中学生からソフトウェア開発をしていた

矢倉大夢氏:身長だけではなくてプレゼンの内容もアブノーマルなTehuのあとでしゃべるっていうのは結構ハードルが高いんですけども(笑)。

「今必要な『三つ子の魂』とは何か」ということで話させていただきます。

僕は水野さんが言っていたように、どっちかっていうとエンジニアとか、そういう技術のほうをずっとやってきていて、それでいろいろ経験してきた中で、重要だなと思った考え方とか、そういうことについて話していきたいと思っています。

では最初に自己紹介。矢倉大夢と申します。1996年生まれで今16歳です。Tehuと同じ灘高校に通っていて、Tehuが高2で、僕が高1っていう、Tehuの後輩っていう関係です。

学校ではパソコン研究部っていう部活がありまして、そこの部長を中3の頃からずっとやっています。Tehuも一応部員で、Tehuみたいなアブノーマルがたくさんいて、それをまとめるのに四苦八苦しながら、毎日苦労してるんですけども、そういう日々を送っています。

校外の活動としては、まずLinux Kernelっていうのの開発に参加しています。Linux Kernelっていうのは、世界のいろんなところで使われているソフトウェアの1つなんですが、これは世界中の開発者がメールで議論しながら開発をしていくっていうソフトウェアで、もちろん英語で議論してるんですが。

その中に僕が間違い、「バグ」を見つけて、ここがおかしいんじゃないか? ってメールを送ったところ、そのソースコードが採択されて世界中で動いているっていう、そういう状態になってます。

あと情報セキュリティスペシャリストっていう国家資格があって、これは半分ネタで受けたみたいな感じなんですけれども(笑)。受けてみたら通って、一応最年少合格ってことで、こういう資格を持っています。

あと日本OSS奨励賞っていうのがあって、これは、Linux Kernelは世界中の開発者が自由に開発していると言ったと思うんですけど、そういうふうにオープンソースっていう、自由に開発できるソフトウェアに貢献した人とが受賞するっていう賞で。

そのLinux Kernelの開発に参加したこととかが評価されて、普段は社会人の開発者とかがもらうような賞なんですけども、中学生として初めてこの賞をいただきました。

未踏プロジェクトに史上最年少で採択

あと未踏プロジェクトっていうのもやっていました。この未踏プロジェクトっていうのは、国の独立行政法人情報処理推進機構、通称IPAっていうんですけども、そこがやっている人材育成プロジェクトで。

どういうプロジェクトかっていうと、自分の取り組みたい開発したいテーマについて応募して、その応募した書類の審査を経て、それからプレゼンテーションの審査もあって。

それを通過すれば、こういうITの業界で働いている第一級のプロジェクトマネージャーと、あと資金面のサポートがあって、その2つのサポートの下、取り組みたい開発のテーマに取り組むという、そういうプロジェクトなんです。

中学3年生のときに、2011年の未踏プロジェクトに採択されまして、中学生での採択っていうのは史上最年少っていうことでした。

このときの資料は、締め切りの日の朝にこのアイデアを思いついて、学校で1時間ぐらいかけてパッと書いて、そのまま昼に応募したら書類審査を通過することができて、それでこういうふうに素晴らしい先生方にご指導いただくことができました。

あと競技プログラミングっていう分野があるんですけど、その分野でもアジア太平洋で銅メダルもらったりとか、最近だと情報オリンピックの日本代表候補っていうことで3月にまた合宿で東京に来る予定になっています。

あと技術の話が中心なんですけど、いろんなところでしゃべってまして、東京大学とか早稲田大学で開かれたイベントとか、あと台湾のトレンドマイクロの本社に行ってしゃべったりっていうこともやってます。

あと1番最近だと、朝日新聞に掲載してもらったんですが、ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ、この略だったと思うんですけど、JSECっていうコンテストがありまして。

幸いにして12年で文部科学大臣賞と富士通賞をダブル受賞しました。5月にアリゾナで行われる、それの世界大会なんですけども、今年の5月にそれに参加する予定です。

幼い頃からパソコンに触らせるだけではダメ

いろいろやってきたことを挙げてたんですが、プログラミングを始めたのは、僕は中学1年生の時なんですね。小学校の時からインターネットを使っていて、これは今の中高生なら普通のことだと思うんですね。

学校で「調べ学習でインターネットを使いましょう」みたいなのも多少あると思うんで、インターネットを使ってるっていうのもよくあることだと思うんですけれども。僕は小学校の頃、全然プログラミングをしてなくて、親がIT系の職業というわけでもないので、本当、普通にインターネットをしてるだけでした。

親は古いAppleのコンピューターをたくさん持ってて、それがうらやましいなとは思ってたんですけど、親は壊されたら嫌なのか知らないですけど全然使わせてくれなくて、僕はずっとWindowsでインターネットをしてました。

中学1年生のときに、特に理由はなくふらっとパソコン部に入ったんですね。そこからプログラミングのおもしろさを知って「勉強よりもプログラミング」みたいな感じで、ずっとプログラミングをしてました。今でだいたい3年半ぐらいプログラミングをしています。

