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恋愛と資本主義が私たちに見せてきた幻想とは

恋愛と資本主義が私たちに見せてきた幻想とは

「いつか白馬に乗った王子様と結婚して、お城でいつまでも幸せに暮らす」。世界中の女の子が夢見る、ディズニーアニメの白雪姫やシンデレラのようなラブロマンスのストーリー。このような「本当に愛する人に巡り会ったときに、より良い将来が訪れる」といった考えは現代的な恋愛観であり、資本主義社会によって搾取される危険な罠だと異性愛の社会学を専門とするLaurie Essig(ローリー・エシッグ)教授は語ります。資本主義は、私たちに世界観やロマンスを売り、それによって、私たちはファンタジーを優先して戦争、貧困、差別といった問題から目を背けてきました。ロマンスは、お金持ちであろうと貧乏であろうと、黒人でも白人でも、異性愛者でも同性愛者でも、報われることを約束する“希望”として売られ、大勢の人がそれを買い求めます。結婚はブランド品の時計のようなステータスシンボルとなり、ウェディングドレスやダイヤモンドの指輪を消費する結婚の費用は、かつてないほどに高額になっています。しかし、より良い未来のためには、自分自身のみが幸せになることから離脱しなければなりません。燃え上がるようなロマンスは本当に自分や恋人、友人、家族、世界にいる大勢の人たちを幸せにするのか。改めて考えるべき時が来ているのかもしれません。(TEDxVienna2014より)

スピーカー
ミドルベリー大学 教授 Laurie Essig(ローリー・エシッグ) 氏
参照動画
Love, Inc. -- how romance and capitalism could destroy our future | Laurie Essig | TEDxVienna

女の子たちはプリンスと結婚することを夢見てきた

gazou 1 (世界中の人が集まった) ローリー・エシッグ氏 2011年の晴れた暖い日、私は、ロンドンの中心でウィリアム王子とケイト・ミドルトンのロイヤル・ウエディングに集まった群集の中にいました。 周囲の人にインタビューをしながら、人々の歓喜と将来への明るい希望に心打たれました。ウィリアム王子とケイトのみならず、自分たちにも明るい未来を見ているのでした。 「ケイト・ミドルトンは平民なので、誰でも王子と結婚できるのだ」と話す人もいました。 (会場笑) ある女性が言いました。 「この女の子は今日プリンセスになるのよ。だから盛り上がっているの。彼女は、今朝起きて、足のムダ毛を剃っているとき、どんな気分だったのでしょう? わー! 私はプリンセスになるのよ! と思ったのかしら!?」 (会場笑) 彼女のおしゃべりは続きます。 「ケイト・ミドルトンは、私たちと同じように普通に育ったのよ。みんな、プリンスと結婚することを夢見ているわ。そう私たちはみんな、そんな夢見てきたの」。 gazou 2 (ある日、私の王子様が来る) この女性同様、私も真実の愛と「その後、いつまでも幸せに暮らしました」という物語を信じて大人になりました。 ディズニーのシンデレラや白雪姫を、貧乏で虐げられた状態から、空にそびえる白い城へたどり着く方法を示した説明書のつもりで観ました。 (会場笑) 子供の頃、私もいつかは不安のない、より良い将来へと導いてくれる誰かと、夕暮れに馬に乗っているだろうと確信していました。(話しながらため息をつく) (会場笑)

ロマンスは現代的なものである

でも、ロイヤルウェディングの頃には、愛が自分を救ってくれるだろうという考えは捨てていたことを認めざるを得ません。ロマンスに関しては、ずっと前から信じていませんでした。 gazou 3 (顕微鏡でみたロマンス) でも、ちょっと待ってください。私がこう考えたのは、恋愛がうまくいかなかったからではありません。事実、最良のパートナーがいます。このように考えたのは、自分の仕事からです。 私は、大学教授で、異性愛の社会学を20年間教えてきました。ロマンスについての本も書いています。 その関係で、ロイヤル・ウェディングや、イタリアの『トワイライト』のロケ地を訪れたり、結婚式を計画している北米の若者のインタビューをたくさん行いました。 (会場笑) ロマンスについて、教えたり、本を描いた数年間で学んだことがあります。 gazou 4 (その後、いつまでも幸せに……ではない) 最初に学んだのは、ロマンスは現代的なものであるということ。もっと、古い時代にロマンスという考えがなかったわけではありません。 例えば、『グィネヴィア』と『ランスロット(アーサー王と円卓の騎士たちの不倫話)』や『ロミオとジュリエット』の物語があります。 でも、考えてみてください。このようなロマンティックな物語に結婚はなかったのです。騎士と王の妻である妃であったり、家族の意志に背いたロミオとジュリエットであったり。現代以前のラブストーリーは、大抵ハッピーエンドではありません。 (会場笑)

