ブログ専任の担当者をつける

櫛井優介氏(以下、櫛井):それでは、一つひとつなにをしてきたかというのをちょっとお話しします。まずはブログ専任の担当者をつけることです。

これはものすごく大事で、「ブログもやっておいて」というアサインってよくあると思うんですね。ただ、それだと人はどうしてもできないんですよ。ですので、ブログをちゃんと担当する専門の人は必ずつけたほうがいいです。

その担当の人は「ブログに書きませんか?」って、とにかく常に言い続けることが大事で。これはブログの担当がちゃんといないとできないことなので、もしやりたいという方がいたら、まずはこれを意識してください。

ここからちょっと細かいテクニックの話に入ります。すごいコードを書ける人と、たくさん読まれるブログを書けるのはまったく違う能力なので、これはあまり無理強いしないほうがいいです。

とはいえ、無茶振りしたほうがいい結果を出すことも実は多いので、これは諸刃の剣なんですけど、「ブログを書きませんか」って常に言い続けて。

あとは自分のキャラクターと、相手との関係性ですね。なんとなく知ってるだけの人には、そういうことはできないです。無茶振りはできないので、ふだんからエンジニアとコミュニケーションを取って、相手との関係性を良好にしておくことがすごく大事で、その上で無茶振りをすると、けっこういい結果が出たりします。ただ、高度な技なので、使い方は要検討って感じですね。

次になにを書いてもらっても感謝しまくるっていうのがあるんですけど、やっぱり世の中にいきなりプロになれる人はいないんですね。誰もが最初は初心者なので、まずは「書いてくれてありがとう」という気持ちがすごく大事です。

いやらしい話をすると、ここでちゃんと感謝しておくと2回目がすごくいいです。なので、日本人はちゃんと「ありがとう」って言わないみたいな記事を今日読んだんですけど、これはちゃんと言っていったほうがいいと思っています。

ブログの執筆体制を整える

次はいきなり実務的な話になるんですけど、体制を整えることです。

今はこういう感じでやってるんですけど、以前は担当が1人なんとなくいただけで「掲載したかったら連絡してね」みたいな受け身なスタイルでやっていました。だけど、そこを私が「日本の担当を私がやります」と。

体制も今後変えていきたいし、更新のルールもいろいろと日本だけは変えたいんだと。韓国や中国などいろんな部署ありますので、そこと一緒にやるというのが前提でしたが、日本だけやらせてくれっていう話をしました。

そうして執筆体制も整えていきました。LINEのエンジニアって今は日本国内だと600人とかいるんですけど、彼らも当然書いてくれますので、ブログ執筆体制として、潜在的に「これぐらい書いてくれるかもしれない」という数字だけですけど、こんなことになっていますと。

なにをしてるかというと、基本的には誰がいつでも対応できるようになっていて、「こういうのを書きたいんだけど」って言われたら、この中の誰かが「はい、やります」というのが言えると。

それぞれ全員が同じことができなくてもいいと思っていて。例えばこのMikiさんという方だったら、雛形をベースに作っておいてテンプレートを作るのが得意だったりとか。私は写真を使ってブログを書いたりするので、レポート系はけっこう得意なんですね。

あとは中嶋さん。アドボケイトですけど、彼はサンプルコードや動画のサンプルを一緒に交えて書くのが得意だったり。自分ができるということは、そこらへんのサポートもできるということなので、みんな違って、みんないいみたいな感じでやれていると。

あとはそれぞれ1記事に1担当者がついて、執筆者自身とやりとりをして、公開まで進めます。会社ですので、PRとかセキュリティとか法務とか、いろんなリスクがないように事前にチェックをしていて、そういうことをしています。

次は「ルールの緩和」です。

これまでは、多言語でやるのでまず母国語で書いて、それが翻訳され、それと同時並行で、セキュリティチェックや内容のチェック、言葉としておかしくないかとか、そういうチェックをしていました。

