広報・PRとして、メディアとどう付き合っていくか

三浦崇宏氏(以下、三浦):では、「メディアの今後」に行きましょう。これはどういう意味ですか?

司会者:うーん、そうですね。例えばここ最近でいうと、とくに今日はITやベンチャー企業の方が多いと思うのであれなんですが、メディアに取材されたら1回だけ添削ができるものだと思っている方も非常に多いんですね。

その点でいうと、先日、とあるWebメディアとITベンチャー企業でちょっと揉め事があったという話を聞きまして。取材記事に対してITベンチャーの社長がTwitterで「こんなことは話していない」と、メディアに意図的に切り取られてしまったんだと捉えられるようなツイートをしてしまったと。

それに対してメディア側が抗議をして、最終的に企業側が謝罪リリースを出すという異例の事態が起こりました。

最近いろんな方からこういった事案について話を聞くことが多いなと思っていまして。Webメディアと企業の関係性も変わってきているのではないかなと思っています。

その上で、広報としてメディアとどう付き合っていくのかというところなどを議論いただければと思ったのですが、こういった投げかけで大丈夫でしたか?

三浦:お題がマニアックすぎるけどね。

(会場笑)

たびたび取り沙汰される企業とメディアの問題

三浦:そのちょっとした揉め事って、俺くらいしか知らないだろう。ちなみにそれを知っていた人はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

意外と(いますね)。みんな、マニアックすぎるよ。

司会者:今日は割とマニアックな人の集まりなので。では、今の関連でお願いします。

吉田ハルカ氏(以下、吉田):そういうトラブルは増えていますよね。某経営者のインタビュー記事とか。

三浦:お前、Twitter見てるなぁ。気持ち悪いぞ(笑)。1日に3時間以上Twitterを見ている人はダメです。

(会場笑)

それはいいですが。たぶん今の問題提起でいうと、要はSNSといったメディアが、企業でどんどん増えている中で、これから先メディアのあり方がどうなっていくのか、どういうメディアが正しいのか、というようなことなのかもしれないですよね。

さっき控え室で矢嶋さんがおっしゃっていた、欧米のメディアリレーションのかたちがすごくおもしろかった。ちょっとその話をしてもらっていいですか?

世論の流れを変えられる人とリレーションを作っていけるか

矢嶋聡氏(以下、矢嶋):これがスタンダードなのかはわからないですが、僕が聞いたのは、アメリカの中でどのジャーナリストが影響力があるかという、バイネームのランキングのようなものがあるんですね。その記者が書いた記事がどれぐらいシェアされてリツイートがあってというのがランキング化されていて。

企業側のほうは、そこに一斉にプレスリリースをかけるのではなくて、「この記者に情報を渡したい」と個別に売り込みをするんですね。そこからある種の情報の流れが発生しているというのがけっこう主流で、むしろプレスリリースというものはもうオールドファッションだよね、というのはよく聞きます。

なので、メディアのリレーションの在り方というのも、例えば「Wall Street Journal」「New York Times」といった、いわゆるA-Listメディアにちゃんとリレーションをつくるということが大事だけれど、どちらかというと、メディア単位というより、実はどの記者に情報を渡すかというのが海外ではむしろ主流になってきている感じがします。

そういう意味では日本もそうなってくるんだろうなと。論調を作れる人、世論の流れを変えられる人をきちんと特定し、リレーションを作っていくかというのがもっと大事になっていくのではないのかなと思います。

バイネームで働けるフラットな時代

三浦:これはおもしろい話だと僕も思っていて。昔は、例えば事業会社が持っているPR会社やPR代理店にいたPRマンというのは、やっぱり記者をたくさん知っていて、誰がどういうことが好きで、どういうことだったら受けるかということをものすごくよく把握していたんですね。

