PR版「朝まで生テレビ!」の開幕

司会者:みなさま、ありがとうございました。今日はこんなお三方にお集まりいただきディスカッションをしていきたいなと思っています。まずお三方、登壇席にご移動ください。

では、移っていただく間に簡単に今回の趣旨を改めてお伝えいたします。PRのこういったイベントとしては、一方通行でノウハウを教えるといったものはたくさんあると思いますが、立場が違えば課題も違うわけでして、エージェンシー側と事業会社側でも違いますが、BtoB・BtoCでも違いますと。

というなかで、ではディスカッションをする場があったほうがいいのではないかと言っていて、したいけれども、ぜんぜんなかったんですね。私は個人的に『朝まで生テレビ!』が大好きで、PR版のそのようなものをやろうではないかということでお集まりいただいております。朝まではやらないんですが、朝生みたいなものだと思っていただければと思います。

今日はお三方以外にもそれぞれ討論に参加していただく方を6名お招きしておりますので、また30秒程度で自己紹介をしていただければと思います。髙野さんから順番に時計回りで自己紹介をよろしくお願いいたします。

髙野祐樹氏(以下、髙野):みなさん、こんばんは。井之上パブリックリレーションズというPR会社で働いています、髙野と申します。本日はよろしくお願いいたします。

今日、私はディスカッションをする人ということでうかがっているんですけれども、基本的にはこの前にいるお三方に聞きたいことだらけなので、どんどん質問していこうかなと思っています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

広告とPRの融合に頭を悩ませる日々

岡山史興氏(以下、岡山):こんばんは。株式会社am.の代表取締役をやっている岡山と申します。よろしくお願いします。

「70seeds」というWebメディアを運営したり、先ほどの三浦さんみたいに、事業全体を地域の自治体や企業様と一緒にプロデュースしていく、作っていくということを通じて、レベニューシェアで収益を成り立たせているというかたちで、本質的なPRというところにこだわって事業を展開しています。

ちなみに(私は)矢嶋さんが昔いらっしゃったビルコムの後輩です。嶋野さんと違って、僕は笑顔が苦手でございます。

(会場笑)

顔色は悪いですが、健康ですので、よろしくお願いします。

三浦崇宏氏(以下、三浦): 顔、こわいですよ!

岡山:三浦さんに言われたくないです(笑)。

(会場笑)

三浦:二等兵とか。

岡山:たぶん軍曹と二等兵ですね。よろしくお願いします。

三浦:弊社は軍国主義なので。

(会場笑)

(会場拍手)

上坂あゆ美氏(以下、上坂):はじめまして。上坂あゆ美と申します。

私は新卒でPR会社に入って3年修行しまして、今はマッキャンエリクソンという広告代理店でプランナーをしています。

広告会社は6人の中で1人だと聞いているんですけれど、広告とPRの融合的なものに日々目下悩んでいまして、今日はお三方にいろいろ相談をしたいなと思っています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

事業が拡大するなかで、広報体制はどうあるべきか

吉田ハルカ氏(以下、吉田):こんばんは。レバレジーズ株式会社の吉田と申します。本日はよろしくお願いいたします。

私は2014年の新卒で、ぜんぜん違う会社の広報からキャリアをスタートしました。5年間広報しかやったことがなく、1度フリーランスになった期間もあります。

今は従業員1,500人ほどの会社の中で実質1人で広報部を回しつつ、PRチームづくりに奔走しています。事業、組織が拡大するなかで、広報体制をどうすべきか等もみなさんにおうかがいできたらなと思っております。また、自分のやれることも増やしていきたいので、そのあたりのヒントをいただけたら幸いです。よろしくお願いします。

(会場拍手)

青山弘幸氏(以下、青山):はじめまして。こんばんは。株式会社ビズリーチの青山と申します。

2011年にビズリーチに入社しまして、それ以来ずっとマーケティングを軸足に複数事業の立ち上げ、グロースなどをやってきました。

去年から新規事業のプロデューサーというかたちで仕事をする中ではじめて広報・PRという仕事を社内の広報室の人たちと一緒に推進し「本当にPRの力はすごいな」というところを感じました。

