現場で深掘ってやっている人 × ちゃんと俯瞰して見ている人

高山達哉氏(以下、高山):本日はお忙しいなか会場にお越しいただきまして、ありがとうございます。私、株式会社クラシコムの高山達哉と申します。本日の司会進行を務めさせていただきますので、よろしくお願いします。

最初に、みなさんのお席にございます配布物をご確認させていただきたいんですけれども、アンケート用紙1枚、ボールペン1本と、「BRAND NOTE BOOK」という小冊子はお手元にございますでしょうか?

弊社で運営している「クラシコム ジャーナル」というWebメディアがございまして、そこでメディアや広告のことを、業界の著名な方と弊社代表の青木との対談記事などを掲載しており、その内容の一部を冊子にまとめさせていただいています

すごい手前味噌なんですけど、おもしろくてすごく濃厚な内容になっていますので、ぜひお帰りの際にでも読んでいただければなと思います。

ちょっと宣伝なんですけど、一番最後のページに、弊社が今展開している広告事業のご案内もしておりますので、ぜひぜひこちらも目を通していただければと思います。ではさっそく、本日登壇していただくお二人に入ってきてもらいたいと思います。みなさん拍手でお迎えください。

(会場拍手)

高山:では、お二人に話していただく前に、まずは会場のみなさんももしかしたら若干緊張されている方もいらっしゃるのかなというところがあるので。

ぜひお隣の方や前後の方と軽い自己紹介でしたり、本日のイベントで聞いてみたいことだったり、ちょっと期待していることなんかを、本当に3分程度でけっこうですので、ぜひぜひお話しいただければうれしいなと思います。今から3分ほど、どうぞお隣・前後の方とお話しください。よろしくお願いします。

青木耕平氏(以下、青木):これはぜひ積極的にお願いします。お隣に余っている人がいたら、絶対に混ぜてあげてください(笑)。

(自己紹介タイム)

高山:はい、ありがとうございます。すごいなんかあっという間に場が盛り上がった感じで、すごい良いイベントになる気配がさっそくしているんですけれども(笑)。

青木:いや、みんなの顔がやっぱりニコニコしてきてて、こっちもだいぶしゃべりやすい。やっぱり始まる前にこっちから見ると、みんな顔が怖いんですよ。

なので、みんなで話してもらったのは、実は僕のためというか、みんなにニコニコしてもらうとしゃべりやすくなるので話してもらったということなんですね。ありがとうございました。

高山:お二人の自己紹介を含めてトークセッションのほうに入っていきたいなと思いますので、まずは青木さんからよろしくお願いします。

青木:今日は本当にこんなたくさんの人に集まっていただいて、ありがとうございます。

佐藤尚之氏(以下、佐藤):ありがとうございます。

「ファンベース」とは何か

青木:なんか、おじさん2人が話をするってことになるわけですけれども、できるだけ楽しい話や役に立つ話が聞けるように、佐藤尚之さんからいろいろ聞き出せたらと、がんばろうと思っておりますので、よろしくお願いします。

佐藤:もう打ち合わせの時に盛り上がっちゃったから、難しいですよね。

青木:いや、そうなんですよね。打ち合わせはやっぱり長くしちゃダメだという。

佐藤:そうそう(笑)。

青木:そういうルールはわかってるんですけど、わーっと盛り上がっちゃったという感じですね。だいぶいろいろ話してしまったので。

今日、実は、この中で佐藤さんが最近出された『ファンベース:支持され、愛され、長く売れ続けるために』を読んだことがある人、どのぐらいいらっしゃいますか?

