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高い報酬は最悪のパフォーマンスを生む! 科学が明らかにした「アメとムチ」の弊害

高い報酬は最悪のパフォーマンスを生む! 科学が明らかにした「アメとムチ」の弊害

モチベーションを向上させるための定番である「報酬アップ」という手段。しかし長年繰り返された研究によれば、報酬にモチベーションを上げる効果は無いどころか、対象者の視野を狭める逆効果すら与えてしまうそう。米副大統領の主席スピーチライターとしても活躍した作家のDan Pink(ダニエル・ピンク)氏が、「やる気」に関する驚きの科学を論じました。

スピーカー
作家 Dan Pink(ダニエル・ピンク) 氏
参照動画
やる気に関する驚きの科学

「ロウソク問題」で測るビジネスの効率性

DP1 ダニエル・ピンク氏 話を始める前に皆さんに白状しなければならないことがあります。今から約20年前、今は少し後悔している上に、自分はバカな選択をしたなと思っていることがあるんです。そしてそれは、本当は誰にも知られたくない。……本当は嫌なのですが、今日は皆さんに白状しなければならないような気がしているんです。 (会場笑) 1980年代後半、若かった私はロースクール(法学大学院)に入学してしまいました。アメリカでは、法律の専門家になるにはきちんと教育を受ける必要がありますね。まず4年制大学を卒業、それからロースクールに入る。ロースクールに入った私は、あまり勉強についていけませんでした。どんなに控えめに言っても、優等生とは言えませんでした。私は「上位90%以上」という成績で無事卒業しました。 (会場笑) ありがとうございます。これまでに法律関係の仕事をしたことはありません。いや、どこもやらせてくれなかった、と言うほうが正しいですかね(笑)。 (会場笑) でも今日は、自分の心の声や妻が私についてなんと言おうが、ロースクールで培ったスキルを駆使したいと思います。話をするのではなく、裁判所で行うような「申し立て形式」でやりたいと思います。ビジネス・経営を再考するために、真面目に、証拠に基づき、弁護士が扱う案件のようにやりますからね。 さぁ今日ここにお集まりの陪審員の皆さん、まずはこれをご覧ください。「ロウソク問題」と呼ばれるもので、皆さんの中にはご存知の方もいらっしゃるかもしれません。 DP2 これは1945年に心理学者のカール・ドゥンカー博士が考案した実験で、様々な行動科学の実験にも応用されています。ご説明しましょう。 まず、私が実験を行う研究者だとしましょう。皆さんをある部屋へ案内します。そこにはキャンドル、画びょう、そしてマッチが用意されています。そして私は皆さんに言います。「では、ここにあるものを使ってキャンドルを壁に付着させてください。でも、キャンドルのろうがテーブルに流れ落ちないようにしてください」。 皆さんならどうしますか? 多くの方が画びょうでキャンドルを壁に貼り付けようとしますが、上手くいきません。ある人々は、キャンドルの側面をマッチで溶かし、溶かしたろうでキャンドルを壁に貼り付けようとします。素晴らしいアイデアですが、これもうまくいきません。大体5分から10分くらいで、ほとんどの人が以下のような方法にたどり着き、成功します。 DP3 ここでポイントとなるのは、ものの他の使い道を導き出せるかということです(機能的固着と呼ぶ)。画びょうの箱は、ものを入れる用途以外に、キャンドルを乗せる土台にもなり得るということです。これが「ロウソク問題」です。

