ジャンクフードは脳をハックする

ジャンクフードは健康に悪いとわかってはいても、おいしいですよね。時には無性に食べたくなることがあります。研究者たちは長らく、なぜジャンクフードにこれほどの抗いがたい魅力があるのかを調べてきました。

学術誌『Cell Metabolism』に掲載された論文によりますと、その秘密は脂肪と炭水化物の双方を含有していることにあるようです。いや、僕は大好物ですけどね!

研究によれば、脂肪や炭水化物が含有されたスナックを摂取すると、脳内の報酬系のシステムが活性化されることがわかっています。脂肪と炭水化物の双方が含有されていれば、なおさらです。ですから、ミルクセーキとフライドポテトを一緒に食べたくなりますし、ミルクセーキにフライドポテトを浸して食べるのは至福なのです。

そのように感じるのは、何も皆さんだけではありません。ジャンクフードは脳をハックしてしまうからです。

コンボ食品の影響力

この現象についてはこれまでにも細かな実例がありました。例えば、マウスのエサとして、脂肪のみもしくは炭水化物のみを与える場合、体重は変わりませんが、脂肪と炭水化物の双方を投与した場合はぶくぶくと太ってしまいます。脳内のどのような仕組みでそうなるのか、もしくは人間の場合はどうなるのかは、あまりよくわかってはいません。

さて、ドイツとアメリカの神経学者と生理学者が、「食べ物オークション」実験を実施しました。被験者たちが、脳の活動をfMRIで測定されたまま、好きなスナックに「入札」するというものです。

スナックの種類は多岐に渡り、主に炭水化物から成るものと、脂肪から成るもの、双方を含有するものの3種類に分けられました。それぞれのアイテムは、同じエネルギー量のカロリーで統一するために、大きさが調整されました。

さらに研究チームは、実験材料となる食品はすべて一般的によく知られており、以前の実験でも好まれていた物とし、グループの食品の嗜好が偏らないようにしました。

ところがそういった配慮にもかかわらず、被験者たちが入札し続けたのは、チョコレートチップクッキーやチョコレート・バーといった「コンボ食品」であり、これらはナッツやチーズ、クラッカーといったものよりも人気がありました。

この150年で変わった、栄養の摂取方法

このように、脂肪と炭水化物の両方を含有した食品を好む傾向は、脳内の報酬系を司る線条体の上部などといった部位の反応と関連があります。

研究者たちの推論では、脂肪と炭水化物には、それぞれ異なる報酬系が反応します。「コンボ食品」を摂取すると、二つの報酬系が同時に反応を起こし、この報酬系の同時反応が脳のキャパシティを超えてしまうのではないかとしています。そして我々の祖先を見ると、これには十分に説得力があります。

人間には、その時々で手に入れることのできる食品が一種類のみである時代が非常に長く続きました。ある日の食事は脂肪分のみ、またある日の食事は糖分を豊かに含むハチミツやベリーといった具合です。自然に存在する食品で、炭水化物と脂肪分とを同時に含むものは、非常に限られているためです。太古の人類には、他に選択肢はありませんでした。

やがて農耕・牧畜が始まると、人間が複数の栄養素を摂取できる食事をすることは比較的容易になりましたが、一品で何種類もの栄養素からカロリーを摂取できる食品を製造できるようになったのは、直近の150年間程度なのです。

炭水化物と脂肪のコンビネーション

人間の脳は、進化の過程の大部分において、脂肪分と炭水化物を含む食品の栄養価を推量することがありませんでした。この研究では、人間にはそのような推量が極めて不得意であることも明らかにされました。被験者に、自分が入札したスナックのカロリーを推量してもらったところ、炭水化物との「コンボ食品」については失敗することが多かったのです。

研究ではさらに、脳の底部に長く延びる紡錘状回という部位が、そのような推量で重要な役割を果たしていることが明らかになりました。

人間には炭水化物を含有する食品のカロリーを推量することが難しく、炭水化物と脂肪のコンビネーションにより大きな報酬を感じるのだとしたら、それはまわりまわって、僕が職場への差し入れのドーナッツを食べないよう我慢するのがつらい理由を説明することになります。

ドーナッツを差し入れするなとは言いませんが、要はとてもつらいのだと言いたいのです。だっておいしいのですもの。あまりおいしくなくても、ついつい食べてしまいます。

研究者たちはいずれ、この研究結果を用いて、過食や肥満のしくみを解明するかもしれません。さらにはジャンクフードにまみれた環境に暮らす現代人にとって、より健康的な食品を選択できる手段を見出してくれるよう願ってやみません。

バオバブの木の枯死

さて次の話題は、なんとも不思議なことに、炭水化物と脂肪を豊富に含有する、自然界の珍しい食品についてです。

アフリカのバオバブの樹は、でんぷん質であり、脂肪分の多い種子を持つ果実を実らせます。つまり、自然界における一種のジャンクフードということができますが、繊維質とたんぱく質をも豊富に含むため、非常にヘルシーなものです。

さて困ったことに、今週『Nature Plants 』誌に新たに掲載されたリポートによりますと、人間に何千年もの間、食料を供給してくれてきた樹齢の高いバオバブの大木の多くが、原因不明の枯死を遂げているというのです。

このたび国際研究チームが、地球上に分布する60本のバオバブを調査し、樹の健康状態とサイズ測定、樹齢の推定を行いました。樹齢の測定と聞くと、単に年輪を数えればよいのではないかと考えてしまいますが、バオバブの場合はそうではありません。バオバブは、生育する際に複数の幹部を発生させることがあります。これらの幹は時に融合し、単体に見える幹を構成します。

現存する最古の樹木

さらにその内部は空洞です。こういった複雑な要素が、樹齢の測定を極めて困難にしています。バオバブの構造は複雑怪奇で、年輪はあまり当てにはならないのです。

そこで研究者たちは、独特の放射性炭素年代測定法を導入することにしました。この方法では、樹木の複数の部位から少量のサンプルを採取し、さまざまなタイプの炭素原子量を測定して、その年代を測定します。

研究チームは、多くの樹の樹齢が1,000年以上である事を明らかにしました。中には、樹齢が2,500年を超えるものもありました。こうして、バオバブは地球上に現存する最古の樹木の一つであることが判明したのです。

ところが、思いがけなくも恐ろしいことに、最古の13本の個体のうち9本が、また最大の個体の6本のうち5本が枯死していること、もしくは幹の少なくとも1本が枯死していることがわかったのです。しかも、枯死は直近の12年内に起こっていました。

この原因はいまだ不明ですが、気候変動が原因ではないかとされています。気温上昇と乾燥が進んだため、バオバブはその巨体を維持するために十分な水分を得ることが難しくなったのではないでしょうか。この推定を確かめるためには、さらに研究を進めることが必要ですが、このユニークな樹を永遠に失わないためには、究明が急がれます。