ニースでの暮らしについて

――現在はニースに住まれて。

マーク:ニースに住んで、こっちにちょろちょろ来て。

――向こうでもDJされているんですか。

マーク:向こうは自分のビストロを経営しているので、そこで、レコードプレーヤーを置いてレゲエをかけたり。ファンクだったり、ラウンジかけたり。こっちとは全く違う世界のことをやっていて。

――バイナルは全部向こうに置いていて、いわゆるアナログレコードですよね。向こうへ置いて向こうで……こっちへ来たときは電子的な……。

マーク:こちらはもうパソコンです。

――PCDJですね。

マーク:USBでもいいんだけど。USB刺せない機材を置いているお店もあったりするんですよ。全部が全部、ちゃんとした機材を使っている店じゃないんです。ちっちゃい店はちっちゃい店で、なんだこれみたいなのもあったりとかするから。そういうところではパソコンは強いんです。つなげるだけでよくて。

――こちらも回し続けるわけですか。

マーク:もちろん。この間も変な……と言ったらおかしいんですけれども。小さなクラブで、クラブというか、カフェバーみたいなところで、ディープハウスとかファンクとかかけているんだけれども。

そのための『Anytime smokin' cigarette』のディープハウスのリミックスだったりとか『Under Your Sky』のディープハウスリミックスとかちょろちょろっとかけると、やっぱりうーんみたいな。マーク何これ! いいじゃん! みたいな。だから思い出させてあげているんですよ。そこで。

自分のやりたいようにやっているDJはもったいない

――やはり、マークさんが現地にいらっしゃるので、まだ日本ってやっとDJの名前が出てきた。伝えられる。伝道師として機能しているところ。

マーク:そのDJというのはさっき言ったようにメディアなので、それがバーだったら別にそこでEDMじゃなくても、そこでファンクをかけたり、じゃあそこでオリジナルの曲をかけてもいいくらいの。

とにかくその空間をつくってあげられることが大事で。1時間っていうプレイ時間くれるのなら1時間という番組を作ってあげて、皆を気持ちよくさせて、一番気持ちよくなって一番心を許したときにglobeの曲が流れるというのが僕の役目なんじゃないかな。

――世間的なイメージで言うと、マークさんは芸能人なので、芸能人がやるDJっていうと、自分の持ち曲とかポップスを流しているというイメージがもたれることがあるんですよね。でもそうじゃない。

マーク:いや、自分の曲流しているDJっていないですよ。あみちゃん1曲『BE TOGETHER』を流しているくらいですか。

――鈴木亜美さんもやられていますもんね。

マーク:でも、僕はもったいないなと思うのは、自分のやりたいことやっているDJというのは、来ているお客さんを無視して自分のアーティストの部分を見せられるんですけれども、来ているお客さんはやっぱりどこかそのDJに求めているものがあると思う。

僕はもうイントロと中盤に2回ぐらいglobeがあって、最後のエンディングglobeくらいにするとみんなもう、ほっとしてるんだよね。

僕にしかできないやり方。例えば、『WON'T BE LONG』のリミックスを作ったり、僕にしかできない、いま流行の曲をリミックスしたりJ Soulの『流星』をリミックスしたり、安室ちゃんの『CAN YOU CELEBRATE?』をリミックスしたりとか。

僕しかできないようなことをやっているんだけれども、それをもっともっと芸能人もやるべきなんじゃないかなと思う。

芸能人だけじゃなくてもみんな。だってDJなんだ、メディアなんだ。アーティストではないんだ。DJをやった瞬間。だったらコンサートやったほうがいいと思いますよ。

DJにつきまとう黒い噂は誤解

――DJをもっと増やしたいですか?