今日はそこを学ぶというか、いろいろエッセンスを得るというところで出させていただいています。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

M&Aで大きくなる最中の企業におけるPR

大橋直子氏(以下、大橋):はじめまして。パーソルホールディングス株式会社で広報室を担当しております大橋と申します。よろしくお願いします。

私は2007年にインテリジェンス……今は社名が変わってしまったんですけれども、人材会社の新卒で営業をやって、事業側の広告宣伝を担当していました。

ホールディングスに3年前に移りまして、パーソルでリブランディングを2年間ぐらいして、「はたらいて、笑おう。」というスローガンでウォズニアックさんを使った広告をやっていたんですけれども、そこで広告宣伝担当で、今月から広報室を担当しております。

なので、まさに広報・ブランディングというかブランドマーケティングのようなところで、PR、広告宣伝、広報、インナーブランディング、CSRについて課題が山積みで。M&Aで大きくなってきているので、出自の違う会社の中でいろいろやっているというところですごく悩み満載です。なので、今日はいろいろお話を聞けたらなと思っております。よろしくお願いします。

(会場拍手)

司会者:では、全員の自己紹介が終わったというところで、最初のテーマに入りたいと思います。見えましたでしょうか。今回のメインテーマですね。「みんな、PRをなんだと思っている?」というところで、一度やりたかったことをやらせていただきますね。

(ベルを鳴らす)

(会場笑)

みんな、PRをなんだと思っている?

司会者:はい(笑)。それでは本題に入りたいと思うのですが、では三浦さんから「PRをなんだと思っています?」というところから始めたいと思います。

三浦:これは話しづらいですよね。「みんな、PRをなんだと思っている?」というのは。なんだと思っているかって、仕事だよ!

(会場笑)

どうもこうもねーよと思うと思うんですが。ここにはPR会社の方がいらっしゃったり、代理店のPRの方がいらっしゃったり、事業ごとにたぶんポジションが違うので、PRという幽霊のようなもの、なにかよくわからないものを明確なかたちにしていこうというのが、たぶんこの会の趣旨だということを示しながら僕はしゃべろうと思っています。

(会場笑)

PRの仕事が正しく理解されていない

三浦:PRとはなにかというと、今日たぶん来ていらっしゃる方はPR関係者の方が多いと思うんですが、大きくはパブリック・リレーションズという関係構築の学問体系であり、同時にビジネス領域でもあるということは、たぶん前提として理解していまして。

その中で、みなさんが一人ひとり自分のPRをやっているなかで、たぶん日本だとプロモーションだと思われていたり、あくまでメディアリレーションで止まってしまったり。

俺、基本的にメディアリレーションしかやられていないPR会社のことを、「PR会社」という名前はやめて「メディアの小間使い」というような名前にして、もう全部「PR会社」という名前は提げるなと思っているんです。そういうことを言うとまた敵が増えるんですが。

みなさんがPRの仕事をしていて、それがどう変わっていったらPRの仕事が社会的により認知されてきて、みんながもっとお金をもらえ、自分の満足できる仕事ができるようになったりしていくんだろうということについて話す場だと思っております。こんな感じですが、どうですか?

司会者:はい、大丈夫です。

PRはクライアントが求める結果を出すための手段

三浦:ではせっかくなので、PRをどう思っているかということを、嶋野さんと矢嶋さんからとりあえずいったんお話を聞きましょうか。

嶋野さんは本当にすごいですよね。海外賞のPRの審査員もやっていて、電通という日本の総合代理店の中でPRをどう捉えているかということに関して非常に問題意識を持っているし、現場でもいろいろやっていらっしゃる。ぜひ教えてください。

