経営陣は育てる? 外部から招く?

岡島悦子(以下、岡島):プロノバの岡島でございます。プロノバは「プロの場」という意味で、まさにこのセッションのテーマ「経営のプロのチームを創る、強くしていく」というような仕事を10年以上やっております。

タイムリーなセッションですね。ミクシィさんが2013年6月25日の株主総会以降、創業者の笠原さんが退いて新体制になるということで、そんな話題も満載でお届けしていこうと思っています。メンバーを仕組んだ(インフィニティ・ベンチャーズの)小林さんはさすがですね。何故これを仕組めていたのかとちょっと思ったりはしますが(笑)。

ここにいらっしゃる方々は3者3様で経営チームをずっと作って来られてるんですが、今日は事業戦略では無く、経営チームをどういうふうに作って来られたのか、どんどんドメイン(事業領域)が変わられたり海外に出られたり、色んなことをされていると思うので、そういった中で、三者三様のどんな思いのもとに経営チームを強くしてこられているのかということを、綺麗ごとも無くリアリティを持って伺っていきたいと思っております。

大きく3つくらいお伺いしたいと思っているのですが、最初に各社さんそれぞれ、経年の中で経営チームをどういうふうに強化してきたのか、ミッションや戦略との関連やその背景なんかも伺えたらなと思っております。内部で量産する会社さんも、外部から招く会社さんも、創業のままその方達がどんどん大きくしているケースも、はたまたミクシィさんのように経営陣入れ替えのタイミングとかも含めて、どういう風に考えていくのかその辺伺えたらなと思ってます。

"裸の王様"にならないために関係者を増やす - GREEの経営チーム

では、GREEさんから伺っていきたいなと思います。今、経営陣はこういう5人でやってらっしゃいます。

まず田中さんにお伺いしたいのは、創業メンバーからずっと変わらず、田中さん・山岸さん・藤本さんでやってこられてるじゃないですか。売り上げが一気に伸びて、ドメインもどんどん変わっていってる中で、お3人がしっかりと役割分担をしながらそれぞれ成長されているからこそ、あまり入れ替えずに済んでるのかなと思うんです。どんなことを考えてこられて、今後どうされていくんでしょうか?

田中良和(以下、田中):そうですね。こういうのは全く答えが無い世界なので、私はこう思って進めてきた、ってだけのお話になります。

世の中では、社長をどんどん変えたほうがいい、大企業になったら変わったほうがいいってことをよく言うと思います。それはそれでもちろんいいんですが、Googleのセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、Facebookのマーク・ザッカーバーグらのように社長で創業者で、そのまま会社の規模をデカくして、それでも経営出来てるって人も存在してるし、米Yahoo!のジェリー・ヤンとかDellのマイケル・デルらのように途中で「俺辞めたー」みたいな感じで辞めると、その数年後に会社もまずくなるパターンもあります。

自分の理想としては、会社やってる人会社自体も同じ速度で大きく成長できれば一番美しいのかなと。僕は楽天にずっといたこともあって、三木谷さんがそうだなと社員の時から僭越ながら思ってました。自分もそうなれたら一番いいなと思ってますし、トップを変えることが目的になるのもおかしいので、自分以外の人もより成長出来ているのであれば、同じ経営陣でいいのかなってことで常に純増をしています。

岡島:変えないでこれていることをある意味すごく幸せというか、会社の成長も伸びているということで、結果として素晴らしいと思います。

田中:そうですね。自分でも本当に結果論でしかないなと思うところもあるので、うまくいけば正当化される、失敗すればその逆ということだと思っています。

岡島:ただ海外の子会社が出来てきたりということもあって、いわばミニ経営者のように、執行役員のような方達にはどんどん権限移譲して任せていっている感じですか?

田中:役員(常勤の取締役)は5人でやってるし、中核の事業をやっているのもこの5人なんですが、僕が直接マネジメントしている執行役員的な人達っていうのは10~15人いますので、そういった2つのチームでやってます。

特にうちの会社のように創業者で大株主で社長で、みたいな人がいると、取締役会すら自分で全て任命出来てしまうといった変な状況になってしまうので、取締役会と社外取締役を上手く入れていったり、執行役員会みたいなものを作ったりと、あとは普通の会社とは違う形で運営することが求められてると思います。そうしないと自分が思ったことが何でも通りすぎてしまうんで。

岡島:裸の王様になりかねないと。

田中:そういうのがありますので、この表に出てない人達を含め、ここ8年9年で関係者をどんどん増やしていっています。

社外取締役は精神的ストッパー

岡島:山岸さんはその辺、何か考えていらっしゃることありますか?