それがこうやって何年か経って、SNSがなにを変えたかというと、法人と個人の立場がものすごくフラットになった社会になっている。今、代理店のコピーライターやクリエイターのなかにはどんどん独立する人が増えているけれども、結局バイネームで仕事を受けるようになったら、そのほうが効率的だからすごく多いんです。たぶん、嶋野さんもああいうふうに辞めてしまうんですが。

(会場笑)

なにが言いたいかと言うと、今の日本でもそうですが、ヨッピーさん、中川淳一郎さん、僕の大嫌いな山本一郎さんといった、いろいろなジャーナリストや発信者がいて、彼らにバイネームで仕事を依頼する。彼らが世の中を変える力を持っている。

それは広告クリエイターやPRパーソンも、PRパーソンだったら本田(哲也)さん、嶋(浩一郎)さん、僕らのような者を含めて、何人かバイネームでそういう人がいて。そういうことはたぶんこれからも広がっていく。

例えば編集者なら箕輪(厚介)さん、竹村(俊助)さん、長谷川さんという方がいらっしゃいますが、たぶん法人と個人がなるべくフラットになっていって、彼らが自分たちのブランドであり、自分たちの意思を大事にして、社会に対して価値を提供していくということになっていく。それをアメリカはもっとフラットにやっているんでしょうね。

PRパーソン本人がおもしろいコンテンツである必要性

矢嶋:彼らがなにに興味を持って、どういう個性、世界観でやっているのかというのがSNSを通じて可視化されやすくなっているので、逆にPRとしてはアプローチしやすくなっているのではないかなと思いますね。

三浦:ただ、これ逆に、今日はPR会社の方が何人かいらっしゃっているかもしれないですが、そういった方々は記者とPRマンの力関係に差がどんどん出てくるわけです。

要はただお願いするだけ。メルカリさんが「こんなサービスをしたので、どうぞ書いてください」と持っていくだけだと、まったく相手にされなくなってくるというときに、どうやって対等な関係、あるいはどうやって彼らに興味を持ってもらえる人間でいるかという。

そこをすごく突き詰めると、自分自身がおもしろい人間で、自分自身がいい情報発信をできる人間になるしかないという、わりと極めて超人レスリングのような世界観になっていく部分がある。

だから、PRパーソンとはどうあるべきかというと、僕が自分の師匠から習ったことは、本人がまずおもしろいコンテンツであるということで。彼の情報は信頼できるし、彼と一緒にいるとすごくいい事件に出会えるということがすごく大事なんだなというのは常々思っています。

なので、PRマンというのはただメディアに対して情報をお渡しする人ではなくて、自分自身がメディアになっていくような、そういう人間になっていかないといけないのかなという気はしますよね。

プロになる育成機関としてのメディア

岡山史興氏(以下、岡山):今の話は、ものすごくおもしろいなと思って。ちょっと思ったのが、「企業やサービスの価値が上がれば上がるほど、かつ、記者個人の価値が上がれば上がるほど、メディアという箱がいらなくなったり、その間を媒介するPRパーソン自体もいらなくなるのでは?」という気もしていて。

だったら、別にネタがなくても個人がおもしろければそれでいいかもしれないし、企業のPRをするPRパーソンという存在が別にもう必要なくて。彼は彼で食っていくし、企業は企業でコンテンツ力を高めていくし、メディアは箱がなくなって個人の発信力が強くなっていく。そんな未来があるのかなと。

三浦:あるかないかでいうとあると思いますが、育成の機能はどこまでいってもあると思う。例えば、BuzzFeedの嘉島唯は、GIZMODOで育って、HuffPostで花開いて、BuzzFeedへ行っているわけですよ。

あるいは「WELQ」を叩いたことで有名になったBuzzFeedの朽木さんは、すばらしい記者ですが、そもそも彼はBuzzFeedの前はノオトという編集会社にいて、その前は医療系のフリーライターでした。

というような、ある一定の育成。チャンスと教育が人間を育てるので、プロになるための育成機関としてメディアがあることは絶対に重要なんですね。なので、メディアがなくなることはないと思います。