マーク:DJっていう人を? どんどんやったほうがいいと思います。ダンスをやる10人の子どもがいたら、みんな集まったから、ラジカセ持って来てCDじゃなくて。そうだ山本君DJだから呼んでやってもらおうよみたいな、そんな世界になって欲しいです。運動会にもDJがいて欲しいです。何にでもDJがいて欲しいです。

DJは黒い暗い、ドラッグがあり、みんな体を売っている。悪いクラブでやっているイメージ。誰もそんなイメージなんてないんだから。どっちかっていうと、普通に美容師がいてDJがいていいと思うんですよ。

そのDJはそこにいる人たちのみんなの足踏みをみながら、こういうようなものがこの人は好きなんだから、15分間はこれだけでいってみよう。あいつシャンプー行ったから次は、こいつのために、こういう音を流してあげようというのがDJで、それがレストランにあってもいいし。

45年の経験を活かし、音楽の研究所をつくる

――マークさんはフランスで学ばれているじゃないですか。そういう意味でもDJ学校的なものはそんなにいっぱいあるわけではないと思うんですよね。

マーク:DJ学校で今あるのはどっちかっていうと、テクニックを教えるDJ学校で。テクニックをいっぱい覚えると、僕は勘違いと言ったらおかしいんですけれども、違う方向にいっちゃうような気がするんです。だからもうちょっと土台と哲学を覚えたほうがいいんじゃないのかなと。

マーク:だからそれを僕は45年たったんで、それを今度は僕が作るんだけれど。そういうふうな方向をどんどんみんなに教えていこうかなと。

ちょうど、今年が20周年なんですよglobeが。区切りと言ったら変ですけど、ここでマークglobe辞めちゃうのっていうのは、おかしいんだけれど。辞めないけれど。でもそこにしがみつく必要もなくて。

僕はさっき言ったように45年間どんないいことも悪いことも、誰よりもビジネスで失敗し、どん底も見たし、さっき言ったように最高のビルにフェラーリ何台っていう世界も見て、あらゆるものを見た中での僕の考える研究所を今作ってるんです。

――DJの研究所?

マーク:DJというか音楽。音楽制作研究所。プロデューサーになっているんじゃないのかなと思うんですよ、僕は。だからアイドルが歌を歌いたいからレコード会社を探し、マネージメント会社を探し、プロデューサーを探し、作詞家を探しと、全員を探し、やっとデビューできる時代はもう古すぎて。

今の時代は自分で曲を作り、自分で歌い、自分でDJをし、メディアに載っけ、YouTubeに載っけSNSに載っけ、自分ですべてをやってしまうようなアイドルが生まれてもいいと思うんです。

それはだってマーク大変じゃん。それは、僕が初めて目の前で失敗して買ったうんこDJセットの時と同じなんだよ、その考えは。なんだこれ、できるわけがないじゃん。今から考えてみるとなんだ、あれみたいな。

じゃなく6カ月や3カ月で。十分土台はできるんです。土台と基礎さえできれば、僕があの日2000人の前に立たされたときの、やりこなしちゃった人になれちゃうんじゃないのかなと。

次世代アーティストのためにやるべきこと

――いまそれを作る準備をされていらっしゃる?

マーク:そう。もう最終段階で9月に開校するんですけども。

――もう近いじゃないですか。

マーク:オンラインで様子を見て、いずれは本物の学校を。最初東京って考えていたんですけれども。東京じゃないんじゃないのかな、地方に作ったほうがいいんじゃないかなと考えていて。

――じゃあ、最初はオンラインなんですね。どこでも受講可能で。

マーク:受講可能で。みんな忙しくても1日1時間はできるでしょ。だから20分のビデオがあるから残りの40分は言われたことを何回もやってみて。それを週5回やって。週に1回は僕が生で出るからみんなからの質問に答えてあげる。

それを3カ月やって土台を完璧にして卒業してみて。で、卒業した子の中からは一番トップにいる子は、これはかばん持ちにして、アゲハで30分いいじゃない。曲作りがメインだから、DJの技術は多分20パーセントぐらいだと思うんです。

残りの80パーセントがトラックメイキングなので、あなたがつくった曲は本当によければ自分のレーベルから出してあげるし。自分と一緒にそれを売り込みに行こうよ。マネージメントもするし。