それぞれ翻訳して、なにか問題が発生するとまた戻ります。だからすごく更新フローが長くて、執筆から掲載まで3ヶ月かかる場合がありました。ブログにですよ。ブログなのにどうしてそんなに時間がかかるのか僕もぜんぜんわからないんですが、「そもそもこの情報を外部に公開するべきなのか?」みたいな議論がすごく長いんです。僕からすると「ブログってそんな難しいもんだっけ?」っていうのが純粋に疑問で。

ブログって流れていく情報で、そのあとたまに見返すぐらいの情報なので、経営に関わる情報とかそもそも出さないし、あかん数値を出すわけないじゃないですか。もうちょっと会社というか、我々を信用してくれよみたいな話をしてました。

今は書いていただいて、チェックして、セキュリティとかPRチェックして、ブログっぽい体裁でトリミングして出します。

普通こうだと思うんですけど、これを今やっています。

シンプルになって本当によかったねって感じです。いろんなフローが巻き戻ると、執筆者にすごくストレスになるんですよね。「いいからさっさと公開しろよ」ってなるんですけど、「いや、韓国語の翻訳が間違っていたらしくてちょっとまだ公開できません」みたいな。そんなの関係ないじゃないですか。なので、執筆者の負担を軽減して、もうネイティブの日本語だけでバーっと出すということをする。

どうやってSNSを強化するか

(ブログの)内容は基本的に自由です。よっぽどヘンじゃないかぎりは大丈夫です。LINEに関するものだったらなんでもいいですよと。あとはスタイルがあればですね。「てにをは」をどうするとか、数字の記号とか。数字とか記号とかどういうルールですかってエンジニアの方はすごく気にするので、そういうのはあらかじめ用意しています。

これをやれるようにはなったんですけど、やっぱりほかの国の担当者と私が交渉して、情報公開するときは私が絶対に全部見ています。やばいところは全部チェックするので、多言語対応は基本しません。日本語だけで出します。

うちが出すから、いいのあったらそっちで勝手に多言語化してねというスタイルに切り替えました。これはけっこう交渉が大変だったんですけど、そういう手段を勝ち取りました。やっぱり人生は戦いなので、社内事情はそれぞれあると思うんですけど、何事も交渉が必要なのでみなさん勝ち取ってください。

次は、SNSの強化です。

さっき言いましたが、ブログはやっぱりまとまった情報を書くところなので、TwitterとかFacebookは拡散するためのツールです。なので、2年ぐらいで5,000フォロワーまでいきましたが、なかなかいい数字かなと。

コツが1つあります。アカウントの説明に「LINEが提供するデベロッパー向け情報など……」と書いてあるんです。この「など」というのがすごく大事で、入れなかったらその情報しか出せないんですけど、「など」って入れると、例えば今日みたいなイベントの情報とかも書けるんですよね。協賛してますよとか。なので、けっこう幅広くできるように準備をしていました。

このアカウントは実は複数名でやっています。4人ぐらいですかね。LINEのグループがあって、そこに「こういう感じで投稿するよ?」っていうのを投げて、「いいね!」とかで返って来たらそのままシェアボタンを押して、「ちょっとここおかしくない?」って言ったら、そこを話してやるというのをやっています。

じゃあどう見てもらうのかというところなのですが、どうフォロワーを増やしたりするのかというのはすごく悩ましいです。私たちの場合は、このようにいろいろなイベントを自社で開催しています。

何回か出ている「LINE DEVELOPER DAY」というのは1年に1回ある大きなイベントなんですが、1,000人ぐらいエンジニアが来ていただいたんですが、そういったところでTwitterとかブログをバンバン更新して認知してもらったり。

あとは月に1回ぐらい京都、東京、福岡などで開催していますが、「LINE Developer Meetup」というのをやってます。テーマは毎回変えてやっていて、例えば今回Javaですよとか、今回はHBaseですとか、いろいろやるんですけど。それに来ていただいて、その情報ツールとしてTwitterとかを使うので、そこで認知していただくと。

