格好よくないと人に声を届けることができない

アマンダ:ありがとうございました。さて、いよいよ最後のセクションに入ります。25年の最後に、あなたは「感謝の念は、私の経験から受け取ることのできる、たった1つにして最も偉大な宝だ」とおっしゃいましたね。

そして今では、ご自身の放送局を所有し、慈善活動や教育の普及にも積極的です。いまだに手をつける勇気が出ずにいる、やり残したことはありますか。

オプラ・ウィンフリー氏(以下、オプラ):すばらしいわ、アマンダ。あなた質問を考えるのに徹夜したでしょう。

アマンダ:準備に時間をかけてはいますね。少しだけですが。

オプラ:えーと、私に「まだ手をつける勇気のない、やり残したことがあるか」ですって? いいえ。そして今は、思いついけずにいるやりたいことがまだ何かあるかを考えているわ。

アマンダ:あまりなさそうですね。

オプラ:私は、自分の道を外れないようにはしているわね。

アマンダ:なるほど。

オプラ:私は、自分の道がどこまでなのか、それが何なのかをちゃんとわかっている。さっきお話したように、私の真の使命もわかっている。全世界の人には「トーク番組のセレブリティ」と言うふうに映っているけど、私が何をするために生まれてきたのかは、別にあるわ。それが一番あなたに伝えたいことよ。

でもまず、あなたからの質問に答えなくてはね。私が手をつけるのをためらうようなことなどはないわ。円熟期に入ったとは思うけど、究極にやるべきことはまだやっていないわ。運命の至高の瞬間は訪れていない。オプラ・ショーの放送中もまだだったわ。

私は15歳の時から日記をつけているのだけれど、当時を振り返ると人間としてあまりにも未熟で、時に痛々しいほどだった。

ショーの放送中、自分たちが名声を尊ぶ文化に生きていて、名声を中心に回っている世界に生きていることは知っていた。ルネッサンス期には、これほどまでに多様な価値観があったかしら。

私たちは、超越論的哲学の時代に生きている。価値観は多様だけど、もてはやされるのは名声よ。だから、自分が世界的に有名になるのはそのためだったの。格好よくないと人に声を届けることができないでしょう?

全ての人には、生きる目的がある

オプラ:さらに、財団について名前は耳にするけど、もっと知ってもらうべきだと思うわ。私にとって、放送局を所有したり、放送に携わったりすることは自己認識を高めるプラットフォームとして利用することなの。

日曜には「スーパーソウル・サンデー」というライブストリーム番組で、世界中の思想界リーダー達と語り合い、インタビューしているわ。あなたほど上手にではないけれどね、アマンダ。後であなたにコンサルティングをしてもらうわね。

インタビューで「人生において大事なこととは何か」を視聴者に考えてもらうの。すると視聴者からの反響で、このショーに関しては「私が正しい道にいる」ということがわかるの。私は、正しい方向に向かっている。

だから、私は恐れない。この世で人に与えられた時間はわずかだけど、本当に大切な問いは「自分とは何者で、自分と言う存在を持ってして、何をしたいのか?」ということ。皆さんは自分の存在を、どのように生かしたいと思っているのかしら?

『魂の種たち』に私の好きな一節があるわ。「人格が、魂のエネルギーに貢献するために顕現する時こそが真正のエンパワメントだ」。

さあ、この素晴らしい大学院の卒業生の皆さん、この学校で学んだことや、自分の本質の一部、発達させたスキル、情熱の糧を胸に、外の世界で、更に深い魂の将来の可能性と繋げていってくださいね。

皆さんの人格と、誰しもが持つ魂が持って生まれた目的とを繋げれば、つまり人格を人生の目標と連携させれば、皆さんを妨げる者は存在しないの。

毎朝高揚感に満ちて目覚めることができるわ。「ああ、神様。また1日が始まるのですね。とてもすばらしいです」と感じることができるの。

全ての人には、生きる目的があるの。そして皆さんの使命は、それが何かを見出すこと。皆さんの真の仕事は、自分が生まれてきた理由を見出し、それに向かって行動すること。

アマンダ:私たちは「自分が何をすべきかを知っているはずだ」ということですね。

オプラ:そうよ。

アマンダ:オプラさん、ありがとうございました。

悲劇から抜け出して、勝利を勝ち取る人々を見ることが好き

オプラ:質疑応答の時間はあるの?

