年で会社をつくってみんな学生でしたから、正直名刺の渡し方もわからなかったですね。

とある取引先の女性の社長が面倒見が良くて、我々が行って名刺とか渡す度に「全然名刺の渡し方が違う! バカ!」とかいろいろ言って教育をしてくれたと、そういう記憶がありますね。

「御中」ってあるじゃないですか、「~御中」って。あの使い方もよくわからなくて、NTTアドだったかな。「NTTアド御中 竹山御中様」みたいなことを書いたらですね、「御中の使い方が違う」と。要するに、学生起業家はそういうレベルですよね。お恥ずかしい限りです。

小林:「御中」ってわからない人どれくらいいるんですか? 正直にいこう。結構いますね。起業したいと思ったら勉強したほうがいいですよ。「弊社」とか「貴社」とかね。

平尾:教えてくれないんですよね。

小林:教えてくれないですね。

川邊:学生起業家だと周りもかわいがってくれますから、そういうの教えてくれるんですよね。それは優しかったなと、周りが。感謝してます。

社長にキレて、椅子を投げた!?

小林:どうですか、そういう痛い経験。失敗談っていうか、痛い経験になってますね(笑)。

山岸広太郎氏(以下、山岸):僕がいまだに思い出して「あー」と思うのは、大学3、4年のときにベンチャーでバイトしてたんですけど、自分も自覚がないんですよ。僕、キレやすいという欠点がありまして。

平尾:キレやすいんですか? 意外ですね。

山岸:そう、意外で。極限状態になるとキレるというのがあって。ベンチャーでですね、それこそヤフーさんのコンテンツを受託してリリースするというヤバいプロジェクトがあって、すごいデスマーチが続いて、僕はプロマネみたいなことをやってたんですけど。

社長が超……いい人なんですけど、ちょっといい加減なところがあって、というかその時は(そう)見えて、僕から見ると。「これ、絶対いろいろ問題が起きますよ」と言ってるんだけど、行け行けどんどんで進んでいった。

案の定ローンチした後に、僕が見てないところで、僕はプログラムサイドを見てたんですけども、自動車のカタログ「Yahoo! 自動車」っていうコンテンツを立ち上げることになってたんですけども、その自動車のデータのほうにすごくミスがいっぱいあって、ローンチして1日で落とさなきゃいけないっていう事態が発生して。

その反省会みたいなのがあったんですけど、ちょっといろいろあって、感極まってキレて、社長に椅子を投げるという暴挙を働きまして(笑)。

(会場笑)

川邊:めちゃくちゃだね、それ(笑)。

小林:椅子投げたんですか?

山岸:椅子なげちゃったんですね。さすがに、自分も収まりつかなくなってですね、そこから会社に行けなくなったっていうのがあった。

その後はもう、「会社行きたくない!」みたいになって行かず、本当は鉄火場で改修しなきゃいけないんですけど、それもほかの人たちがやってくれて、1ヵ月くらいしてから「会社行きたくないから、リモートでプログラムだけやります」みたいな感じで、そのまま卒業するに至る、っていう事件があって。

本当に良くなかったなと思うんですけど、社長が本当にいい人で、その後も優しくしてくれたっていうか、かわいがってくれて、いまだに年に何回かお会いするんですけど(笑)。

逆に自分が社長だったらバイトに椅子投げられるとか、相当キレるなと思うんですけど。

小林:相当ビビりますよね。バイトで椅子(投げるとか)。ちなみにこの中で、椅子投げたことある人います? いますね、椅子投げたことある? ちょっとどういう局面で椅子投げたの? 友達とケンカして椅子投げたんですか?

平尾:危ないですね、普通に危ないです。

小林:わかりました、ありがとうございます。イマイさん、いいですか質問。ずっと立ってていただいてありがとうございます。次、あったまってきた感じがあるんで、次に質問したい人。じゃあ、一番前の人行きましょうかね。

学生時代に身につけておいたほうがいいこと

質問者:本日はありがとうございます。

小林:ありがとうございます。

質問者:将来起業するにあたって、学生時代に身につけておいたほうがいいことがあれば、教えていただきたいです。

小林:なるほど。起業したり、ビジネスをする上で学生であるとか20代において、何か学んできたほうがいいことってことですよね。じゃあ、誰から行きましょう、川邊さんからいきましょうか。

川邊:はい。

小林:何か起業したいんですけど、何を準備したらいいですかって質問ですね。

川邊:2つあって、1個は何をしたいかを決めておくってことですね。こういうことをしたいとか、こういう会社をつくりたいとか、具体的なものをイメージしておくっていうことと、もう1個は周りとの良い人間関係をつくっておくということですね。

一緒に起業する仲間であるとか、あるいは起業した後に取引してもらう取引先とか、あるいはメンター的にアドバイスしてもらう人とか、豊かな人間関係をいかにつくり上げておくかが重要な気がします。

