場所を問わずどこにいても使えるクラウドサービス

田中章雄氏(以下、田中):じゃあ続きまして佐々木さんのほうに。

佐々木大輔氏(以下、佐々木):クラウド型会計ソフトfreeeというのをやっています。freeeって知ってる人?

(多くが手を挙げる)

佐々木:結構知ってる!

田中:この会場おかしいですね(笑)。これはたぶん日本の平均的な大学生ではないと思いますね。かなり偏った人たちが来てます(笑)。

佐々木:簡単に言うと、とっても簡単にできる会計ソフトで、クラウドサービスとして提供しています。クラウドサービスっていう言葉を知ってる人?

(多くが手を挙げる)

田中:本当に知ってるの? じゃあちょっと定義を聞いてみましょうか。今安易に手を挙げてた人はもう1回挙げてください。

(会場笑)

田中:(参加者の1人に)クラウドサービスの定義、僕わからないので教えて下さい。

質問者:はい、何か……何て言うんですか? あのー……(笑)。

田中:クラウドなサービスって意味ですよね!

質問者:雲のサービスっていうことです(笑)。

(会場笑)

田中:雲のサービスということらしいです(笑)。他に今手を挙げてた人? (参加者の1人に)あれ? 今手挙げてましたよね?

質問者:えーっと、まあ場所を問わず使えるっていうか。なんて言うんですかね。ネット上で全ての機能が終了する、みたいなイメージですかね?

佐々木:そうですね。合格だと思います(笑)。

田中:佐々木先生、よろしいでしょうか。

佐々木:およそいいと思います(笑)。昔は何かソフトウェアをパソコンの上で使おうとしたら、それをインストールして使わなきゃいけなかったんですよね。データもパソコンの中にあったと。

というのを、最近ではそれら全てインターネットの上に置いてしまったほうが開発も楽だし、ユーザーにとってもいろんなパソコンから使ったりだとか、モバイル端末から使ったりだとかできて利便性が高いんじゃないか。

ということでソフトウェアをクラウドから使うというような流れというのは進んでいて。僕たちも今まで会計ソフトってインストールして使うものだったんですけれども、それをクラウド化して。

さらに、会計ソフトって、中小企業とか個人事業主の人は、お金を使った時に受け取った領収書とか請求書を全部入力していかなきゃいけなかったんですね。会計ソフトに。

それを、銀行とかクレジットカードのWeb上の明細ありますよね。あれを使って、自動で会計帳簿を付けられるようにしたと。そういうような新しいタイプのサービスをやっています。

会計ソフトを楽しく簡単なものにしたかった

田中:ちなみにこれ下のほうに写真があるのが、やっぱり会計って聞くと地味でつまんないイメージがあるから、楽しそうにしてる社員を集めて撮った写真ですか、これは?(笑)

佐々木:そういうわけでもなくですね(笑)。単純に今従業員70人ぐらいいるんですけれども。起業して2年ちょっとなんですけど。最初は2人で始めて。今わりと全く想像がつかなかった世界なんですね。こんなに……。

田中:でも何か楽しそうですよね。会計と言うわりには。

佐々木:そうですね。楽しそうなオフィスとか、そういうのをやってます。特に会計ソフトってすごい堅いので、それをもっと楽しく簡単なものにしようというようなことを目指してやっています。ちなみに簿記とか、授業取ったことあるとか、そういう人います?