ファンベース:支持され、愛され、長く売れ続けるために

(会場挙手)

おおー。すばらしい。申し訳ないですけど、読んだことがない人は、中に書いてあることが知りたい場合は(本を)読んでください(笑)。

今日は(この本の)中のことについてガッツリ話すというよりも、前提を共有した時点で、なんとなく僕のほうで気になったところを、ちょっと深掘って議論すると。そういうところを中心に時間を使いたいな、と思っています。

今日の議論を聞いて「あのへんもうちょっと知りたいな」と思って、まだ読んでない人がいたら、ぜひAmazonなどで買ってお読みいただければと思います。

自己紹介と言ってたんですけど、僕は株式会社クラシコムの青木と申します。よろしくお願いします。で、株式会社ツナグの佐藤尚之さんです。

佐藤:よろしくお願いします。

(会場拍手)

佐藤さんに自己紹介をしていただいてもいいんですけど、ただ、端的に自己紹介しても、どうせ正体がわからないし、ここにおられる方の大半は佐藤さんがいかにこれまで多岐にわたってご活躍されてきた方かは重々ご承知のことと思います。なので、知らない人はあとでググってください。さっそく本論に時間を使いたいなと思います。

ファンを大事にすることをベースにして売上や価値を上げていく

まずは、今日はなんで「クラシコムサロン」で佐藤さんと対談させていただきたいと思ったか、という動機のところだけ簡単にご説明したいと思います。

僕も、もうみなさんがお読みになっている『ファンベース』を読んだことがきっかけなんですけれども、この本を読ませていただいて、「自分がやってることと通じることを、こんなにもちゃんと整理して書けるんだ」みたいな感動がけっこうありました。それと同時に、同じなんだけど、目線というか役割立ては違う。

つまり、僕はクラシコムで「北欧、暮らしの道具店」というビジネスをやっていますので、このビジネスに特化した特殊解の1つを深掘っています。なので、非常にドメスティックな解を1個持っているにすぎないと思っています。それが同じやり方で、いろんな人がやっても役に立つやり方なのかどうかに関しては、検証もしていないし見識もないんですね。

佐藤さんは「そういうやり方を複数社でやったときにどうなるか?」みたいな観点をお持ちで、それを汎用的に使えるかたちを探っているということで。

すごく現場で深掘ってやっている人と、ちゃんと俯瞰して見ている人がこのテーマについて話したら、たぶん『ファンベース』のやり方をやりたいんだけど、「具体的にどういうふうにやっていいんだっけ?」とか「どういうところに気をつけてるポイントがあるんだっけ?」みたいなことで、僕自身もより理解が深まるんじゃないかなと思って、今日はお願いをしたということでございます。

佐藤:よろしくお願いします。

青木:とはいえ、いろいろ議論をする前に、「本を読んだことない」という人もいらっしゃると思うので、「ファンベースとは何か?」とか、そういう定義的なところだけをさらっと触っていただいてから始めたほうがいいかな、と思っているんですけど。

ひと言では言えないのはわかりつつ、端的に「ファンベースっていう取り組みというのは一体いかなるものなのか?」ということを、まずは佐藤さんのほうから(お願いします)。

佐藤:そうですね。すごく単純に簡単にいうと、いわゆるファンを大切にしようとなったら、ファンマーケティングとか、ファンビジネスとか、ファンコミュニケーションとかでいいと思うんですよね。ファンベースの場合、とくに大事なのは「ベース」という考え方で、そのファンを大事にすることをベースにして売上とか価値とかを上げていこうって。いわゆる幸せになっていこうみたいなことですよね。

コミュニケーションとベースの違い

佐藤:もうちょっというと、例えば「奥さんベース」とするじゃないですか? ……なんの話だ? ってなるけど。

青木:(笑)。

佐藤:いや、「奥さんコミュニケーション」だとすると、奥さんとのコミュニケーションを上手にしましょうって話になるけど、「奥さんベース」って考えると、奥さんがいて、奥さんと暮らしていることをベースにして幸せを作っていこうという話なんですよね。奥さんとのコミュニケーションを考えるんじゃなくて。奥さんとどうせ付き合うじゃないですか。どうせ付き合うというか……まぁ。

青木:まぁまぁ、多少語弊がありますけど、まずは続けましょうか(笑)。

佐藤:ですから、そこらへんをちゃんとベースにして考えていくときに、人生とか生活の中でどういうふうに奥さんを位置づけるか? どういうふうに奥さんを大切にしながらいろいろやっていくか? ……もう比喩を出せば出すほどわかりにくくなっていく(笑)。

