メディアによって違う「面白い」の定義

鳥井弘文氏(以下、鳥井):ではこの辺で1回質疑応答に移らせてもらいます。2個ぐらい質問をいただければと思うのですが、今、お二方のお話しを聞いてちょっと聞いてみたいなと思うことがある方がいれば、挙手していただけると。

(会場で挙手)

質問者:今、お話ししながら、ソーシャルとかもですけれども、面白いというのがお二方の言葉として何度か登場しました。微妙に英語とかでinterestingとfunの違いがあったりして、メディアによって面白いというのは違うのかと思ったのですけれども、その辺はどのように考えていらっしゃるのですか? お伺いできれば、嬉しいです。

朽木誠一郎氏(以下、朽木):そうですね。今おっしゃられた通りで、面白いというのは色々あるよねということで。それがinterestingなのか、funnyなのか、もっと人の心を動かすということが面白いなのかなというふうに思っています。

なので、それはファンを作るということにも繋がるのですけれども、例えば僕だったら、自分で書く時に真面目な記事でも本文の最初に小噺入れたりとか。

後は、語り口が伝わりやすいようにと考えているのですけれども、例えばガチガチの文章を書いても、興味深いと思ってくれる人は当然いると思います。あと、うちは面白い記事は徹底的に笑かしにかかるつもりで、今はPRチームという専門のチームが出来て本格的に頑張ってすごくいいものを作ってくれているという状態なので、funnyはfunnyで全力、interestingはinterestingで全力。だんだんのどが渇いてきて、interestingというのがすごく言いづらいんですけれども(笑)。

鳥井:是非、水を飲んで頂いて。今のお話、藤村さんどうですか?

藤村能光氏(以下、藤村):ありがとうございます。funnyとかinterestingというのは色んな面白さがあると思うのですけれども、「その人が感じる面白いものが良い」と思っているんですね。サイボウズ式の編集部はみんな、面白いの度合いや尺度が多分違うのですが、ただ、それでいいと思っています。

やはり自分たち作る側がまず、面白いなとか、ワクワクするなといったものを形にしてみなくては絶対に後悔すると思うんですね。メディア運営という枠組みを離れて、普通の日常生活でもいいと思っていて、そこから感じる面白いことを形にして、世に問うていくというのがメディアの一番面白くなるやり方なのかなと思っているんです。

編集部では、「面白い」を考える上では、個人の興味関心がまず第1ですね。実際に企画にしていく時に、サイボウズ式はチームやチームワーク、働き方、多様性とかを考えています。こういった要素と、面白いというアイデアを掛け合わせていくと、自然と何か形になるというか企画の道筋が見えてくる感じなので。

編集会議を週に1回やるんですけれども、これは面白いよねとか、面白くないよねとか、本当にそんな感じです。皆が面白くないと思ったのは、速攻で話題から流れていきます。それでいいと思っています。でも毎回20個ぐらい面白いと思うことがガンガン出てきますね、だって面白いことを言うだけですし。そんな感じです。

質問者:ありがとうございます。

朽木:編集会議楽しいですか?

藤村:楽しいですね。

朽木:この間は白いタイツはいて、ベイマックスやりたいと言ったんですけれども、「寒い」といわれて(笑)。すごくあっという間に流れていって、無かったかのような顔をされました(笑)。

藤村:同じ編集部員だったとしたら、それを拾える自信がありません(笑)。

朽木:一方でこの間、メディアでビックリマークの後に1マス空けるか空けないかの記事を書いたのですけれども、ものすごく興味関心としては、超絶ニッチだと思うのですけれども、それなりに読んでいただいて。あれなんかは、ほんとにinterestingの良い例だと思います。

PV至上主義を加速させる記事広告

鳥井:もう1問ぐらいいけると思うのですけれども、どなたか質問があるという方は、どうぞ。

質問者:PVに関して聞きたいんですが、企業からの依頼をいただく時にですね、私はPVベースでお話をいただき、どれぐらいアクセス数をもらえるのかベースで要件を求められるんです。つまりPVがないと、記事広告に価値を見出していただけない。

そして今、Web業界はPV至上主義からの脱却という話になっているじゃないですか。なので、今日もそのような話なのですけれども、そこに何か、改良策はあるかなと。そこに対しては、どのようにお考えですか?

鳥井:では、藤村さんどうぞ。

藤村:そうですね。サイボウズ式はクライアントワークというのはまったくやっていなくて。自分たちが面白いと思う記事を出し続けているので、クライアントさんがこれだけのページビューを求めるから、それに対してどうするかというところではなかなか的確な回答ができない状態だと思うのですね。その辺どうですか、LIGブログさんは?

朽木:本当にぶっこんできたなという感じですけれども、もちろん広告の請け負い方、あとはどういう運営形態かによると思うんですけれども、LIGブログはベンチャー企業のベンチャー部署という位置づけなので、独立採算というか、自分たちでしっかり目標を達成してスケールさせていくというのが前提にある。

当然、広告事業というのを引き受けたいというか、お声かけいただいたら、全力でそれに応えるということになっているのですけれども、なった時にもちろんPVというのが求められるというのは、その通りで。

多分メディア運営なさっている方は記事広告の指標としてのPVというのは、絶対的に出てくるとは思うのですけれども、その求めてもらった部分に対して、しっかりとお応えするというのが前提です。当然、お仕事として引き受けた以上はそれを達成するというのを目標にしているのですけれども、同時にそういうことがPV至上主義というのを加速させている部分も無くはないのだろうと、思ったりします。

かといって、そこに一切タッチしないというのが、うらやましい部分なのですけれども、逆に採算とれていない時はタッチせざるを得ない部分でもあります。では、どういう形で根本的な課題に対して解決を図るといったら、僕は広告でも価値があるものを作れると思っているので、価値のある広告を作ってあげる。

印象に残るCMってきっと誰でもあるじゃないですか。僕も好きなCMあるし、そういう本当にこれはいいものだと思わせる記事広告が出来て、それがちゃんとPV目標を達成して、そういうことがスタンダードになっていったら、PV至上主義も解決が図れるのではないかと。希望を持って広告事業をやっていきたいなというのが、僕の回答です。

鳥井:はい、ありがとうございます。では、またディスカッションのほうに戻らせてもらいます。続いてのテーマは、「ブランディングとは?」です。この辺は、続けてになってしまうんですけど、朽木さんのほうからお願いできますか?