山岸広太郎(以下、山岸):そうですね。うちの社外取締役っていうのは、始めの頃はKDDIさんからずっと来て頂いたり、最近だと元NTTドコモの夏野剛さん、元フジテレビの飯島さんにも入って頂いて、あと監査役には弁護士の永沢先生とかもいらっしゃいます。わりと取締役会はガチンコで、結構否決されたりするんですよ。監査役の人は投票権無いですけど、法律・ガバナンス上どうなんだといった話とかを突いてこられると、僕らも「ああ、そうなんだ」ってしっかり聞けます。

岡島:夏野さんとかも黙って聞いてないですもんね(笑)。

山岸:そうですね。夏野さんはいつもかなり過激なことを仰るんで(笑)。

田中:僕が思うポイントとしては、社外取締役が機能してるってことだと思ってまして、これすごいオススメです。

うちの会社はリクルートさんとかKDDIさんとか、大株主になって頂いた会社さんからの社外取締役を歴史的に受け入れていたって経緯上、こうなったってとこもあるかもしれません。でも変な話、数千人数万人の会社で働いたことある人達に意見聞ける場なんて中々無いわけなんで、KDDIさんが数万人いる中でうちの人事制度はどうでしょうか、とかを聞けること自体がすごく必要だと思いました。

岡島:なるほどね。

山岸:あと、ここ2、3年の間に会社はすごい拡大していて、求められるマネジメントのスタイルっていうのが、ちゃんとした会社のそれを求められるようになったなと思うんです。去年は色々な問題も起きた中で、常勤監査役に元パナソニックの監査役だった方、事業のラインで上にまで行かれて最後監査役をやられた方を迎えたりとか、あと別の上場企業の役員までやって、広報とかそういった方面でキャリアのある方に顧問をお願いしたりして、僕らに無い経験をお持ちの方に来て頂きました。

グローバルな製造業の会社の経営を65歳ぐらいまでやってきた人達っていうのは、全然違う業界に来てるのにすごくまともな「ああ、そうですね。そういう観点はありませんでした」みたいなことを仰って頂けたりする。経営として普遍的に必要なことってのはやっぱり同じなんだなってのはすごい感じますし、年取っててすごい人はやっぱりすごいなというのを最近かなり感じます。

岡島:社外取締役など周りのアドバイザー的な人達である意味、その経営チームの強さを担保するというか、皆さんが健全でいられるように担保していくような形ですかね?

田中:例えば最近、年齢60以上の豊富な経験をお持ちの方々に会社まで来てもらって、その人達にはインターネット業界の細かい話っていうのは聞かないですけれども、経営に普遍的なものを聞いて「なるほどなー」と思うことがあるので、本当うちにとっては役立っています。年齢関係ないんですけれども、各社さんでやられるといいかなと思います。

岡島:固有と普遍を行ったり来たり出来るような大人が入ってくれるといいですよね。

田中:あと同世代の人達でやってると、なあなあとまでは言いませんが、何も喋らなくてもわかることがあるが故に、何となくで進んでしまう時があるんです。でも社外取締役には「何となくイケる、オッケーでしょう」では通らない。

岡島:事業計画出さなくてもオッケー! みたいな(笑)。

田中:(笑)。この会社の規模になってくると、しっかりした説明をちゃんとしていかないとマズい。そういう意味では自分を律する鏡としての機能というのもすごくあると思います。

岡島:良い社外取締役を入れるというのはすごく大事だと思っていて、私のところにも「良い社外取締役探してるんですけど」って話がよく来るんです。でもこれってすごい微妙な話で、ブレーキ踏みまくっちゃうオヤジみたいなのが入っちゃうと大変なことになっちゃうじゃないですか。そこら辺で気をつけてらっしゃってることって何かありますか?

田中:僕がやっているのは、社外取締役の方の数が取締役会のなかで過半数を超えてしまうとそれこそブレーキを踏まれてしまうわけですけれども、それ以下に抑えていれば精神的なストッパーとしてだけ機能して、票数取りとかで動きを止められてしまうことはないので、そういう意味ではバランスを取りながらやれる物だと思っています。

成長が全てを癒やす

岡島:なるほど。ちょっと意地悪な言い方をすると、私は「成長が全てを癒やす」と思っていて、成長をどんどんしていくと色んな人にポジションも出来てくるので、会社の病んだ部分があまり見えないで済んだりすると思うんです。でもこれだけ急成長してくると、多少成長が寝てくることもあるじゃないですか。そういう時には、経営陣少し入れ替えようかなとか、そのようなお気持ちは無いですか?

