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事業拡大後、社員の半分が退職 サイトビジット鬼頭氏が味わったマネジメントの苦労

事業拡大後、社員の半分が退職 サイトビジット鬼頭氏が味わったマネジメントの苦労

司法試験をはじめとする各種難関資格試験学習サイト「資格スクエア」を運営する株式会社サイトビジットの鬼頭政人氏のインタビュー。起業当初に経験したマネジメントの苦労や、「資格スクエア」などの今後のビジョンを語りました。※このログは(アマテラスの起業家対談の記事)を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

シリーズ
アマテラス起業家対談 > サイトビジット鬼頭政人氏
2018年7月6日のログ
スピーカー
株式会社アマテラス 代表取締役 藤岡清高 氏
株式会社サイトビジット 代表取締役  鬼頭 政人 氏

起業のきっかけは、「父のリストラ」と「起業家との出会い」

アマテラス藤岡清高氏(以下、藤岡) まず、鬼頭さんが起業しようと思ったきっかけについて、教えて下さい。 鬼頭政人氏(以下、鬼頭) 起業しようと思った原体験のようなものが、2つあります。1つは、小6の時に親父がリストラされたことでした。 「政人、ちょっといい?」と呼ばれて、親から状況を伝えられ、その翌日から親父が家にいるようになったのがけっこう衝撃でした。「会社員、キツイなぁ…」と思いました。 そして、もう1つは、メルカリ創業者で、当時はウノウ株式会社代表をしていた山田(進太郎)さんと会ったことです。産業革新機構時代に投資先のデューデリジェンス(注:投資先評価のための調査)のためのヒアリングでお会いしたのですが、「凄く格好いい!」「自分もこうなりたい」と思いました。

「上手くいかなくても、折れない心の源泉がアントレプレナーシップ」

藤岡 その思いから、サイトビジット起業にいたるまでの道のりについて、教えて下さい。 鬼頭 最初は「好きなことをやろう」と考えていました。当初、一緒に起業しようと考えていたメンバーと話し、共通の趣味だった読書や旅行関連のサービスを検討していました。「本の作者に会えるサービス」とか、「現地の日本人が海外旅行を案内してくれるサービス」といったものです。 でも、こういうサービスを考えていると、必ず何かボトルネック――例えば、村上春樹さんとどう知り合うのか? 海外日本人のネットワークはあるのか?といったことが生じてきて、挫けてしまう…。所詮、趣味レベルなので、ハードルを超える気力が湧いてこないのです。「自分がやるべきこと」と思えていないところが違うのかなぁ…と感じていました。 そんな時、東京大学の各務教授(東京大学教授、産学協創推進本部イノベーション推進部長)にお話を聞く機会がありました。その時に「事業なんて上手くいかない。上手く行く事業も上手く行かない場面が多い。それでも心が折れないか。折れない心の源泉がアントレプレナーシップだ」と言われました。

好き、得意、ニーズが重なる「法律」「勉強・学習」分野での起業を模索

鬼頭 そこから「自分がアントレプレナーシップを持てる事業は何か?」と考え始めました。そして、起業には「好き」に加えて、「得意」と「ニーズ」という3つの軸が必要だと思い至りました。 自分にとって、この3つが重なる領域は「法律」と「勉強・学習」の2つだと考え、これを深掘りすることにしました。 最初は「キャリア教育」をしようと考えました。これは、自らのキャリア選びでの模索経験からです。通っていた高校の偏差値が高く、「難関攻略が可能」という意味で医学部に進学する人が多くいました。 僕も当初医学部志望でしたが、医学部=医者という職業にほぼ決まることを疑問に感じ、外交官志望に変更しました。しかし、これも当時の外務大臣の揉め事をきっかけにやめてしまいました。そして、「とりあえず法律勉強しておくか」といった感じで弁護士になったのです。 法律は結果として肌に合ったと思いますが、それを知る機会はありませんでした。「自分に向いていることを知り、選ぶのは難しい」という経験から、キャリア教育をやりたいと思ったのです。 2013年頃、女子校の先生にヒアリングしたり、伝統芸能のお店に行ったりして職業体験コンテンツを集めようとしました。 ちなみに社名の「サイトビジット」は、「sight(視点)」と「sitevisit(工場見学)」という意味を込めたものです。キャリア教育に取り組んでいた名残です。 でも、いろいろ検討した結果、「この分野はビジネスにならない」と思いました。NPOにはなりたくなかったので、他のビジネスを探すことにしました。 藤岡 そして、資格スクエアに向かったのですか? 鬼頭 いいえ。もう一段階あって、次は弁護士業に行きました。僕がいた弁護士事務所はとても良い事務所だったのですが、知名度が高くなくて「もったいない」と感じていました。いい仕事をしている弁護士=客の多い弁護士とは限らないので、弁護士と企業のマッチングビジネスを検討しました。 しかし、弁護士法72条(注:非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)に抵触する可能性があり、断念したのです。今だったらこの分野でもいろいろと考えられると思うのですが、当時はなかなか難しいかな、と感じていました。