アマンダ:はい、今ちょうどそう言おうと思っていました。ぜひお願いします。

オプラ:全員、授業が1時15分から始まるのよね? オーケイ、それまでには解散にするわね。先生方はその点を強調していたから、1時までにしましょう。

アマンダ:では、まず最初に、あらかじめ届いていた、Twitterからの質問です。

アンドレ(スタッフの1人):セッションを通して、最初に来たのはマット・スセドからの質問です。「僕と結婚していただけますか?」。

(会場笑・拍手)

アマンダ:マットが会場のそこにいるみたいですよ。

アンドレ:マット、ちゃんと婚約指輪を持って来た?

オプラ:マット、私たちが結婚する必要はある? 婚前契約の量が膨大になりそうだわね。

アマンダ:アンドレ、次の質問をお願いします。

アンドレ:ジャヴィエル・フェルナンデスからの質問です。「一番好きなインタビューゲストは誰でしたか? その理由もお願いします」。

オプラ:そうね、何年間もの間、膨大な人数をインタビューしてきたし、白状すると相手の名前すらよく覚えていないの。よっぽど目立つか、インパクトのある人であっても、誰にとっても覚えられないと思うわ。

私が一番好きなのは、人々が悲劇から抜け出して、勝利を勝ち取る人々を見ることよ。そういう人々が私を形作ってくれて、より良い人間にしてくれたわ。

私はある時、精神科医のドクター・フィルと一緒に、1人の女性をインタビューしたの。彼女はショーへの出演後に、自殺する予定だと語ったわ。8年前に彼女の娘が殺されてしまって、どうしても克服できず、オプラ・ショーに来て「ただそのことを話したかったの」と語ったの。

そうしたら、ドクター・フィルが言ったの。「なぜあなたはこの年月を嘆いて過ごすのですか。生を謳歌するのではなく、死を悼むのですか。あなたはたった1日だけで、娘さんの生涯を決めつけてしまっているのですよ」って。

すると女性は顔を上げ、ドクターの目を見て言ったの。「今まで悲しみに暮れる以前について、そんなふうに考えたことはありませんでした」私は、彼女の気持ちが明るくなった変化を感じ取ったわ。

だから、私にとって最も印象深い瞬間とは、自分のいる世界について別の見方をすることにより、気持ちが明るく前向きになる様子を見ること。言うなれば、体験を見ることよ。私は、そのために生きているの。そういうインタビューが、最も好きよ。

ファレル・ウィリアムスがインタビューで見せた涙

オプラ:最近では、先週、ファレル・ウィリアムスをインタビューしたばかりよ。とてもハッピーなインタビューだったわ。

アマンダ:でもあなたは、彼を泣かせてしまったではないですか。

オプラ:私が泣かせたわけではないのよ、アマンダ。

アマンダ:うれし涙ですよね。

オプラ:その通りだと思うわ。私は人を泣かせようとしたことはないの。あのインタビューは大幅にカットしたわ。あまり美しくない涙だったから。

アマンダ:でも心底からの涙でしたよね。

オプラ:そう。彼の涙は本物だった。そして私たちは言ったの。この人を救わなくてはいけない。美しくない涙と共に、世界に送り出してはいけない。しゃくりあげるくらいならよいのだけれど、号泣するのはよくないわ。

それに、彼には共感してしまったの。なぜだかわかる? 彼が大好きだからよ。あのインタビューを見た人で、少しでも前から彼を好きであれば、インタビューを見た後は、もっと好きになっていたはずよ。彼はこの場所にとても強く繋がっている人だったから。

アマンダ:そうですね。目的意識を持った方ですよね。

オプラ:そう。彼はしっかりと繋がっていて、世界中の人々が、ハッピーな曲に合わせて踊りだすビデオを見て泣きだしてしまったの。

アマンダ:この学校で撮ったビデオのバージョンもあるんですよ。

オプラ:ここで?

アマンダ:はい。

オプラ:あなたたちも踊ったの?

アマンダ:ええ。確かMBA専攻の人達だと思いましたけど。踊った人、手を挙げてみてください。

オプラ:皆、踊ってハッピーだった? そう。彼は世界中の人々や、国名が出て来る30秒ほどのビデオを見たのよ。彼は、自分の人生を、こうして世界中の人と繋がるために使うことができることに対して、感動と衝撃を感じたのね。

それがまさに、私たちが探し求めていることであり、どんなレベルであれ、私たちにはその能力があるのよ。私は皆に言っているの。

私には大きなステージがあるし、ささやかなステージを持っている人もいる。また別の類のステージを持つ人もいる。皆さんのステージは、どんなものかしら?