田中:そういうのも全然アリかなと常々思っております。会社が横這いだからとかいうよりも、経営陣が絶対変わらないんだなんてことは無いですし、まあみんな思ってるとは思いますけど、そういう前提で出発しないと。既得権益というわけでは無いので。

岡島:じゃあイノベーションし続けるためには、入れ替えていくのも今後はアリかなとお考えですか?

田中:ただそれと同時に思うんですけど、拡大する企業って基本的にマネジメント出来る人の数が圧倒的に少ないんですよね。だから5人の役員ならば、5人×同じような能力の人が3倍とか5倍いないと、マネジメント出来ない会社をやっているということになると思うんです。なので役員を減らしていってしまうとマネジメント出来る人も減っちゃうんで、会社規模が一定であるならば入れ替えていけばいいんですけど、どっちかというと追加していく中で、誰に任せる任せないという問題のほうが形としては正しいように思います。

岡島:だから本当ポジションが増えていくことってすごい重要ですよね。じゃないと多摩ニュータウンみたいになっちゃうというか、全体的に年齢が上がっていってずっと上が詰まって過疎化してしまうと、ベンチャーとしてはすごく辛い状況になってしまう。GREEさんはポジションをどんどん作っていきながら、社外取締役もうまく使っていくという感じですかね。

役員入れ替え制度「CA8」誕生の経緯 - サイバーエージェントの経営チーム

岡島:次にサイバーエージェントさんに伺っていきたいと思います。今の話とは全然違うやり方をされているんじゃないかと思うので、日高さんと曽山さんに伺っていきたいと思います。

きっちり8人で最後までいってるというのがミソだと思うので、どんなことを考えて経営チームを創って来られたかっていうのをお2人にお話頂きたいなと思います。宜しくお願いします。

日高裕介(以下、日高):サイバーエージェントが出来たのは1998年で、「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンを作ったのはそれから5~6年経った2003年くらいでした。最初から大きい会社を作ろうとかすごい会社を作ろうとかの言葉が定義されていた訳では無くて、インターネットの波が来て売上が4億くらいの時上場しました。

そうすると市場から「成長しろ」と言われるんで、一生懸命成長するために例えば採用を急激にやって、その中で大手広告代理店の方がたくさん来たりとか、でもやっぱり今はほとんど残ってなくて(笑)。自分達ですごい会社って物を考えて数多く失敗してきた中で今の形、CA8(役員の数の上限を8名とし、2年に一度役員2名が交代する制度)に代表されるようなものが出来たのかなと思っています。

曽山哲人(以下、曽山):日高とか藤田とかは元々、創業から人事を重要視していたので、若手の抜擢とかはすると言っていたんですね。やっぱり一番大きいのは、2008年にCA8という役員の交代制度を始めたことですね。

岡島:画期的ですよね。

曽山:ありがとうございます。98年から2008年のこの10年間の間に、ずーっと社員から消えなかった何となくのクレーム、不満っていうのがあって、それは「上が詰まってる」ということでした。経営陣が役員を交代することをやっていって、それを基に自分達も変わっていければ会社もずっと成長出来るかもね、と決めたのが1つ大きなポイントだと思います。

岡島:入れ替えって結構勇気が必要かなと思って、今すごいうまく行ってんのになーとかあるじゃないですか。それでも2年毎に1人か2人入れ替えてらっしゃるって、すごい勇気のある仕組みだなと思うんですけど、そこの逡巡とかは無いんですか?

曽山:どうやって決めてるのかは私も知らないところもあるので…(笑)。

岡島:え、どうやって決めてるんですか? 