嶋野裕介氏(以下、嶋野):いきなり肩透かしの答えになってしまって申し訳ないんですが、総合代理店という観点、しかもクリエイティブを1つの柱にしている私のような人間からすると、PRはコミュニケーション……クライアントの求められている結果を出すための1つの手段として見ています。1つの手法ですね。

結果が出せれば、別にPRの手法にこだわる必要はまったくないですし、アドで解決したほうが楽で早いんですよね。お金だってそのほうがかからなかったりするので。

ただアドでは解決できない問題も絶対にあったりして。それはやっぱり社会合意であったりロビーイングであったりといった、アドでは解決できないときに状況に応じて、テコといいますかレバレッジといいますか、そういう手段として使っている。文字どおり、私は手法の1つとして使うことが多いかなと思っています。

広告とPRはどう違うのか問題

三浦:そうですね。これは早くもわりとありがちな議論で、ありがちというか、よく聞くんですよね。どこまでいっても「広告とPRはどう違うのか」という話があって。

たぶん嶋野さんは、広告というか、マーケティングという企業のビジネスを成長させていく活動はマーケットであって、そのマーケティングの中に、アドという媒体を買ってメッセージを発信するやり方と、PRというなにも買わないで合意形成をうまい具合にやり遂げてメッセージが伝播していくという2つのやり方がある、というスタンスですよね?

嶋野:それに近いですね。簡単に言うと。

三浦:了解です。わりとここはけっこうズレていて、嶋野さんは電通で、僕は博報堂が長かったんですが、僕は博報堂のPRに長くいて、そこではPRの機能が博報堂の……博報堂ではないですね。博報堂のPR局の中では、PRが最大の概念だった。

要は、企業という主体があって、それが社会全体とのいろんな合意があって、その中にマーケティングがあって、そのマーケティングの中にアドがあるという。PRこそ一番概念が広くて最も広範囲な企業活動の総称であるという立場なんです。僕は一応その立場です。PRが最上位概念であるという立場。

博報堂でいうと嶋学会と立谷学会に分かれています。ケトルの嶋浩一郎さんと、テーマ開発局というところで営業の役員をやっていた立谷光太郎さんと2人で議論が分かれていたんですけれど、それはどうでもいい話です。

PRは関係性が双方向であるということ

三浦:矢嶋さんはどうですか?

矢嶋聡氏(以下、矢嶋):僕はベーシックで、やっぱり1つのマーケットの組織というのがベースにあって。僕の立場でいうと、企業はなにかしら新しい価値や志・ビジョンというものを世の中に提示・提供していくことが存在意義だと思うのですが、それをメディアというビークルを使って、相手に受け入れられやすい文脈で伝えていくというのが基本的な考え方かなと思います。

広告と違うのは、関係性が双方向であるということと、一発で終わりではなく関係性が続いていくものなので、そこをどうマネジメントしていくかというところが本質かなと思っています。

当然、世の中の事象や動き、あるいはサービスの動きによって、見られ方は当然流れていくので、そこの声をちゃんとピックアップするというのもそうだし、それを踏まえて、どういうメッセージに調整していくのかというところが広報の役目かなと思っています。

ただ、メディアの環境も変わってきていて、マスメディアの影響力が今よりも高かった時代においては伝達効率という意味で高かったけれども、今はオウンドメディアとソーシャルメディアが登場し、企業が直接自分たちの志やビジョンを伝えられるようになったので、広報にとってはやりやすい時代になってきたかなというところがあります。

あと1個、代理店と事業会社の立ち位置の違い。僕が代理店を辞めて事業会社に入ったのは、代理店だと1ショットの関係性しかつくれないことのジレンマがありました。様々なPR施策の提案、実行を通じてようやく世の中との関係性を作れたのに、クライアントとの契約が終わってしまうと、そこで関係性が途絶えてしまう。そうすると、本質的な意味で関係性を構築できない。「当事者ではないので」というアウトサイダーとしての限界のようなものを感じたのが転機です。