報酬では人のモチベーションは上がらない

プリンストン大学(米)の科学者、サム・グラックバーグがこの問題を使って実験を行いました。動機づけの力が大いに理解できる実験です。 彼は実験参加者を集め、まず第1のグループには「皆さんがどれだけ早くこの問題を解決できるか、時間を測ります」と、第2のグループには「このような問題を人は平均してどのくらいの時間で解決できるかを知るための実験です」と伝えます。 更に2番目のグループには、このように言います。「もし皆さんが、問題を解決するのに要した時間が最短時間ランキングのトップ25%に入ったなら、5ドル差し上げましょう。また今日ここにお集まりの方の中で一番早く解決した方には、20ドル差し上げます」。 このように2番目のグループにはリワード(報酬)を与えるのです。この実験は数年前に行われました。当時はインフレでしたし、数分間実験に参加するだけでそれだけのお金がもらえるというのは、立派なモチベーションになるはずです。ここで問題。どちらのグループが早く問題を解決したでしょうか? 答えをお教えしましょう。問題を解くのに第2グループは第1グル―プよりも平均して3分30秒、長い時間を要しました。そんなはずはないですよね!? 私はアメリカ人なので自由市場を支持しています。こんな結果が出るはずがないですよね!? (会場笑) 人に結果を出して欲しい場合、報酬をちらつかせるでしょう? ボーナス、コミッション、自分のテレビ番組が持てる等々、人が結果を出すように動機付けるのです。これがビジネス界のルールですよね? しかし、この実験結果によるとルールは全く逆です。新たなアイデアの誕生やクリエイティビティの向上を目指して報酬を与えることは、逆効果なのです。報酬は、実は、アイデアを鈍らせてクリエイティビティをブロックしてしまう。 この実験が面白いのは、これはたまたまこうなったわけではないことです。40年近くに渡り、この実験は何度も何度も繰り返されてきましたが、常に同じ結果が出るのです。「これをやってくれたら、これを君にあげるよ」という条件付の動機付けが上手くいくこともあるでしょう。しかし多くの場合、報酬で人々のモチベーションを上げようとしても、うまくいかない。もっと悪い場合には、その人達をダメにしてしまうのです。 報酬で人のモチベーションは上がらないことが、このように科学的実験によって証明されているにも関わらず、多くの人がこの事実を知らない、そして無視してきました。私はここ数年間、人間のモチベーションに関する科学的研究に注目してきました。特に外発的動機づけ(外から与えられるモチベーション)と内発的動機づけ(自分の内からくるモチベーション)に興味があります。 DP4 ここが重要です。科学で明らかになっている事実とビジネス人がやっていることの間には、大きなギャップがあるのです。ビジネスにおける推測やプロトコルを考えてみてください。ビジネスのシステムは、どう人のモチベーションを上げるか、人をどこのポジションにつけるか等々、外発的動機づけによるものです。つまり、にんじんを目の前にぶらさげて走らせる、走らなければムチで叩く、ということなのです。

「アメとムチ」が効くケース

20世紀はそれで通用したかもしれません、でも21世紀においてはアメとムチを使うやり方は多くの場合通用しない、むしろ悪い方向に作用します。もう少し説明します。 グラッグバーグ博士は、以下の写真のように、少しだけアイテムの並べ方を変えて実験しました。 DP5 「キャンドルを壁に付着させてください。しかしキャンドルのろうがテーブルに垂れないようにしてくださいね」と参加者に伝える。ここまでは同じです。ひとつのグループには「皆が平均してどれくらいで問題を解決できるのか調査しているのです」、もうひとつには、「きちんとお礼しますから、やってみてください」と言います。 すると何が起きるか? 今回は、お礼(報酬)があると最初に聞いていた方のグループが、もう一方のグループに勝ちました。なぜでしょう?  DP6 画びょうが箱に入っていない。箱だけがそこに存在すれば、正解を考えるのも簡単ですよね? (会場笑) やることが決まっている、言われたことをやればいい、そんなタスクをこなす時に、アメとムチはとてもよく効きます。報酬は私達の視野を狭めます。ゴールだけを見据え、そこにいち早く到達しようとする。ニンジンを目の前にぶら下げられる、またはムチ打たれながらゴールに早く到着しようとするのです。 元祖「ロウソク問題」解決においては、視野を広げることが不可欠です。解決策は単純に見ているだけでは見つからない。周りをよく見渡す必要がある。ここで報酬のことが頭を過ぎると、視野が狭まり、新しい可能性を探らなくなります。

報酬では解決できない、現代ビジネスの課題

なぜこれがとても重要なことなのか、説明します。西ヨーロッパ、アジア圏の多く、北アメリカ、オーストラリア等にいる、ホワイトカラーの仕事を持つ多くの人々が……。 DP6 このような仕事の仕方をせずに……。 DP2 このような仕事をしています。 ルールがあり、左脳でやる仕事、例えばある種の会計、ファイナンシャルアナリシス、コンピュータプログラミング等は、簡単にアウトソースしたり、自動化したりできるようになりました。世界中を見渡せば、そのような仕事を安値で引き受けてくれるところがたくさんある。つまり求められているのは、右脳を使うクリエイティブな才能なのです。 皆さん、ご自身の仕事について考えてみてください。仕事で問題があったとき、その問題解決のためのガイドライン・ルールはありますか? 解決するための正解はひとつだけですか? 違いますよね? ルールというのは曖昧なものです。「正解」が仮に存在するのであれば、びっくりするようなものであり、誰にでもすぐに導き出すことができるものであるはずがないのです。 ここにいる皆さん全員が、皆さん自身の「ロウソク問題」を抱えています。どんな種類で、どんな分野であっても、「この仕事をしたら、この分だけ報酬を与えようではないか」という文化の中では、「ロウソク問題」は決して解決することはできないのです。そして多くのビジネスがこの文化を持っている。本当におかしなことが起きていると思いませんか? と言っても、私がそう思うだとか、そういう問題ではないのです。私は弁護士です。感情論は信じません。そしてこれは哲学でもありません。私はアメリカ人ですから哲学論など信じませんよ。 (会場笑) これは科学的に証明された、紛れもない事実なのです。 ※続きはこちら
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