小林:ありがとうございます。ちなみに、川邊さんは人間関係、年齢を追うにつれて変わってきたと思うんですけど、最近だと年収百何十億でしたっけ、(ヤフー会長の)ニケシュ(・アローラ)さんとか、もっと若いうちは学生起業家の本間さんとか松本さんとか同世代からいろいろ変遷してきたと思うんですけども、どんな感じで自分は成長してきたんですかね? 川邊さん的にいくと。

川邊:私、青学の下からなんですね。青学の下からっていうのはどうしようもないバカで、全く勉強ができないんですよ。私も全くできなかったんですけども、常に中等部、高等部、大学と(外からは)勉強のできる人たちが入ってくるんですよ。

要するに、これを取り込むんですね。取り込んで勉強を教えてもらうというか、そいつらに遊びを教えて平均点を下げるというやり方をしてた。とにかく人と仲良くなるのだけを学生時代やってきて、人と仲良くなる術は学生時代に身についていた。

社会に出てからもどんどん周りにはすごい人が現れるんですけども、そういう人と何とか仲良くやっていく、一緒に仕事をするということを繰り返してきました。

だんだんだんだんスケールの大きい人が現れて、途中で孫(正義)さんとかと仕事をするようになって、「わー、これすごいな」と思ってたら、最近まさに噂の、年収……年収じゃないですよ、これ9ヵ月収165億円という人がヤフーの会長になってしまいまして。

この人も目が非常に鋭くて据わってて、言うことも兆の単位の話しかしなくて怖いんですけども、何とかやっております。

小林:なるほど、ありがとうございます。平尾さん、何かありますかね?

トップダウン型のリーダーシップをやってほしい

平尾:そうですね。大学3年生でしたっけ? 大学4年生で就職しないで起業する? 大学院に行きながらその間に成功の糸口を、あるあるですね。それいいと思うんですよ。

僕のときも、大学3年生で起業したときに、最初のベンチャーはインターネット上でクーポンを打つようなゲームをつくってたんですけども、大学3年生から1年くらいやっていて、自分はそのまま就職して、6人中3人が起業しました。3人が就職しました。

自分たちのケースから言うと、結論から言うと、大学院に行って続けた子たちはあまりうまくいきませんでした。今は、また起業してるんですが。

彼らと話してみると意外とね、2年間長かったって言うんですよね。「え、長かったんだ」と。普通は短く感じるんですよね、うまくいかなかったときとか。「全然時間が足りなかった!」みたいなのあると思うんですけど、長かった。

何で長かったのかって聞くと、うまくいかなかったときになかなかアドバイスがもらえないというのが1つあったようです。通常の大学院の子とは違うので共有できる仲間もいなくて、先生に相談するんですよ。先生も「一発ベンチャーで儲けたるよ」みたいな先生だったんで。

でも、親身になってやってくださったんですけど、なかなかITの世界だとご経験のある方が少ないので、あまりうまくいかなかったんじゃないかなと思ってます。

さっきすごくいい話を川邊さんされていたので、私も乗っからせていただくと、自分も学生時代いろんな能力を取りにいきました。今やってみて良かったなと思うのは、就職した後も使える能力、これですね。

自分は大学1年生くらいから起業の真似事とか、アイス屋さんやったり、人材派遣やったり、いろんなことやってるんですけど、やっぱりターニングポイントはトップになったときです。自分が一番能力が高いわけではなかったんですけど、手を挙げて「俺がリーダーやる」と言ったときに、そこから目線とか視点が大きく変わってきました。

これはやって良かったなと思っていて、その後、就職しても見える世界がトップの目線なんですよ。でも、新入社員なんですよ。これはめちゃくちゃアドバンテージで、誰もいなかったですね、それが出来る人。視点が高い、視座が高い、部分最適じゃない、全体最適で考えられる。

リーダーシップっていうのは本当に真似しづらいです。リーダーシップ論とか、自分も授業受けてましたし、最近だとサーヴァント・リーダーシップっていうんですかね。

フォロワー・リーダーシップとか、割としなやかなリーダーとかリーダーシップ論とか流行ってると思うんですけど、自分がお勧めするのは、いわゆる旧来型のトップダウン型のリーダーシップをやってみてください。絶対できないです、最初のとき。

これ別にサークルでもいいし、何でもいいんですよ。学生団体でもいい。やってみたときに大体いなくなるんですよ、人が(笑)。いなくなったときに、「何でいなくなったのかな」とか、やっぱり自分と他人って違うんだっていうのを思いながら、うまくそこにシフトしていけたりするんですよね。

自分なんかクリスマス・イブにNPO法人つくろうとか言って、なぜかイブにやったんですよ、記念日だから。誰も来ないんですよね(笑)。そういうのもやりながら考えていって、普通の人はこういったことだとついてこないんだとか、そういう視点になってきますし、1回視点が上がったら落ちないです。

これは本当にギフトだと思って、自分の学生ベンチャーも別にそんな、お金も儲かってましたけど、残ってないですし、人脈も維持していかないと腐ります。

自分の中で残った経験でいうと、当時と今は環境が違うんで、当時のビジネスモデルを今やっても絶対うまくいかない。でも、リーダーシップは残るんです。これぜひ実行してみてください。