有毒の「藻」が大量の海洋生物を殺す

ハンク・グリーン氏:現在、何週間にも渡って、何千もの死んだ魚、亀、マナティー、そしてイルカが、フロリダ南東のビーチに打ち上げられています。犯人は、カレニア・ブレビスという小さな有毒の藻で、現在大量発生しています。

実際に水の色が赤く染まってしまっています。

これは10年以上にわたってその地域で見られている赤潮で、専門家によれば、この状況はこれからもしばらく続くようです。そこでみなが知りたいのは、なぜ今年は特に悪いのか、そしてこれは何かの警告なのか、という点です。

藻類の異常発生は、その名の通り急速な、藻の大規模な増殖です。この現象は多くの生態系の一部ですが、私たちの出すゴミが藻に栄養を与えるため、汚染された水の中では異常に多く見られることがあるのです。極端な藻の増殖は海洋生物に悪影響を与えますが、フロリダの赤潮は特に悪い影響を与えているようです。

通常の藻の繁殖と同様、この小さな単細胞の藻が突然大量発生すると、魚などの生物を殺してしまいます。なぜなら藻が死ぬと、それが特定のバクテリアに食べられ、そのバクテリアが水中の酸素を使い果たしてしまい、他の生物が呼吸するのに十分な酸素を得られなくなってしまうからです。それに、直接魚などの生物のエラを塞いでしまうので、窒息死させてしまうこともあります。

しかし、フロリダの赤潮は通常の赤潮より危険なのです。なぜなら、そこにある藻はブレベトキシンという神経毒を出すからです。その神経毒は細胞のナトリウム通路を開き、筋肉を異常に収縮させ、免疫システムに異常をきたします。

それで、魚や貝が意図的に、またそうでなくてもその藻を体内に取り入れると、その体は毒でいっぱいになります。もちろんそれは魚や貝にとってもよくないことですが、人間にとってもよくありません。なぜなら、もし藻を取り込んだ魚が生き残ったとしても、人間がその魚を食べるのは危険になるからです。

私たちは魚を食べるのが好きなので、それは問題です。その毒は無味無臭で、熱にも酸にも強いので、その魚が汚染されているのかを簡単に知ることはできませんし、通常の調理で解毒することはできません。それゆえ、今のような大量発生が起きている間、政府は通常地元の貝類の流通を禁止するのです。それに、汚染された海鮮物を食べることだけが、藻の大量発生が私たちに与える害ではありません。

赤潮のせいで救急病院行きになる人もいる

ブレベトキシンは煙霧質化することができるのです。海上近くの波の動きが脆い藻を分解するので、藻の中にある毒が空気中に放出されるのです。それを吸ってしまうと、それらの毒素は呼吸器系に影響を与え、目、鼻、のどがチクチクヒリヒリしたり、咳が出たり、呼吸がゼーゼーしてきます。

私も以前フロリダに住んでいて、これを経験したことがあります。不快でした。まるで誰かが自分の近くでメース(香辛料)をスプレーしているような感じでした。喘息持ちなどの呼吸器系に問題がある人は特にこの状況は危険です。

赤潮が原因の人間の死が報告されてはいないものの、赤潮のせいで救急病院行きになる人はいます。幸いなことに、そのような症状は一時的なもので、海岸から離れればすぐに収まります。ただ不快ではあります。

不幸なことに、海洋哺乳類や亀は有毒な空気や、食べ物に含まれる毒から逃れることはできません。今年、この赤潮のせいで何百匹の亀、何十頭のマナティー、何千何万匹の魚、イルカ、鳥、そしてかわいそうな一頭のジンベイザメが死にました。

このように動物たちが死んでしまうのは非常に辛いことで、特に影響の多かったウミガメはすでに絶滅危惧種に指定されています。マナティーはちょうど去年、絶滅危惧種からレッドリストに移されたところでした。今年の赤潮は特に悪く、フロリダ南東の海岸160キロ以上がすでに影響を受けています。

科学者たちは未だになぜこれほどまでにひどいのか、原因を究明しようとしています。赤潮は現在毎年見られる現象です。そして何世紀も前にも見られたとの記録もあります。ですから何も今に起きた話ではないのです。

通常赤潮は15から65キロほどの沖合に、夏の終わりころから秋の初めに見られ、そのままずっと沖合にとどまることもあります。通常は何ヶ月かでなくなります。しかし、今回の赤潮は9ヶ月以上前に始まり、収まる気配はありません。

過去には何年も無くならなかったこともあり、ずっと見られるということは新奇なことではありません。しかし、藻が増えるのに、何が原因となり、時には継続し、時にはなくなるのはなぜかという点に関して、未だに全くわかっていません。

赤潮をなくしたりコントロールする方法は見つかっていない

インターネット上ではさまざまな推測がなされていますが、特に支持を得ている説は、フロリダ州のオキーチョビー湖の汚染された水によるものだという説です。オキーチョビー湖の水は今年の夏に川に流されるようになったので、今年の赤潮はそれが原因だというものです。

しかし専門家はそれについて、赤潮は湖の水が流されるようになる前から発生していて、発生場所も川が海と交わる地点から遠すぎるという点を指摘しています。実際、研究では陸での汚染と赤潮の連発との関連について全く解明することができませんでした。赤潮は沖合のずっと遠くから始まっているので、汚染が主な要因であるとは考えにくいのです。インターネット情報、残念でした。

オキーチョビー湖の水に関しては、それが藻に様々な余分な栄養を与えていて、岸から近く、大量発生の原因の一つになっていると言えるかもしれません。そのせいで、赤潮が未だに続いているのかもしれません。

それにしても、それだけが原因であるとは考えられません。気候変動による暖かい水が今年の赤潮をひどいものにしているとも考えられます。この赤潮の藻や他の藻も、暖かいものを好む傾向にあるのです。

それに、去年のひどいハリケーンも現在の状況を引き起こしているかもしれません。過去に起きたハリケーンは、養分を沖合に運ぶことにより赤潮に栄養を与えたことがあるからです。科学者の研究も、今年の赤潮の原因に関しては、集めたデータと去年の状況と現在の状況を比べてみないとよくわからないとのことです。

しかし、この異常発生はしばらく続くものと思われ、来年まで続く可能性もあるとのことです。つまり、死んだ動物たちが引き続き赤潮発生地の海岸に打ち上げられ続け、すでにツアー客を失っている地元のビジネスも引き続き大変な思いをすることになるのです。

今のところ、研究者たちは赤潮をなくしたりコントロールしたりする方法を見つけていません。いずれにせよ、藻とそれから生じているブレベトキシンの両方を処置しなければなりません。ですから、今、私たちにできることは、みんなのためにこの赤潮が早く収束するように祈り、生じている間にそれについて研究するべきです。