心温まるキャンドルチャリティーオークション

平松昭子氏(以下、平松):これはキャンドルなんですけど。

(出典:AVEDA/平松昭子) (出典:AVEDA/平松昭子)

5月の「アースデー月間」というときに、AVEDAさんのキャンドルチャリティオークションというのに声を掛けていただきました。キャンドルに絵を描いて、いろんな方にオークションで落札してもらうという。これは素直に心温まるお仕事でした。

辛酸なめ子氏(以下、辛酸):そうですね。これは女の人ですか?

平松:これはお洗濯をしている絵なんですけど。今回は参加したアーティストの方が「きれいなお水」という同じテーマで、キャンドルに絵を描いたりデコレーションしたりして。

私はこれに1周、4人か5人ぐらい、同じ人がお洗濯していたり、お水を飲んでいたり、お水にかかわる絵を描いたので、ホームページとかではGIFにして回っている感じにしました。

辛酸:そうなんですね。裏側もすごい見てみたいですね。

クリエイターの夢を利用した詐欺に遭遇

平松:これはですね、だまされたお仕事なんですよ。

(出典:平松昭子)

辛酸:だまされたんですか?

平松:そうなんです。さっきまで(のお仕事は)ちゃんとギャラを頂いていたんですけど、これはおととしの伊勢丹がリニューアルした……2013年?

辛酸:おととしぐらいなんですかね?

平松:おととしぐらいですかね? 新宿の伊勢丹がもうリニューアルするっていう、そんなときにメールが届いて。

「伊勢丹のリニューアルに合わせてフリーペーパーを作ります。平松さんには8ページ丸々あげるので、ファッションイラストを描いてほしい」と言われて、ちょうどkate spadeのファッションブロガーになったばっかりのときでもあったので、すごくやりたくて。

フリーペーパーだからお金は出ないと言われてたんですけど、それでもやっぱりギャラのないお仕事ってすごく夢があって。自由にやれたり作品が残ったり、楽しいことが多いんですね。

でも、このときは打ち合わせに2人の方が来て、1人のアートディレクターさんは、「僕は電通にいたんですけど」って言って。「独立してこういうのを今作りたいんです」とかしゃべっていて。

それでもう1人の人も「はい、はい」って言って。どんどん進んで、イラストも仕上げて納品したんですけど。伊勢丹はもうリニューアルしたのにフリーペーパーが全然届かなくて。それで電話してもつながらないし。まず、ホームページがトップページしかなかったんですよ。

辛酸:その会社のホームページですか?

平松:そう。でも仕事内容がよかったんで怪しいとか思わず、何かカッコいいなって(笑)。こんなに情報の多いときに、1ページしかないのは潔くてね、ミステリアスでカッコいいなと思っちゃったんです(笑)。

(会場笑)

平松:そういうのを今思い返すと「ああ、詐欺だったんだ」と思って。でも、詐欺っていうと何か悪い人みたいでかわいそうになっちゃうんですけど。

辛酸:その人が架空のフリーペーパーがあると思い込んでいたというですか?

平松:ていうか、何か本当に作りたかったんじゃないのかなって。それで多分、伊勢丹からOKが出ないまま進めちゃって。だから、彼は本当に自分でディレクションがしたくてやったんだけど、印刷物にならなかった。

辛酸:プレゼンに落ちたみたいな、大きいことなんですかね?

平松:でも、別に紙媒体にならなくてもWebでいくらでも今できますし。だからどこまで本当でどこまでが嘘だったのかわからないんですけど。

辛酸:連絡が取れないと。

平松:はい、取れなくなっちゃって。

大企業の名前を出す人ほど怪しい

平松:若いときも似たようなことはあって。変なおじさんから「新聞の連載が決まったんで、平松さんに挿絵を描いてほしい」って。それがちょっとポルノっぽい原稿だったんですよ。

それが毎回FAXで来て、とにかく男性の下半身を描けってすごく言われて。描いてFAXしても全然OKが出なくて。もう何回も、何回も描いたんだけど、しまいには花束を送ってきたりして。

辛酸:おかしいですね。

平松:あの人も、何か詐欺だったのかな?

辛酸:詐欺とか、自分の(小説)を読ませて絵を見たいとかね。

平松:はい、それだったのかわからないんですけど。でも、その人が具体的な出版社名とかを出すんですね。「僕はどこどこで連載をしてた」とか。

だから、そこの出版社の知り合いの方がいたので聞いて調べてもらったら、そこで仕事はしていたんですよ。ただ、その新聞で連載が決まったっていうのはきっと嘘で、決まってないのに(話が)進んじゃった。

辛酸:じゃあその男性のほうが、(連載が)決まっていなくても突き進んじゃうというか、現実を直視しないんですかね?