アマンダ:オーディエンスの1人に聞いてみましょう。

オプラ:いいわね。

アマンダ:では、聞いてみますね。(学生の1人に)お名前をどうぞ。

質問者:ハーイ、ケルスティンと言います。ここGSB、スタンフォード大学経営大学院でMBAを専攻している2年生です。今週は、気候週間と銘打って、経営学専攻の学生たちが、気候変動への関心を喚起するイベントを主催しています。

あなたは、レオナルド・ディカプリオからアル・ゴア、オバマ大統領まで、この極めて重篤な問題に関してインタビューをされていますね。ですので、ぜひオプラさんに、気候変動のように、重篤で複雑な政治的な問題について、どのように人々の意識を高めていらっしゃるのか、そのコツを教えていただきたいと思います。

アマンダ:おお、皆、準備万端ですね! ワオ。

オプラ:私には、この質問の答えはわからないわ。もしわかっていたら、環境クラブを結成して、皆に参加してもらうわ。これはとても複雑で美しい質問で、あなたがそれを質問すること自体や、答えを探す行動に参加していることに、とても感動するわ。

これがスタンフォードのクオリティね。だから、私は本当に、この質問に対する答えを持っていないの。ごめんなさいね。

やるべきことは、自分の持てる力の基礎がどこにあるのか探すこと

アマンダ:ありがとうございます。もう1問を受けていただく時間はありますか。

オプラ:質問してもらわないと困るわ。1つでも質問が残っているのなら、答えなしには終われないでしょう。

アマンダ:実はもう1問あるんです。

オプラ:ここには、困らされるために来たんだから、どんと来い、よ。

質問者:ハーイ、オプラ。メリッサと言います。自主性の欠如と自己中心性とのバランスはどうやって取るものだと思いますか。

オプラ:自主性の欠如と、自己中心性? なぜそんな質問をしようと思ったの?

質問者:自分を第1に考えることと、他者を思いやることとの均衡について聞きたかったのです。

オプラ:オーケイ、私ならこう言うわ。酸素マスクの例え話は、聞いたことがあるでしょう。持っていないものを、与えることはできないの。つまり、自分自身をきちんと保つ必要があるのよね。それが、自分の仕事だから。

オプラ・ウィンフレイ・リーダーシップ・アカデミーに通う私の娘の1人がここに来ているわ。シェネイ、立ってちょうだい。皆に見えるように。あなたは、第1学年をもうすぐ終わろうとしているのよね。ああ、あなたはもう1年生なのね。

娘たちにはいつも言っていることがあるの。「あなたたちが真にやるべきこととは、自分の持てる力の基礎がどこにあるのか探すことよ」って。「自分の人格と、この世に貢献できるように生まれて来た才能とを繋げることに精を出しなさい」って。それがやるべきことナンバー1よ。自分を磨いて、満たして、杯を一杯にすること。自分自身を満たすのよ。

かつての私は、そうすることを恐れていたわ。他の人に「あなたは何でもできるわね」って言われることを恐れていた。でも、今ではなんでもできることに喜びを感じているわ。

私は自己が満たされているということを、賛辞と受け止めているわ。私が満たされるのは、相手が満たされている時だけだから。私は満たされていて、溢れているわ。「我が心あふるる(旧約聖書からの引用)」。

私には持てるものがたくさんあって、差し出せる物、与えることのできる物がたくさんあるの。そして私は自分自身を讃えることを恐れていないわ。

考えてみると、奇跡みたいだわ。まず、私の父母は、結婚していないの。1953年、母がプードルスカート(1950年代にアメリカで流行した、プードルをアップリケしたスカート)を履いていたのが理由で、オークの木の下でセックスをしたの。今でも父は言っているわ。「スカートの下に何があるか知りたかったからだよ」。

2人は交際すらしていなかった。母の片思いだったけど、父がスカートの下を知ってしまうと、それで終わり。たった1度、オークの木の下で、バン! ルネッサンスよ。

アマンダ:1人の女性が誕生したのですね。

オプラ:だから私の人生は、そんな刹那よりもすばらしいとわかっていたの。あなたの人生と同じくらいすばらしいの。刹那より、プードルスカートよりすばらしいの。はるかにね。私の生まれた意図や理由を、その下に隠されたものを、私はぜひ知りたいわ。

だから、それを大切にする能力が大切なの。褒め讃えるの。自分を讃えるの。自分より偉大なもの、つまり自分を作り、自分が生まれて来た理由を讃えるの。

世界に、自分自身を与える能力があれば、ありのままの自分を与えることができれば、自己の存在を存分に表現できれば、そこには自主性の欠如はありえないわ。

自分は大切ではないと頭の中で騒ぐのを止めなさい

オプラ:私が初めてライフコーチ、人生の師匠を持ったことを覚えているわ。そんな言葉は昔はなかったけど、彼女はオーディエンスの女性たちと巧みにシェアできる人だった。

彼女はリストを作って「皆さんの場所はこのリストのどこにあるでしょう?」と会場に聞いたの。ところが、オーディエンスは彼女にブーイングを浴びせたの。彼女が「リストの一番上には自分自身を載せなさい」と言ったから。