「資格スクエア」の誕生

鬼頭 そして、資格スクエアのアイデアに至りました。僕が司法試験を受けようとしていた頃、多くの人は塾に通っていました。しかし、僕は奨学金生活で100万円もの塾費用は払えない…と悩んでいたことを思い出しました。 また、資格を取得しやすくすることは、優秀層が医者ばかり目指す歪みの解決に繋がるのではないか、という思いもありました。 藤岡 どのように「資格スクエア」を形にしていったのですか? 鬼頭 僕はウェブ業界の出身ではないですし、塾に行った経験もなく、相談できる知り合いが全くいなかったのですが、当時、産業革新機構に付き合いのあった弁理士の先生がいて、その方が偶然、資格試験学校の人気講師だということがわかりました。 僕が「資格スクエア」のアイデアの話をすると、二つ返事で「やろう」と言われ、背中を押していただくこととなりました。 もともとは3人で始める予定だったのですが、1人は家族の反対があり、もう1人は仕事が辞められず、僕1人になってしまいました。しかし、産業革新機構にはすでに辞意を伝えていたので、1人で起業することとなりました。 そうして立ち上げた当初のサイトにはロゴもなく、論文の過去問などを見放題にするというモデルでした。弁理士事務所にファックスを送って営業すると、問い合わせもありましたが、クレームの電話やメール、内容証明まで届いて大変な思いもしました。 それでも、申込みもあり、最初の有料ユーザーの方が弁理士試験に合格し、「これはいける!」と手応えを感じました。本当にうれしかったです。売上は大きなものではありませんでしたが、順調に増えていきました。

「安すぎて不安」と解約が続く危機も、テッククランチ掲載で流れが変わる

鬼頭 ところが、塾に比べると破格の料金設定が「安すぎて不安」と解約が多く、説明の為に広告を入れたものの売上に繋がらない状況に2014年頃陥りました。 そして、資本金や借入等による数千万円の資金が、あっという間になくなっていきました。いろいろなベンチャーキャピタルに資金調達依頼に行くものの、資格試験教育のマーケットサイズの小ささから断られていました。 僕自身1年間役員報酬ゼロで、預金通帳を見ては「あと何ヶ月もつか…」と戦々恐々としていました。 藤岡 資金が底を着くような状況から、どのように立て直していったのですか? 鬼頭 2015年2月、初めてテッククランチに掲載され、たくさんの方々に知っていただけるようになり、一気に売上が上がりました。 苦しんでいた資金についても援助して下さる方が次々現れ、大手パソコン教室のアビバ等との提携話も出てきました。そして、順調に業績が伸びていきました。

社員半分が退職、採用の難しさを痛感する

藤岡 事業が拡大して、新たな問題等は発生しましたか? 鬼頭 急拡大した翌年の2016年、当初は社員5人しかいなかったのですが、アルバイトも含めて40人ほどまで増え、提携等で新規事業を次々と展開していました。 しかし、採用が雑になっていたのだと思います。業界の経験やスキルがある人が来てくれると、それだけでありがたいと思ってしまい、人間性やビジョンの共感等をあまり確認せずに採用するようになっていました。 結局、翌年には社員が半分辞めてしまうことになりました。 藤岡 業績自体は右肩上がりだったのですよね? 鬼頭 業績が上がっていましたが、事業計画が達成できておらず、赤字も予想より膨らんでいました。しかし、経営層を含めて、そこへのこだわりが薄い状況でした。社員との個別ヒアリングの中で、経営陣の中で目指しているものに乖離があることがわかり、そうした乖離によって社員に誤解を与えていたこともわかりました。 そして、社員全員で同じ方向を向くことが必要と痛感したのです。