資本主義は恋愛感情を商品化し、お金で買えるものにした

gazou 5 (現代のロマンスの母) 大勢の人の中から、たった1人、本当に愛する人に巡り会ったときに、より良い将来がある。心が震えるほど高揚し、キスをすると、背後で花火があがり、結婚。そして末永く幸せに暮らすといった、ロマンチックな恋愛は、すべて現代的な考えであり、1800年代以前にはありませんでした。 現代的なロマンスの考え方は1850年頃に始まりました。この女性、エスター・ハウランドがマサチューセッツ州ウォセスターでバレンタインデーのカードを作り始めた頃からでしょう。 gazou 6 (大量生産された感情) 彼女は一生独身でしたが。 (会場笑) ハウランド女史のバレンタインデーカードは、ロマンスについて知るべき最も重要なことの代表です。それは、資本主義とともに誕生したということです。 資本主義は私たちの感情を商品化して、お金で買えるものにしました。ハウランド女史がビジネスを始めたときから、資本主義とロマンスはベッドを共にしてきました。

資本主義はロマンスなしには存在しなかった

gazou 7 (ロマンスは大衆の麻薬) 資本主義の物語は、常にラブストーリーでした。資本主義は、私たちに世界観やロマンスを売り、それによって、私たちはファンタジーを優先して物質的現実を無視してきました。 ところが、資本主義研究者のほとんどは、ロマンスにあまり注目しませんでした。カール・マルクスは、生産様式の変化から資本主義が発生したと考え、マックス・ウェイバーはプロテスタントから発生し、彼の急進的な考えは「神が我々に利益を追求することを求めている」としました。 しかし、真実を言えば、資本主義はロマンスなしには存在しなかったのです。資本主義とロマンスは油を充分に注した機械のように効率的に機能しました。 将来報われるために、今、懸命に働こうと説得するこの機械を、Love Inc.とでも呼びましょうか。この場合、報酬は必ずしもお金や物質的なものではなく、心から愛する人に出会って、末永く幸せに暮らすことです。 そのためには、ロマンスにふさわしい歯磨きや服、婚約指輪やウェディングドレスを買わなければならないのです。そんな将来のためには、適切なTEDトークを観なければいけないかもしれません。 (会場笑)

ロマンチックな恋愛は自然なことではない

gazou 8 (鳥は恋に落ちない) 現代的なロマンスについて次に学んだのは、自然ではないということです。 (会場笑) コール・ポーターが言うには、鳥もハチも、教育を受けたノミすらも恋に落ちるそうです。 (会場笑) でも、私はそう思いません。ロマンチックな恋愛は幸福へと導く道だと信じることから始めなければいけません。他の神ではなく、1つの神を信じるようなものです。 生まれたときから、白いウェディングドレスが欲しいと思う人はいないでしょう。平均的な値段が1,300ドルするドレスです。 (会場笑) あるいは、5,600ドルくらいするダイヤモンドの指輪やバレンタインデーの贈り物やカードなど。アメリカ合衆国で、それに費やされるお金は、年間176億ドルです。このような物を欲しがるように、教育されなければいけません。 恋に落ちることは、自分の周囲の人から学んだり、文化から、映画から、ラブソングから、ロマンス小説から学びます。法律という形で、政府からも学びます。 例えば、結婚できる人とできない人がいたり、結婚に付随する権利や特権などがあるからです。それから、もちろん現存する経済は、モノを売るためにロマンスが必要だからです。 gazou 9 (ロマンスは煙幕) このことが、ロマンスについて学んだことの第3点目へ導いてくれました。 私たちに必要なのはラブだけとか、誰もが恋に落ちるものだとか、ロマンチックな恋愛が自然なことであるという、煙幕の裏に隠されているので、その裏でどんなイデオロギーの操作が行われているか、見えにくくなっています。

