この映画の今後の展望

司会:ではちょっと無理矢理、話題を変えるとですね、この映画自体ですけれど、今後何か賞に出すとか、そういった展望とかおありですか?

ルシア・ロペス氏(以下ルシア):これからカンヌフェスにも興味があって、色んなテレビフェスとか。折角皆こんなに頑張ってきたので、時間もお金もすごく皆使ったので。だからすごくフェスに出してみたいなと思いますね。やっぱり完成の作品を見るとクオリティが高いので。なかなか学生とか大学院生の作品とか観れないので。特に海外とか……。

司会:ひょっとするとそこで受賞ということになったら、ここに居た皆さんが「あの作品実は俺、観てるんだよ」と言えるかも知れないですね。そういうチャンスが回ってくるかも知れない、ということで。

脚本家、中島氏の自己紹介

司会:それからですね、今日は脚本の中島さんのほうにもお越しいただいているんですけれども、ざっくばらんとした話なんですけど、今回のこのストーリーを描こうと思ったきっかけであるとか、事前から構想があったのかとか、そういうところをお伺いしたいです。藤井監督と相談してストーリーを考えていったとか、自分で昔から考えていたお話なのかとか。

中島桃果子氏(以下、中島):ちょっと先に……。

司会:自己紹介していなかった!? 申し訳ないです! では自己紹介から……。

中島:本日はどうもご来場いただきましてありがとうございます。脚本を担当した中島桃果子です。私は実は脚本家ではなくて小説家です。それで、翔君が私が書いた本を読んでくれて、声をかけてくれて。さっきちょっとカメラの画像比較で出てた、金髪の女の子がコーヒーを飲んでいる映像が、私と翔君の最初の仕事で。

「The worst yet the best day」っていう、1分30秒くらいの短いやつを一緒にやって、これが2作目になるんですけど。前のやつは私が全部プロットから好きにやったやつ。今回はさっき翔君が言ったみたいに、翔君の中に描きたいものが元々あって「これを描きたい」っていうのが全面にあって。

何度も、さっきも言われているけど、彼すごく頑固だから、もう絶対に引かない。私も普段は自分の名前で小説とか書いて、人から「こういうもの書いて」とか言われずに好き放題書いているから「そういうこと私、書きたくない」とか、最初にそういう擦り合わせから。

意見をぶつけ合う監督と脚本家

司会:最終的にはもう本当に、お互いの意思をぶつけ合いながら1本の脚本ができあがった、ということなんですかね?

中島:そうですね。そういう意味ではすごく面白かったし、普段はやっぱり自分と感性の合う人と組むというふうになりがちなんだけども、彼はハリウッドでもやって、ハリウッドの映画とかにすごく造詣があって。私は演劇育ちだから、60年代の演劇とかマニアックなフランス映画が好きで、わりと共通言語がないんですね。

私が書いたものを見て彼が「はぁ? これの意味がわかりません」とかなって「何でこれの意味がわからないの」とかなりながら(笑)。それをどんどん、何度も何度もやっているうちに2人ともが「あっ、これはいいよね」みたいな瞬間を重ねて重ねて、何とか1本の脚本にすることが……。共同作業ですね。

司会:面白いですね。(自分と中島氏は)世代が近いと思うんですけど、我々世代と藤井世代っていうのが意見をぶつけあって、お互い足りない知識と知らない知識をぶつけ合いながらできた脚本だっていうことなんですね。

ざっくりと、テーマというか、この脚本を通じて訴えかけたいものって何ですかね? 若い2人の恋愛物語ということですけど。

中島:そうですね、翔君がさっき仰っていたみたいにラブストーリーを描いて、青春とか、ひと夏の中のかけがえのない一瞬みたいなことにフォーカスをしていって。もちろん私はそれを踏襲しながら書くんだけれども、私はそれを見守っている人たちにも重きを置きたいなって思ってて。

誰かがちっちゃな課題を乗り越える時っていうのは、それはその人でしか乗り越えられないんだけど、だからって助けを出してくれる手がなくても、手を出さないで頑張って、そっと見てくれてる人がいる。っていう人たちがこのドラマの中には沢山出てくるので……。「あっ、この人見守ってるね」っていうのを見て欲しい(笑)。

司会:なるほど。そうするとキャストの皆さんの演技にも注目していただいて、若い2人の周りにいる人たちの動きも、脚本家としては見て欲しいっていうことですかね?

中島:そうそう。

物語をセリフではなく画で表現する

司会:ありがとうございます。さっきから頑固頑固と声が飛んでいる藤井監督にお伺いしたいんですけども、頑固だっていうことで撮影にこだわった点など教えていただいていいですか?

