象牙の塔からAIを解放する

孫正義氏(以下、孫):Eric率いるPetuumにはすでに投資しており、我々のソフトバンクファミリーの一員でもあります。Erik, Are you here? OK, Please!

(会場拍手)

Eric Xing氏:こちらに来ることができて、大変嬉しく思っております。PetuumのCEOです。私はカーネギーメロン大学において、コンピューター科学の教授を務めており、AIの研究をしています。PetuumのチーフサイエンティストでCEO、そしてファウンダーでもあります。

Petuumには1つのミッションがあります。人工知能をすべての人たちに提供する。象牙の塔からAIを解放して、本当の意味で使い勝手の良いツールにするんだということです。そして、日々の会社の事業の中で、本当に戦場で使える重要なツールになるようにしたいと思います。すべての会社がビックデータを使ってさまざまな意思決定をしたり、予測をしたり、自動化をしたりすることができるようにしたいと考えています。

ということで、ARMと同じように、私たちがAIエンジニアリングパートナーとして、今回参加することができたのを、非常に嬉しく思っています。

人間に代わり、AIが重要な役割を担う

私の技術は、世界経済フォーラムからも賞をいただいたということで、わかっていただけるんじゃないかと思います。このテクノロジーパイオニア賞は、Google、それからPalantir、Airbnbなどにも送られた賞ですが、今年は私たちが受賞いたしました。

孫さんがおっしゃっていたように、AIは、今非常に重要になってきています。AIのテクノロジーは、いろいろなところで使われているんですが、それは統一されたものではありません。AIのパフォーマンスが、例えば、ゲームで人を超えたと言われるわけですが、AIがなぜ魅力的なのかと言いますと、いろんなことを人間がやっていく上で、それが本当に重要な役割を担いそうになっているからです。

例えば、ロボットですが、AIがこの中に入ることによって、人間が危険な仕事であるとか、きつい仕事をしなくて済むようになるかもしれません。医療の分野においても、AIが医師たちの生産性を上げ、意思決定を支えています。エネルギー・環境に関してもそうです。AIを使うことによって、間接費をはじめとしたコストを下げることができます。

製造業においても、AIが品質を改善したり、予測・保守などを強化することができるわけです。AIは我々にこれだけいろいろな夢を持たせるわけですが、実際にAIの革新といったものを自分たちの会社の中で感じている人は少ないと思います。

AIはつくれても、簡単には買えない

表面上、AIは、本当に素晴らしいものに見える。本当にシンプルにAIが使えるのかもしれないと思っている人たちが多いですが、実はAIを使いこなすためには、膨大な量の、本当に大変な仕事が隠れているわけです。

ただ単に、アルゴリズムをトレーニングするというような話では、とても済みません。まずデータを分析しなければなりませんし、実際に使うシナリオを考えながら、それに対応した演算をやっていかなければなりません。そして、モデルであるとか、エンジニアリングといったさまざまなことをやっていかなければいけません。

AIのソリューションを作っていくためには、これだけの作業が必要になるわけです。そして、本当に才能のある人たちやインフラも必要ですし、時間もとてもかかります。これだけの資本や人材を持っていれば、AIを1社でできるということになるわけですが、今、簡単にAIを買うことはできません。

AIには非常に原始的なプロトタイプが出てきています。しかしながら、そのスケールアビリティやメンテナンスなどは、いろんな意味でまだまだ使い勝手のいいものではありません。「こういったプロバイダがAIです」と出したとしても、それをただ単に使うというところまでは進化していない。そこを我々Petuumは変えたいと思っているわけです。

分野特化型のAIが主流の現在

私たちの使命は、AIを産業化すること。そして、必要な基本的な機能を全部AIに入れて、多くの人たちが簡単に使えるような、例えば、まるで建築現場において、ボルトやクレーンといったものの一部としてAIを使うことができるようなものを作っていきたいと考えて、現在エンジニアリングのプリンシプルをやっております。

多くの企業は、AIを使っていく上で、まだまだ問題があるわけです。しかしながら、土木工事でいろいろな建築が簡単にできるような、そういったAIの使い方ができたらいいなと思っています。

今日のAIのテクノロジーは非常に脆弱で、しかも非常に高価で、そして多くの人たちが使いこなせるものではありません。これは、本当の意味ではエンジニアリングであるとか、産業の製品とは言えないと思います。どちらかというと、その分野に特化した職人芸のある人にしか使えないのが(今日の)AIです。

それに対して、私たちの会社はAIを、まるで標準化されたビルディングブロックのように使いこなせるようなソリューションにしたいと思っております。より持続可能な、そして堅牢なAIのソリューションを提供したいと思っています。まるで家を作っているように。家を作るときには、もちろんAIはいろんなサイズ、そしていろんなタイプのものが出てくる。そして、それをうまく自分のニーズに合わせて、組み合わせて、そして作り上げていけるようにしたいと思っています。