結婚はステータスシンボルになっている

ロマンスは、他のイデオロギーにあるようにプロパガンダです。「恋は盲目」というような、ちょっとしたスローガンで、未来に対して楽観的な感覚を持つような罠が仕掛けられています。 そのため、富の分配や環境問題にたいして注意を払わなくなります。 (会場笑) gazou 10 (恋は盲目ではない) でも、恋は盲目ではありません。合衆国の結婚を観察してみると、自分の社会階級外や異民族の人と結婚するのは稀です。 今日アメリカでは、結婚は主に差別化やロレックスの時計を身に着けるようなステータスシンボルになっています。 ところが、大卒・白人・裕福な人にとって、結婚はオプショナルになっています。少数派のアメリカ人は結婚していますが、ヨーロッパでは結婚している人がもっと少なかったりします。

貧困、差別、平和の問題よりもロマンスを優先させてしまう

gazou 11 (恋は無料ではない) それのみならず、結婚式はかつてないほどに高価になっています。不況下でありながら、アメリカの結婚式の費用は上昇を続け、現在は30,000ドルです。ニューヨークなどの大都市では、その2倍あるいは3倍で、平均は86,000ドルです。 これを念頭に入れて考えていただきたいのですが、アメリカの世帯所得の中間値は52,000ドルほどです。黒人の家族では、38,000ドルほどです。 gazou 12 (伝統的な家族像) たとえ、愛する人を見つけて、完璧な結婚式を挙げたとしても、ロマンチックな恋愛の結果が末永く幸せな理想の家族になるのは稀です。 戦後のアメリカでは、結婚して郊外に白いフェンスのある家を買い、子供は2、3人という夢がありました。政府はこの夢のために、帰還兵には金利ゼロの住宅ローンを提供して補助したこともあります。しかし、この核家族は、現実を生きるというより、揺らめく蜃気楼のようにはかないものでした。 保守的な時事解説者が伝統的な家族を誤って核家族と呼びましたが、それは実際、核の時代の産物でした。当時、両親と子供たちで構成される家族はわずか40パーセントでした。今日、それは20パーセント未満です。 ほぼ誰も持つことができない理想を売ることによって、私たちにロマンスは探し続けるものだと思い込ませました。ハッピーエンドを探し続けよう。適切なパートナーを見つけるまで、または、良い家、良いフェンスを見つけるまで。 gazou 13 (必要なものは愛だけじゃない) 恋は盲目でないばかりでなく、恋愛は必要でもないのです。アメリカでは、45,300万人の人が貧困の中で暮らしています。 5人に1人の子供は貧困の中にあります。必要なのは、充分な食糧、住居と水です。やりがいのある仕事と暮らすのに充分な賃金です。気候変動を避けるために、燃料を節減しなければいけません。人種や性差別を無くさなければいけません。平和が必要です。 たとえ、自分の末永い幸せを見つけたとしても、将来生き残れないかもしれません。「ロマンスがより良い未来へと導いてくれる」と信じてしまったため。膨大な時間と資源を私たちが直面している難題に使わず、パートナー探しに費やしてしまうのです。

ディズニーはロマンスに力を入れることで復活した

gazou 14 (レーガノミクスのロマンス) そして、これがロマンスについて学んだ4番目のことに繋がります。ロマンスは私たちの将来を破壊するかもしれません。 ロマンスは、私たちが明日を楽観視するように仕向けるかもしれませんが、コミュニティや地球レベルでの問題解決が急務であるときに、私生活の行き止まりに追い込みます。 どうしてそうなるのでしょう? 何故、未来をわかちあうことをやめて、自分だけのハッピーエンドに固執してしまうのでしょうか?  これは新種の資本主義によると考えています。教育から医療、私たちの将来まで、すべてを民営化する、新自由主義と呼ばれるものです。 アメリカでは、この新種の資本主義はこの人、ロナルド・レーガン政権から始まりました。レーガンの経済政策が確立されると同時にロマンスも確立されました。 gazou 15 (チャールズとダイ) レーガンが政権を取ってから7か月後に、プリンス・オブ・ウェールズ、チャールズ王子がダイアナ・スペンサーとおとぎ話のような結婚式を挙げました。これは、おそらく単なる偶然ではないでしょう。 全世界の7億5千万人の人々が結婚式を見守りました。BBCの解説員が言いました。 gazou 16 (ディズニーはロマンスを再発見した) 「まるでウォルト・ディズニーの世界のような、おとぎ話のファンタジーのよう」。 ディズニーといえば、1980年代にはあまり振るわなかったのですが、ロマンスに力を入れることで復活しました。 非ロマンス系の『ミクロキッズ』や『オリバーニューヨーク子猫ものがたり』のセールスが惨憺たる結果だった後、ディズニーはロマンチックなルーツに戻り、1989年には、『リトル・マーメイド』、『プリティ・ウーマン』の大ヒットをとばしました。 みなさんもご覧になられたと思いますが、どちらの映画も恋は盲目であり、たとえ家族やコミュニティを完全に捨て去っても、愛がより良い未来に導いてくれるというテーマです。 (会場笑) この2つの映画で、ディズニーの利益を35パーセント増、売り上げのほぼ87パーセントはビデオ販売が占めました。ビデオが何かをご存知ない人は(小声で)調べてみてくださいね。 (会場笑) gazou 17 (アメリカの所得不平等) レーガン的経済政策から数十年後の現在、上位10パーセントが80パーセントの富、上位1パーセントが所得の47パーセントを支配しています。 世界の富の集中を研究者している経済学者が指摘しましたが、利益の不平等は経済成長に有害であるばかりでなく、政治のプロセスが利益と富を持つ少数のエリートに占領されるでしょう。アメリカの政界では、既にその結果が現れているようです。