事業会社に比べると、PR会社は企業サイドもパブリシティばかり求めているところがあるので、オウンドメディアなども含めてちゃんと関係性をつくるということが事業会社でないとできないんだなと思いました。僕の立ち位置としてはそういう感じです。

関係性を築くのがゴールだから、字義を問うのは言葉遊びの範疇

三浦:そうですね。僕らがどれだけ、エージェンシーというか、(依頼元の企業に)寄り添っていたとしても、やっぱり「当事者ではないでしょう?」というところで、メディアや周囲からの見られ方も変わってしまうし。

たぶんPRをやればやるほど、メディアの方から「でも、あなたは別にメルカリの人ではないでしょう?」といわれてしまうところがあるのに対して、中にいる人間がちゃんとメディアとリレーションをつくっていくのはぜんぜん違うなと思うんですよね。

今、三者三様でそれぞれ違うPR観があったと思います。これは、たぶんみなさん違う(と思うので)、質問だったり、「私どもとはぜんぜん違うと思うんです」「俺はこう思うんだよ」というのがあれば、ぜひお聞かせいただければと思います。どうぞ、吉田さん。

吉田:「PR」と「広告」の違いは、お話を聞いたり、ネットで調べたりするとけっこう出てくると思うんですが、最近、「PR」と「広報」の違いが仕事をすればするほどわからなくなってきて……。

自分の中では、先ほど三浦さんがおっしゃったような、「PRが最上位概念で、結局、広報は『説明責任を果たす』というところなのかな?」というのが最近しっくりきています。が、みなさんはPRと広報の定義をどう考えていらっしゃるのでしょうか。

三浦:僕は1回も考えたことがないテーマなので、矢嶋さんお願いします。

(会場笑)

矢嶋:それでいくと、個人的には言葉遊びかなという感じの認識ですね。結局、関係性を作るということに照らし合わせると、広報だって「広報」だけではなく「広聴」というのもあるし、そうすると双方向だし。結果、それを通じて関係性を築くことがゴールであることは一緒なので、どちらでもいいかなという。あまり言葉の定義を考えても仕方がないかなとは思いますね。

言葉の主語がどこにあるのかから考える

三浦:僕もそのスタンスなんですが、どこでそう思われたんですか?

吉田:私は「広報LT大会 #PRLT」という主に広報担当者向けのコミュニティを運営しているので、いろんな広報の方とお話ししています。

その中で「広報」という言い方をする人と、意識的に「PR」と言葉を使い分けている人が一定数いる気がしているんです。いろいろな人の話を聞けば聞くほど「なにが違うんだろう?」とわからなくなってきて。

仕事の説明をする上で「PR担当」と名乗るのか、「広報担当」と名乗るのか。わりと自分では「どっちでもいいじゃん?」と思っていたんですが、人によっては明らかに使い分けている方もいらっしゃったりするので、みなさんはどう思っているのかがすごく気になっています。

嶋野:主語の違いぐらいではないですか。例えば「広報」とは広く報じるという、発信者(内側)視点ですよね。一方で、「PR」は、第三者視点な部分があるじゃないですか。実施主体によって、言葉の主語がどこにあるかの違いでしかなくて、意味は同じかなと思います。

吉田:ありがとうございます。

三浦:いったん気にしなくていいかもしれません。

(会場笑)

リレーションで問題解決するのがPR

三浦:矢嶋さんの言ったことに近いところで言うと、広告とPRにはいろいろありますが、広告はやっぱりコンテンツで問題解決をするんですね。アイデアがあって、ものを作って、それでがんばって売上を上げるもの、企業のブランド価値を上げるものを作って。

一方で、PRはなにかというと、僕はリレーションで問題解決するものだと思っているんですよ。だから時間がかかるし、お金もコンテンツで一発ドーンとかける場合もあれば、徐々にという場合もあるし。

コンテンツとリレーション両方を組み合わせて使っていくことのほうがマーケティングにはすごく重要です。だから、今の時点で広告とPRはどう違うかと言われたら、コンテンツで問題解決するのが広告で、リレーションで問題解決するのがPRだと。その両方がマーケティングにはすごく重要だというのが今の僕のよくする説明です。

嶋野:ガッテン!