僕がこういう、いろいろ経験してきた中で1番思っているのが、必要なのは「小さい頃からパソコンを触らせること」だけではないと思っています。

もちろん「小学校3年生のころからWebページを書いてた」とかいう話を聞いて、僕はすごくうらやましいなとは思うんですけども、小学校3年生からパソコンを与えるだけでは、こういういろんな経験をできるようにはならないというふうに思っています。

パソコンを触らせる以外に1番重要なこととして「幼少期に基礎となる習慣を身につけること」が大切かな、というふうに思っています。そこで、「三つ子の魂」というワードを使ったわけです。

疑問をすぐに検索せず考えることで、思考力が育まれる

僕が1番必要だと思っている力は2つありまして、IT系のことをやるのと、IT系以外のことをやるの、いっぱいあると思うんですけど、何をするにも必要な力、そういう基礎体力のような力っていうのがあると思っていて、「疑問を持ち、考える力」と「つながりを見つけ出す力」だと思っています。

1つ目の「疑問を持ち、考える力」っていうのはどういうことかというと、よく言われているのが「常に『なぜ?』という疑問を持つことが重要だ」っていうふうには『ドラゴン桜』っていう漫画で出てたりとか、結構使いまわされたフレーズだと思うんですけれども、それだけこの言葉には重みがあるというふうに思っています。

これは、この前母親と東京に来てた時にしゃべってた会話なんですけど「なんで鳥のゆりかもめって、ユリカモメっていう名前にしてるんや?」みたいなことを会話してまして。

親は「ゆりかもめは百合のように白いからか?」っていう話をしてて、僕は「立ってるあのちっちゃい姿が百合の花みたいだからかな?」みたいなことを言ってたんですが、調べてみると、「川の上流まで上ってくるので入江かもめと呼ばれていて、それが転じてゆりかもめになった」っていうのが通説らしいです。

例えとしてわかりにくかったかもしれないんですけど、「なぜ、なに」という質問に「わからない」とか「あとで」って答えたらいけない、っていうのはよく言われてると思うんですけれども、それだけじゃなくてさっきみたいに、一緒に考えてみることが重要かな、というふうに思っています。

今だったらスマートフォンがあると、疑問を持ったらすぐGoogleで検索して解消することができるじゃないですか。でもそうじゃなくて、その一歩前で、検索する前にどうしてそうなのか? っていうのを自分で考えてみるっていう、そういうステップが僕の今の思考力を育てていったのかな、というふうに思っています。

実際、こういうプログラミングとかしてるときも、なぜ動くのか? っていう、そういう疑問を持って、それについて考えて、実際にそこの部分を調べて、作って、解消していく、というプロセスを何回も繰り返すことによって、いろいろ勉強していろんなプログラミングとかができるようになったかな、というふうに僕は考えています。

物事のつながりを知ることで、世界の見え方が変わる

2つ目なんですが、2つ目が「つながりを見つけ出す力」というふうに思っています。これも言葉ネタなんですが、「三拍子揃う」っていう言葉の語源を知ってる方いらっしゃいますか?

僕はワルツのテンポにうまく乗って物事が進んでいくことかな? とか勝手に考えてたんですけど、ある時「能楽の大鼓、小鼓、太鼓がそろっている状態からきてる」っていうのを、これは教えてもらったわけで自分で調べたわけではないんですけれども、こういうのを教えてもらって、そういうふうに繋がっているんだ! っていうことを心から実感したんですね。

こういう「つながりを知る」っていう経験が重要かな、というふうに僕は考えています。物事のつながりを知ることによって、世界の見え方が変わってきます。見ている世界が変わるっていうのは非常にエキサイティングな体験で、何か物事を学んでいくモチベーションになると思っています。

米山君(米山維斗氏)も「いろんな分野の点と点が合わさって、科学のゲームを作り出せた」っていう話をさっきされてたと思うんですけど、そういう裏側に、興味のある分野からのつながりを見つけて、そこに熱中していくモチベーションがあったのかな、というふうに僕は考えています。

自分の好きな分野からそういうふうにつながりを見つけて、その分野についての興味を持つっていうことで、自分の持ってる「興味の幅」っていうのをだいぶ広げることができます。興味の幅を広げると、そこから視野もどんどん広げていくことができるようになるのかな、というふうに思っています。

体験を通して自然と身につけることが重要

僕がつながりを見つける力っていうのを培ったのは、いろいろ体験をしたことだと思っています。小学校の時は、親がいろいろな体験教室みたいなのに連れてってくれまして。

能楽体験についてハマっていて、実は今僕は、能の謡とかができるんですけれども、それ以外にも能楽体験とかに1年行ったりとか、電子工作教室とかも行ってて、パソコンのCPUの中身とかそういう詳しい部分の知識のもとになってるかな、っていうふうに思っています。

1番最後に言っておきたいのが、なぜ「三つ子の魂」という言葉を用いたかということです。「三つ子の魂百まで」とことわざ辞典で調べると、「幼い頃に習ったり覚えたりしたことには用いない」っていうふうに書いてあるんですね。

つまり、子どもに「こういうふうに考えなさい」とか、「こういうつながりを見つけていきなさい」みたいなふうに教え込むんじゃなくて。

体験とかを通してそういうのを身につけていくような「一緒に考えること」とか、そういうのを通して「自ら身につけていく」ような感じをつくることが1番重要なのかな、というふうに僕は経験からそう考えています。ご清聴ありがとうございました。

制作協力:VoXT