藤井翔氏(以下、藤井):自分は自分の映画の拘りとして「物語をセリフじゃなくて画で表現する」っていう拘りがあるので。それは例えば役者さんの表情だったりとか、あとは先ほど言った照明だったりとか、その場の雰囲気ですね。これらを使用していかに物語を、セリフをいかに少なくしてっていうのでちょっと、中島さんとも……。

中島さん的には小説家なので、普段は文字で表現しているのをいかに画で表現しないといけないかというので結構ぶつかり合ったと思うんですけど、そこをちょっと拘りを持って……。

司会:ト書きの多い少ないみたいなところですかね? 脚本に半分、監督がいろいろ書き込んでいったんだろうな、っていう画が目に浮かぶんですけど。先ほど海外の映画祭に出していくっていうお話がありましたけど、監督自身はこれからどういう作品を撮っていきたいだとか、目標ってあります?

藤井:先ほど言ったように、日本の素晴らしさ美しさ、日本の文化を世界に発信していきたいんですけども、それを日本国内でやってしまったら意味がないと思っていて。日本国内の邦画だったら、日本の素晴らしさを表現している映画っていうのはゴマンとあると思うんですけど。

それが日本資本で言語が日本語なために、世界に行くことがなく、日本の中で埋もれてしまうっていうのがすごくあると思うので、これからどんどん世界に挑戦して世界に出て、向こうで日本の良さを少しでも、少しずつでも表現していけるような、表現の仕方をしていきたいという風に考えています。

司会:ありがとうございます。映像業界全体というか、日本の映像業界全体が今、仕事はいっぱいあるけど低コストみたいな感じで元気がないので、ぜひ藤井監督に海外へのパイプをつなげていただいて、業界全体が元気になればいいなぁと思っちゃいました。

永峰氏と松田氏の今後の展望

司会:そして永峰さんのほうも、今後お仕事上の展望であるとか、こういったお仕事します、とかあれば。

永峰絵里加氏(以下、永峰):今現状の私の仕事の話をしますと、NHK大河ドラマの「花燃ゆ」というのが放送中でして、今月いっぱいまで、打掛という重い着物を着ている御中老という役なんですけれども、そちらで出演をしております。10月からは深夜枠になりますが連続ドラマが決まりまして。そのための、この茶髪で、奈菜と全然違う雰囲気で今はやっております。

今後、私もやっぱり翔さんと同じで日本の文化だとか本当に美しいもの、世界にどんどん発信していきたいなぁっていう同じこと考えていますので、是非また仕事しましょう!

司会:ラブコール。シオンさんいかがでしょう?

松田シオン氏(以下、松田):僕は同じ時期にもう1本映画を撮ったので、それがもうそろそろできあがってくる時期なので楽しみにしているのと、いろんな事務所の関係でちょっと退いているので。ちょっと今自分を磨きつつ、新しいとこ探しつつみたいな感じでやっていきます。

司会:じゃあ、藤井監督もはやく次の映画の脚本をあたためていただいて、活躍シーンが見たいですね。

松田:はい、ぜひ。

映画で大切な金魚をどのように選んだのか?

司会:ありがとうございます。そろそろお時間ですので、会場の皆様から質疑応答ということで、ご質問など受けたいと思うんですけど。急にご質問と言ってもアレでしょうから、ご質問に限りなく近い感想でも結構でございますので、どなたかご質問がある方、手を挙げていただければと思います。いかがでしょう? 技術的なことでも大丈夫です。

質問者:どうやって役を選んだかという話があったんですけど、金魚なので、特に写真とかによく出てくる金魚さんをどうやって、金魚役を選んだのかすごく気になりました。

司会:監督どうなんですか? 金魚、例えば「どこで買ってきた」とか「すげぇ拘り持って選んだ」とか。

質問者:全部同じ1匹ですか?

藤井:金魚は、物語の中では「昔ながらのお祭りの金魚すくいですくった金魚が大きくなっている」っていう設定なので、その金魚すくいがすごく重要だったんですけど、実際に夏祭り、自分の地元の仙川という町で夏祭りに行ったら、奇跡的に金魚すくいが去年からなくなってしまっていて、急きょまた違うところで撮影したり、スタジオの中で撮影したりっていう、結構難しいとこだったんですけど。

大きい金魚に関してはプロダクションデザイナーの橋本さんという方にお願いをしてキャスティングをしてもらいました。

司会:じゃあ本当に金魚は現場のあるもので撮ろうとしていたんですね。現場にあるもので撮ろうとしたら、現場に金魚すくい自体がなかったっていう。映画製作の大変な裏側を垣間見ましたけれども。

一番難しい「コメディー」に挑戦していきたい

司会:他に何かご質問等ございましたら、もう本当に軽いことでも結構でございますので、この機会に聞いていただければと思いますがいかがでしょう? 挙手をいただければと思います。

質問者:ラブストーリーってさっき言っていたので、今後も何かそういうラブストーリー中心でつくっていかれるのかな、っていう。次、具体的に「こういうのやりたいです」みたいなの、考案じゃないですけど頭の中にあれば知りたいなと思って。

司会:いかがでしょう? 次回作、具体的な構想とかってありますか?