田中:簿記の授業取ったことある人? ぽつぽつといますね。

佐々木:(手を挙げる杉江氏に向かって)あ、ありますか。こういうのがもういらなくなりますと(笑)。

(会場笑)

田中:無駄なことをしたと(笑)。

佐々木:もちろん考え方として理解することは大事だと思うんですけれども。それを手作業でやることとか、そういう必要はもうなくなると。

田中:杉江さんも無駄なことをしたらしいです(笑)。

杉江理氏(以下、杉江):出てなかったんで、あんまり無駄じゃなかったんですけど(笑)。

(会場笑)

田中:出なくて正解だった(笑)。じゃあ次のスライドお願いします。

田中:これちょっと、ヘアスタイルこれはどうしちゃったんですか? 爆発してますよ(笑)。

(会場笑)

佐々木:今では全く想像つかないかもしれないんですが、僕実家が美容院でして。実家どころか家族全員美容師。じいちゃん、ばあちゃん、父親、母親、妹まで、全員美容師っていう。

田中:だとこうなっちゃうんですか(笑)。

学生時代はほどんどインターンで働いていた

佐々木:そうですね。まだ黒いだけ珍しい時期だと思います、これは。

僕は大学の時、写真とは全然違うんですけど、2年生までは体育会系のラクロス部にいて。毎日ラクロスばかりやっていたんですけども。3年生になった時にこのままでいいのか、と思って辞めたんですね。残りの学生生活というのをとにかくなんか、もうちょっと有意義に過ごしたいなと。

別にスポーツやってるのが有意義じゃないって意味じゃないんですけど。なんかもうちょっといろんなことに挑戦したいなと思って、留学をしたりだとか、ベンチャー企業でインターンをしたりだとか。とにかく徹底的にやってみる、みたいなことをコンセプトに過ごしてたんですね。

その時、ベンチャー企業でインターンをしている時に、これちょっとややこしい話なんですけど、インターネットでアンケート調査をしてそれを分析するっていう会社だったんですよ。

田中:インタースコープでインターンしてたんですか?

佐々木:そうなんです。それで実は、インフィニティの小林さんの一番最初の投資先だったっていう。

田中:はいはいはい。

佐々木:そこでインターンをしていて。大体日曜日の夜に会社に行ってですね、土曜日の朝帰る、っていう生活をしてたんですね。

田中:じゃあ学校は本当に行ってなかったんですか?

佐々木:学校はもう行ってなかったです。ひたすらこればかりをやっていて、その時に新しいマーケティングリサーチの手法みたいなものを開発して、その結果がこう新聞に載ったりとか……。

田中:なんか難しいこといっぱい書いてあるけど、結局これは何がすごいんですか?(笑)

佐々木:これはあんまりすごくないです(笑)。なんでこれを開発したかと言うとですね、とりあえずマーケティングの教科書の一部に載っていた手法っていうのがあって、でもなんでこのやり方が正しいのかわからないみたいなことがあったんですね。

それは元々60年代に書かれた論文が元になってるんですけど。その英語の論文の原文を探してきて。国会図書館に実はあったんですけど、それを読んだらもうちょっと中身がよく理解できたと。

それをそのまま「こういうことをうちの会社考えました」って言って出したら結構話題になったっていう。それだけの話で。

ちなみに今この手法は、このインタースコープっていう会社は別の会社に買収されたんですけど、そこでもすごく売れてる商品に……。

田中:じゃあ今でも生き延びてる?

佐々木:今でも生き延びてます。

田中:素晴らしい。

佐々木:Web サイトに書いてあります。

上野駅で100人にアンケートを取った

田中:じゃあ今でもこの写真はインタースコープのサイトのどこかに出てますか?

佐々木:この写真はですね、その当時NHKに取材されたんですよね。インターンで頑張る学生、みたいな。その時のやつで。完全に寝泊まりしてるので、そのへんに歯ブラシ落ちてたりとか、いろいろするんですけど。ちょっと細かいところは……。

田中:でもヘアスタイルは別として、表情は今と全然変わらないですよね(笑)。これ何年前ですか?