社員にも経営者視点を求める

藤岡 社員が半分になるという大変な経験をされて、その後どのように会社を再構築されたのですか? 鬼頭 まず、僕自身がやって見せようと思いました。「やっといて」ではなく、例えば、司法試験の受講相談に1日5回でも6回でも、僕自ら行いました。数字は必ず達成させる、そのためにやれることは全てやるのが仕事だ、ということを示したかったのです。 そして、「売り上げがこうで、利益がこうで」とスタッフに時間を掛けて説明し、経営者視点を持ってもらうように努めました。また、「A案とB案のどちらにしましょう? ではなく、自分で決めて、他の人を説得するつもりで持ってきて」と伝えるようにしました。 全てをやり切らせるのは難しいですが、ミーティング等でそういう場を作ったことで、若いスタッフたちが一気に育ってきたと感じています。 採用についても、僕1人で決めることは決してなく、最低2人は会ってもらい、1日インターンにも来ていただいて社員みんなで評価するようにしています。最終的に決めるのは僕ですが、社員の評価を重視しています。 そうしてボトムアップを強く意識するようになりましたが、トップダウンをしないとスピードが落ちる面もありますので、そのバランスを常に考えながら進めています。

「同じ方向をむかないとバラバラになる」反省からビジョン共有を進める

藤岡 会社の方向性やビジョン共有等はどうなさっていますか? 鬼頭 今年の春から何度もミーティングを重ねてミッション、ビジョン、バリューズを全員で作りました。ミッションは、「ともに成長し続け、未来をつくる」というものです。 これまでは多忙でしたし、きちんと利益を出す方が重要だと思っていて、こういったことに時間を割く余裕がありませんでした。 でも、「同じ方向をむかないとこんなにバラけるんだ…」ということに気づきました。僕自身、これまで弁護士や時限組織の産業革新機構に属していて、いわゆる組織らしいところで働いたことがなく、同じ方向にみんなを導くということについて認識が薄かったと思います。未熟でしたね。 起業してからの4年間で僕自身の意識も大分変わりました。ビジョンだけでは食べていけないし、利益がないと難しいですが、ビジネスだけでも皆がついてこない。思いとビジネス、道徳と経済のバランスが大事だと思います。社会を幸せにする前提として、社員に楽しんでもらう、幸せになってもらうことが必要だと今は考えています。

将来的には、法律業界の効率化に取り組みたい

藤岡 組織的な問題はあったものの、オンライン教育事業は順調に伸長していますね。 今後の展開については、どのようにお考えですか? 鬼頭 短期的には、やはり上場に耐えうるぐらいの利益を出すことです。オンライン教育事業に加え、2018年3月から人材紹介も始めましたが、こちらの収益化も見えてきました。 中長期的には、テクノロジー要素を入れつつ、法律業界を効率化できるようなことをしたいと思っています。 例えば、現状、裁判所は全て書類で提出しなければならない、つまり郵送かFAX、或いは持参しなければならないのですが、2020年から順次電子化されます。 そこで、一般の方が簡単に手続きできるような仕組み作り等に取り組みたいと思っています。法律事務所向けとしては、案件管理とその裁判書類の電子化、裁判プロセスの管理です。現在は、弁護士が全て手帳に書いて管理している状況ですので。 また、法律部門に関しては、契約書類などの保存と検索のニーズがあります。これも今は物理的に、ロッカーに入っている書類を出して調べるしかない状態です。これらを効率化したいと考えています。とくに、企業法務部門向けの取組を強化したいですね。 4年間やってきて、やはり「法律は面白い」「法律は人を幸せにできる」と感じています。これからも法律、より広い意味でのルールをもとに、社会に貢献していきたいと思っています。 法律は一見すると難しい分野ですが、深く理解していくと非常に興味深いです。法律を知っていることで、幸せにも不幸にもなります。法律を駆使することで自分の身を守ることができます。法治国家というのは、人治国家よりも永続性が高いと僕は考えています。 法律という旧(ふる)く、重いものを使って、新しく、楽しいビジネスをしていきたいです。

会社とともに急成長できる面白さ

藤岡 最後に、サイトビジットに参画する魅力について教えて下さい。 鬼頭 身体作りで例えると、1回筋肉と脂肪がつき、脂肪が落ちて、もう1回また太らせていく段階なので、急成長を味わえるという面白さはあると思います。そして、会社の成長に伴って個人も成長できると思います。 弊社に来てくださる方のモチベーションとして、「大きい会社だと自分で出来る範囲が狭いから」という気持ちがあるような方はとてもフィットすると思います。「何でもやる」というスタンスですので、エンジニアでも、ビラ配りをしてもらったりします。それが「楽しい」と思える方には最適の会社です。 藤岡 本日は素敵なお話をありがとうございました。

  
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