(会場笑)

三浦:ありがとうございます。では、嶋野さんからガッテンをいただいたので。

司会者:はい。おあとがよろしいようですので。

三浦:はい。ありがとうございます。

PRとはソリューション扱いなのか

司会者:ということで、次のテーマへまいります。

岡山:ちょっとすみません。今の話でいうと……。あ、大丈夫ですか?

三浦:大丈夫です。

岡山:はい。では恥ずかしながら。

(会場笑)

岡山:広告は問題解決のためのソリューションだというのはすごく明確だと思うんですが、PRはそもそも問題解決のためにあるのかということがちょっと気になって。

パブリックのリレーションなので、例えば僕がPRをなんだと思っているかというと、経営そのものであったり、事業自体が各所とのリレーション構築の中で成り立っているものであると。だから、最上位概念というのはすごく近いなと思ったんです。ただ、それが問題解決というところに当てはまった瞬間、ソリューション扱いになるのかなという感覚があって。

本イベントでは「手法論としてのPR」を軸に

岡山:どう思われますか?

三浦:そうですね。今のでいうと、僕も概念としてのPRと手法論としてのPRはちょっとズレると思っていて。今、僕が言っていたリレーションによる問題解決は手法論のPR。

あくまで学問というか概念のPRでいうと、最上位概念にある、「ある主体が社会環境において、ありとあらゆるステークホルダーとの良好な関係を構築し、またそれを維持するもの」という定義でブレていないと思います。

なので、経営者には、PRというものがすごく必要なものだし、たぶんそれを優れた経営者はだいたいわかっている感じはしますよね。

岡山:そうすると、今日のPRをどちらで語るかというのを定義しておいたほうがいいものなのか、それともそこもひっくるめて話していく場なのか……。

三浦:「よい成果とは」「組織・働き方」「メディアの今後」という3つのお題があって、それぞれ違うんだよね。(スライドを指して)ちょっとめくってみて。この「よい成果とは」となるとたぶん手法論になるし。

岡山:ソリューションですよね。

三浦:「組織・働き方」だとたぶん両方。「メディアの今後」が、メディアも両方かな。ここは難しいかもしれないですね。でも、わりと手法論で話したほうが議論は活発かもしれないですね。

岡山:ありがとうございます。

数値で測れる成果を最重要なところに置きたくない

三浦:ではこの3つのお題の中からどれを話すかという話になってくるんですけれども、大橋さんはどれがいいですか? 大橋さんと大学の同級生なんですよ。

大橋:では、AかB。

三浦:Aからいきましょうか。「よい成果とは」。ではパーソルホールディングス広報・大橋直子さんにとって、PRの成果とはなんですか?

大橋:まさに今それを作ろうと設定していて。経営、ステークホルダー、投資家といった幅広い関係者のみなさんと合意形成していかなければならず、今月から作り始めているところなので、逆にいろいろ教えていただきたいんですが。

今、個人的に考えているのは、やっぱり数値で測れる成果を最重要なところは置きたくないなと思って。

三浦:数値で測れるところには重要な……成果主義にはしたくない。

大橋:一番大事なところは置かないほうがいいなと思っていて。うちのトップは常々「尊敬される企業になって、社会の役に立つ」ということを発信をしているので、そこに対してどれぐらい近づいているんだろうというところを振り返りながら軌道修正していくというのを成果として置いていきたいな、と思っています。

それがどこまで成果指標でうまくいけるんだろうねという定義は必要なので、それはそれで出さなければいけない、という感じですね。

質はあくまでもメッセージを伝える手段

三浦:そうですね。ゴールとして「尊敬される企業になる」というすごく抽象的な目標があって、でもそこにいたるまでの8合目や6合目はどうやって測るんだっけ、というのがすごく難しいですね。

