「入れ歯ラブル」で、老人にお金を出させる

加治慶光氏(以下、加治):じゃあ2020年、川田さんがさっきお話されてなかったので、どんな世の中になるのか。

川田十夢氏(以下、川田):猪子さんの話も夏野さんの話もすごくおもしろくて、やっぱりチームラボがやっていることって遊園地とかも、結局、必要なくなったあとのエンターテイメントの提示なんですよね、それを考えている人、形にしている人は少なくて。

結局、敷地が少なくて済む。あとは体感を促すことは、必ずしも遊園地と同じぐらいの何百億円もかけてやらなくてもいいということがある。あれはプログラムですから、アップデートが可能になるんですね、都市をね。プログラムで書き換えることができる未来なんですよ。

それは超重要なことで、目に見えて都市に豪華な建物を建てるということは、東京は必要がないんですよね。アップデータブルにするというか、そういうことを考えて表現したりしている人たちが多分重要なのかなと思っていて。

僕もこういうちゃんとした話をしたあとにするのもあれなんですけど、老人はお金があるのにということがあって、僕が考えているのは老人たちがお金を出したくなるという、ウェアラブルコンピューティングってあるじゃないですか。

あれをおじいちゃん、おばあちゃんが率先してやりたくなるようなアプローチがあります。おじいちゃん、おばあちゃんはあんなの欲しくないですからね。なので僕は、入れ歯ラブルという概念を考えましたね。

(会場笑)

入れ歯ラブルって、体に必ず装着するでしょう。あんなにウェアラブルなものはないんですよ。僕は結構マジですよ。その中にセンサーが付いていたら、その人の健康状態がわかる。そしてそれを付けることによって、もしかしたらモテるかもしれないというのが。僕の設計だと、Wi-Fiが入っているの。ホットスポット化して、この人の周りは超繋がる。

超大人気になって、みんな付けたがるっていう。おじいちゃんにお金を出させたいっていうことは、そういうウェアラブルなものを発明すればよくて、僕はガチで考えているんですよね。人の温度さえあれば、蓄電ができるんですよ。

これ結構マジなんですよ。その蓄電しながら電池も必要のない無線LANをつくったら、おじいちゃんは世界的に人気が出るじゃないですかっていう、僕からの提案でございました。

技術的に新しいことは2020年には間に合わない

加治:ヒュー・ハーっていう人の義足の話をご存知ですか? MITメディアラボの人で、自分は登山をしていて足を失ったんだけども、友達の女性がボストンマラソンのテロで足を失った、彼女はダンサーなんですね。自分の足は、登山をするぐらいだから、そんなに難しくなく素晴らしい義足がつくれたんだけれども、ダンスというのはすごく難しいということで、彼女の動きをずっと分析して、彼女の足をつくって上げたというスピーチがTEDにあって。

川田:だから僕、入れ歯ラブルをTEDでいったらいいですよね。ブルートゥースって、そのための技術じゃないかってね、トゥースだしね。そこで噛み合わせが合うんじゃないかっていう。

加治:噛み合わせがね。

川田:私からは以上です。

加治:年を取って老化することの象徴に歯がなくなるということがあるんですけれど、歩けなくなる足、走れなくなる足、持てなくなる手、見えなくなる目、そういうものが全部、技術によって入れ替わっていくことによって平均余命も延びていくのではないですか。

そういった2020年になると多分人生そのものもだいぶ変わっていくような気がするんですけど、そこら辺は何か試算はありますか? もちろん入れ歯ラブルはすごくいいと思うんですけど、夏野さん、2020年より先に、人生がどう変わっていくか。

夏野剛氏(以下、夏野):まず2020年ということを見据えると技術的にはもうあまりないです。なぜかと言うと今ある技術が普及するかどうか、普及してまた新しいサービスが生まれるかとかそういうのはあるんですが、技術的に新しいチャレンジは、2020年だともう間に合わないですね。

2020年で顕在化するもの、特に組織委員会とかで、オリンピック、パラリンピックで合わせてやるようなものというのは、現存の技術でどこまでやりきるかというところがもはや、もう課題になっちゃっているので。

2020年をターゲットにするとあまりおもしろくないんですけど、2045年をターゲットにするとすごくおもしろいなと思っていて。2045年問題っていうのがあって、デジタルIT関係の人は、これはネットでバズっているから知っていると思うんですけど。

「ラストワンフィート」をどう解消するか

夏野:シンギュラリティという考え方があって。シンギュラリティっていうのは、今のペースで進んでいくと、2045年くらいにAIの能力が人間の脳を上回るっていう。だから人間より賢いコンピュータが生まれるんじゃないかって言われているんですが、僕は意外にそうは思ってなくて。

2045年までに逆にウェアラブルがいらなくなる世界がくると思うんですよ。つまり、もうすでにここまでネットが来ているわけですよね、すごいスピードで。ここを最後のラストワンフィートって僕は呼んでいて、これをバズらせようと思っていて、誰も言ってくれないんだけど、俺ひとりでラストワンフィートっていうのを世界中で言っているんですけれども。

ラストワンフィートって結局、目とデバイス、つまり最終的に脳のインプットが視覚になっているんです。それから脳からの出力、脳からのアウトプットは音声か、指なんですよ。

これがきちんと繋がります。ラストワンフィートを解消します。脳に直接電気信号で入ってくる世界というのが、間違いなくこの2045年までに実現すると思っていて。その世界がきたときにどうなるかっていうことをいち早く今から考えておいた国、個人、会社、そういうところが僕はデジタル時代を先取りできると思っているんですね。