日高:藤田の一任で。

岡島:じゃあ藤田さんがぐるぐる考えてるんですね。

日高:基本的に人事構成とか、福利厚生も含めて全部自分達のオリジナルで考えようっていうのを藤田も口癖のように言っています。自分達が成長したい方向、得意な方向、苦手だけどやらなければいけないこととかをよく勘案して、プラスとマイナスを考えた時にプラスが大きければやろう、ということです。

CA8に関してはマイナスも多分すごくあるんじゃないかなとは思っているんですけど、今のところそれを圧倒するプラスがあるから導入してるって僕ら自身も思ってますし、多分全社的にもそうだと思います。

「役員」も1つの役割に過ぎない

岡島:『成長するしかけ』っていう曽山さんが書かれた本にもありましたけれども、入れ替えるにも母集団が必要で、そこが出来るような仕組みがその下にまたおありになっている。昨日の藤田さんのC-NETのインタビューでも拝見したんですが、実践こそ全てと新卒に社長を任せちゃうみたいなことをCA8の裏側でやっているからこそ、うまくいってるのではないかなと思うんですけど。

曽山:そうですね、若手の抜擢はすごくやっていかなければいけないかと。藤田と日高は23、24歳とかで創業しているので、それと同じような年齢の時から藤田とか日高以上の経験をさせないと、みんなも育ってこないだろう、ということで1年目の社長とかもどんどん出して、今はもう新卒社長組っていうのが40人いるんですが、そのうち30人が20代です。

岡島:ここにも宇佐美さんとか、CA8卒業生がたくさんいらっしゃると思うんですけど、そういう意味ではベンチャー業界にもCA8卒業生がどんどん出来てきて、いい経営者がどんどん出来ていくということにも寄与されている。生態系の一員を担うみたいな。出て行っているのが良いのかどうかわかりませんが、私は良いことだと思ってます。

サイバーさんは役員、経営陣っていうのをある意味では役割だと捉えられていて、新陳代謝をどんどんしながら若手が育っていきながら入れ替えたり、石井さんのように平場に戻ってらっしゃる方もだんだんいらっしゃるって感じですかね。

日高:そうですね。CA8の今後のロールモデルとかキャリアをどう創っていくかというのはCA8制度の今後の課題であろうと思っていて、CA8を卒業して行った人達が業界で活躍したりとか、もちろん社内の中でご活躍したりとか、そういうのを目指したいなと思ってもらうのが1つの役割。僕自身もそうですが、その後の活躍っていうものを創っていきたいなと思っています。

岡島:サイバーさんは企業文化がすごくお強い中で、オーガニックに内から人材を育てていきながら、ドメイン(事業領域)をどんどん広げていくという形をやってらっしゃると。ここにいる方達がもし参考にするならば、そういうやり方がサイバーエージェントとしては正しいと思ってらっしゃるということでよろしいですか?

日高:そうですね。どんな手段が良いかというのは各社がそれぞれ決めることなので、このやり方が正しいというのは多分無いんですね。軸を決めてそれを正解にした人達が、カッコいいとかすごいって言われる感じだと思うので。合うパターンを探してるって感じですね。

岡島:文化とか戦略とかとすごく関係が有りそうな気がしているので、それによって各社選んでいくっていう形かもしれないですね。ありがとうございます。

経営が踊り場を迎えると、人は足を引っ張り合う - ミクシィの経営チーム

岡島:お待たせいたしました。ミクシィさんに伺っていきたいと思います。

ミクシィさんは今回ガラッと変わりましたが、それまで笠原さん体制でずっと来られていて、今回朝倉さんが社長になられます。ミクシィさんは、朝倉さんがいたネイキッドテクノロジー社や川崎さんのkamadoを買われたりと、ある意味経営陣を取り込んで、梁山泊みたいに良い経営者がどんどん集まっていくというような会社の形になっているのかなと思っているんですが、その背景みたいなものを荻野さん教えて頂いていいですか?

荻野泰弘(以下、荻野):先ほど岡島さんの話にあったように、「成長は全てを癒す」っていうのは本当に素晴らしい言葉だなと思っていて、やっぱりベンチャー経営している上でそこは本当に目指し抜かなくてはいけないなと思っています。一方でこのグラフで見て頂けるように、前者の2社と違って我々の成長は一旦踊り場を迎えています。踊り場を迎えた時に何が起こるかというと、人が社外じゃなくて社内を見始めるんですよ。

岡島:内向きってやつですね。

:内側で色々と社内的な動きであったり、端的にいうと足の引っ張り合いみたいなことが起きてきます。

岡島:縦割りの弊害みたいなことが出てきてしまうと。

:ここにいるベンチャー企業の社長の皆さんの中にも多分、そのようなご経験をされた方はたくさんいらっしゃるんじゃないかと思っていて、成長している時って何も歪は起こらない。でも踊り場が来た瞬間に色んな歪が出てくるんです。

岡島:犯人探しみたいなことがたくさん出てきますよね。

:そうですね。僕自身は2010年の頭に買収されてミクシィに入ってきたんですが、そのタイミングでちょうど踊り場を迎えようとしているところでした。ベンチャーで上ばかり見ていた身としては入った時、社内の空気というか、目線の持って行き方や外との戦い方っていうところに独特な雰囲気を持つ会社だなと思いました。

岡島:独特ってどんな感じですか?

