国民には自衛隊の覚悟を知ってほしい

大沼瑞穂氏(以下、大沼):皆さんこんばんは。自由民主党参議院議員の大沼瑞穂です。今日は第3回として、「自衛隊員は危険にさらされる」をテーマに安倍総裁にお話をうかがってまいりたいと思います。

私も山形県第6師団がございますが、皆さんご家族ご友人で自衛隊の方も多くいらっしゃると思いますし、東日本大震災の際の自衛隊員の方々の賢明な活動を通じて多くの国民の皆様が自衛隊員を身近な存在として感じ始めているんではないかというふうに思います。

そんな中、今、議論されている、平和安全法制において自衛隊員が危険にさらされるのではないかというような声を聞きます。そんな中で今日はこの問題について、総裁にうかがってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

安倍晋三氏(以下、安倍):よろしくお願いします。

大沼:この自衛隊のリスクという問題ですが、この問題について、そもそも自衛隊員のリスクってどいうことなんでしょうか。

安倍:今日もたくさんの皆さんがコメントを出していただいてますが、なるべくわかりやすくお話をしたいと思いますが、そもそも自衛隊の仕事というのは国民の命と幸せな暮らしを守ることなんですね。

ですから、国民のリスクを低下させていくために、自衛隊の皆さんはリスクを負っている。自衛隊の仕事には常にリスクが伴います。

たとえば、御嶽山が噴火をしました。噴火した後、直ちに取り残された方々の救援のために、自衛隊員は、山頂に残された人たちの救援に向かいましたね。また爆発するかもしれないというああいう危険な状況の中でまさに大きなリスクを負って行った。

でも彼らが大きなリスクを負わなければ、山頂で避難している遭難者の人たち、避難者の人たちのリスクはどんどん高まってしまうんですね。

彼らはまさに自分たちがリスクを負って国民を守る。それが自衛隊の皆さんの誇りなんだと思います。今年もまた、防衛大学の卒業式に出席をしました。卒業式が終わって卒業された防衛大学の皆さんが、陸海空それぞれ配属が決まった後、『服務の宣誓』というのを私の目の前で行うんですね。

それは、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います。私は彼らのこの服務宣誓、極めてこの言葉を噛み締めなければいけないし、片時もこの彼らの決意を忘れてはならないと思っているんです。まさに自衛隊員の仕事というのはそういう仕事なんですね。

安全保障法制によって自衛隊のリスクが増えすぎるのでは?

大沼:やはり議論の中で、その自衛隊員のリスクの話ばかりで、国民のリスクについての議論が少し欠けていたような気もいたしますけれども、やはりこの平和安全法制の目的というのは、国民のリスクは避けていくものだと。

安倍:今回の平和安全法制はですね、まさに国民の命と幸せな暮らしを守るためであって、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能にする。その意味において国民のリスクを下げていきますし、また、日米同盟の強化をしていくことによって、抑止力を高め未然に紛争を防いでいく。

戦争で国民を守るということよりも、まさに抑止力で国民を守っていくということだと思います。つまり、その中でももちろん、日々の訓練もありますし、それも含めて高いリスクを自衛隊の皆さんは負っていますが、それは国民のリスクを低下させていくために彼らがリスクを負っていることだと思いますね。

大沼:それでもなかなか、自衛隊員のリスクが増えていってしまうんじゃないかという声があるんですけれども、そのことについてはどうお考えでしょうか。

安倍:例えば、自衛隊の皆さんのリスクそれはたとえば、外国が日本を侵略する。その侵略を排除する。そこはまさに自衛隊の皆さんは命がけで対応しなければいけない。それは最大のリスクといえます。文字通り命がけで戦う極限のリスクを彼らは負う。そういう可能性もあるんですね。

そしてまた、たとえばPKO活動これもリスクが伴う。時には危険な活動状況に直面するかもしれないと思います。でも地域や世界の平和の安定のために黙々とそういう仕事にあたってくれています。また、災害派遣もそうですし、先程申し上げた通りでありますが、警察や消防だけでは手に負えない事態になった時に自衛隊は出ていきます。

また、福島の原発事故の時に、あの時も爆発がありましたね。あの爆発で自衛隊の車両は破損しました。負傷した人もいたんですがまさに原子力のすぐそばで、原子炉のすぐそばで活動をしている。常に彼らがリスクを負いながら、国民を守るために国民の安全のために仕事をしているということなんですね。