佐々木:これは僕が21の時だから13年前とかですかね? 当時僕は何でも徹底的にやるっていうのをすごいこだわってやっていて。

例えば、僕大学の交換留学プログラムみたいなのでスウェーデンに留学して。奨学金貰って行ったんですけど。それの面接とかに臨むにあたって、スウェーデンに行きたい度合いをアピールしないといけないだろうなと思って。

スウェーデン大使館とかに行ってですね。とりあえずいろんな人から名刺集めて。「スウェーデン大使館の人とこれだけ会ったんです!」っていうのをこう面接官に見せたら、わりとぶったまげて。

「こんなことした人は今までいない」って言って奨学金貰って。そういう風に行ったりとかですね。

このインタースコープっていう会社でインターンの面接に行く時も、昔ってアンケート調査って駅前とかで紙を持っておばちゃんがやってたんですね。これに答えて下さいって。

僕も、なんか課題があってですね。インターンの面接課題とかで「何か新しい商品の企画書を書いてきて下さい」みたいなことがお題としてあったので、じゃあとりあえずアンケートの会社だから僕はアンケートを道端でやってみてその成果を持って行こう、と思って。

東京の上野駅の前でですね、100人にアンケートをして。100人にアンケートをして分析した結果がこれです、っていうのを持って行ったんですね。

田中:何をアンケートしたんですか?

佐々木:電子辞書の使い勝手とか、なんかそういう。

田中:上野で(笑)。

佐々木:上野で(笑)。もうそれこそ「半分ナンパ目的なんじゃないか」ぐらいの感じで、楽しみながらやったんですけれども。

田中:上野でナンパするんですね佐々木さんは。わかりました(笑)。

佐々木:(笑)。そんな、何でもとりあえず徹底的にやって。手を抜くっていうよりかは、どこまでおもしろおかしく徹底的にできるか、みたいなところに……。

田中:やっぱりインパクトあったんですか? 面接としては。

佐々木:面接としてはすごくインパクトはあって。「過去こんなものを持ってきた人はいない」という風に言われたし、あとは何か(インタースコープの時の写真を指して)こういうよくわからない「新しいものを作れ!」みたいなお題とかっていうのをどんどんくれたので、やっぱりインパクトとしてはあったのかなと思いますね。

田中:ありがとうございました。じゃあ次のスライドをお願いします。

ホワイトボードでfreeeのコンセプトを議論していた

田中:おお、これは?

佐々木:これは創業した当時、ホワイトボードなんですけど、2人と同じようにマンションの居間で最初起業始めたので……。

田中:この時何人でやってたんですか?

佐々木:2人でやってました。2人でひたすらいろんなことをホワイトボードに書いていって、写真撮って、整理する、みたいなことを。

田中:freeeの最初の頃のコンセプトをここで議論してたわけですか?

佐々木:ここで議論してましたね。これしかないのでとりあえず消して、また撮って、みたいなのを何度もやってたのでこの写真がいっぱいあるんですけども(笑)。

田中:今振り返ってこれを見るとどう思います?

佐々木:今振り返ってこれ久々に見たんですけど、やっとここに書いてあることができてきたな、っていう。まだまだできていないものもいっぱいあって。

田中:じゃあ逆に会社のブループリントとしてはまだこれは健在なんですか?

佐々木:まだ健在だと思います。健在だし、できてない部分もある。これは本当に一部ですけど。

プログラミングの勉強を始めて自らコーディングを行った

田中:ちなみにどの部分がまだできてないんですかね? 今の感じだと。

佐々木:(写真を指して)これは……できてます(笑)。すいません、他にもいろんな絵はいっぱいあるんで。

創業した時に一番思い出深かったのはですね、創業するにあたってこういう会計ソフトが世の中に必要だと思って。そこからプログラミングの勉強を始めて自分でコーディングを始めたんですね。それが31の時ですかね。

それもさっきの徹底的にやるみたいな流れで、こういうソフトウェア作りたいって言ってるのに「誰か作って」みたいなことを言ってるのは甘っちょろいよな、ということで自分で書き始めて。そんなことをしてる中で仲間を見つけて起業するに至ったという話です。

田中:はい。ありがとうございます。じゃあちょっとここで、3人の背景がなんとなくわかって、たぶん学生の皆さん今回は今までのセッションの中で一番親近感が湧いてきたんじゃないかな、なんて思ってるんですが。

