リーダーシップのとり方の変化

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):それでも、今のシリアル・アントレプレナーの状態のほうが、恐らく勝率は高いとお二人は考えているってことですよね。

真田哲弥氏(以下、真田):そのとおりです。

山田進太郎氏(以下、山田):もうひとつメリットがあるとすると、若い人じゃないとわからない需要みたいなものもあるかなとは思うんですよ。

さっきちょっとブームの話出たけど、「YouTuberとか超人気ですよ」っていっても、超人気なのって中高生とかだから、よくわからないというか、「そんなにいってんの?」みたいなのって何かあって。

そういうとこに素早くバッと入って、全力で、そういう体力でやり切るみたいなことができるっていうのはあるかなと思いましたね。(僕たちでは)気付かないというか。

佐俣:そう言いながらも若者向けサービスやってますよね、お二人とも(笑)。これ、参考になるのかなと思って。

真田:若いときは自らがプレーヤーとして、自分自身が最前線に立ってやります。リーダーシップとしても、自分が昔のタイプでいうと織田信長的に、自分が真っ先に走り出して、後を部下が追いかけてくるみたいな、そういうリーダーシップのとり方じゃないですか。

それに対して、だんだん年とってくると、秀吉的とか家康的っていうんですか? 日本的にいうと。自分が真っ先にプレーヤーとしてやるんじゃなくて、できるやつをとり立てて、任せてやらせる。できたらほめてあげる。

「よくやった」っていうふうにやっていくことによって、自分自身が体力使って朝まで何かやるってことがなくてもできるようになってくるので。というか、そうなってこないと、2回目、3回目は成功できないですよね。気力は負けてないつもりですけど、体力は間違いなく落ちてきますから。

佐俣:気力は真田さん、落ちてる感じがしないですね。

真田:プレーヤーとして100メートル走を走り切ったらこっちは息切れてるわけで、やっぱり自身が走るんじゃなくて、競走馬の背中に乗るような感覚、ないしは次の競走馬を育てていくみたいに。自分自身が走っちゃ、やっぱり息切れて負けますよね。

そういうふうに転換できるかどうかが、このシリアル・アントレプレナーになれるかどうかの重要なところなのかなと思いますね。

意識しているのは、年齢に応じた戦い方

佐俣:進太郎さん、やっぱり2回目のときはそういうギアの切りかえみたいなのは、結構意識されたんですか。

山田:確かに、体力落ちてるなっていうのは最近特に感じつつ……でも30過ぎぐらいから感じるじゃないですか、やっぱりそういうの。

それに応じた戦い方っていう意味でいうと、もう絶対に方向性を間違えないというか、無駄なことをやらないっていうのをすごい意識してて。「本当にこれで合っているのかな?」っていうことを常に見るような。

だから方向性を考えるというのが経営の仕事、みたいな感覚は結構出てきてるかなと。「次に何が来るんですか」とか、「スマホで流行っているアプリってどういうやつなんだろう」とか、とりあえず試してみたりと、結構、そういう感じになってきているかなと思います。

佐俣:無限に会社をつくり続けられるんですかね? シリアルになってると。

山田:真田さん、見てたらね。

真田:無限につくれると思いますけども。一方で、孫(正義)さんとか三木谷(浩史)さんは1回しか起業してないわけですよ。ひとつの企業グループを多角化して、大きくして、孫さんなんかはひとつの企業グループのメイン事業を順番に変えていってられるわけですよね。

なので、新しいものをどんどんやるというよりは、僕もいい加減落ち着いて、今の会社を多角化したり、大きくする方向にやっていかないといけないなとは思っていますね。

起業するときに大切なメンターの選び方

佐俣:なるほど。ちょっと軸を変えていうと、聞いてる方はどっちかというと2回目やろうって方というよりは1回目の方で、シリアル・アントレプレナーに成功の秘訣を教わりたいと思うんですが。

