世界最大のプロフェッショナルのためのソーシャルネットワーク

村上臣氏(以下、村上):みなさん、こんにちは。リンクトイン・ジャパンの村上と申します。すみません、ここにいる外国からお越しのお客さまは、英語で話すと思っていたと思うんですけど、実は日本人は英語がとても苦手です。私も日本語の方が堪能なので、日本語で話させていただきます。私はリンクトインジャパンに入ってちょうど半年になりました。

その前は17年間、ヤフージャパン、及びソフトバンクグループで働いていました。リンクトインは、日本ではまだ200万人くらいの非常に小さいユーザーしかいないんですが、グローバルで見ると5億6,000万人を超えるということで、世界最大のプロフェッショナルのためのソーシャルネットワークでございます。

今日のセッションは、「Future of Work」、つまり我々の仕事はこれからどうなっていくのか、未来に向けてどうなっていくのかというお話をしたいと思っています。最初に我々のビジョンをお話しします。我々は、すべてのビジネスパーソンの方々に、エコノミックオポチュニティー、つまりビジネスチャンス、経済的な機会をお届けするということを会社のビジョンとしています。

そのために、我々はエコノミックグラフというものを、プラットフォームとして提供しています。とくに日本でリンクトインをご存知の方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

さすがに多いですね。逆に「知らなかったよ」という人はいらっしゃいますか? 多少いますよね。ですので、日本では知られていないんですが、おそらく知っている方は、なんらか海外のお仕事をされているか、もしくは外資系にお勤めの方がほとんどでございます。

ですので、日本ではリンクトインと聞くと、外資系のための特殊な転職サイトというイメージがまだ強いんですけれども、実は、このようにエコノミックグラフというかたちで、ジョブという転職の部分は、この(スライドの)6つのうちのまだ1つなんです。我々はいろいろなメンバーのプロファイル、いわゆる履歴書のようなものを集めて、会社のデータを集め、また、いろんなスキルのデータを持っております。

ビジネスの成功をサポートするプラットフォーム

そして、それを学校ですとか、いろんなナレッジ、またはEラーニングですね、リンクトインドットコムというサイトで、リンクトインラーニングというかたちで、オンラインコースがたくさんあります。要するに、ビジネスをするにあたってより良くするために、我々はあらゆるデータ、サイトを提供しています。

また、我々はエコノミックグラフという、ビジネスパーソンのためのグラフを持っています。これが我々の強みであり、我々がミッションとして考えていることです。つまり、プロフェッショナルをつなげていくことで、その我々のメンバーが、よりプロダクティブでサクセスする。より良くなっていく。より良い仕事ができる、より機会につながってビジネスが大きくなっていくプラットフォームを提供しています。

ですので、我々はひと言でいうと、「Connect to Opportunity(コネクトトゥーオポチュニティー)」、つまり、仕事をするにあたって、あらゆる機会につなげていくことを第一に考えております。

そのために、我々はメンバーのことをメンバーファーストで考え、また、お客さまのことをカスタマーファーストで考え、そしてみなさんが、よりビジネスで成功することを願っているプラットフォームであるということを、今日覚えていただければと思います。

簡単に会社の紹介を終わりましたが、ここからが本題です。今、インダストリー4.0ということがよく出てきます。つまり、今、産業革命の真っ只中に、我々はいると思っております。では、今まで1次、2次、3次と、なにがきたかといいますと、まずは、要は農作業の発明、狩猟民族から農耕民族というかたち。

今まで鹿とかマンモスを追いかけているところから、村ができて、みんなで協力してお米を作ったりとか、作物を育てることによって、我々はより寿命が長くなったわけです。そういったところから始まって、次に産業革命というと、機械による大量生産の時代がやってきます。ここ(スライド)にBeforeと書いていますけれども、この時代に重要だったものはなにかというと、やはり機械工学です。

インターネットの出現でいろいろなものが変わった

エンジンであったり、またそれを動かすためのオイル、石油とかガスとか、こういったものをどれだけ持っているかによって、会社のパワーが決まっていたんです。20年前の世界の時価総額ランキングを見たことがある人はいますか? トップはほとんどオイル系の会社、資源の会社です。つまり、世界中の資源をどれだけ持っているかということが、企業の価値そのものであり、それによってエコノミーが回っていました。

そこに必要なスキルというのは当然、機械に精通しているということ。エンジニアであればメカニカルエンジニア、こういったところです。実際起こっていることは、リアルなものでありました。それが、インターネットの出現によって大きく変わりました。インターネットが出現して、もう20年、30年近くなりますかね。

徐々に変わっていって、またそれが手のひらに乗るようになったというインパクト。これまでは、デスクトップでインターネットをしていたので、人は動かなかったですよね。会社に行ってインターネットをする。家に帰ってインターネットをする。

それが、iPhoneおよびスマートフォンが出たことによって、一昔前のスーパーコンピューターと同じパワーを持ったPCが、ネットワークに常時つながって、手のひらにあるということ。これが、まさに革命的なできごとなわけです。そこから出てくるデータとか、いろんなアクティビティ、いろんなものがインターネットクラウドの中にたまっていって、あらゆることができるようになった。

ですので、(スライドの)Afterの方をご覧いただきたいんですけれども、こういったコンピューター、要はエンジンとか馬力ではなくて、コンピューティングパワーをどれだけ持っているかが企業の価値の大きな1つになるし、またデータが石油のような価値を生むというのが、これから10年、20年のインダストリーになってくると思います。