:今は僕ら役員陣が集まると必ず、会社をもっと大きくして世界を目指すとか、変革し続けようっていう風にみんな外向きにファイティングポーズをとって、常に前に常に前にっていうことだけを考えているんですけれども、そういう会話が当時は少ない、ほとんど無いような感じでした。

なので、基本的には外向きに戦える人でトップを構成しています。これだけのたくさんのユーザーと経営資源を抱えているわけで、それは外に向かって戦っていかないとユーザー様にも社内にも申し訳ない。常に上と外を向いているだけの経営チームでやっていければまだまだ大きくなっていけると考えて、2011年に現社長・朝倉の会社を、2012年には川崎の会社を買収、というような形で進めています。

「永久変革」のための体制づくり

川崎裕一(以下、川):スタートアップの買収を通じて合同メンバーが出来るってあんまり無いと思うんですよ。現在のメンバーでも、朝倉・荻野・川崎は買収されたメンバーですし、笠原っていうのは日本でも有数のシリアルアントルプレナー(ベンチャー事業を次々と立ち上げる起業家)で、起業経験者がこれだけ合同にいるっていうことは普通無いですよ。

一言でいえば起業家っていうのは、サービスの愛はあって当然。その上である種、僕らよく話すんですけど、飛び起きた経験あるかと。それってやっぱり大事なことだと思うんですよ。我々は利益にこだわり抜くということを宣言しています。ですからそういうメンバー、自分事として経営とか会社とかスタートアップを学んでいる人間がいるというのはすごく良いと。

我々の会社でもユニット制というサービス毎の独立採算制、部門採算制っていうのを取ってまして、その長であるプロダクトオーナーというのが現在社内に83人おります。入社して2年目の人間も100万人くらいが使うプロダクトのオーナーになり、収益責任を負って取り組んでいます。

社内の人間がミクシィのサービスというのが好きなのは当たり前なんですね。その上でユーザー様にサービスを提供して、満足して頂いた対価というのをきっちり意識していこうと。対価を意識した上でサービスを変革していこうと。我々は今年のミッションとして永久変革というのを掲げて、事業としてはスマートフォンのアプリに行こうとしています。

企業のミッションとして「全ての人々に心地よい繋がりを」っていうのも抱えているんですが、これをより動詞にするにはどうしたらいいかというと、我々が全ての人々に心地よい繋がりを創るんだと。我々以外のSNSというのは、既存の人間関係をWebとかスマートフォンに持ってきただけです。ですが、我々はコミュニティや日記で新しい人間関係を作っています。そこははっきり違う。

岡島:mixiから結婚する人とかいますよね。

川崎:そうです。そういうところっていうのは我々の強みだと思ってますし、スマートフォンの市場に対しても、すごく大きい成長余地が我々には十分残されている。ですから、皆さんから見たらベタ中のベタみたいなことをやり抜いていく、っていうのをこの新体制の下でやっていこうと考えています。

"肉食"になりつつあるミクシィ

岡島:これも意地悪な質問なんですけれども、全ての人に繋がりをってことで、アントルプレナーが集結するって、これはある意味新しいモデルだと思っていて、素晴らしいなと思っているんですけれども、元々ミクシィにいた人達で、心が永久変革に持っていけない方達ってのはいらっしゃらないんですか?

川崎:自分は事業の責任者で社員と接する機会がすごく多いんですけれども、みんなmixiっていうものが好きなんですね。すごく好きで、サービスも改善改善っていうことをやっているんですけれども、ただ1つ反省する点があるとすれば、会社としての野望、大きい挑戦みたいなものが欠けていた部分があるのかなと。

なのでスマホアプリで繋がりを創っていくということは僕らにとってチャレンジなんです。まあこれまでの強みを生かした上でのことなので、延長線上ではあるんですけれども。ただ我々はスマホアプリを50本出すと言ってるんで、今現在、2本しかない現状から見るとすごくチャレンジかなと。僕は社内で「これはある種僕らのアポロ計画だ。月に行くんだ」と言ってます。