若者とか1回目の起業の人が勝っていくためには、どういうエッセンス(が必要か)とか、アドバイスとか、何をすればいいと思いますか? 進太郎さん、いかがですか。

山田:僕は一番最初、株式会社化したときに石川(篤)さんと一緒にやったんです。彼はサイバーエージェントの1号社員で、1,000人までいって子会社の立ち上げとかもいろいろやって、やめてっていう形だったので、やっぱりそれなりに経験が。

会社を大きくしていく上で、「一般的にはこうですよ」とか、「サイバーエージェントはこうですよ」とかっていうのを一緒に決めていったって感じだったんですね。それはすごいよかったなと思っていて。

若い人がやるんだったら、僕はそういうメンターでもいいんだけど、できれば一緒にやってくれるベテランみたいな人が中にいると、落とし穴に落ちないんじゃないかなという気はしているんですよね。だから、それはすごいお勧めです。

真田:メンターは大事ですね。メンターの選び方の大事なポイントとして、評論家とかVCしかやったことないとか、大学の先生とか、あまりそういう人をメンターに選んでもしょうがなくて、やっぱり自分で(起業を)やった経験がある人をメンターとして、アドバイスをもらうっていうのはすごい大事だと思いますね。

時々ベンチャーキャピタリストの方で、自分で起業したことないのに起業家にアドバイスしてる人って世の中にたまにいるんですね。

佐俣:ちょっと今、耳が痛くなってきました(笑)。

真田:でもアンリはある意味、ベンチャーキャピタル起業してるのは、それは起業家に入りますからね。

佐俣:あとは奥さんと1社挑戦しています。でも、それはありますね。だから僕も、ベンチャーキャピタルとしてできるアドバイスと、起業家の先輩ができるアドバイスは違うと思ってるので。僕は最近だったら、投資先にささっと初めアドバイザーでエンジェルとして入ってもらっていて、事業のところの話はこの人にメンタリングしてもらったりしています。

そういう関係性とかをつくっていったほうがいいなと僕は思っていて。真田さんってそういうアドバイザーとかはもともといらっしゃったんですか。

真田:いなかったです、全然。

佐俣:黎明期からされているから。

インターネット黎明期の学び方

真田:アドバイザーとかいない中で、失敗して気付いていくっていう。「ストーブを触ってみて、熱っ!これはストーブっていうもんだな」みたいな。横からお母さんが事前に「それは熱いから触っちゃだめよ」って言ってくれるとかってなくて、だから傷だらけでしたね。

佐俣:仲間はいらっしゃいましたよね。

真田:常に僕は社長で部下がいるだけだったので、強いていうと、大学生の頃、孫さんのところに訪ねていって教えてもらったりとか、パソナの南部(靖之)さんのところに訪ねていって教えてもらったりとか。自分の周りにいなかったので、わざわざ会いにいっていろいろ教えてもらうみたいなことを若いときはしましたね。

その後、一番最初の(会社の)リョーマとかダイヤルキューネットワークとかのメンバーがどんどん上場していって大物になっていって、お互いに「どう、これ?」みたいなに相互に相談する。

あるいはライバル関係があるから、「あいつがああいうことできてるんだったら、俺にできないわけないよね」とか、何か相互にそういうのでみんな上がっていくということになり始めましたね。

とりあえず1回起業してみるのが一番いい

佐俣:今って結構アドバイスもされたりするんですか。後輩たちというか、後進の起業家に。

真田:もとから知ってる後輩とかには結構してますが、どんどん来るじゃないですか。きりがないんで。

山田:すごい来てそうですね。

真田:個別にアドバイスするのは、もとから知ってる人だけですね。じゃないときりがないんでね。若い人、特に大学生は、とりあえず1回起業してみて、自らシリアル・アントレプレナーになるという手段が一番いいと思うんですよ。

