安保法制に反対する理由とSEALDsの活動

奥田愛基氏:SEALDsとは自由と民主主義のための学生緊急行動、さっきも言ってましたけど、Students Emergency Action for Liberal Democracy - sを日本語で書くとこうなっている。

今回の問題というのは単純にこの安保法制の問題だけではなくて、憲法をないがしろにしたままに法律を作ってしまうと。昨日の公聴会でも小林節先生がおっしゃっていたんですけど、「法の支配ではなく、法律の支配」という言葉を安部首相が使っていて、つまり法律と憲法がどちらのほうが優性を持っているか、どちらのほうが最高法規であるかということを現政権は理解していないと。

また「対案を用意しろ」とか、「安全保障上の議論があるので」という話もたくさんあると思います。しかし憲法上に大きな問題を抱えている法律がその中に含まれています。

11個の法案を2つにまとめて審議してしまったがために、安全保障上の議論がまともにできなくなっている状況になっていると。

このまとめられている状況下の中では、立憲主義、憲法の理念や、その根幹的な発想が理解できる人であれば、この安保法制には反対せざるを得ないと思っています。

現在では関西や沖縄の方で、また東海地方、東北で、今SEALDsは活動しています。全体で300人近い人が活動しています。

一応これまでの動きというか、簡単にまとめたものが、YouTubeに上がっているものなんですけど、動画があるのでご覧ください。

というかたちで、SEALDs自体は今年の5月3日に始まっていまして、ずっと前からあったような感じもするんですけど、実際は活動期間というのはこの4ヵ月間で、実際に抗議を毎週金曜日、国会前でやり始めたのは6月なので、だいたい3ヵ月間活動してきたということです。

はじめはですね、参加者も数百人しかいませんでした。なんですけど、今では10万人近い方が抗議に来られるような規模まで、今反対の運動というのは拡大しています。

よく言われることなのですが、SEALDsは若者がやっていて、デザイン性だったり、ああいう動画だったりとかですね、そういうのがあるから人々が集まっているという見方もあると思うんですけど、実際には僕の感覚としては、この政権のおかしさとか説明不足とか、この法案の欠陥というものが、これだけ人々の怒りに火をつけていると思っています。

安保法案は条文のレベルで欠陥がある

簡単に今、安全保障関連法案に反対する理由を述べたと思うんですけど、先ほどから言ってますように、憲法上の問題ですね。集団的自衛権の行使の容認も、後方支援も、武器等防護にしても、これは明確に他国の領域においての武力行使なので、これらすべて現行の憲法に照らし合わせると、憲法上の問題があると。

最高裁元判事の方も昨日中央公聴会に来て意見を述べられていましたけど、ある程度の憲法学、もしくは法律のトレーニングを受けている方の90パーセント以上の人は、明確に「これは違憲である」と言っています。

「国連憲章に書いてあるから日本にも認められている権利だ」とおっしゃる方もいますけど、それはたった数パーセントの、この法案に賛成している憲法学の方ですが、一言で言ってしまえば、「国連憲章では認められているが日本国憲法では認められていない」と。それは小学生でもわかることだと思います。

またこれは法案の条文レベルでも問題がありまして、例えば新三要件の第一要件の存立危機事態についてはよく話されているのですが、第二要件、第三要件について明文化されていません。

また自衛隊法95条の今回の改正によると、主語が自衛官になっていると。現場の自衛官が総合的に判断して決める、武器の使用もするということなんですけど、実際には現場の自衛官が1人でイージス艦に立ち向かうなんてことはないわけですよね。

そこだけを見ても、この法案は条文のレベルで欠陥があると言わざるをえない。その他にもいろいろ法案の中身を追っていくと欠陥が見えてくるのですが、それもこれもですね、憲法を改正せず、このような無理な法案をつくっているので、条文上、このような実際にはあり得ないシチュエーションや、政府の説明とは食い違った法案の中身になっていると。

また政策レベルにおいても、軍事費をこれ以上上げないとおっしゃっているわけですが、兵站活動もして、他国に自衛隊を送ってですね、それで防衛費を上げないのであれば、結果的に自国の防衛という点では手薄になるのではないかと考えています。