「LINE BOT AWARDS」というのは、賞金1,000万というけっこう派手なイベントをやってたりするんですけど、こういったところで知っていただいたりとか。

お金だけじゃないスポンサーとしての関わり方

あとはBootcampはMeetupとはちょっと違うんですけど、実際にうちが提供しているAPIとか「LINEログイン」という仕組みを使って、みなさんちょっと触ってみましょうというのを講師がついてやるやつですね。そういうのをやったりしています。

次にイベント支援です。先ほどのは自社開催なんですけれども、これは例えば社員が関わっているコミュニティとか、あとは自分たちが使っているミドルウェアやツールとか、そういったところのイベントをやりたい人たちって潜在的にいて。そういった方たちに会場提供したりとか、運用を手伝ったりしてあげるということをやっています。

あとは、うちのカフェとかオーディトリアムというイベントスペースの貸し出しをして、そこにみなさんに来ていただいてコミュニティ活動をしていただく。こはすぐに結果が出るわけではないんですよ。ここでなにかをしたいというのはまったく思っていなくて。これは継続することが大事で、今まで出会っていない方々に出会える機会かなと思っています。

そうやってLINEはエンジニアのサポートをすごくしてくれるんだな、ということをなんとなく感じてもらえればいいかなと。それぐらいでやっております。

次はスポンサーですね。これは2017年の実績ですが、かなりの数のスポンサーをしています。

スポンサーするって純粋にお金出せばいいとは私は思っていません。協賛している事実があればいいという会社もあるとは思いますが、ここはこだわりというか、なんかでかいロゴだけが出てるというのは僕はあんまり好きじゃなくて。

行くんだったら、我々とそこのコミュニティとかイベントになにかしら共通点を見出してブースを出したりとか、そこの参加者の人たちになにかしら感じてもらえるようなブースを出したいと思っています。

例えば、この間の「try! Swift」というイベントでは、うちの「LINE」や「LINE LIVE」というアプリのiOS版にはどれぐらいSwiftが乗ってるよとか、ほかにどういうテクノロジー作っていますというのを1つのパネルにして展示して、みなさんに興味を持っていただくということをやったり。

最近だと、「Clova」というスマートAIスピーカーを開発をしているんですが、それを実際に持っていって体感してもらったりしてます。そういうのを必ずセットでやることで、お金だけ出すのは避けている感じですね。

予算を獲得するには

これは「LINE DEVELOPER DAY 2016」の1コマなんですが、CTOと2トップで技術領域を管轄している池邉さんという上級執行役員がいて、彼にクロージングのトークで、「LINEは今後どんどん情報をアウトプットしていきます。

今回のイベントで話せなかったことはどんどんブログに書きます。ほかの他社さんともぜひコラボしたいので、一緒にイベントしたい方、ぜひご連絡ください」って言ってたんですけど、これを担当してるのは私です。

そろそろ気づいたかもしれませんが、オープニングとクロージングとか、こうした大事なキーノートの台本は私が書いています。なので、私が書いて言ってもらっているという感じなんですね。

これがけっこう大事で。これを言ってくださいって台本に書くと、よっぽどじゃないかぎり言ってくれるんです。事実と違うとかそういうことがないかぎりは。それを偉い人に言ってもらうと社内も「おお、そうか」ってなるんですね。なので、これはけっこう大事です。社内的にもアウトプットをどんどんしていこうね、という話に、このあとからすごくなりました。こういうのはけっこうおすすめです。

最後に、これがすごく重要なんですね。予算を持つ。

これがすごく大事で、やっぱりなにをするにもお金が必要なんですよね。

ただ、いきなり予算はつかないんですよね。私もずっとこういう活動をやってるんですけど、10年ぐらい前だと3万円がもらえないんですよ。ちょっとイベントやりたいから、なにか作りたい。パネルを作るのが3万円ですとかでも、「3万は出せないなぁ」と。「出せるだろ!」って思うんですけど、出せないんですね。

なので、そもそも、そういう予算を着実に積み上げていかないと予算はつかないので、社内で味方を増やしながらがんばっていくしかないかなと思います。みなさんも予算を少しずつ持つということをやったほうがいいんじゃないかなと思います。