個人を立たせることからはじまる、LIG流ブランディング

朽木:冒頭で言ってくださったように、すごく抽象的な話なので。ただブランディングってよく言うじゃないですか。個人のブランディングとか、企業のブランディングはもちろんですけれども、どこのフェーズを見るか、どこの階層を見るかで、言っていることが全然変わるなというのが正直な感想です。

なので、僕がする話というのは、どちらかというと、なんて言ったらいいんでしょうね。明日にもできるようなこと、どちらかと言えば高い低いで、低い階層の話なのかなという前提でお話しいたします。LIGブログというのは、繰り返しなんですけれどもファンを作るためにあって、ファンを作る時に社員を好きになってもらいたい。そこで個人を売り出していこうというのが、元々LIGブログがやりだしたことです。

例えば僕自身もパンをくわえて全力で走ったり、あとは何をやったっけな。グラビアアイドルのキャミソールを思いっ切りめくったり、そんなところですかね。色んなことをやっています。個人を立たせてもらう、あるいは、僕がプロデュース側に回ることも、もちろんあるので、社員を立てて、何か面白いことを企画する。

そういうことを通して、何か面白いことをやっている会社だなとか、そういうふうに思ってもらうと、選択肢にのぼるのではないかという考え方ですね。

まず、個人をブランディングしてあげる。個人を立たせてあげる。有名にするというか。あるいは、この人面白いわと、まずは個人に対しての印象をよくするそういうことをやった先にLIGって面白い会社なんだ、LIGってこんな社員がいるんだというのを思ってもらえた先に接触回数を増やすことで、その先の指標として、もうひとつ置いてるというか、問い合わせ数や採用への応募へと繋がっていくのかなと。

それが、企業としてのブランディングというふうになればよいなと、そのようにLIGブログは、位置づけてきたのですけれども。さっき藤村さんから、興味深い話を聞いたので、「企業のブランディングとは?」というところ、是非お願いいたします。

長期的にファンをつくる、サイボウズ流のブランディング

藤村:企業のブランディングとなると、大上段に構えた話みたいになっちゃうかもしれないんですけれども、ブランディングについていくつか考えていることがあります。

1つが朽木さんと同じで、やっぱりファンを作ることはすごく大事だと思っているんですね。もっと具体的にいうと、サイボウズを知らない人にサイボウズのことを知ってもらって、あわよくば好きになってもらう。そういったところにとても価値を感じていて、それをブランディングと呼んでいる節があります。

やはり、ソフトウェアを作って売っている会社ではあるのですけれども、これまでコミュニケーションしてきた方たちは主に企業の中の情報システム部。そういった専門的な人たちが多かったのです。

ただ裏を返すと、もっと多くの人、普通の人だってこれからチームを作ってチームワークを発揮しながら何か社会的な課題を解決していくことはあり得ると思うんですね。そういう人がチームを作ることになった時に、サイボウズを想起してもらいたいんです。

そういった最初の前段みたいなものを作る必要があるとすごく感じていました。なので、サイボウズを知らない人に対して、サイボウズを好きになってもらう、ファンになってもらうということがすごく大きな形なんですね。

あとは2つくらいあって、インナーブランディングと採用ということですね。サイボウズ式の元々の目的は社外的にというか、対外的なコミュニケーションをもっともっと強いものにしたいという発想だったんですけれども、意外や意外、コンテンツを通して社内からも色々と反響をいただくことが多いです。

やはり自分たちが面白いと思うテーマでも、それは自分たち側ではなかなか判断できなくて。それをコンテンツにして外部とか他社の視点を通して評価してもらう。それが結果的に第三者の目に入る、すなわち価値を感じてもらえるかどうかが浮き上がる。そんな感じだと思います。

なので、ソーシャルでの反響やコメントを通じて、社外だけでなく、社内の方も良かったねといってくれるようになるんですね。こういった形で社内の理解を深められることもあるかなと思っています。それがインナーブランディングで、もっともっと進むと採用にもつながってくるかなという感じですね。

すごく象徴的だったのは、今、サイボウズ式で学生インターンの方と一緒に仕事をしているんですけれども、サイボウズ式の記事を読んで応募してくれた方が多いんです。最初のコミュニケーションのタッチポイントになっている方がすごく多かったりするのですね。これって、学生が就職活動という選択をする際に、サイボウズという選択肢がひとつ頭の中で思い浮かんでいることだったりしますね。

こういう効果って、最初メディアをやった時にはあまり想定できなかったんですけれども、今は強く感じているところです。短期的に何か利益を積み上げていくよりも、長期的にファンを作る、ブランドを作るということができるのではないかと。それがブランディングなのかなというところを今感じているところです。長くなっちゃいました。

鳥井:大丈夫です。すごくいい話でした。本当に明日ブログを書くなら、これで書く! ぐらいの。

朽木:ハイライトなところですよね。大事なところです(笑)。

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