青木:いえいえ(笑)。

佐藤:僕も今、「奥さん」を例にしたのはまったく初めてなんですけども。

青木:でも、「奥さんベース」という言い方を、今後こういうことで使っていくのに少し確認すると、要するに、家庭生活みたいなところのベースラインがしっかりしていれば、その上に、例えば仕事で活躍するとか……。

佐藤:幸せが乗っかってくるじゃないですか。

青木:乗っかっていくってことですよね。

佐藤:それで全体の人生が構築できる、ということを考えるのが「ファンベース」で。

青木:そういうことですよね。

佐藤:ええ、そうです。だから、1個1個の奥さんとの付き合いじゃないよ、という。

青木:だからこれ、(ファンベースの)「ベース」っていうのは「土台」。もうまさに土台という意味ですよね。

佐藤:「土台」にしましょうよ、という。

青木:ファンとのお取引とかお付き合いを土台にして、その上にわりと多様なあり方を作っていきましょう、みたいなイメージですか。

佐藤:乗っけていこうね、という。そうですね。だから、例えばバブル時代だったら、奥さんベースにしなくても幸せはあったと思う。

青木:なるほど(笑)。インカムが大きいから?

佐藤:インカムが大きいから。今の時代は、やっぱり奥さんベースに地道に考えていくところに幸せがあるんじゃないかなって。

青木:なるほど、なるほど。

佐藤:大丈夫かな、 本当に。

(会場笑)

ファンベースを作ることの利点

青木:いや、でも僕はすごくわかりますけどね。でも、まぁ今、なんとなく「ファンベース」がどういうものなのかがわかったと思います。たぶん、よりわかるためには、さっきもちょこっとは出てましたけど、「なにとは違う」みたいなことを明確にするとわかりやすいのかな。

つまり、「ファン」っていう言葉とか「ファンといい関係を築きましょう」みたいな話って、わりあいもうポピュラーな話だと思うんですよ。でも、僕けっこう、これ(この本)を読んだ時に、「とはいえ、なんかいろいろ言われていることと、ここで言われてるファンベースということの間に、けっこう違いってあるよね」と。

そう思うと、「隣接したりかぶってると思われているけど、実はぜんぜん違うもの」っていうお題でパッと振られたら、思いつくものって何かあります?

佐藤:いや、さっき言ったように、ファン相手だけとか、ファンとの幸せだけとかじゃないっていうところなんですけどね。

青木:はいはいはい。だからファン……さっき例に出されたファンビジネスとか、ファンマーケティング。

佐藤:ええ。「ファンコミュニティをちゃんとやろうね」とかっていう、テクニックでもないし。

青木:そうですよね。

佐藤:いや、ファンたちっていうことをちゃんとやっていくと、売上がそのままバンバン上がってくるとかっていう、そんな夢みたいな話でもないし。僕自身は、いわゆるマーケティング的にいうと、キャンペーンとか新規のお客さんたちを取るのもぜんぜん否定しないし。なんですけど、「ベースを作らないと、これもう無理だよね」っていう。

しかも、そのベースをちゃんと作ると、すごい味方になってくれるし、その人たちがいろんなところで、いい意味で作用してくれる。そういうことを、ちょっと1回ロジカルに見てみようというのが、この本だったんですよね。

ファンとの関係性を土台にビジネスを構築する

青木:つまり、「ファンを土台にビジネスを構築しよう」って。いろんな土台って、本当はあったと思うんですよ。例えば、技術を土台にとか、あるいはマーケティングテクニックを土台にとか、商品力を土台にとか、いろんな土台があった中で、ファンとの関係性を土台にビジネスを作るという考え方みたいな感じ?

佐藤:そうですね。ファンとの関係性というのをもう少し読み解くと、たぶん感情とか情緒価値だったりすると思うんですけど。機能がウケる時代というのは、機能やスペックの差を中心にいろんな商品が出てくる。そういう時代は、そういう機能の差がやっぱり幸せにつながったりするんですけど、今はもうそういったのは全部行き着いちゃってる。

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