信用を得るにはグルメ番組に出ないこと

西野亮廣氏(以下、西野):ここからベッキーの擁護に入るんですが、じゃあ、ベッキーは嘘つきかという話です。僕、プライベートのベッキーも知っているんですが、ぜんぜん嘘つかないんです。でも、グルメ番組に出たときだけ、まずいものを「おいしい」って嘘をつく。

ここから読み取れるのは、僕たち人間がつく嘘は、感情でついているわけではなくて、環境によってつかされているということです。

僕たちは基本、嘘をつきたくないんだけど、嘘をつかざるを得ない状況に追いやられたときには、嘘をついちゃう。ベッキーも嘘をつかざるをえない状況に出続けたので、嘘をついちゃった。

結論は何かというと、嘘をつきたくなければ、嘘をつかなければいけない状況に身を投じちゃいけないということです。

話をぐーっと戻すと、『えんとつ町のプペル』を作るためにはお金が必要だった。お金を集めるためには、クラウドファンディングをする必要があった。クラウドファンディングで勝つためには、信用を勝ち取る必要があった。信用を勝ち取るためには、嘘をついちゃダメだった。

嘘をついちゃダメということは、嘘をつかざるを得ない状況に身を投じちゃダメだった。嘘をつかざるを得ない状況はなにか。グルメ番組だ。つまり、『えんとつ町のプペル』を作ろうと思ったら、グルメ番組に出ちゃダメだということです。

えんとつ町のプペル

ここはバカみたいな話ですが、地続きで、ここからデザインしていかないと、何千万、何億というお金は発生しないということです。

「嘘をついたら、ちゃんと損をする時代になってきた」

ほとんどの人は、ここしか見ないんです。(ロンブーの田村)淳さんも、ここしか見なかったんです。こっち(嘘をつかざるを得ない状況)でCMとか出ちゃうんです。

例えば、最近だったらコインチェックがあったじゃないですか。あの件で、出川さんがCM出ちゃったからとばっちりでクレームが来たみたいになったんですが、ぜんぜんとばっちりでもなんでもなくて、単純に出川さんの事務所がアホだと思うんです。あれは時代に合ってないんです。

つまり、お金をもらって、使ってもいないサービスを紹介しちゃった。それで被害が発生しちゃったら、当然、責任は紹介した人にも伴っちゃう。ああいうのがもう、時代遅れだからもうやめたほうがいい。

それで、ベッキーとか出川さんとかがクラウドファンディングしても、当然お金は集まらない。だから、革命とか最新の働き方とか言ってるくせに、ジジクサイこと言いますが、嘘つかないほうがいいよって話です。嘘をついたら、ちゃんと損をする時代になってきた。

ここからクラウドファンディングのもっともっと本質に入っていくんですが、そんな感じでクラウドファンディングで5,600万円集まった。

確かそのとき、日本最高額だったんです。フジテレビのバイキングという番組で紹介されて、バイキングのコメンテーターが、「西野さんは本当に5,600万円も絵本の制作に使ってんの?」「懐に入れてんじゃないの?」っておっしゃった。でもそれって、クラウドファンディングのことをぜんぜん勉強されていないんです。

購入型クラウドファンディングで集めるのはお金ではない

クラウドファンディングにはいろいろ種類があって、2つだけ説明すると、1つは寄附型、1つは購入型です。寄附型クラウドファンディングは、3,000円あげます、使ってくださいといういわゆる寄附です。僕や小谷やほとんどの人がやっているクラウドファンディングは、購入型です。

購入型クラウドファンディングは、「3,000円支援してくださったら、お礼にこれをお返しします」という明確な見返りがある。『えんとつ町のプペル』の場合だったら、3,000円支援してくださったら、絵本の完成品にサインを入れてお送りするというリターンがあったんです。

すると、絵本の原価が2,000円弱で、お送りするためにレターパックに入れると、350円です。サイトの手数料、スタッフさんのお給料、倉庫代。いろいろ考えたら、3,000円支援してもらっても、実際に使えるお金は300円とか400円。

もっと言うと、リターンってA、B、C、D、いろいろ用意できるんですが、3,000円支援してもらっても、4,000円分のリターンを返す場合がある。すると、そのリターンが売れれば売れるほど、こっちが1,000円ずつ出ていく。

つまり、購入型のクラウドファンディングで5,600万円集まったからと言って、5,600万円使えるというわけでは決してない。

5,600万円集まっても、リターンで5,500万円かけていたら使えるお金は100万円だし、リターンで6,000万円かけていたら、こっちが400万円払うという状況です。つまり、購入型のクラウドファンディングにおいて、集まったお金は何の価値もない。

1万人で作れば1万部売れる

100億円集まっても10円しか使えないのがクラウドファンディングです。事実、『えんとつ町のプペル』は5,600万円集まったんですが、リターンで5,800万円使ったんです。つまり、クラウドファンディングをやることによって、200万円減ってる。

じゃあ、「なんでクラウドファンディングをやるの?」っていう話になってくる。僕が欲しかったのは、お金じゃないんです。

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