あなたが年収1000万以上になれない理由

古賀彌奈子氏:古賀です。よろしくお願いします。先ほど、富岡が話したAWSの話とはお題がだいぶ変わりまして、IT業界の少し生々しいテーマ「あなたが年収1000万以上になれない理由」ということで話をスタートさせていただきます。

こちらの「579.2万円」という数字は、東京都に住む36.9歳SEの平均年収になります。

東京都に住む35歳〜39歳の平均年収は433万円。どちらも男女の平均年収になります。

なので、「ITエンジニアは意外とお金持ち」と認識しておいていただければと思います。

次に、こちらの「6.61パーセント」という数字は、日本国内の就労人口に対する、年収1000万円の割合です。こちらは男性だけの割合で、女性を入れると4.28パーセントになります。

みなさん、ここでも幸せになっていただきたいのですが、6.61パーセントの場合、計算すると14、15人に1人は年収1000万円以上がいることになります。

こちらの数字を頭に入れていただき、次に進んでいきます。

東京都のSEは何歳で平均年収のピークを迎えるか

こちらは東京都のSEの年齢別平均年収グラフです。

星印が付いているところがポイントなのですが、こちらが年収のピークです。

実は私、今日もう少しみなさんお若い方かと想像していたんですが、ある一定の社会人経験がおありになる方々が多いかと思いますので(笑)、このような年収のグラフを描くということは経験値からおわかりになっていらっしゃるのかなと思います。

要は、65歳で年収のピークを迎えるのではないということです。

それともう1つ、ここで言う年収のピークは平均700万円未満です。

このあと早期退職や役職定年などがあり、徐々に年収が下がっていくことが数字で見てわかると思います。

今日は「あなたが年収1000万以上になれない理由」という、あまりよくないテーマをつけているのですが、年収のピークを45歳から49歳の間で迎えるということは、みなさんが一生懸命会社で働いている中で、45歳以降はすでに勝負がついているということが1つ言えると思います。

その次に、勝負がついているということは、すでにその前に勝負しているということになりますので、30代後半から40代前半が勝負の時期だということです。

そうなってくると、必然的に「キャリア形成に重要な年代は30代である」と言えると思います。

もう1つ重要なのは、平均年収以下も存在するということです。

これはSEだけに言われる話ではなく、非常に一般的な社会の構図だと考えておりますので、まずはこちらのお金の話をベースとして頭に入れていただき、次に進めさせていただきます。

次に、「みなさんが選ぶ未来がどうあるか?」というところです。みなさんは、大きな選択ができると思います。年収1000万円以上になれるのか、あるいは先ほどお伝えしたとおり、平均年収以下なのかもしれません。

「みなさんはどちらですか?」というところが、これからお話しする、みなさんが選ぶ未来によって決まってくる、みなさんに選択が預けられているということだと思います。

年収格差を生む「技術マジック」とは何か

「そもそもなぜそんな差が生まれるのか」という話ですが、天才的な才能を持っている人は年収がすごく高くて、そうではない人は年収が低いということは基本的にないと思います。

私はIT業界で20年ほどマネージャー等をさせていただいているのですが、一番よくある話として、私が勝手に名前を付けている「技術マジック」がこの差を生んでくるのかなと思っています。

どのような話かというところで、みなさんちょっと、エンジニアになりたての若いころを想像してみてください。

おそらくこのような感じだったかと思います。

エンジニアになりたてのころ、基本的にIT用語はわからないので呪文です。学校で勉強していればそうではないと思いますが、多くの方が未経験で業界に入ってくるので、基本的には先輩が何を言っているかわからない。1つ調べたら、またさらに調べなければいけなくなるという状況だったと思います。

後々になってみるとそうでもなかったかもしれない先輩が、そのときは神様のように思えたと思います。みなさん「先輩はすごいな、難しいことを言ってるな」と感じたのではないでしょうか。

どうですかね? そんなことないですか? 最初から「俺イケてる!」と思われていたかもしれないですけど(笑)、最初に必ず「まず技術知識がなくては、絶対に仕事ができない」と思うと思います。

新人のときに「俺は技術がなくても生きていけるぜ」と思う方はあまりいないのかなと思っていて、まずこのように思うと思いますし、先輩からも「お前しっかり勉強しろよ」「ちゃんとやっとかないと食っていけないぞ」と刷り込まれると思います。

なのでみなさん、「技術知識がなくては、まず仕事できない!」というスタートラインに立たれると思います。

それがどう変わっていくかというところなのですけれども、「技術知識がなくては仕事ができない」。間違ってないと思います。そのとおりだと思います。

SEなのでエンジニアなので、知識がなくては仕事はできないと思います。

それをすごく思っているので、新しい技術や自分が求める技術領域の知識の習得に強いこだわりを持って勉強して、新しいものを学んでいきたい、知識を得ていこうと考えられると思います。