一流の現場でやっているうちに、結果としてモラルが磨かれていく

岡山:その一方で、たぶんHuffPost出身、朝日出身というブランドを彼らはつけるので、僕も博報堂出身ということで助かっていることは……あまりないですが、あるわけです。

それと同時にもう1個は、企業がコンテンツ性の高いものを生み出して、それをメディア性の高い個人が報道することによる、PRパーソン不在の状況ということが起きるのかという質問に関しては、PRパーソンをメディアリレーションパーソンだと思っていると、それはなくなる。

でも、今社会においてなにが受け入れられて、なにがよいバランスなのかということを、経営者に対峙しながら、企業のブランドや社会との接点を探っていく仕事のプロフェッショナルは、クリエイティブディレクターと呼ぶのか、PRコンサルタントと呼ぶのか、マーケティングアドバイザーと呼ぶのかはわからないけれども、そういうプロフェッショナリティは確実に必要だと思いますね。

メディアの育成の機能というような話ですごく重要だなと思う半面、そこを通らずにパッと出てきている個人がいっぱいいらっしゃるじゃないですか。

そういう個人が今後どういう道をたどっていくのか……メディアの今後という意味とは少しずれるかもしれないんですが、実地がある育成されてきた人たちが残っていくのか、それともパッと出てきた人たちが新たな1つの道になっていくのかというようなところが、どんなふうになるのか、ちょっと興味があるんですが、どう思われています?

三浦:正直、誰もわからないと思います。実験なので。有史以来、教育を受けなかった人間がメディアとして機能を持つという。

例えば、塩谷舞さんはCINRAで教育を受けていますよね。さっきも出ましたが、HuffPost以外のキャリアは、博報堂だったり、ある程度まったく関係ない。ハプニングバーの店員さんもいらっしゃいますし、いろんな人、いろんなキャリアがあると思うんですけれども、2つあると思っていて。

1つは、プロフェッショナルというか、一流の現場でやっているうちに、結果としてモラルが磨かれていくのではないかという。現場こそが最高の教育機関であるという可能性はあると思う。それは、途中でモラルがない人間はたぶん淘汰されるし、そういうことが起きてくるんじゃないかな。

だから、あともう1つは、教育というものの質もたぶん変わると思っていて。新聞社の支社だとしたら、たぶん今までとちょっと変わってくると思っているんですね。

ごめんなさい。たぶん今の質問に対する僕らの回答でいうと、これから先、教育を受けないでパッと出ていった個人と、教育を受けながら成長していった個人の発信力はどうなりますかというのは、結論はわからない。ただ、教育を受けないで発信力を持った人も、ある程度のモラルがないと消えていくんじゃないかとは思います。

岡山:わかりました。ありがとうございます。

メディアも企業も社会の公器

嶋野裕介氏(以下、嶋野):この質問は質問自体が若干踏み絵的なところがある気がしまして。つまり、どうしてもPR部の会だから、メディアを使ってやろうと答える人が多いような気もするし、そういうふうに思っている気はするんですよね。

でも、メディアも企業と同じように社会の公器というか、社会にはきっと必要なものであって、メディアがどんどん弱っていけば、企業やPR会社にとって非常によくないと思いますね。

メディア自身もみなさんの企業やPR会社と一緒に標語を募っていくような、Win-Winなものを目指していけるようになっていくと、とてもいいかなと。理想論かもしれませんが。「最近どうですか?」というような感じだと、あまりよくないというか。

三浦:そうですね。本当にメディアというものの基準が、メディアとそのコンテンツというか、企業がどんどんイコールになってきたら、メルカリのメディアというのも出るだろうし。そういう意味で、メディアというものの価値はたぶん変わらず、あるいは今まで以上に非常にでかくなってきていると思いますよね。

司会者:ありがとうございます。

社会を作っていく意思を持っているメディアとリレーションを築きたい

嶋野:どんなメディアがいてほしいというのは、さっきもあった話ですね。デジタル、PR、マーケティングを全部束ねて見れる人が少ないという話がありましたが、事業会社さん的に、どんなメディアにいてほしいというのはありますか? 