特殊部隊には自衛隊25万人のなかから年間400人だけが選ばれる

大沼:実際にですね、その災害の時などには本当に津波が二次被害三次被害で、東日本大震災の時など起こりえたと思いますし、御嶽山の時もそうであったということを考えれば、やはり常にリスクと向かい合っていると、それは最大限のリスクと向かい合っているということが言えるんだと思いますね。

安倍:例えば、10年前なんですがスクランブル緊急発進をしてですね、国籍不明機に対応して日本の領空に入ってこないように、ここは日本の、これ以上行くと日本の領空ですよということを相手に知らせて日本の空を守るんですが、10年前に、南シナ海で我が国に接近をしてくる国籍不明の飛行機、戦闘機があったんですね。この戦闘機を追尾をして、彼らが日本の領空に入ってこないように対応していた。

しかし、積乱雲の中でそういう活動をしていてですね、残念ながら墜落をしてしまった。脱出できずに殉職されました。で、今はですね、10年前と比べてスクランブルの回数というのはもう7倍になっている。日夜そういう中において、本当に危険を顧みずに日本の空を頑張って守ってくれているんですね。それで日本の領土、領海、領空は守られているんだということもですねぜひ、国民の皆さんに知ってもらいたいと思います。

大沼:実際のお話を交えて現実には10年前と比べて7倍というようなお話もうかがいました。実際の任務は、やはりそれだけ危険でありますけれども、だとするならば、普段の訓練も大変なのではないかなというふうに思います。普段の訓練もやはり厳しいものなんでしょうし、リスクも高いですね。

安倍:そうですね。自衛隊の皆さんの訓練って本当に大変だと思うんですが特にですね、特殊部隊の要員を要請するレンジャー訓練というのがあるんですがね、自衛隊員が25万人にいて、そしてこの25万人の中でえりすぐりの人たちがこの訓練をするんですが、この訓練を終了できるのがですね、年間400人しかいないんです。

実は、今防衛大臣の中谷さんも、今太ってしまいましたけれど、レンジャー部隊の時にはですね精悍な体つきで、この訓練を彼は終えることができたんですが、この訓練は過酷な訓練です。ほとんど食料も持たずに山の中に入ってずっと昼夜分かたず、休まず休みを取らずにですね、行軍をしたりとかするという、負傷者も続出するような訓練なんです。

この訓練にもまさにリスクは伴うんですが実際にですね、本当に事態が起こったときに自分のリスクを下げるためにはそういう危険な訓練もしておく必要がありますし、そういう訓練を重ねているしっかりとした特殊部隊が日本にあるということになるとですね、邪な考えを持った国が日本に特殊部隊を送ってですね、何か悪さをしようと思っても、そういう強い特殊部隊がいるから日本はやめておこうということになります。

ですから日々の訓練、リスクを負って訓練はしていることがですね、結果としてそういう国が日本に侵入していく、自衛隊員にとっても最大のリスク発生することを未然に防いでいくということにも、繋がっていきます。

特措法による対応には限界がある

大沼:なるほど、わかりやすい説明ありがとうございました。でもやっぱり、この平和安全法制を通すと自衛隊員に死者が出るんじゃないかというような批判もありますけれども、そのことについては。

安倍:今、ずっとお話をしてきたように、自衛隊員の仕事は大変、過酷な仕事なんです。私に質問する方々は、これから新たに、またあるいは初めて死者が出るんではないかという質問をされる方がいるんですが、自衛隊発足以来、実は1,800人を超える殉職者が出ているんですね。

私も総理大臣として殉職隊員追悼式に出席をしています。そこにはご家族の方々もおられ、家族のみなさんとお目にかかるのも大変、辛い気持ちです。しかし、まさに命がけで日本を守るために、国民のために365日、汗を流している彼らを私は本当に誇りに思いますし、彼らを支えている家族のみなさんに感謝したいなと思いますね。

大沼:本当、そうですね。私も地元で父兄会のみなさま方とかと、お話をすると、やはり自分の息子を自衛隊員にしたのを、親の誇りだとおっしゃってくださる方がたくさんいるんですが。

やはりそのためにもしっかりと、そのリスクを軽減していかなきゃいけないというふうにも思いますが、新たな任務が増えるとその分リスクが増えるんではないかというような議論もあります。そのことについてはどうお考えでしょうか?

