論理的なパブリシティー獲得の方法の一例

大堀航氏(以下、大堀):質問を随時いただきたいなと思うんですけど、何でもいいですよね?

神村優介氏(以下、神村0:はい。何でも大丈夫です。

大堀:ご質問のある方いらっしゃいますか?

質問者:興味深いお話ありがとうございました。先程のアメリカのPR会社の場合は企画の立案の時にデータドリブンだっていう話があったんですけど、実際にどういうデータをどういうふうに使っているかを、もしお分かりになれば教えていただきたいなと思います。

神村:データドリブンって言ってたところは、詳しいところは正直、企業秘密で教えてもらえなかったんですけど、1つやってるのは日本でも日経テレコン使ったりとか、テレビもメタデータがあるように過去に放送されたデータって山ほどあると思うんですけど。

それを日本だと人力で探さないといけないですよね。署名記事だからこの人にアプローチしてみようとかってあると思うんですけど。それを効率的に自分たちのツールを使って、こういうトレンドなので今からだと、こういうのができるよみたいなことをやってることが1つ。

大堀:だからPR会社にもエンジニアがいるんですね。

神村:そうです。ネタ作りをそこでデータをしっかりやろう。過去実績から収集しているところがまず1つと、これもやっぱり企業秘密なので教えてくれなかったんですけど、彼らは「どのタイミングで、どの記者にどう送ったら一番メールが開かれるかは知っている」って自慢げに言うんですね。

胡散臭いなぁと思ったんですけどね。でも、そういうツールを自分たちで開発してるんですよ。

どのタイミングで、どういう記者に、何を送って、それを送ったからそのときはこれだけ開封された、みたいなデータを持ってて。これを送って、このタイミングで送ったやつは記事になったていうのを全部データ化してるんで、結局どのタイミングでどういう記事が刺さるとか、それを持ってこの担当の人は同じ時期になったら同じものを探すだろうと予想をつけて当てにいくみたいな。

そんなトリッキーなことをやっていたところがデータドリブンというところで、日本でいうと理系的な、すごく論理的なパブリシティーの獲得の方法をやってたなぁというのが印象的でした。

質問者:ありがとうございました。

スタートアップの流行は一過性のものか

大堀:ありがとうございます。他に質問は?

質問者:シリコンバレーのことで少しお伺いしたいんですけども。スタートアップがすごく普通にあるという感じだと思うんですけど、それはシリコンバレーだからこそ無いと思うんですけど、少し流行りみたいなところがあって、それが一過性のものなのか継続していくのか、スタートアップの次の芽みたいなものが出てきているのかどうかっていうところが知りたいですけど。

昔はインテルとか大きい会社ばっかりだったのが、今そういうスタートアップが流行ってると思うんですけども、日本にもスタートアップが流行りなのかどうかみたいなところを言われてると思うんですけども、シリコンバレーではどうなのかなというところ教えていただければと思います。

神村:日本でも今投資されるケースが多くて、流行りと言ったら本気でやってる人には失礼ですけど、ブームというか流れが起きてますよね。日本だと最近頑張ってるねっていうレベルなんですけど。

向こうではその頑張ってるねのレベルが、日本でいうとプロ野球のイチローみたいな人がメジャーリーグに挑戦するような感じで、世界中からあそこに集まってるんですね。だから文化になっているっていう意味で言うと、じゃこれは10年後同じことをやっているかといったら、形態は変われどもやっぱりやってるんじゃないかなぁとは思いますね。

それが逆に言うと派生してきてて、例えばアメリカだと、オースティンなんかもITのスタートアップが集まってきたりしてるんでそこの中で、波及していくのはまだどんどん伸びているところなんじゃないかなと思います。

質問者:ありがとうございます。

大堀:スタートアップやってる人って若いんですか?

神村:日本人から見て西洋人って何歳かわからないですよね。若いかどうかはわからないですけど、でも若いですよ。どこかで働いたことがある人もいれば大学生っていう人もいるんで。

大堀:何かの記事で見たんですけど割と平均年齢をとると30中盤以上かみたいな。割とずっとサラリーマンやってやるみたいな人も多いって見たので。

神村:それはそうですね。ここの真ん中に写っているのは、日本だとロケットスペースが有名だと思うんですけど、ハッチっていうサンフランシスコでチャットワークが借りている所なんです。ここにいる人を見ると30いくつぐらいの人が多かったなぁと思います。

ちなみにPR会社で働いている人はちょっと年上というか、たぶん40ぐらいの方が多いといます。やっぱり独立したりとかってなると若い頃はいいんですけど、独立してる人は大体40ぐらいの人でないとリレーションができないと思います。

PRパーソンの経歴に傾向はあるか

大堀:ありがとうございます。他に質問は?