なのでみなさん、技術知識習得を優先して時間を使っていくと思うのですが、何も悪いことははないと思います。

知識が増えてきて、経験を積んでくるとできることが増えます。そして、評価も上がっていくので、最初はすごく難しかった仕事が楽しくなってきます。ここまではごく普通の話かと思います。

先ほどの「なぜそんなに差が生まれるの?」という話のところで、ここがもっとも重要な要素なのかなと思っているのですが、実はこのあたりから「要求されている仕事ができていない」ということに気づいていない場合があります。

技術者の目標と顧客の要求にギャップが生じる

この流れの中で、何が起こっているのかを説明していきたいと思います。先ほどの絵を少し小さくしました。赤いほうが仕事をしているエンジニア。青いほうがいわゆる仕事をしている環境で「これをやってくれ」「あれをやってくれ」と要求を出すほうです。

最初にみなさん必ず「仕事ができるようになりたい」「先輩のようになりたい」と考えて、まず「仕事ができること」に目標を置かれていると思います。

要求側は最初なので、「構築をやってほしい」「開発をやってほしい」という技術的な作業のリクエストを出しているはずです。

この時点では何も問題はありません。みなさんそれに向かって技術知識を蓄え、がんばって前に進もうとなっています。

だんだん時間が経過していくときに、みなさんに目標の変化が現れて、要求側にも期待の変化が現れてきます。

ここでの一番マズいパターンとして、いわゆる手段が目的化するというかたちで、「仕事ができること」から「技術を習得すること」が目標になってきます。

要求側はどうなっているかというと、期待して「できるじゃん」と思っているから、どんどん期待することが変わって、広がっていきます。

もちろん「技術的なことをやってくれ」と言うこともありますが、「プロジェクト管理をやってくれ」とか「顧客調整をやってくれ」とか「ビジネス要件をまとめてくれ」とか、いろいろなことがあると思います。そのように要求が変化してくるということで、このあたりでギャップが生じてきます。

実は要求されていることが変わっていて、その仕事については「あれ? 期待はずれなんだけど」という状態が発生している可能性があるということです。

「技術マジック」と「リアルな世界」の違い

先ほど言った「技術マジック」というところなのですが、みなさん最初は「技術知識がなくては仕事ができない」と思っています。

ここに技術というマジックがかかるとどうなってくるかというと、いつの間にか「技術知識があれば仕事はできている」と頭の中で変換してしまっているんです。

なので「こんなに知識があるから大丈夫。こんなに広いことを知っているから仕事ができている」と変わってきます。だんだん見えなくなってくるんですね。

さらにもう1回マジックがかかるとどうなってくるかというと、「僕の技術知識にお金を払ってくれているんだ」と頭が変わってきます。そうすると、いよいよ現状が見えなくなってきます。

わかっている人とわかっていない人の間には、どんどんギャップが生まれて、差がついてきます。

今の話をまとめます。

まず「技術マジック」と「リアルな世界」ということで、(技術マジックでは)技術知識習得がゴールになっています。リアルな世界はそうではなくて、成果を出すことがゴールに設定されているはずです。

次に、(技術マジックでは)「技術知識にお金が払われている」ということですが、(リアルな世界では)「いやいや、仕事の成果にお金を払っている」となります。

最後に、(技術マジックでは)「技術知識の差が報酬額の違いだ」ということですが、みなさんが出す成果の価値の違いが報酬額の違いです。

実際に書くと「当たり前だよ」「みんなわかってるよ」となるんですけど、日常的に技術を習得して、それが仕事になって、その成果でモノを作り出しているエンジニアのみなさんの多くの中で、この技術マジックが刷り込まれている方々がいらっしゃると感じていて、本来すごく優秀で、1000万でもそれ以上でも得られる可能性があるにもかかわらず、違う方向性に行ってしまう方々を多く見てきています。

ぜひみなさんに1度、釈迦に説法かもしれないんですけれども、「今、みなさんはどちらですか?」ということを自分の気持ちに問いかけて、考えていただきたいと思っています。

値段は払う側の考え方(価値)で決まる

話が変わりますが、この中でタバコを吸われる方は何人くらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

やはり少ないですね。この値段がわかる方、何人いらっしゃいますか? 答えは470円です。

なぜマルボロメンソールの絵を出したのかというと、私もこのご時世に負けて禁煙をしました。私はこのタバコを吸っていたので、値段がわかるということが1つ。

それともう1つ、タバコの値段の特徴なのですが、例えば水のようなものは売る場所、量によって値段が変わってくると思います。

定価が120円だとしても、ドンキホーテでまとめて買うとなると、値段がぜんぜん変わってきます。なので、値段があまり変わらないタバコを例に出してみました。

タバコの話をしたいのではなく、値段はいったい誰がどうやってつけているのかという話をしていきたいですけど、値段の付け方を1回タバコで考えていこうと思っています。

売りたいと思っているのがタバコメーカー。買いたいと思っているのが市場。しかし、値段は払う側の考え方(価値)で決まってきます。

今は470円です。しかし例えば、「マルボロメンソールがもう世の中に10個しかない」という話になってきたら、タバコを吸う・吸わないということは関係なく、すごい値段がつく可能性があります。オークションでスーパースターのよくわからない手袋にびっくりするような値段がつくのと同じ感覚です。

