性的マイノリティは、絶望のなかに生きている

桑原敏武氏(以下、桑原):皆様こんにちは。渋谷区長の桑原でございます。ファッションとデザインの街でございまして、渋谷の文化というのは他者を思いやる、尊重し、互いに助けあって生活をするという伝統と、多様な文化を受け入れてきたという歴史のあるまちでございます。

とりわけ渋谷は、様々な個性を受け入れてきた寛容性の高い街であるわけでございます。その中で、ひとりひとりの違いが新たな価値の創造と活力をうむことを想像し、発展してきたまちであるわけでございます。

しかし一方では、性同一性障害の方など、性的マイノリティの問題については、特定の個人の問題、教育現場での問題、職場、あるいは家庭内の問題として扱われてきました。そのため、マイノリティの子どもたちは周辺の人々や友人に温かい理解を得られず、異端視され、揶揄、嫌悪の対象とされるため、あるがままで生きることに恐怖心を持っております。

未来の展望も描けず、自殺、自殺未遂、不登校にいたる事例もあると。私どもの検討会に出席した参考人のお話もあります。性的マイノリティの問題は未だ医学的に解明されておらず、自己責任の問題としてあたたかい社会的支援もなく、孤立して絶望のままに生きております。

それゆえ、早い段階から教育や職場などの社会において、人間の性の多様性について肯定的な啓発が重要であると考えます。

区も社会も、そして国も。これらの声のあげられない人々にあたたかいメッセージを発信し、性的マイノリティの子どもたちの自尊感情や自己肯定感を高め、合わせて人権感覚をうむ大切な機会にしなければいけません。

成人となったのちも入居や病院、住居や選挙などの生活において様々な差別や社会的困難が想定されております。このため、パートナーシップ証明は法律的拘束力はありませんが、発行要件、発行手続きなどを明確にし、区民や事業者の施策への協力を積極的に働きかけていきたいと思います。

そのため、男女差別のみならず、性的少数者のために相談窓口を設け、当事者の方々から悩みを受け止め、かつ専門的な事項については多様性社会推進会議の助言を受けながら、的確に勧めてまいりたいと思います。

以上が私のこの多様性を尊重する社会を推進するにあたって、現状、このことに対する渋谷区の考え方、さらにはそのことの改善のために施策などについてお話申し上げました。ご理解をいただきたいと存じます。