昔は新聞とかわかりやすかったですよね。みんなが見ていて、フラットになっている。今はその役目を新聞だけに負わせるのはさすがに厳しいかもしれないし、どういうメディアがいてほしいというのをうかがいたいです。

大橋直子氏(以下、大橋):どういうメディア(がいてほしいかというところ)では、スタンス……記者魂といいますか、こういう文脈、こういうよいものを社会に伝えていくんだという意思を持っているメディア。私は、そういう記者さんにすごくがんばってつながっていて。

企業の広報としては、書いてもらう内容をコントロールできるとは微塵も思っていなくて。私たちが活動している事業活動だったり、メッセージというものをその記者さんの目線で料理してもらえれば、読んだ人にとっては、うちの会社のことを結果的にすごく理解してもらうことにつながるし。

うちだけでなく競合さんやいろんなものを合わせて書いてもらうのがメディアの大きな役割だと思っているので、そういう視点を持っていてほしいというか。「企業に迎合しないでほしい」というわけではないですが、社会を作っていく意思を持っていてほしい。

スタンスの明確化を大事にしてほしい

三浦:ある種、スタンスを明確にしてもらわないと困るでしょう。

大橋:そうですね。

三浦:例えばX×Yで、パーソル×東スポだったらなに書いたって別にどうでもいい。パーソル×ブルータスだったらオシャレに書いてもらうし、パーソル×週刊文春だったら社長が誰かと撮られたとか。

大橋:(笑)。

三浦:メディアのスタンス……Yがなにかがはっきりしていれば、消費者・生活者もクリアに情報を受け取れるので。それがわからないで、あたかも「まじめな医療情報ですよ」というような顔をしてオカルト情報を投げるというのは怖いぞという。メディアだったりジャーナリストのスタンスがはっきりしていたら、たぶん企業にとっても生活者にとっても、すごい価値になってくるのではないかと思いますね。

大橋:そうですね。広告というか、お互いになにかをコントロールしたいわけではないので、ここのスタンスの明確化というのをすごく(大事にしてほしいですね)。

三浦:そうすると、 尖れるし。

大橋:そうそう。

三浦: 尖っているのはいいし。

大橋:そうなんですよ。

三浦:どういうつながりで、どういうスタンスで受けられるかもわかるし。

大橋:ずっとリレーションが続いていくというか。

三浦:文春の取材に応えて、文春に悪く書かれて文春に怒るのは、企業が悪いですよ。

(会場笑)

大橋:逃げたほうがいいですよね。そうそう。それはすごく思いますね。

偏っていても、明示されてクリアであるならいい

三浦:青山さん、どうですか?

青山弘幸氏(以下、青山):メディアとの関係性を広報の近くで見ていて感じるのは、自分たちのサービスだったり会社のミッションに共感してくださる記者の方というのがいらっしゃる。そういう方々は正しく僕らのことを伝えてくれるし、ある意味、逆にいろんな問いも投げかけてくださる、すごくいい関係の方がいらっしゃるんだなと思っています。

さっきもおっしゃっていましたけれども、迎合しない、お互いやりたいことを妥協しないというようなところを見て、すごくパートナーとして働きたいなと(思いました)。

三浦:だから、わりと偏ってよくて。偏っていることがちゃんと明示されてクリアであれば、逆にそのほうが空回りしないですよね。

例えばHuffPostだったら「社会正義のようなものに対してやっているから、今回CSR活動の予算をつけたい」。例えば文春だったら「うちの社長が女子アナとこういうことになっているので、株主総会まで待っていてください」というようなことも出てくると思うので、そういうスタンスの取り方ですよね。