たぶん20歳の頃って、みなさん今自分がやってることやってるとは必ずしも思ってなかったと思うので、当時の心境を振り返ってもらって。彼らと同じような年代の時皆さんどういうことを考えたのか。

当時、逆に今と違うことをやりたかったかもしれないので、何やりたいなと思ってたかっていうのを、もしタイムマシンに乗って遡って、その当時の気持ちになれたと思って思い出して語って欲しいんですけど。

じゃあ仲さんからいきますかね。なんか別の志望があったっていう話をさっき聞いてたんですけど。20歳の頃そっちを考えてたんですか?

仲暁子氏(以下、仲):20歳の頃……そういう話を振られて今思い出そうとしてるんですけど(笑)。そうですね、おもしろいことをやりたかったっていう感じですね。

田中:漫画家はその当時の?

:いや、漫画家とかじゃなかったですね。20歳の時ってたぶん1年生とか2年生とかですよね。なので……。

田中:まあ3、4年まで含めて、大学生の時に……。

:ああ、大学生の時に。やりたかったことは、なにかしら例えばイベントとかやったりとか、何か仕組みを作ったりして、人が驚いてわくわくするみたいな。何か世の中におもしろいことを、騒ぎを作りたいみたいな。なんかそんな感じでしたね。

田中:なんかアプローチは違うんですけど、さっきの熊谷さんの発言にすごい似たようなことが……。

:ああ、本当ですか(笑)。

田中:びっくりしました。佐々木さんは、大学生の頃何やりたいと思ってました?

もともと美容師になろうと思っていた

佐々木:僕は大学の頃は何やりたいと思ってたのかな……。研究者になりたいと思ってたような気もするし……。

田中:あのヘアスタイルでですか?(笑)

佐々木:(笑)。そういう家庭に育ったので最初は美容師になろうと思ってたんですよ。

田中:免許持ってるんですか?

佐々木:免許持ってないです。ただ家族では大学を出て美容師になった人たちもいっぱいいるので「じゃあ大学出てからやりなさい。美容師になりなさい」という風に。とりあえず大学行ったんですね。

それで2年生の頃に『ビューティフルライフ』ってドラマがあってですね。みなさんご存知ですか? 知らないかな?

田中:世代がちょっと違う(笑)。

佐々木:キムタクが美容師になるというドラマで。もうそのドラマのせいで美容学校の応募者がドーンっとうなぎ登りになるっていうのが……。

田中:美容師ブームが来たわけですね。

佐々木:超美容師ブームが来てですね。それを見て、ここで僕が美容師になったら何かキムタク見て美容師になった人みたいじゃないかと(笑)。

(会場笑)

佐々木:そうはなりたくないなと思って、何かちょっと違うことやろうと。なんかどうせならそういうチャラチャラしたものは本当嫌だなと(笑)。それで僕たまたま商学部にいて、その頃わりと数学とかが好きだったんですね。

金融工学とか統計とかそういうがわりと好きだったので「よし、こういうのを突き詰めてやってみよう」みたいなことを思ったような気がします。

田中:杉江さん、ボクシングやりながら何考えてたんですか?

杉江:いや何も。僕基本的に何もやりたくなかったですね。これはもう正直そう。僕結構マジョリティなんじゃないかと思ってて。大体やりたいことないんじゃないかみんな、みたいな(笑)。

田中:今、やりたいことない人どれぐらいいます? この部屋で。

(2、3人手を挙げる)

杉江:やっぱ少ないですね(笑)。

田中:マイノリティですね(笑)。超マイノリティですね。

杉江:唯一ボクシングやってたので、ボクシングしか考えてなかったんじゃないかな。当時は。だから引退、夏が終わってから我に返る、みたいな。ハッみたいな。「終わった。どうしよう」って。何かすいません(笑)。

(会場笑)

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