それが1992年のことだった。1992年には、自分のリストのてっぺんに自分を載せるなんてことは、とんでもないことだった。「何でなの? 彼女には子供がいないのね」と言った反応が返って来たわ。

だから私は言ったの。「彼女は何も、子供を捨てて好きに遊びまわれ、なんてことは言ってはいないわ。彼女は、ただ『リストのてっぺんに自分を載せろ』と言っただけ。『自分を大切にしなさい、自分を褒め讃えなさい』と言ったのよ」って。

「狂ったように騒がしく、自分は大切ではないと頭の中で騒ぐのを止めなさいって。なぜなら、ナンバーワンは、自分自身なのだから」。

私も、皆が持つ、このナンバーワンの問題に気付いたわ。皆が、あれほど「私はどうだった? どうだった?」と聞くのは、相手がどのくらい高く自分を評価してくれるか知りたいからよ。

あなたがここに存在する理由は、精子が「バン!」と卵子にぶつかったからよ。それはあなたのために起こったことで、あなたの存在は奇跡なの。あなたの本当の仕事は、それを褒め讃えることなの。それがわかるようになれば「私はなんて幸運なんだろう、私は生きている」と思うようになるはずよ。

皆さんは、人間として、至高の、満ち足りた、真実の自己表現をして生きるために、どのように準備していこうと思っている? これで締めくくりにしたいと思うわ。「間違いなんて無い。1つも無い。なぜなら、皆さんには至高の運命があるから」。

瑣末(さまつ)な自我や、個人の小さな自我の中に閉じこもっていたり、自分が中心にいないと、自分の真の姿に気づけない。より偉大ですばらしい存在から生まれたことに気づけないのよ。

私たちは、同じなの。皆それを知らないから、おろおろしたり、ストレスを溜めたり、ないものを望んだりするの。人生には、使命を告げる運命の至高の瞬間が訪れるはずよ。皆さんの仕事は、それを感じること、耳を傾けること、悟ること。時に耳を傾けていない時には、正しい道から外れてしまうこともある。間違った相手と結婚したり、恋愛したり、就職したりしてね。

皆さんの人生は、刹那よりももっとすばらしい

オプラ:でも、それは結局の所、同じ道に導かれているの。間違った道なんてない。絶対にない。失敗なんてものはありえない。失敗は、別の方向に皆さんを導こうとしているだけ。だから皆さんは、勝利と同じくらいの利益を失敗から得るし、失敗により目覚めることができるの。

失敗は、皆さんに対して「馬鹿者! 何のために学校に通っていると思っているんだ。CBSが君に電話をかけてくるためじゃないか」と言ってくれているの。

だから「グレードや環境によって、完全に自分をダウンさせてはいけない」ということを理解すれば、どんなにつらい経験よりも、皆さんの人生はすばらしいとわかるはずよ。

私が落ち込んだ時は、スーパーソウル・サンデーのインタビュー相手に「若い頃の自分に、なんて言ってあげたいですか?」って聞くの。

全員が、何らかの形で「落ち着いて。落ち着くんだ。そのうち大丈夫になる。今は遠回りしているかもしれないけど、今にわかる。落ち着いてくると、『ああ、これが方向転換の合図だったんだな』と、そのうちわかるから」。

だから、自暴自棄になるのだけは絶対にだめ。自暴自棄になる道を続けなければいいの。道を外れたと感じたら、それがキューよ。どうやって方向転換すればいいかなって考えればいいの。

私が自分の放送局を持った時、それがどんなに大変なことなのか、あらかじめ知っていればよかったわ。困難をくぐり抜けるには、落ち着いて「次の正しい道は何か」と、自分に問いかければよいの。

「これでは大変だ」と慌てるのではなく「次の正しい動きは何だ」そしてその場から「また次の、次の、次の動き」を、と考えていけばよいの。圧倒されちゃいけないの。なぜなら、皆さんの人生は、刹那よりももっとすばらしいものだから。

誰かに「あなたは失敗した」と言われても、そう決めつけて終わりではないの。失敗は皆さんを別の方向に導いてくれるの。私はいつもそうよ。

アマンダ:ありがとうございました。

オプラ:アマンダ、司会を無事完遂したわね。おめでとう!

アマンダ:ありがとうございます。