世界はソフトウェアに覆われている

もちろん、スキル面で見ても、機械とかコンピューターサイエンス、ソフトウェアにどれだけ精通しているかが、非常に大きな関心を持たれています。

また、VRもありますけれども、要は現実で起こっていることとバーチャルで起こっていることの間で融合している。もうしばらくすると、たぶん5年後くらいには、いわゆるVRで見たものが現実で見ているものと、区別が、違いがわからなくなります。

いわゆる8Kといわれる映像ディスプレイがここに出てくるんですけれども、自分の目の中で認識できる解像度は、8Kがちょうど肉体の機能と同じなんです。ですので、8Kのディスプレイを間近に見ると、現実に見ている解像度とまったく一緒になるということです。

そのため、そこで起きていることは、本当のこととして見える。こうなった場合に人間は、非常にコンフュージョンになる。これは本当に起きていることなのか、バーチャルなのか、わからなくなる。それぐらいインパクトのあることが今、まさに起こっております。

ですので、インダストリー4.0は、私はインフォメーションレボリューションと書いていますけれども、情報革命というのが今、起こっている。この世界で重要なことはソフトウェアなんです。これは2012年に、ネットスケープでブラウザ開発をしたマーク・アンドリーセンが言った言葉なんですけれども、「ソフトウェアに世界は覆われている」と。

みなさん、iPhoneで今、なにをしていますか? スマートフォンでなにをしていますか? 音楽を聴きますよね。ビデオを見ますよね。日本であればSuicaとかのNFC(Near Field Communication)ですね。電車に乗る、お金を払う、あらゆるものが1つのデバイスに入っています。

1980年代を思えば、ウォークマンをもって音楽を聴き、お金を払うために小銭入れを持ち、ビデオを見るのはお家に帰って、CDとかDVDとか、あらゆるガジェットに囲まれていました。今は、本当にすべてが手のひらの中。すべて、中のアプリであるソフトウェアによって動いています。

これからの企業の進化のキーはソフトウェア

つまり、あらゆる専用のハードウェアが、ほとんどソフトウェア化されて、この手のひらでスーパーコンピューターが動いているということなんです。今後もこういったことがどんどん起こってくる。例えばAirbnbとかUberとか、シェアエコノミーの話もありますよね。あれも既存のリアルエステートをバーチャルにつないで持っているということ。こういったミックスも起きています。

ですので、ソフトウェアがこれからの進化、企業にとって、非常に進化のキーとなるということを表していると思います。ちょっとすごい図なんですけれども、2,000年分のGDPの推移を持ってきました。これを見ていると、いろんなことが世界でありました。

私は、この十何世紀とか生きていませんけれども。一番右のところを見てほしいんですが、チャイナ、インド、ジャパンとあります。ここで示されていることは、今、アジアというのが変革のキーとなっている。要は、世界で見てもGDPの半分くらいは、このAPAC周辺で生まれている。今後のグロースというのも、ここ中心に起こっているということなんです。

日本は、この20年間ちょっと成長していませんが、他のアジアを中心に成長をしていると。ただ、まだ3番目のGDPを持っているということで、非常に大きなマーケティングになります。こういった大きな流れの中で、アジアというのはグローバルビジネスをするうえで、必ず取らなくてはいけないマーケットです。

ですので、リンクトインも去年、私がカントリーマネージャとして就任して、より力を入れていくことを表していると思います。このような革命は、実はリニアに起こるんじゃなくて、ある一瞬、一瞬にマグマのように、ぽーんとエネルギーが噴火して、すごく短い期間に一気にジャンプアップする傾向があります。

過去を見てみましょう。先ほどの産業革命です。いわゆるイギリスを中心に、17世紀ぐらいから起こったもの。蒸気機関の発明によってオートメーションが進んで、生存競争が非常にプロダクティブに流れ出した。これはごく短い期間に、ばーんとGDPが伸びていくわけです。

私たちは時代の転換点を生きている

これが情報革命(インフォメーションレボリューション)の時代においても、まさにここから5年、10年後くらいに振り返ってみると、「あの時にすごく変わったんだ」と、実感できるようなタイミングを我々は生きていて、ビジネスをしているということです。

もう少し実例を示しましょう。これは私のお気に入りの図なんですけれども、1900年のニューヨークの目抜き通りです。なにが見えますか? 走っているのは車じゃないんです。馬がいますね。馬車です。馬に引き連れられて、馬車でパカパカと、歩く感じですね。これが13年後、同じところがどういう景色になるかというと、こうなります。

T型フォルムというやつ(車)です。要は車が発明されて、爆発的に浸透していった。同じ場所が、たった10年くらいで、まったく異なる景色になっている。これによって生活がすごく変わりました。例えば仕事の話で言うと、先ほどの馬車を運用するのに必要なものというと、やっぱり馬のお世話をしないといけないですよね。

なので、もちろん馬を御する人がいるし、馬のエサを用意する人、水を用意する人が、たぶん拠点ごとにいました。ガソリンスタンドみたいなものですよね。また、馬を調教する人とか、いろんな馬にまつわる仕事がありました。こうなったら、その人たちは基本的には仕事がなくなったということです。最近、AIに仕事を奪われるみたいな話がありますけれども、要は、時代が大きく変わるときは、スキルというものが非常に変わります。

ですので、これは奪われるというよりかは、トランスフォーメーションなんです。なので、どんどん時代に適応していかないと、留まっていると、職を失ったという結果になります。やはり、日々新しいスキルを身につける、教育する、学習し続けることが、我々プロフェッショナルにとっては非常に大事なことだと思います。