このようなことは多分僕らでなくても、ここでいろんな方が会見で話しているので、これ以上詳しくは話しませんけど、法案は明確に憲法違反であって、これは単純に海外で武力行使できる国になるよりも問題が深いと思っています。まさにブレーキのない車状態で、このまま武力行使していいのかという危惧があります。

全国に拡大したデモ活動の動き

もう少し、SEALDsの団体というか、日本国内でどういうことが起こっているかを話したいと思います。

SEALDsが独自に新聞やインターネットの記事を通じて、いま日本中でどれくらい抗議活動が行われているかを調べました。

調べた結果、全国でこの数ヵ月間で2000ヵ所以上、累計して130万人以上の人がデモに参加していることになります。

特に先日の8月30日の国会前抗議には10万人きたことが記憶に新しいと思うのですが、その前後、8月30日に合わせて日本全国各地で1000回以上の抗議が行われていました。

10〜20代の比較的若い人たちがオーガナイズしているデモとか運動を調べてみたら、全国22ヵ所以上でそういう動きが今年の5月からありました。これは8月22日段階なんですけど、現在では倍近くになっているという報告を受けています。

若者たちによるデモ活動の特徴

もうひとつ特徴的なのは、彼らは自分たちで告知のフライヤーをつくっているんです。

日本でも、若者はスマートフォンをいじってばっかりで外に目が向かないとか、ゲームばっかりしているとかいうような偏見があるんですけど、逆にスマートフォンやパソコンの普及で、こういうデザインが誰でも簡単にできるようになったと。

僕たちがデザインしたものをインターネット上で公開していたり、日本各地のコンビニで番号を入力するだけで、印刷できるようになっています。

いま全国各地で同じようなデザインのプラカードを使っているわけなんですけど、それはなぜできているのかと。いまの日本の社会運動のインフラはなんなのかと言われたら、コンビニのネットプリントなんじゃないかなと最近は思っています。

こういうデザインがネットに上がっていて、誰でも印刷できるようになっています。またYouTubeで抗議の様子や、なぜ反対しているのかという論点を解説したものをあげたりしています。

それを見た若者たちが、僕たちが関知しないところで「こういうやり方であれば、自分たちにもできるんじゃないか」ということで立ち上がっていると。

確かに立ち上がっている若者の数が人口比で多いかと言ったら、そうでもないかもしれません。ですが、日本の問題点は、賛成の人も反対の人も、思ってはいるけど声に出さない、社会に表出させないという点を、きっかけはSEALDsだったのかもしれませんが、自分たちの思いを路上に出て、 見える形で声を上げ始めたと。

なので、日本の一番の変化というのは、一定層考えている人や「おかしいな」と思っている人は常にいたと思うんですけど、それが目に見える形で表出してきていると。「こういうことを言ってもいいんだ」と。そういうカルチャーが日本の中でも少しずつできつつあるのかと思います。

これは今年の7月につくった動画なんですけど、これもちょっと見ていただきたいと思います。

法案の結末がどうなろうが、主体的に動き始めた人はもう止まらない

あっという間に時間がきてしまいました。というように、若者のカルチャーとして新しい動きができているのかと思います。まだ台湾とか香港の学生くらいできているかわからないんですけど。

日常の中で、自分たちのできることをできる範囲でやっているという感覚はすごいあります。

なので、革命を起こそうとかそういう気持ちはまったくありません。普通に大学に行って、当たり前のことを当たり前のように言うと。

時間がきているので締めたいと思うのですが、今日の夜には委員会で採決され、明日には本会議という話になっているですけど、何が日本社会で変わったかと。

ひとつは、この2015年の9月の段階でデモというものが珍しいものでも何でもなくなっているということ。

また、野党の方も毎週来ていたのですが、僕が昨日中央公聴会に呼ばれて、国会で話しました。

いま日本の路上で声を上げていることが、政治と分離されたところで動いているものではなくて、政治に影響をあたえることとして、抗議活動が行われているということです。

また、僕らが「来てくれ」と呼びかけているから(デモに)来てくれるということよりも、僕たちが関知していないところで、日本全国で動いているということがすごい重要だと思っています。個人が主体的に動き始めているということを意味するからです。

この法案の結末がどうなろうが、主体的に動き始めた人はもう止まらないと思います。