PRだからこそ、PRではないものと積極的に関わる

司会者:そろそろ時間となりましたので、最後はまとめというか、本日のご感想などをそれぞれからいただきつつ締めたいと思います。さまざまな立場の方が集まったので、新たな気づきがあったり、改めて自分の考えていることで確たるものがおありだと思いますので、まず嶋野さんから時計回りでマイクを回していただいてよろしいでしょうか。

嶋野:まとめになるかわからないんですけれども、さっき青山さんも言っていた、視座を1個上から見てみると、もっと視界が広がって、今自分がなにをすべきか、なにが足りなかったのかがすごくわかると思うんですよね。

PRだからこそPRではないものの本を読んだり、いろいろ勉強していくことによって、本当に自分もそうでしたし、みなさんも変わってくるのではないかなと思うので。

せっかくすごく熱心で勉強家な方々だと思うので、ここの横のつながりなども含めて、刺激しあえたらいいなと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

共感してもらうためにどうしたらいいかを考えるのがPRの仕事

髙野祐樹氏(以下、髙野):ありがとうございました。みなさんの話に聞き入ってしまってなかなか発言できなかったんですけれども、私もPRの仕事をして丸9年経って10年目に入っていて、すごくいろんなアイデアだったり、悩みだったり、いろんなお話があるなというのを知れました。

それから、1つみんなに言っておきたいなと思ったのは、先ほどの質問の中に、実際のメディアとPRパーソンの力関係がうんぬんという話で、PRパーソンは不要になってくるのではないかという話があったのですが、まったくそんなことはないと思っていて。

私のようなPRパーソンからすると、メディアであろうが投資家だろうが、全部がステークホルダーなんですね。メディアがなにを考えているか、なにを未来に、どんな未来を見ているかというのをきちんと見抜ければ、要はそこに向かって自分たちがどんな価値があるかという情報の提供さえできれば、共感してくれて使っていただけます。

なので、先ほど共感してくれる記者がすごくいいと言っていたんですが、共感してもらうためにどうしたらいいのかを考えるのが僕たちPRの人間の仕事かなと。

その中で、さらにPRパーソンは、経営の考えていることもしっかり理解していかないといけない。経営の考えていることもバッチリわかっていて、世の中の流れもわかっていて、コミュニケーションするチャネルのこともわかっていなければいけないということで、たぶん経営者よりも難しい仕事を我々はしているんだと思っているんですね。

なので、先ほど嶋野さんが経営の本を読んだほうがいいんじゃないかとおっしゃっていたように、私もまだまだですが、みなさんも、もっとどんどん視座を上げて、雲の上から世の中を見下ろすぐらいの高みに行ったほうが(いいです)。行くと、これもさっきのPRパーソンのメディア戦略になるんじゃないかと思ったので。

実はこういう話をこのあともしたいと思っているので、またこういう機会があるとうれしいなと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

経営課題に対して、やるべきことをやっていればそれでいい

司会者:岡山さん、お願いします。

岡山:みなさん、今日はありがとうございました。PRパーソンがなくなる・なくならない問題は、広い意味でPRパーソンの存在はきっとなくならないんだろうなと思いつつ、狭義のPRパーソンはどんどん価値がなくなっていくんだろうなと思っています。

さらにいうと、みなさんのお話を聞きながら、PRという枠をいちいち考えていること自体がどうでもいいのではないかと思っていて。広報との違い、コミュニケーションとの違いは別にどうでもいいかなと思ったのが正直なところ。

なので、自分が経営課題や自分のミッション、ビジョンに対して、やるべきことをやっていればそれでいいのではないかなと。結果で語るというか、「KPIの設定よりも私はこれだけ結果を出しています」というようなことをみんなが言えるようになったら、みなさんも幸せになるのではないかなと思っています。ありがとうございます。

(会場拍手)

日本のPR市場規模は、スマホカバー市場とほぼ一緒

上坂あゆ美氏:去年知ってすごく驚いたこととして、『日本のPR市場規模はスマホカバー市場とほぼ一緒』という話があります。私がこんなに悩んでいるのにスマホカバー程度かよと思ったんですけど。