富の分配はロマンスによって引き起こされた

gazou 18(ロマンスは救いではない) このような富の分配が起こったのは、ロマンスが私たちの将来を民営化するようにたぶらかしたからです。 ハッピーエンドを願うのであれば、人々の力を合わせて実現することを考えるのではなく、恋の力でより良い世界に行こうと思ってしまうのです。 これは、資本主義とロマンスの陰謀ではなく、単にロマンスが新種の資本主義のために、情緒的な役割を担っているということです。それは、まるで魔女が世界を破壊しようとしたときに、プリンセスが王子様の傍にぴったりと寄り添うように、私たちはロマンスにすがりついてきたのです。 gazou 19 (プリンスがいない、パニック! 落ち着いて。あなたのプリンスはやってきますよ) 恋愛について目を向けるのは価値あることでしょう。何故ならそれは、自然でもなければ、普遍的でもないからです。ロマンスは、現実に立ち向うのではなく、ファンタジーの中にいなさいと教えます。お金、離婚、幸福感の減少などは頓着されません。 パーフェクトなロマンスを探し求めることに時間と労力を費やし、地球の気候変動や多数の人々を犠牲にして、世界規模で極少数の人に富が再分配されていることは無視されます。 ロマンスは、誰にでも約束します。お金持ちであろうと貧乏であろうと、黒人でも白人でも、異性愛者でも同性愛者でも、報われることがあるのだと。 あなたが老人で、恋愛で何度も、何度も、何度も失敗していても、諦めずに求め続ければ、あなたのプリンスやプリンセスは必ず現れると。 (会場笑) あなたが、貧困にあえいで、抜け出す方法がないとしても、いつかプリンスと結婚するかもしれないことを想像しなさいと。

自分だけの幸せから離脱しなければいけない

gazou 20 (終わり?) おとぎ話のエンディングのような天国は、ルールに従えば、すぐそこで見つけられるでしょう。正しいロマンティックな市民であるようにお披露目しましょう。ロマンスにふさわしいモノを買いなさい。大勢の人がうっとりするのも頷けます。しかし、ロマンスのただ中で、目的や希望を感じるのも当然でしょう。 これが、ロマンスと資本主義の融合が強みを発揮するところです。希望が無くなっていく時代に希望が売られているので、それを買い求めるのです。これが、ロマンスについて最後に学んだことです。 ロマンスなんてものは存在しません。私たちは、Love Inc.を必要としていません。コミュニティとして、力を合わせて将来のために何かをすることで、希望を持ったり人と繋がっていると確信できるのです。それは、カップル単位ですることではありません。 より良い未来のためには、自分だけの末永い幸せから離脱しなければいけません。資源や情緒的なエネルギーを共同体の未来のために使わなければいけません。そして、Love Inc.に捉われることを止めなければいけません。 すでに申し上げましたが、これはラブストーリーではありません。しかし、私のスピーチで、未来は現在よりも良いに違いないという、深くロマンチックな確信を持っていただければ幸いです。 ありがとう。 (会場拍手)

  
※ログミーでは、TED Talksおよび各TEDxの定めるCCライセンスを遵守し、自社で作成したオリジナルの書き起こし・翻訳テキストを非営利目的のページにて掲載しています。
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