藤井:自分がなぜドラマをつくり続けているかというと、どの映画の中にもドラマっていうのは必ず存在していて、映画の、物語の基盤となっているドラマを極めないと、次のジャンルに挑戦していくのが難しいのかなというふうに考えているんですけど。

次、ジャンルで描きたいなと思っているのはドラマティックコメディ。ドラマとコメディ「ドラマがあってコメディがある」っていう……。コメディってジャンルの中で一番難しいとされているので、結構今回挑戦してみたんですけど。

実際、撮影現場では皆爆笑の嵐で面白くても、編集室に入ったらそこまで面白くないってのがあったりとかして「やっぱりコメディは難しいんだな」っていうのがあったので、そこをどんどん挑戦していきたいなと思っています。

司会:ありがとうございます。では僕からなんですけど、監督的には例えば「尺の短い2分のショートもの」とか「30分のテレビドラマ」とかいろいろあるじゃないですか。監督的にはやっぱり「2時間とかの超大作映画」みたいな方向で撮りたいんですか?

藤井:そうですね。予算があれば90分でも。

司会:90分でも120分でも240分でも……ちょっと長すぎる?

藤井:90分は描きたいですね。

司会:なるほど。予算があればということなんで、ちょっと、ルシアプロデューサーとよく相談していただいてということで。

藤井監督が日本の良さを伝えたいと思ったきっかけとは?

司会:もうご質問のほうはよろしゅうございますか? 何でも聞いていただければ。逆に「これから映画をつくりたい」っていう方がいたら、藤井監督に「これをこうすればいいよ」っていうのを一言アドバイスをもらえるいいチャンスだと思います。

質問者:素敵なお話をありがとうございます。また、ご招待いただきありがとうございます。藤井監督にご質問があります。今お話しいただいたんですけども、日本の文化ですとか、日本の良さっていうものを今後この映画ですとか、今後海外にも伝えていきたいっていうことをお話いただいたんですけども、そのエピソードだったりとか、なぜそういう風に思ったのかっていう、きっかけとなったものがありましたら、教えてください。

司会:これちょっと聞きたいですね。藤井監督っていうとデジタルハリウッドの中ではやっぱ「アメリカから帰ってきた」っていうところが一番キャラクターの立っている部分で。どうでしょう?

藤井:自分が一番最初に行ったのが海外、カナダなんですけど。カナダの高校に行って、カナダのバンクーバーだったんで、本当にいろんな国からいろんな人種が集まる街なので。そんないろんな人と話す中で、やっぱり皆、自分の国だとか文化とか習慣とかにすごい誇りを持っていて。

自分の国、例えば「ドイツではこうだけどお前の国はどうなんだ」みたいな話が本当に毎日のように繰り返されていて。その中で例えば日本の「おもてなし」だとか、日本の、例えば宗教だとか……。日本のことは、日本人として当たり前のことは知っていても、深ぼった時に、日本のことって全然知らないんだなって思ったのがありまして。

それがすごい悔しくて。「イタリアではどうだ」「ドイツではどうだ」みたいな話をしてる中で、日本人の自分だけすごい取り残されている感があって「これじゃあいけないな」と思って。

向こうの人って、本当に日本人でも韓国人でも中国人でも皆アジア人、みたいな感じで。「アジア人はアジア人でしょ」みたいな感じで、日本人としての誇りが弱いがために、日本としての特徴的なところが強調されて、向こうの人に知られているのが少ないっていうのがありまして。

「まだ侍っているんでしょ」っていう話をよく聞くと思うんですけど、そこまではいかないにしても、日本のことを知らない人が本当に多すぎて。そんな人の考え方をちょっとでも変えて日本を好きになってもらって、日本に遊びに来てもらえるような、そんな人たちが1人でも増えればなという風に思ったのがきっかけです。

質問者:ありがとうございます。

司会:ありがとうございます。海外経験が長いというか、「海外から日本を見られている」ということで、藤井監督自身の日本人としてのアイデンティティができていった結果が、そこに繋がっているということですかね?

藤井:はい。

司会:ということで、ありがとうございます。というわけで9時になりましたので、この後はいよいよ、お楽しみの本編の上映といきたいと思います。最後に檀上の皆様にもう1度、拍手のほうをお願い致します。

(会場拍手)