LINE社内のコミュニケーション

いろいろお伝えしたんですけど、ぜんぜん7つじゃなかったなという(笑)。

9つだったんですけど。ただ、9つにしたんですけど、実際はもっともっといろいろなことを我々はやっているし、継続もしています。

ただ、今年はとくにそうなんですが、規模感がどんどん大きくなってきていて、我々がやりたいこともすごく広がっている一方で、できていないこともすごく大きくなってきている。なので実は9つどころではありません。

ここまでお伝えしたことをまとめると、エンジニアのみなさんにおかれましては、ブログは絶対に無駄にならないのでぜひ継続してくださいというところです。ブログはすごく良いツールなのでぜひ使っていただきたいです。

エンジニアじゃないみなさんは、ブログじゃなくてもけっこうですので、アウトプットを支える側に回ってもいいんじゃないですかと。これはやっぱり継続する価値が十分にあります、ということを今日はお伝えしたかったです。

最後に、これからさらにアウトプットを増やしていくために、我々のLINEのDeveloper Relationsチームがなにをしていきたいのかをちょっとご紹介します。

冒頭でお見せしたこちらのスライドなんですけれども、社内に関してはまだまだできていないことが多くて。

社外はけっこうできているんですけど、社内はどんどんやっていかないといけません。

私が今取り組んでいるのは、オンラインコミュニケーションです。社内のオンラインコミュニケーションをどうにかしなさいというお題があって、なんのツールをどういうふうに使ったらLINE社内のコミュニケーションがうまく取れるんだろうというのを今テーマとしてやっていて。難しいテーマなんですけど、なかなかチャレンジしがいがあるかなと思っています。

現時点でやりたいことというのは、まだまだぜんぜんできていなくて、なんとなくこう登山に例えてみたんですけど、3合目ぐらいかなという感じですね。

日本の一番ではなくアジアや世界を目指す

今までお話ししたなかで、「チームにすごいたくさん人数いるじゃん?」とか「なんかもう全部できてるじゃん?」みたいな印象があるかもしれないんですけど、ぜんぜんできていなくて。

本当に私たちがやりたいのは、日本の一番とかじゃなくて、アジアとか世界みたいなところで、テックカンパニーがいろいろあるんですけど、そこと遜色がない、そこに数えられるような会社になっていきたいと。それで言うとやらないといけないことって、まだまだすごくたくさんあるんですよね。

例えば、海外で行われているカンファレンスってぜんぜんカバーできていなくて。そういうことをちゃんとやったり。そこで存在感を出して、LINEらしさをアピールしたり本当はしたいんですけど、まだまだできていないと。そういうところは課題かなと思っています。

これ(WE CREATE WOW FOR THE WORLD)は、LINEで働いている我々がどういう姿勢でいるべきかというのを表した言葉なんですけど、「WOW」という感動とか驚きを生み出して、それを続けていくということですね。

なので、私たちのチームもどんどん「WOW」をみなさんにお伝えし続けないといけないというところで、最後に本日みなさんに一番お伝えしたかった内容がこちらです。

「WE ARE HIRING!」ということで(笑)。採用かよっていう感じなんですけど、これはすごく大事なんですよ。本当にいないので。今、Developer Relations チームは日本で15人ほど。グローバルで同じような感じで働いているのでいうと、20人ぐらいなんですけど、日本でこのチームをメインでやっているのって6人ぐらいなんですね。かなり小さいチームなんです。

なので、まだまだ本当にやりたい領域があって、スターティングメンバーに近いかたちで今できますので、Developer Relationやってみたい、こういう活動に興味あるという方は、ぜひこのあとお声がけいただけたらなと。求人情報にも載っていないちょっとレアな、本当にいい人がいたら大歓迎ぐらいの珍しいポジションなので、ぜひ声をかけてください。

ということで、以上です。みなさん、ブログを書きましょう! ありがとうございました。

(会場拍手)