(会場笑)

さっき青山さんが人材育成のお話をされてたときに私が思ったのが、広告会社はクリエイティブ人材を育てるフォーマットというものがなんとなくできていて。一方、PRはリレーションだからなのかわからないですが、けっこうないことが多く、まだ確立されていない。それは、この圧倒的な市場規模の違いも大きいのかなと思いました。

それに対して私ができることは、今日みなさんのお話をうかがった上でも、自分の思う正義を持ちつつ、それに共感してくれるパートナーさんや仲間と一緒に毎日ちゃんとやるということしかないので、今日はいい機会をありがとうございました。

(会場拍手)

三浦:明日からもがんばろう!

嶋野:休みです。

三浦:明日は休みですか。

(会場笑)

視座を上げる機会を増やしていきたい

吉田:今日はありがとうございました。お話しして思うのは、どの職業も結局変わらないなということです。私はエンジニア文化が好きなので、(エンジニア業界の言葉で)いうと、結局いま求められているのは「PRパーソンのフルスタック化」というか。

とくに基礎系のスキームとして「これだけやる」と線引きせずに、組織や事業、そして世の中にとって必要なことを考えられて、ある種「そのためにはなんでもやる」くらいの人が求められているのかなと。

かつ、その過程で得た経験をもっとシェアしていかないと、「結局PRってなに?」「経営陣に理解されない」という世の中になっていくのかなと思いました。だから、みんなが新しいことに挑戦し続け、それをどんどんシェアしていって、PRパーソン自体がもっとすてきだなと思われたらいいなと思いました。ありがとうございました。

(会場拍手)

青山:ありがとうございました。たぶん唯一広報・PRというキャリアを通っていない中だったので、ちょっと変なことを言ってしまったのかなと思っています。

三浦:ぜんぜんそんなことないですよ。大丈夫ですよ。

青山:ただ、嶋野さんにもアドバイスいただきましたが、僕自身、マーケティングというフィールドではなくて、事業成長というところでコミットするポジションになって、PRというものを知って仕事につながったという意味においては、その視座を上げるという機会をすごく増やしていかなければと思っています。

逆に言うと、事業成長ということにだけコミットしていれば、その手段のお話がありましたけれども、それが改めて、より理解というか、確信に変わったので、すごくいい機会をいただきました。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

どんな企業価値やメッセージを世の中に示していけるか

大橋:今日はありがとうございました。企業価値の向上が企業広報としてのミッションかなということを改めて思いました。

『経営戦略全史』が流行りましたが、私も経営戦略だったり事業戦略だったり、経営がなにを考えて、日本の経営者がどういうふうに事業をやっていくのか、なにが正しいのかという、そこの視点しかないかなとは思っていて。

その中でパーソルとして、どんな企業価値だったりメッセージを世の中に対して示していけるのかというところで、私ももう1段がんばろうと改めて思いました。

それから、三浦君がけっこういいことを言ってくれて。すごくイメージが変わって。

(会場笑)

三浦:早稲田の「広告研究会」というサークルに大橋さんがいらっしゃって。

大橋:一緒の代。

三浦:俺、そこの自己紹介でとんでもない暴言を吐いて、大橋さんに「この人とは一生関わっちゃダメだ」と思われたという苦い記憶があるので。

大橋:ちょっと言えないぐらいの。言わないほうがいいですよね。

三浦:言わないほうがいいでしょう。

(会場笑)

大橋:なので、おっしゃっていたような、「大きな文脈のなかに流れを置く」という、改めてすごくいい言葉をいただけたなと思っていて。最後に改めて、ありがとうございました。

(会場拍手)