質問者C:今さっき言われたことと関連するんですが、今転職がさかんになる頃で特化型のPR会社ってすごい大変なことだなと思っていて、特化をするってすごい経験をつまないといけないし、どういうバックボーンで仕事をされている方が多いのかなと思って。PR会社に行く人ってどういう入り方をするのかなとか、ご存じであれば。

神村:これはもう全然統計をとったりしたわけではなくてミートアップなんかでLinkedInで繋がった人の経歴って結構書いてあるんで、それを見たところで勝手な私の直感で言うと、いろんな方がいます。

例えばライターをやってて、そこからPRの世界に入ってきた人もいれば、実際にGoogleなんかでPRをやってて自信をつけて、もっともっとたくさんPRをやりたいからPR会社に入るている人もいますし、ずーっとPR会社畑で来た人もいるぐらいなんで、そこは日本とそんなに変わらないんじゃないかなぁと思います。

日本だとPR会社から事業会社へみたいなところがありますけど、向こうは逆もあるみたいで。PRがやりたいのか、事業をグロースさせたいのか、その人のやりたいことがあると思うので、そこでは逆もあるのかなと思いました。

質問者:後もう1個お聞きしたいんですけど、ユーザーリレーションって具体的にどのようなことをされるんですか?

神村:うちの会社ですか? 例えばですけどユーザーイベントをやって、もちろんメディアも呼べればいいんですけどそれだけじゃなくて、インフルエンサーまではいかなくても影響力のある方々をちゃんとお呼びして、商品をちゃんと使い込んでもらって、離れてると使いにくいということがあると思うので、そういったところをリアルの場でしっかり押さえておくことをやる。

要は、サービスとユーザーの関係性を作るユーザーイベントの一環だと思ってもらえればいいと思います。

質問者:シリコンバレーもそういうことをされてる様子がありましたか?

神村:そうですね、ユーザーイベントは頻繁にやられているので、そういう意味ではやられているんじゃないかなと思います。実際にこの企業がやってましたというのはわからないですけど、単純にWebでイベントは全部調べられるですけど、Meetupとか、EventBriteというアプリあるんですけど。

そこで調べると「なんとかの使い方」みたいなとか、「Slackの使い方ビジネス編」みたいなのとか、そういうのをやってるんで。そういう意味ではユーザーイベントは頻繁にやられているんじゃないかなと思います。

質問者:ありがとうございました。

広告モデルには限界がある

大堀:他にご質問がある方はいらっしゃいますか?

質問者:貴重なお話ありがとうございます。今回ブログを拝見させていただいたんですけども、ベンチャー企業さんに突撃アポをされていたと思うんですが、その中でイベント部門が今後おもしろくなるという点と、アジア、日本のベンチャーに対して、ジョーダンさんでしたっけ? なかなか興味が無いという点とその2点についてもう少し掘り下げてお聞きしたいなぁと思いました。

神村:なるほどありがとうございます。イベント部分がおもしろくなるというところは、すいません、そこの部分は私がそこまで英語がバリバリ喋れるわけじゃないので、突っ込んで聞けなかったんですけど。これはVentureBeatに聞いたわけじゃないですけど、広告モデルは限界がやっぱりあると。

日本だと記事広告とか当たり前のようにやってますけど、向こうは記事広告に価値を感じてなくて、「あくまで広告でしょ」っていう、「それはメディアとして恥だよね」みたいなところも思っている方がいるので、そこでいうと収益源を広告以外で取ってくると考えたら、イベントをしっかりやっていくとか、そういったことで収益を得ていく。

しかも集まりやすい場所じゃないですか、サンフランシスコって。みんなが行ってみたいし、絶対にここに来たらいい情報があるって。そういう意味で言うとイベントが熱いっていうことを語られていたと思います。

もう1つのアジアに関して、それは単純に自分が担当じゃないからっていうことです。「私はこういう意見だけど会社としてはそうじゃないかもしれないから、余計な事は言いません」ていう感じでした。ただVentureBeatとしても、アジアですとか翻訳なんかもちゃんとやって、広げていくのはやりたい。

だけどそれはシリコンバレーの情報を伝えることが自分たちの得意分野なので、アジアの企業を取り上げて、VentureBeatと言っても投資家とのスタートアップを結びつけるものなので、それができるかって言われたら、たぶんメディアとしてはそこに価値はないので、まだあまり考えてない感じです。ただ狙っていることは間違いないんじゃないかなと思いました。