人間が機械に負けない、2つの想像力

夏野:今、僕がしゃべっていることがネット上にある情報を見て言っていることなのか、ここでクリエイトしているのかは、受け手はもうわからない。僕はふたつの想像力って言っているんですけど、人間の脳なんてもうメモリー能力から言えば、僕の愛用するiPad-miniにもう負けているわけですよ。

ところが、ふたつの想像力。つまりクリエイティブな創造力とイマジネーションの想像力、このふたつは、その2045年程度のコンピュータには負けないでしょう。負ける人がいるかもしれないけど、それはそれで違う分野で勝負すればいいんです。

だけどトップの人たちは負けないと思うんですね。だから今磨くべきは何っていったら、これから30年かけて、暗記能力ではなくてクリエイティビティとイマジネーションをガンガンやったほうがいいでしょう? 

そしたら、ゆとり教育の見直しで何をやらせているかと言ったら歴史を覚えさせて、漢字を覚えさせて筆算の計算をやらせているなんて全部無駄になるじゃないですか。むしろ新しいことを「これを見て何を感じたか」というのを表現する能力とか。

それから、それを元に違う発想をする能力とかそっちが大事になるじゃないですか。こういうことが大事になると僕は思っているので、ラストワンフィート、それでもイメージすることができない方もいるでしょう。どんな社会になるかわからないでしょう。

そういう方は攻殻機動隊というアニメを観てください。ここに全ての未来が本当に描かれています。全然信じないんだけど、本当です。僕はあれを観て、SF映画をヒントにしてiモードをつくっていました。

だからぜひ、攻殻機動隊を観てください。皆さんがもし、メーカー系の会社に勤めていて、役員に攻殻機動隊のことを聞いて反応がなかったら、すぐに辞めてください。そんな会社にいる意味はない。本当に考えたほうがいい。

加治:今日は転職をうながす会ですので、大変適切なメッセージだなと思いますけれども、アクセンチュアの社長はちゃんと攻殻機動隊を知っていますし、私も攻殻機動隊の大ファンでありますということで。

制度の中心にいると、子どもをつくらなくなる

猪子寿之氏(以下、猪子):話はちょっと変わるんですけど、冒頭で夏野さんがおっしゃっていたように、人口が減っていく。いくら夢を語っても人口が激減すると、滅ぶと思うんですよね。だからもうちょっと、どうやったら人口が増えるか、なぜ子供が減っているのかみたいな。

それに対して、本当は今すぐに手を打っても効果が出るのが20年、30年先なので。それの延長で、全く話が変わるんですけど、制度の中心にいればいるほど、人間は子どもを生まなくなるんじゃないかみたいなことを思っていて。

昔は今よりも想像がつかないくらい、制度の純度みたいなものが中心から周辺に向かってすごい勢いで密度が下がっていたと思うんですね。それがある程度、社会の完成度がすごい上がって、制度の密度みたいなものが中心と周辺とで均一化し始めて、もう制度の密度に差が出るということは生まれないんですね。

それは周辺にいっぱいあったと思うんだけど。それぐらい密度が低かったんだけど、徳島とかは道路がない集落とかいっぱいあるの。道路が届いていないから、そんなところはもう制度もクソもないじゃないですか。

でもネットができて、みんながスマートフォンを持っていて。誰かが悪いことをして、それを他の誰かがアップして、そうすると均一的な整備によって、それは制圧されるじゃないですか。

制度が独り歩きし、肥大化し、人間は滅ぶ

猪子:あまり詳しくは言えないけど、制度の中心にいればいるほど、どの文化圏でも、どの時代でも子なしになるんですよね。それはすごいおもしろいなって思っていて。

生物が自ら滅びるって60億年もの歴史があっておかしい。なにか外部要因があるはずで、その外部要因は究極的には発達し過ぎた大脳が制度をつくり、その制度をつくった人はもう滅びるんだけど、制度が残り、制度が制度として独り歩きし、でかくなり過ぎて、もはやつくった人もいないし、誰がどう手を付けようともどうしようもないぐらい肥大化し、その制度という外部要因によって、人間と言う種は、滅びようとしているんじゃないかみたいな。

つまりおかしいでしょう。自ら法をつくらず、自ら滅びるんですよ。そんな生物は何らかの外部要因がないと起こりようがない現象なんだけど、全体で考えると、種として60億年も続いているのに。

でも普通に考えると、同じような制度があったとしたら、例えばアメリカとかがなぜ滅びようとしないかというと、元々中心にいた人たちは、実は人口としてはすごい勢いで減っていて、外の社会の……。

加治:アメリカは外の人を入れていますよね、制度的に入れている。

猪子:外はゆるくても、制度が崩壊しているようなところで生産されまくっていて。その人たちが来ているから全体として増えているだけで。本来、制度の中にいた人たちは実はすごい勢いで人口が減っているという。

だから日本も今まで大丈夫だったのは中心。すごい遠くは、実はもう制度が機能しなくて、でも情報社会になっていくにつれ、超均一化されて大変なことに。それは具体的に何も大変じゃないことが問題なんだけど、無意識になぜか子どもを集団としては生産しないっていう。

川田:なんか浮かれた場所がないんですよね。制度の中心にいると、浮かれた場所をつくろうとしないし、浮かれた場所に行こうとしないから、浮かれた場所をまずつくらなきゃいけないんじゃないか。浮かれた場所とか浮かれた雰囲気が「子供をつくろう」じゃないですか。「キスしよう」じゃない。

加治:やっぱりパークチームラボを作るしかないですね。