PR至上主義に陥らないようにしつつ、PRの正しい価値を伝えていきたい

矢嶋:今日はありがとうございました。僕は、変な言い方をすると、PR至上主義のようなものは嫌いなんですよね。「PRが大好き!」と言っている人は逆にちょっと手段に対して囚われている感じもあって。僕はちょっと引いたスタンスだし、目的に対しての手段の1つとしてPRというものがあると。さっきお話ししたことと同じですけど。

ただ、やっぱり逆説的に思ったのは、PRの話というのは、感覚的にしか知られていない、理解されていないというところも課題ですよね。メルカリの場合は、我々自身の信頼性を上げていかないと、結局ビジネスとしてこれ以上スケールしていかないよね、という課題意識が経営陣含めて浸透していたので、PR活動に対して理解があったと思います。

でも、皆さんとお話させていただいたなかで、PRがビジネスインパクトを与える可能性があるとか、企業に対するレピュテーションをより高めていく可能性があるにもかかわらず、 そのポテンシャルが全然理解されていないというところは改めて問題だなと痛感しました。PRの正しい価値を伝えていくために、僕らとしてできることがあればもっと協力したいなと感じました。本日はありがとうございました。

(会場拍手)

三浦氏の語る、3つの大事なこと

三浦:では最後のまとめ的に言うと、今日一番大事なことは3つあって。1つ目、「PR TIMES」はなるべく使わない。2つ目、なるべく哲学の本を読む。3つ目、宗派の違うやつとは関わらない。

(会場笑)

この3つをぜひみなさんに持って帰っていただきたいという学びだったわけです。今日はたぶん、PRの実際に現場で働いている人、「PRをなんだろう?」と思っている人、PRに興味のある人など、いろんな方が来ていると思います。

僕はいろんな人に言っているんですが、嶋野さんの「視座を上げろ」という話だったり、矢嶋さんがおっしゃった「PR至上主義は気持ち悪い」というところで、PRは「パブリックリレーションズ」「ありとあらゆるステークホルダーとどう関わっていくか」なので、世の中のことがわからないとPRの領域で話なんて絶対にできないと思うんですね。だから、PRの本ばかり読んでいるということは本当に気持ち悪いと思っています。

PRしか知らない人間は、PRについてなにも知らない

三浦:プロレスの言葉で、「プロレスについてしか知らない人は、プロレスについてなにも知らない」というものがあるんですね。

「なんでこっちが勝つの?」「Aのほうが強いから」というのは柔道やボクシングの話で、要はグッズの売上やメディアに出ている量といった、いろんな社会状況があって、プロレスの結果が決まるんですよね。

(会場笑)

というように、社会の本当に複合的な状況が全部ある程度把握できた人間が改めてPRというものについてわかるので、「PRについてしか知らない人間は、PRについてなにも知らないんだよ」ということを考えてもらえると、今後のいろんなメディアとの向き合い方だったり、仕事との向き合い方がわかるかと。

矢嶋さんのように世の中がガラッと変わる仕事のド真ん中にいて、毎日のようにメディアに関わる方もいらっしゃれば、嶋野さんのようにトヨタのでかいブランドを振り回しておもしろいことを考える人もいれば、僕のように、大炎上してすごくうれしいと思うような、愉快犯もいて。

(会場笑)

PRという仕事には本当にすごい可能性があるので、ちょっとしんどかったりしても、明日を楽しむ、ないしは火曜日も楽しく仕事と向き合って。

NASAの宇宙飛行センターへケネディ大統領が視察に行ったときの話なんですけど、掃除している人に「お前なにやってるの?」と聞いたら、「人類を月に届けるお手伝いをしています」と言ったという。単なる掃除ではなくて、自分は月に行くという親類の進歩に関わるシステムの中の1人であることをわかっている。

PRのビジネスモデルはものすごく大きい社会全体に関わるものであるなかで、自分がやっていることは小さいかもしれないけれども、その大きい枠組みの中になにかしら貢献している、関与しているということがわかっていくと楽しく仕事できるのではないでしょうか。以上です。

司会者:ありがとうございます。

(会場拍手)