どういう意図で言っているかというと、やっぱり月に行くために必要なことっていうのは、ロケット燃料作らないといけない、宇宙服も作らなきゃいけない、月面探査機も作らなきゃいけない、そういう物を通じて、僕らは全ての人達に心地よい繋がりを提供し創っていくし、そのためにスマートフォンのアプリを作っていくんだと。

ですから、考え方も開発の基盤も、はたまたユーザーさんのアカウント体系とかそういったものも、もう1回作り直そうといったことを社内で話してまして、体制もチャレンジする体制に変わりました。何より笠原が日本最高のシリアルアントルプレナー、いわゆる"連続起業家"ですので、そういう起業家になるんだ、起業家を輩出していくんだということについてはものすごく頼もしいんですね。

僕もユニットのプロダクトオーナーとランチや飲みに行ったりしますけど、彼らは笠原について「すごく頼もしいと思う一方で、僕達のライバルです」と言っているんですね。そういう人達が出てきたっていうのはすごく変わったところだと思います。

トップの覚悟の浅さを、スタッフは見抜く

川崎:本当に同じ言語で会話出来る人間っていうのを、こういう冷たい川を渡る過渡期に生み出していくためには、トップが本当に変わっていかないと、スタッフはその覚悟の浅さを見透かすんですよ。それが出来ずに既得権益を守っていたら絶対に付いてこないです。逆にいうと、現在約500人の社員のうちたった20人、5%が変わればこれだけ大きく組織は変われる、っていうのは非常に大きな学びになったなと思っています。

皆さんもしベンチャーで経営していて過渡期を迎えられたら、スタッフを責めるのではなくて、まず自分達の身近なところから、今どっちを向いて、何を目指して会社を経営しているのかを確かめてみてください。一番大切な「魂」みたいな部分が同じかどうかっていうのを再確認するっていうのは、すごく大事なんじゃないかなと思ってます。

役員会議のリアル~サイバーエージェント編~

:三者三様だったと思うんですが、振り返るとGREEさんは創業メンバーから変わらず、社外取締役をうまく取り入れてどんどん成長させていく。サイバーエージェントさんはどんどん経営者を量産して、下からポジションが人を育てる形で作っていき、そしてその中から選りすぐりを入れ替えてやっていく。

ミクシィさんはアントルプレナーをどんどん集結させて、新しい事業をどんどん作っていく。三者三様、どれが正解というのも無く、きっと企業戦略と文化と合ってらっしゃるんじゃないかと思うんですけど、それぞれお互いに聞いてみたいこととか有りますか?

:すごく聞きたかったことがあって、役員が普段どのように会話しているか、要は役員同士の議論、例えば役員会は毎週何曜日にやっていて、時間はどれくらい掛けているのかっていうのは、個人的に人事としてものすごい興味がありまして。

:きっと会場の皆さんもすごく興味お持ちだと思います。

:きっと会社によって異なることだと思うので、その辺りを教えて頂けると。私達サイバーエージェントは週に1回、毎週木曜日、11時~13時の約2時間くらいでやってまして、ここでいつも8人集まって間にお昼を挟みながらやります。雰囲気としてはすごく雑談が多くて、最初は雑談から始まります。

:お弁当もいつも美味しそうですよね(笑)。

:いつもSUBWAYとか餃子の王将とか、その時の流行りで近くのお店から藤田が好きな物が来ます。そんな感じでやって、決議するものとか議論するものを雑談の流れの中でやっていくってケースが昔から多いですね。

後は役員合宿っていうのがありまして、3ヶ月に1回、基本的には1泊2日、もしくはワン・デイのミーティングということで、どちらかというと中・長期を議論することが多いんですが、例えばリーマン・ショックの後などには足元の議論をしたこともありました。

:私も色んな会社とお付き合いしてますけれども、役員合宿っていうのは本当によく聞きますね。こんなにお互いわかってなかったのか、と思うようなことがボロボロ出てきたりとか。

:そういう議論からヒントがたくさん見つかったりします。

:役員合宿の目的で結構大きいのが、毎週やっている取締役会ではいつも何となく後ろ倒しにしてしまっているものを絶対決めるっていうのがあるんです。それはもう気合いで答えを出してやってます。

:緊急度は低いけど重要度が高くていつも頭の隅に残っているようなものですね?

:そうです。常務の中山というのがいつも資料を用意してくるんですけど、その資料の中にいつも「先送り事項」っていうものがあって、それをしっかり決めていきます。もう1回先送りにすることもありますが。