安倍:今回の法改正で新たな権限もできますし、また新たな任務も増えます。その結果、仕事が増えるかもしれないんだから、その仕事に付随するリスクが増えるでしょうと、それを認めなさいという議論があります。

しかし、例えば1あるリスクがまた1増えて、更に1増えて、1足す1足す1は3で、今まで2だったものより、増えたじゃないかという、実は単純な話ではないと思うんですね。

例えば、今まで何か起これば特措法というその事態のための法律を作ってきました。アフガン戦争があったあと、テロ対策としてテロ特措法を作ったり、あるいはまた、イラク特措法を作ったり、そういう特別な事態に対して特措法を作った。

問題点はこれは急に事態が発生して、それに対応するために法律を作るという対応でありますからあらかじめ情報を収集したり、あるいはまた訓練をしておくということができにくいんですね。

今度、私たちが作る法律は恒久法ですから、あらかじめ平素から各国とも連携した情報収集や教育訓練が可能で、いろんな事態に対応できるような訓練も可能になってきますから、実際、私はリスクは下がっていくと思います。

安保法制で自衛隊のリスクは下がる

安倍:また、PKOについて今までは他の部隊と一緒に自分たちが所在する基地を守ることができないんですが、今度は新たな任務として警備、警護ができるようになりますから、他国の部隊と一緒に、その基地を駆けつけ警護できますから一緒に守ることができます。

そのための共同訓練もできるんですね。そうすると、自衛隊だけではなくて他の国の部隊と一緒にその基地を守れば、より私は安全になると思いますね。

それは今、ソマリア沖で行っている海賊対処と同じで、たくさんの国の軍艦と一緒に日本の自衛官は守っているんですが、たくさんの国と一緒に守れますから、200以上あった襲撃件数がこの半年間、もうとうとう0になったということなんですね。

大沼:はい、ありがとうございます。今、2点大きな点についてご説明いただきました。私もやはり法治国家ですから法律が通らないとその訓練もできないというのは、非常に問題だという風に感じました。

そして、またPKOで実際に現場に行かれた方で日本のNGOから救援の応援、助けてくれという連絡をもらって、でも今、駆けつけ警護ができませんから現場視察とか情報収集という名目で行って、たまたまそこにNGOの方がいたということで、その方を助けて輸送すると。

法律がないということが逆に現場の自衛官のリスクを高めているんではないかと、攻撃されないとまた反撃できないということでありますよね。

安倍:本当にそれは私も自衛官の方から伺いました。今までは自分の身を守るためにしか武器は使えません。ですからNGOが危ない、日本人のNGOが例えば危ないとなっても彼らを守ることはできないんですね。

しかし、気持ちにおいてはそういうわけにはいきませんから、いったんその人たちに近づいて自ら身を危険にさらしてですね、自分が危ないということでもって武器の使用を可能にするというかたちで守っていたんです。

今度は任務を遂行するために武器を使用できますし、またNGOを守ることもできます。また他の国の部隊を救出にも行けます。そうなれば日頃からそういう訓練もできますね。

日本人を救出するための訓練もできるし、NGOのみなさんを守るための訓練もしていく、しかもこれ個人ではなくて部隊みんなでその訓練をします。

それは間違いなく自衛隊のみなさん個人においても、ちゃんと訓練が前もってできるんですし部隊でちゃんと行動もしますし、それはもうリスクは下がっていくと思います。

このように仕事は増えていきますが、全体を見ていただければ、それはそもそも国民のリスクを下げていくためのものであり、また前もっていろんな準備もできるし、新たな権限があることによってリスクも減っていく、これ全体を私は見ていかなければいけないんではないかなと思います。

大沼:ありがとうございます。

机上の空論ではなくて現場の声を大切にする

大沼:今も現場に任せようというコメントをいただきましたけれども、やはり我々自民党はですね、その机上の空論ではなくて現場の声を大切にして本当に自衛隊員のリスクを下げるために、この法案を通すんだという気持ちでありたいと思いますし、やはりそういった批判が誤りであることが今日の総裁の説明でもよくわかりました。

安倍:これからも制度としても、法制においてもしっかりと自衛隊のみなさんのリスクは下げていかなければいけない、そういう努力はしっかりとしていきたいと思っています。

でも大切なことはこの画面にも森を見よということが書いてありましたが、日本あるいは日本国民のリスクを下げるために、この法制をしっかりと法律として成立させたいと思います。

大沼:安倍総裁、本日は誠にありがとうございました。

 

制作協力:VoXT