質問者:ありがとうございます。

KPIは会社やケースによってさまざま

大堀:では、時間も迫ってきたので、あと質問2つくらいですかね。

質問者:ありがとうございました。先ほどちょっと聞き逃してしまったことがあるんですが、KPIのことなんですが日本はパブリシティーを獲得することが目的であって、一方でシリコンバレーではというかアメリカでは、広いリレーションを得ることが目的で、どうKPIを設定して、成果が出たところでクライアントにどういうふうに提示をして、リレーションを獲得できたのかできなかったのか、どういうふうに提示しているのかなっていうところを、ちょっと詳しくお聞きしたいと思います。

神村:KPIに関してなんですけど、正直PR WEEKとかそういうPR系の媒体を見てても、ご存知の方はわかると思うんですけど、結局何で評価したらいいのかはわかりませんていう記事があるんですね。それと一緒に向こうに行って、どうやってやってるのって言ったら、「それは課題なんだ」っていう事は言ってました。

ただできることってあるよねっていうところで、例えばユーザーリレーションをすごく重視するんだったら、FacebookとかTwitterでのシェア数なんかをKPIにしていかなきゃいけないし。例えばインバウンドで人を集めたいって言うんだったら、サイトのPV数だとか、フリーサインアップの数だとか、そういうところにKPIを置いていくべきかなと言ってました。

本当に会社それぞれで、記事の数がKPIなんだって言ってるところもありましたし。プレゼンではいわゆる広告換算価値に関しては触れられるんですけど、1個1個広告換算価値をレポートしていくことに価値を感じているかっていうと、そういう感じはしなかったです。逆にスタートアップに対してやってるんで、それで投資家が何人来たとか、会社のフェイズとあって、PRの目的においてKPIを1個1個違うものを設定しているのがなんか印象的でしたね。たぶんそれはもう本当に今からPR業界がずーっと考えていかなきゃいけない課題なんじゃないかなーとは思いますけど。KPIに関しては。

質問者:ありがとうございます。

KPIは積極的に提案していく

大堀:お客さんによるっていうことですよね。

神村:そうです。お客さんとのフェーズと何がしたいかということだと思うので。

大堀:SNSのシェア数でいいよって言うところもあるし、いや記事出しまくれみたいなお客さんがいるかも……。

神村:逆にPR会社のほうが結構言ってきますね。戦略をすごく重視するっていうことは、「今回は一番これを目的にPRをやるんだから、だからこれをKPIにしようよ」みたいなことは言うって言ってました。

大堀:そこでお客さんをちゃんと握ってるっていうことですよね。

神村:みたいですね。具体的にどういうトラブルであるのかは、入ってみないとわからないのでアレですけど。

大堀:結構トラブル系の記事をよく見ますよね。英語でもPR会社を信用するなとか。フィー払ってるのに成果がでないとかって、たぶんなんか日本と一緒な感じなのかなとは思ったんですけど。

神村:そこは逆にこれだけ高いお金を払ってるんで、結構言われると思うんですよ。そういう意味では彼らも苦労しているところなんじゃないかなぁと思います。

最初は自分たちでPRをやるのも大事なこと

大堀:では最後の質問。

質問者:よろしくお願いします。自分はサービスをやっている会社で1年目の第4クォーターぐらいのタイミングで、7人でやっているベンチャーなんですけど。

先ほどお話の中に3人、4人の段階でもPR会社を使っていくみたいな話をされていて、日本の資金調達を受けてない会社さんが、なかなかありえないかなと思っていて、僕も事業価値を上げつつ勉強していきたいなと思って今日聞きに来たんですけれども。

その辺の境目というか、文化の違いっていうか、例えば日本のスタートアップだとこういう使い方や試し方、いろいろそういう話が聞けたらいいなぁと、質問が曖昧で申し訳ないんですけど、その辺の違いを教えて欲しいなと思います。

神村:それは先程のミートアップでも、参加者から質問があって「私たちのような小さい会社は、PR会社に払うような費用を払えないけど、でもPRをやっていくにはどうしたらいいんだ?」っていう質問はしていました。

それに対する回答としては、すぐにPR会社を使うことは、それは得策ではないと。むしろ社内でPRについて何をしたいのかとか、本当にお金も稼がないといけないと思うので、逆に自分たちでPRをやるのも大事だって言ってました。

そこから逆にPRを最初に考えて、そこにいろんなマーケティングの施策を入れることをやっていって、最後はPRに対してもっともっと露出をしていかないといけないときに、成功例を含めて教えてもらう意味でPR会社に発注すべきだとは言ってました。

質問者:ありがとうございます。

神村:ちょっと答えになってないかもしれないですけど、その辺は難しいところだと思います。

大堀:ありがとうございます。これから名刺交換とか、交流する時間があるので何か追加で質問があれば神村さんにご質問いただければと思います。ではイベントのほうはこれで終了させていただきますので、本日は神村さん、ご登壇いただきありがとうございました。

神村:ありがとうございました。

(会場拍手)