逆に言うと、「もうこれは誰も欲しくない」となると、定価は470円なのですが、1円でも買いたくなくなるはずです。「470円出すから引き取ってくれ」という話すら出てくる可能性があります。

基本的に、値段はこのように決まっていきます。

もちろん違う複雑なシステムがあって、値段を決めるということはありますが、考え方として、値段は払う側の価値観で決まっていくというところを押さえてください。

年収も払う側の考え方(価値)で決まる

同じように考えると非常に簡単なのですが、みなさん年収のときだけ少し違う考え方をしてしまうんですね。

年収も払う側の考え方(価値)で決まっていきます。外側に相手側の考えと、内側に自分側の考えがあって、価値のあるものが真ん中にあります。

例えば、エンジニアのみなさんが「価値のあるものを技術知識だ」と置いているとします。しかしながら、払う側の考えは「プロジェクトの成功である」と価値を定義していた場合に、合意できていない状態が発生します。

仮にエンジニア側が「技術知識が大切なんだから、価値が強いんだから」と言ってグッとそちらを押し出したとすると「それはそれでいいですよ」と受け入れられるのですが、結果として必要としなくなる。もしくは「う~ん、ちょっと苦しいな」と感じられてしまう。なので、最後は年収の評価がなかなか上がりづらくなります。

逆を言うと、当たり前なのですが、相手がこうだと思っていることに対して納得をして、そちらに価値基準を持ってしまえば、評価は高まることになります。

伝えたいのは、「こうしてください」と言っているのではなく、このような価値観の考え方で金額が決まっているんだということを押さえていただきたいと思っています。

重要なのは「時間」と「目標」

最後にまとめていきたいと思います。

重要なのは「時間」と「目標」だと思っています。まず、お金は何かを得るための手段です。年収が1000万あろうと2000万あろうと、得られていなかったらみなさん「まだ足りない」と思うはずです。

そもそもお金だけがペラっと1枚あっても、お腹がいっぱいになることはないと思います。お金で車を買ったり、お金で食べ物を買ったり、何かをして、その代わりに来たものがみなさんに何かを与えてくれるというものだと考えます。

では、「お金を考えるときに何を先に決めたらいいですか?」というところについては、将来の目標を先に決めていただきたいと思っています。

なぜかと言うと、みなさんハンバーガーで想像してみてください。例えば、みなさんが食べたいと思っているハンバーガーが500円だったとします。

みなさんはハンバーガーが食べたいから500円を得る努力をしたんです。それで食べられたハンバーガーの達成感と、「500円あるけどどうしよう?」思って食べたハンバーガーのどちらが幸せかという話です。

「絶対ハンバーガーを食べたい!」と先に決めて、500円稼いで「やったー! ハンバーガーを食べられた」と思ったほうが幸せなはずなんです。

なぜかというと、「500円あるからハンバーガーを食べたんだけど、実はもっと食べたかった」と思うかもしれないですし、「実は違うものが食べたかったんだよね」と感じたら同じようにお腹もいっぱいになっていて、同じカロリーを摂取しているのにもかかわらず、気持ちの高揚感が違うんです。

なのでまず、ハンバーガー(将来の目標)を先に決めてください。ファーストはハンバーガーです。そのあとにそれに必要な年収を考えていただきたい。

そうすると必ず、みなさんのほうで「あ、達成したんだ!」となってくるはずです。これがまず目標を決めるというところになります。

次に、先ほど出したグラフになりますが、時間は後戻りできないので、このようなグラフがあるということを頭に入れてください。

「何を、いつ、どうしたらいいのか」「今、自分は何をしなければいけないのか」。先ほど言ったハンバーガーの目標に向かって、何をしなければいけないのかというところを考えていっていただきたい。なので、重要なのは時間と目標の設定であるということです。

時間が狂ってしまうと、実はやれたはずのことがやれなくなってしまうという事実もありますので、そういう意味で時間(が重要)です。

そして目標、いわゆる将来のイメージを先に持っていただければ、年収1000万になる必要性がないかもしれないし、それで幸せな自分の未来を得られる可能性もあります。

みなさんそのようなかたちで考えていただきたいと思います。

目標を明確にせず時間が経過した場合、後戻りはできませんので、非常に残念な気持ちになってくる。「もしかしたら可能性があったのに…」となってくる場合があると考えています。

私が思うのは、先ほど「年収1000万以上になれる」とお伝えしたんですけど、みなさんが選ぶ未来は、みなさんが幸せだと感じる未来を選択できるように、お金と時間と今の過ごし方を考えて、幸せな未来に向かって技術を高めて、仕事の成果を高めて進んでいただければと思っております。

以上になります。ご静聴ありがとうございました。

(会場拍手)