平松:いっちゃうんですかね? 今日はいろんな出版関係の方とかね、多いのでね、後で聞きたいですね。

辛酸:そういう大企業の名前を出す人ほど怪しいということですかね。

「1着150万円」金銭感覚がおかしくなる展示会の不思議

(出典:平松昭子)

平松:これはゑり善ですね。

辛酸:ゑり善の店内ですか? 

平松:ううん、これは明治記念館で。ゑり善さんの展示会にいて、やっぱり行くと「着て着て」ってこうやって巻きつけられて。

辛酸:ああ、それでどんどん買ってる画ですね。

平松:そう、買っちゃうんですけど。もうさすがに買えなかったんで、この日は我慢して帰ったところですけど。やっぱり女性はこんなことされたら、欲しくなっちゃいますよね?

辛酸:そうですね。1着100万円とか、そのぐらいするんですか?

平松:そう、そのぐらい。150万円くらいしたかな。

辛酸:すごいですね。金銭感覚がどんどんおかしくなっていく感じですか?

平松:はい、おかしくなります。だから、我慢して帰りました。

(会場笑)

(出典:平松昭子)

これは私のやっている日舞の吉村流の浴衣なんですけど、吉村の「ら」なんですね。吉村なので「よ」と「し」で4本、4本線がね。

辛酸:わかります。

平松:吉村の「よ」で4本。でも、4(本)と2(本)ですよね。

辛酸:そうですね。

平松:ちょっと、今度聞いておきますね。

辛酸:はい。「ら」がどこかに……?

平松:うん、「ら」。だから、何か歌舞伎の方とか、楽屋とかで着られるような感じの流れの浴衣で。

辛酸:このセクシーポーズはどういう? 

平松:これは、最初の自己紹介のときに(出した)、「GLOW」でやっている連載ページがありまして。あそこの漫画がいつも写真を埋め込まなくてはいけないので、そのためのポーズを撮って、この後これを切り抜いてるのね。

趣味の日舞と着物がキッカケで仕事の幅が広がった

辛酸:そうなんですね。(こちらは)日本舞踊ですか?

(出典:平松昭子)

平松:はい。北澤八幡様のが、下北沢の駅から15分ぐらいのところにあるんですけど、そこで毎年奉納舞を舞わせていただいていまして。

辛酸:そうなんですね。

(出典:北澤八幡神社/平松昭子) (出典:北澤八幡神社/平松昭子)

平松:この絵馬も、3年ぐらい前に描かせていただいて、今も手に入るんですけど。

辛酸:これは、江原(啓之)さんが修行していた神社ですよね。

平松:そうです。江原さんがいろいろ言われちゃう前の2年間ここで修行されて、その後テレビとかにいろいろ出られた。

辛酸:じゃあ、ここも運気が高まる(スポット)。

平松:はい、運気が高まると思います。これが着物のムックですね。アシェットさんの「25ans(ヴァンサンカン)」とか出しているところのムックの仕事で、これも着物を着ていると、イラストとは別に着物関係の主宰も多くて。

辛酸:そのときは、自分で着つけをされるということですよね? 

平松:(着つける)ときもありますし、さっきのは着せてもらいました。

PTAの係決めは「紫の着物」で回避

平松:これは国立劇場に師匠の舞台を見に行ったときのね。バッグがkate spadeの。

(出典:平松昭子)

辛酸:kate spadeの(バッグ)で、フクロウが出ているんですか? 

平松:そうなんです。フクロウの。何か縁起がいいって聞きました。

辛酸:知恵をあらわす動物ですよね。kate spadeも意外と楽しいですね。

平松:これは息子の高校入学のときの写真なんですけど。

(出典:平松昭子)

平松:どうして紫の着物にしたのかと言うと、本当は黄緑を着たかったんですね。紫は高貴な色なので、公の場所で着ると自分の立場が偉い人より上に行っちゃうので、あまり着てはいけないんですが。

黄緑の色無地を1週間前に汚してしまったので紫を着て。あと高校もPTAがあるって聞いて、入学式にちょっとすきがある格好をすると、係をやらされてしまうんで、これを着て。ちょっとこう下を向いてたら、誰も話しかけてくれなくて。上手にね。

(会場笑)

辛酸:そうですね。すごい処世術で。

平松:はい。

辛酸:このサングラスをしている人に、係頼めないですよね。

平松:うん、頼めないですよね。

(会場笑)

平松:だからこういうのは着物がすごく助けてくれるところです。

辛酸:ありがとうございます。

制作協力:VoXT