本気で妖精をつくろうとするスタートアップ

堀江愛利氏(以下、堀江):例えば、プレゼンをいろいろ見てきて、話が伝わるということと、心に残るプレゼンというのはまた違うと思うんですよ。何が一番(の心に残る)要素になりますか?

澤円氏(以下、澤):やっぱり、その人がどのくらい真剣に生きているかが、伝わるか伝わらないかですよね。一番響くのがその人の失敗談だったり、すごく悔しい思いだったりします。それが作られた言葉じゃなくて、その人の言葉として出てきた時はグッときます。

日本でスタートアップを立ち上げている連中に、何社かメンタリングをさせてもらっているんですけど、やっぱりクレイジーなんですよ。どこかおかしいんです。どこかおかしいし、場合によっては絶対に笑われるんですよ。だけど、そいつらは真剣なんですよね。1つ、おもしろい会社があるんですよ。いくつかあるな。どの変態がいいかな。

(会場笑)

:フェアリー720(ナナ・ニ・マル)だったかな。あのフェアリー。「妖精をつくりたい」と真剣に考えているスタートアップがいるんです。妖精ですよ、妖精。

(彼らが)何を考えたかというと、最初は柱を3本立てて、紐をそこに通して、そこになにかぶらさげて、指向性の(ある)マイクを付けて。それに喋りかけると、紐についたものが喋ったほうにビュンッビュンッと来るというホーンカップをつくって、「これ、……妖精?」と聞いたら「妖精です!」

(会場笑)

:「いいけど……。妖精かぁ……」。かたちというか、恰好はボールだったんですけど、マイクとカメラがついているのかな。呼ぶと、すっごいスピードでがんっと(こっちに)来るんです。

堀江:はっはっは(笑)! 怖いですね!

:「いや、まだプロトタイプなんで」とか言うんですよ。「なんでこれつくるの?」と聞いたら、「だって、妖精が肩に乗る生活とか素敵じゃないですか」という答えで、もう返す言葉がないんですよ。

(会場笑)

:まあーー素敵だよね……。ちなみに本気で真剣にやってた。(それは)元自衛官のすっごいごっつい男2人で真剣につくっていて、しばらく経って、また会いに行ったら「ちょっと進化したんですよ!」と言って、スマートフォンになっていて、もっと危なくなってた。

(会場笑)

:ただ、動きはちょっと緩やかになっていました。たぶん、それをやっているうちに技術が進んでくると、ホログラフィックで表現できるようになってきたり、何かデバイスをかけることによって、(表現の幅を)広げたりできるようになる。

それは、やっぱり真剣なんですよね。それによってハッピーになる人間が、世の中にたくさんいるはずだと本気で考えてる。どこかで変わるかもしれないけれど、それを言われると、こっちとしては応援せざるを得ないんですよね。

「こいつら、本気でアホだな」とは思うんだけど、それだけ時間を突っ込んでやっていると、やっぱりこちらも真面目に聞きますからね。

どんなアイデアでも実現することで次の展開に繋がる

堀江:なるほどね。私もおもしろい話、1つしていいですか?

:してして!

堀江:Shit Mapというものがあるんです。

:何?

堀江:シエット。

:シエット?

堀江:……うんち。

:だよね(笑)。

堀江:シエットマップというものがあって。サンフランシスコにはホームレスがすごく多くて、そういった人たちが路上にしてしまうんですよ。それをぜんぶ、リアルタイムで、どこにそういうものがあるかというアプリを作ろうとしているんです。「そんな無駄なこと……」と思うでしょ。それが、マップができると、だんだんブラウンになるわけですよね。

(会場笑)

:ブラウン……リアリティーだな(笑)。

堀江:この角は行っちゃいけないとか。本来はツアーリストのために作られたんですけど、自分の持ち家とそのブラウンが近くなると「家の価値が下がるのでやめてくれ」という話が出て、ついには脅しまで入ってきたんです。

でも、いかにホームレスが困っているかということもすごくリアルに見えるので、今度は街のほうがそれをベースにして、クリーナーを出すんですよ。くだらないアイデアだと思ったところがリアルになったことで、「解決しないと」と思う人が現われたり、それですごく困っている人が浮き彫りになったんです。

だから、「自分のアイデアはバカだな」とか「笑われる」と思っていても、やってみるとそこからピボットというか、いろんなアイデアが出てくるので、おもしろい話だなと思ったんです。

:結局、それは誰かが行動したから、そうなったということだもんね。

堀江:そうですね。

:おもしろい。

イノベーションをイノベーションすることはできるのか

:ちなみにスライド、どれか使いましょうか。

堀江:そうですね、今のシリコンバレーの状況ということでは、どれにしましょう。じゃあこっちに。シリコンバレー……。シリコンバレーはおもしろいところではあるんですけど、みなさん、「How are we innovating?」

イノベーションというのは、3、4年前はアクセラレーターというものが世界中で360件ありました。今の時点では、もう580件です。

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