標準化されたソリューションを提供したい

これは今のAIとは違います。今のAIは、非常に深い、そして古い職人芸を使いながら、やっと1つの家を作っているというようなものになっているからです。そうではなく、AIを業界のどこにでも見えるようなものにしたいと思います。

私たちの会社「Petuum」は2年前に作られたばかりです。しかし、そこで仕事をしている人たちは、本当に才能のある人たちばかりです。この技術の分野のリーダーということで、世界中でもNo. 1として目指される、さまざまな大学の研究者であったり。プロダクションチームも、すでにこの分野においてトップと言われている企業で経験を積んだエンジニアたちです。

そして、研究者たちは、カーネギーメロン大学を卒業した人たちで、たくさんの賞を受けた人たちもいますし、また非常に難しい工学上の課題を解決してきた人たちでもあります。

AIのソリューションとして私たちが提供するものは、標準的なビルディングブロックとして使えるようなものですが、だからと言って、パフォーマンスが低いというわけではありません。

そういった組み合わせをするというだけでも、実はとても難しいことです。例えば、非常に有名な大学、企業といったもので標準化されたソリューションを提供するとしても、非常に難しくなるわけです。

ひとつの問題を解決するために開発されたわけではない

例えば、医療レポートを作るということを考えてください。そこにおいても、私たちの成績は非常に大きく伸びています。医療カルテやレントゲン写真といったものに関しても、それを実際に使えるようにするために、コンフィギュレーションやセキュリティをはじめ、いろいろなものが必要です。

プロトコルを理解して、ビルディングブロックの一部として使うためには、実はブラックボックスのアプローチではダメだということになります。1つではなく、多くのアプリケーションが使われています。医療分野だけでなく、それ以外でもたくさん使われているんですが、ここに出しているのは医療の例です。

Petuumの非常にユニークな点は、手作業で作られたハードウェアではないということです。1つの問題を解決するためだけに開発されたものではありません。

汎用的なAIとして作られたものです。そしてプラットフォームの上で、自分たちの持っているニーズにあったかたちで使えるようにしようというものです。そして今の現状や業界にもっとも合ったかたちで、提供されるわけです。

ハードウェアは、いろんなタイプのデータを使ってさまざまなエンジニアリング上の事業ができるというだけでなく、どのようなタイプにでも対応しております。

ここにあるように、クラウドは当然ですが、例えば、データセンターとかクラスターといった通常の、これまでのハードウェアに対応しているわけです。

そこで今、私たちは非常に包括的なライブラリやインベントリを作ろうとしています。データ処理から機械学習、AIのアルゴリズム、そしてファンデーション。システムの調和・展開・管理、いろんなことを全てやろうとしています。いろいろな業界において、このソリューションを使えるようにするためです。非常にホリスティックでユニバーサルなプラットフォームを提供したい。

グローバルなエンジニアリングパートナーに

私たちのテクノロジーは、自動運転のソリューション、セキュリティ、品質管理といったものすべてに使うことができます。同じプラットフォームで、ポートフォリオの最適化、書式の取り込み、医療診断といったものをやっていくこともできます。

そして、同じAIプラットフォームで、エッジデータ、IoTデータを使って予知保全、構造物のメンテナンス、エネルギー、環境といった問題を解決していこうとしているわけです。非常に大きな可能性を持っているということで、私たちはワクワクしています。私たちのシステムは非常に堅牢で、すべてのAIユーザーに提供することができるものです。

Petuumは、まだできて2年です。ですから、オフィスはサンフランシスコとピッツバーグの2つの都市にしかないわけですが、もう私たちは、このビジネスを世界中に拡大しようとしています。アジアにもそうです。そして、とくに日本に対しては、非常にさまざまな可能性があるということで、大変興味深く思っています。日本と言えば、世界でよく知られている自動車、製造、電子機器の会社があります。Petuumは、こういった企業と手を組むことによって、大きなメリットを提供することができるでしょう。パートナーシップを組むのを、楽しみにしています。まとめますと、PetuumをAIのグローバルなエンジニアリングパートナーにしていただきたいと思っております。

どうもありがとうございました。

(会場拍手)

:Ericはカーネギーメロン大学のAIの教授として、大変有名な研究成果を出していて、(かつて)学生だった彼の生徒さんたちが、いろんな有名な会社で、AIの技術責任者として働いています。

そのEricが、ついに自分で会社を起こし、カーネギーメロン大学の教授陣や自分たちの生徒を一気に集めました。

みなさんが自分の会社でAIの開発をするときに、彼の会社は、その開発のためのツール、開発環境あるいは開発のコンサルティングといったものについて手助けし、一気に生産性を上げてくれます。