大橋:難しいですね。今、広報室は社内外広報15人の体制なんですが、やっぱり1つの抽象的なゴールに向かって細分化されるようになっていくと、視点は徐々に固まっていってしまって。大きくなればなるほど、統合的な回答というかソリューションを出すことが実情としてなかなかできなくなっていったりするという悩みもあって。

三浦:これは、今最も注目されている企業の広報を務めている矢嶋さんの答えがもう。

大橋:ぜひ聞きたいですね(笑)。

矢嶋:どうですかね。普通、少なくとも量で見るのではないですか。質はあくまでもメッセージを伝える手段なので、なにか達成したい目的があったときに、それを達成するための手段として、意図する文脈で、意図する媒体で、どういう質ができたかというようなところは見ているので。

三浦:いまだにメディア露出数は聞かれますよね?

大橋:ぜんぜん聞かれていますね(笑)。

三浦:聞かれるし、聞くでしょ?

大橋:聞かれるし聞くし、「そこにコミットしてよ」と言ってしまうし。

三浦:でしょう。聞かれますよね?

嶋野:もちろん。

三浦:聞かれるでしょう?

(髙野氏がうなずく)

うざいよね。

大橋:(笑)。

現場のサラリーマンを救った「PR TIMES」

三浦:基本的に、僕のスタンスだけ言うと、露出量を数字で換算するのは、嘘ですよね? 「テレビに出て2億円です」「見てください、このネットメディア。150以上の媒体!」というのは。

(会場笑)

「お前、全部ニュースリリースの転載じゃねえかよ!」というようなものがありますよね?

(会場笑)

大橋:本当にそのとおりですね。

三浦:もし今この場に事業サイドの方やPR会社の方がいらっしゃったら、もうそれを一切やめたほうがいい。本当に無意味だから。メーカーの現場の人たちがよく知らない広報部長に報告するためにできた発明が「PR TIMES」なので。

(会場笑)

あれは発明ですよ。

大橋:すごいと思います。

三浦:サラリーマンは上司に褒められるために仕事をしているので、現場のサラリーマンを全員救ったという意味ですごい発明で、僕は『PR TIMES』をすごくリスペクトしていますけれども、少なくとも世論形成やメディアに対するPRという意味でいうと、ほとんど意味がないということは、PR関係者1年目からベテランまで全員が覚えておいたほうがいいと思いますね。

(会場笑)

数字は「ご褒美」として見るのが一番

三浦:嶋野さんどうぞ。

嶋野:視点の話だったかもしれませんが、わりと数字は数字でしかないことはわかりつつ、使い方によってはぜんぜんいいかなと思っていまして。その数字のためになにかをやるのではなくて。数字というのはたぶん、大橋さんもおっしゃったとおり、ほとんど同じ答えで、すごくわかりやすいなと思って聞いていたんです。

つまり、たぶん御社的には、その社外活動、企業の活動が結果的によりよい社会を作るためにつながっていくということですよね。そのときに、やった活動の露出メディア数は、自分たちでやった活動が本当に社会にとって意味があったのかをチェックするためにあると思うので。

数字は、「ご褒美」として見るのが一番よいかと。

大橋:そうなんですね。

嶋野:そういう意味では少なくとも、言葉遊びみたいに聞こえたら申し訳ないですが、数字の見方を正しく変えたほうがよくて。自分のやってきたことが本当に正しかったかどうかを確認するための指標として見るという意味では、露出数はすごく意味があると思うんです。

三浦:それ、すごくわかります。ダイエットの体重のような。本質的に痩せたと思われることがすごく大事だけれど、最低限、自分の日々のレコーディングとして数字は見ておいたほうが(いい)。評価にはならないけれども、自分の万歩計的な部分ではそうですよね。

嶋野:はい。1万歩歩くためにやるのではなくて、いろいろやった結果、1万歩になっているかなというのが、やったアクティビティが正しかったのかどうかの指標になるということです。