佐俣:とりあえず1回。

真田:よく勧めているのは、学生時代に1回起業してみて、(会社を)たたんで就職して、本格的な起業を30前とかにやるぐらいがいいんじゃないかと思っていて。

佐俣:結構、具体的な年表が決まってますね。

真田:やってみないとわからないことっていっぱいあって。この今の放送を聞いて「ふんふん」ってわかった気になったって絶対わかってないと思う(笑)。

やってみないとわからない。これを聞いて「なるほど」と思っちゃだめですから。「何言ってんだ、あのおやじ」と思ってるぐらいが正しい。やってみないとわからない。だから、やってみたらいいんですよ。

ただし、そのまんまそれを継続するんじゃなくて、1回たたんで、やってみた後に就職するといろんなことが、わからなかったことが、課題意識があるから。僕ね、18歳、19歳から起業してるんですけど、33歳でアクセスという会社に入社して、サラリーマンを人生の中で1年だけやったんですけど。

その1年が僕にとって黄金の1年で。今まで社長しかやったことのなかった人間が、いざサラリーマンで部下で使われる立場になると、「そうか、社長からこういう言われ方をすると、部下の立場としたらこんなムカつくんやな」と(笑)。

そういうことがいっぱいわかるわけですよ。同じものを対岸から見てみると、これだけ見え方が違うということを経験して、もう1回社長業に戻ると、すごい言い方とかが変わるわけですよ。

佐俣:学生で社長をやって、社員をやって、社長をやるということ。

真田:はい。それがベストプラクティスで一番獲得できる方法論だと思います。

佐俣:なるほど。

社員側に立ってみて初めてわかること

山田:僕も、ジンガに売却した後、サラリーマン初めてやったんですよ、そのときすごい勉強になりました。

真田:いろいろ発見があったでしょう。

山田:めちゃめちゃ発見ありましたね。

真田:社員側から見ると、こういうふうに見えるんだっていう貴重な発見が。

山田:評価とか初めてされたりとかね。

佐俣:評価されるんだもんね。確かに。

真田:なんて理不尽なんだろうと思うよね(笑)。

佐俣:なるほど、そうか。その経験はできないですな。

山田:やっぱりほかの会社がどうやって運営されてて、それが何でそうなってんだろうとか。僕の場合、シリコンバレーの会社だったから、全然日本とも考え方も違ったりとかして。

それは本当にすごい勉強になって、今、アメリカで子会社とかやってるときも、やっぱりアメリカ人しかいないんで、結構勉強になったかなというか、その経験が生きてるかなとは思うんですけどね。

シリアル・アントレプレナーとしてのアドバイス

佐俣:ありがとうございます。そろそろお時間も終わりなので、最後にこの動画を見ている方、恐らくお二人のシリアル・アントレプレナーとしての経験とか考え方を参考にしたいというような若い起業家が聞いてる、見てるであろうという想定のもと、お二人からメッセージをいただければと思います。進太郎さんからお願いします。

山田:さっきの真田さんの話じゃないけど、やっぱりやってみることはすごい重要だと思うので、何かやって失敗して、そこから学んでというのをやっていくしかないかなと思うんですよね。

あとは先ほどのメンターみたいな人を見つけて、そこから学んでいくと成功確率は著しく上がるんじゃないかなというふうに思います。

佐俣:ありがとうございます。真田さんお願いします。

真田:そうですね、どんなものでもそうなんですけど、やってみないとわからないってそのとおりで、走り出してみると景色が変わりだします。じっと立ち止まって眺めてるのと、ガーッと走り出してみるのとでは、全然景色が変わるので、やっぱり走り出してみるべきです。

それと学生時代のときには一緒に起業をして、将来一緒に会社をやる仲間を見つけることです。多くの人が学生時代に知り合った仲間と起業するってことをやっているんですけど、仲間を見つけるためにいろんな人と一緒に何かをやってみるっていうことがすごい大事だと思います。

そうすると、コイツと一生賭けて起業しようみたいなヤツが見つかると思うし、それもすごい大事。ということで、まず走り出す。そして走り出してから考えたらいいと思います。考えてから走るってやってる限り、なかなか起業ってできないので。走ってから考えるべきだと思います。

佐俣:ありがとうございます。これでインタビューを終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

真田:どうもありがとうございます。

山田:ありがとうございました。