――本当にトータルで。

マーク:やってあげるべきだと思うんですよ。じゃないと変わらなくて。みんな、できるんだもの。

音楽の土台を作る場所がない

――確かに。ここは使ってもらっていいんですけど、日本って古い音楽の体制というのがあまり変わってないということですね。

マーク:どんな世界だってそうだと思いますよ。土台を作るまで。土台を作らせてくれないんですよ。全員。それがどんな趣味でも。釣りであろうが剣道であろうが何であろうが、何とか協会みたいなのができちゃった瞬間に、土台ができないんだけれど、じゃあ釣りをやる前に個人で土台をしっかりとつくったら自分で行けるじゃないですか。

趣味として始めようとして、その趣味がもしかしたら、世界チャンピオンになっちゃうぐらいだと思うんです。土台さえしっかりしていれば。

――確かに。釣りの話でいうといきなり釣りの道具をぱっと渡されて、やったことも見たこともない人がどこをどうしたらいんですかとなりますよね。

マーク:それが土台をしっかりと。勉強をオンラインでできたりしたら。ある日、行ってみて、すごく上手になって、大会に出て優勝して、そうしたらもうびっくりしちゃいます。協会とか。もうどこから出てきたのみたいな。宮本武蔵化ですよ。

――育てる環境をきちっと一度作り直して。それを通して。

マーク:その土台だけでいいんですよ。教えてあげるのは。今のさっき言ったように他に学校ないのっていったら、あるんだけど、土台よりももっと先を教えていっちゃっているような気がすごくするんですよ。

――テクニックだったり。スクラッチとか繋ぎはこうだとか。

マーク:そんなのは絶対にすぐできるから。それよりも先に曲を作ることを覚えちゃいなよ。みたいな。

――それは楽しみですね。

マーク:僕は絶対そっちのほうがおもしろいと思う。

実はglobeの新曲が存在する

――最後globeが20周年になった8月9日ですね。20周年に向かって何か思いというか。

マーク:思いがありまくるからこんなに死ぬ思いで武者修行のように5年間毎日。年間150本とか200本やっているんですよ。最初の時なんて。KEIKOが本当に20周年のときにステージに立てるのならば道はできているので。もうみんな忘れてない。

これだけスパイスを入れているので気持ちよく彼女は歌えると思うんです。ファンのための20周年でもあるし、みんなのための20周年でもあるんだけど。俺はKEIKOのための20周年のような気がすごくするんですよ。

だから、大好きなKEIKOが気持ちよくできるために。まだまだ止めずにいきますけど。20周年たったらたったで、またそれはそこから考えます。だって、これは言っていいのかいけないのかわからないのだけど、俺は言っていいと思うんですけれど。

世に出ていない新曲があるんですよ。これはKEIKOがたまたまワンテイクでとった曲なんですよ。

じじいになるほど、やんちゃになる

――最後に、インタビューの終わりにファンの方にお言葉とかありますか。

マーク:いやいや、もうなんていうのか。自由にやらさせてくれてありがとう。でもこのライフスタイルっていうのは本当に多分一般の人とは違って、ちっちゃい頃からファンがいるんですよ。きっとだからメンノンの頃からすごいファンたちがいるんですよ。

だから今になってもメンノンの頃から好きでという人もいればMTVのときから好きですっていう人もいればglobeももちろんという。ファンというのは常に僕と一緒にどっかにいたから、みんなにはいないかもしれないけれども。

さっき言った、これまたglobeと違う5つ目の絆なんじゃないですかね。だから大事にしています。だからこれからも一緒に歩んでいきましょう。もう45歳だけれども。まだまだ止まらずやりたい放題のライフスタイルで過ごしていくので。

じじいになればなるほどうるさくなっていくんで。やんちゃになっていくと思うんですよ。さらに、だから一緒に楽しみましょう。

――ありがとうございました。

マーク:ありがとうございます。

制作協力:VoXT