駅直結のオフィスへの憧れ

今西良光氏(以下、今西):ここらへんがすごく評判よかったみたいなのってなにかあります?

宮田昇始氏(以下、宮田):駅直結は採用のときにも効くというか、内定承諾してもらった人が帰り際とかに、「実は駅直結のオフィスで働くのが夢だったんですよ」みたいなことを2人ぐらいに言われたことがありますね。

今西:そうですか。

宮田:僕はその感覚がなかったんで、「そうだったんだ」って新鮮な驚きがありました。

今西:なるほど。駅直結ですね。私もたまたま近かったんですけど、それは言われたことがあります。けっこう重要なパターンですね。あと、沿線とかも気にされていなかったですか。

宮田:そうです。オフィスの場所を選ぶときなんですけど、従業員の通勤経路がすごく大変だったらきついなあというのがあって。もともとうちの会社は東横線と田都と、あと中央線沿いに住んでいる従業員が多かったんですよね。

そのメンバーがあんまり通勤経路が変わらずに、広さが前のオフィスの3倍のところになったら、候補がすごく少なくて、新宿の高層ビル街のと、ここみたいな感じだったんですよね。その中だとPMOが一番条件がよかったので、そんなに悩まずにスッとという感じでしたね。

今西:なるほど。それはとくにPMOさんが狙いというのではなくて、たまたまということで。わかりました。沢木さんはありますか。

沢木恵太氏(以下、沢木):プラスの部分と、ほかの質問で「もっとこうしておけばよかったというポイントはありますか」というのがあったんだけど。

今西:拾っていただいて。

沢木:プラスの部分は、やっぱり靴を脱ぐ部分ですね。僕も経験があるんですけど、革靴を履きっぱなしで仕事するのは嫌なんで、スリッパとか自分で用意して履き替えてるじゃないですか。トイレに行くときにまた履き替えたりするので、面倒くさいんですよね。それがないです。

とくに女性から喜ばれます。「ブーツを履いたままずっと仕事をするのはいやだ」と、女性こそみなさんスリッパを履かれてたりするので、女性が多いとすごく喜ばれている部分ですね。

玉にきずなのは、外部のお客さんがいらっしゃって、靴を脱ぐんだと思って上がっていただくんですけど、気付いたら靴下に穴が空いていたり。こっち側の対応をすごく試されるようなことはあったりします。

オフィスづくりは会社のコンセプトを踏まえて考えるもの

沢木:ただ、「そうしていらっしゃると、みなさんも開放的になりますよね」とか、「おかんっぽいですよね」と言っていただけるので。やっぱりすごくチャレンジングではあるんですけれども、もちろん何十人の規模で、マンションの一室とかではないので、運用上面倒くさい部分もあるかもしれませんが、非常によかったなあと思っています。

マイナスな部分で、ちょっとおしゃれにこだわろうとしてテーブルを変なかたちにしてみたんですよ。台形みたいな感じで、正方形とか長方形ではないんですよね。これが単純に使いづらいという話と、これがフレキシブルスペース(になる)。要するにフリースペースのデスクもひし形みたいになっているんですよ。

これはなにが良くないかって、ひし形って鋭角なんですよね。うちはさっき子どもがいっぱい来るって言ったのに、子どもが遊びに来たとき、みんなビビるんですよ。そこは自分たちが言っているコンセプトとちょっと間違っていたので、考えておけばよかったなあと思いましたね。

だから、たぶん、次にオフィスをつくるときは、もっと子どもが来やすいオフィスというコンセプトをつくると思うので、角をできるだけ作らないようにするとか、変にいじらないようにするとか、そういう仕掛けを作っていって。

そうすれば、たぶんよりみんなが(子どもを)連れてきやすくなって、みんなが子どもを知っていると、心理的安全が生まれてより帰属意識が高まったりするんじゃないかなあと思います。そこまで考えてオフィスづくりを追加したいなと思ってます。

今西:ありがとうございます。あとは、私が個人的に聞きたいなあという質問を1つかましちゃうんですけど。経営者として、ベンチャー企業がオフィス投資をするのはけっこう大きな判断だなあと思うんですね。

こういうオフィスの立地や働く環境って、どれぐらいのフェーズから意識され始めたのかをおうかがいしたくて。たぶん(会社として)立ち上がった瞬間って、オフィスはどうでもいいから、まず事業を立ち上げて、トップラインは目の前のお金を稼ぐことじゃないですか。そこからどのぐらいのタイミングでオフィスに投資していこうと考えられました?

初期の頃はスタートアップっぽさを味わいたかった

宮田:うちは3つ目のオフィスからですね。従業員数17名か20名かな。そのときに移転したんですけど。それで、1個前のオフィスから初めてオフィスにお金をかけて、いろいろやって行こうっていうのを始めましたかね。

初期の頃はベンチャーっぽさというか、スタートアップっぽさを味わいたくて、逆にマンションの一室みたいなのがいいみたいなのがけっこう多かったんですが、(人数が)多くなるにつれてどんどん薄くなっていくので、むしろリファラル採用のために友達を呼びやすいような、ちょっと自慢したくなるような環境とかのほうがいいんじゃないかと思っております。

今西:それは人数が関係しているのか。ないしは時期なのか、たまたま移転のタイミングだったのかというと、どのあたりでしょうか。

宮田:たまたま移転のタイミングですかねえ。

今西:そういうことですか。

宮田:あとは事業の成長の度合いとかはあるのかなあと思います。

今西:なるほど。事業の成長度合いでいうと、宮田さん的にタイミングってどれぐらいですか?

宮田:サービスを出して1年と3ヶ月ぐらいだと思う。社員数でいうと17名ぐらいで、いわゆるスタートアップだとシリーズAと呼ばれる資金調達が終わって半年後ぐらいですかね。

今西:そうなんですね。イメージはもっと早くから行っていた気がしますけど、そもそもすごくスピードが早いので。シリーズAから半年後ぐらいなんですね。

宮田:そうですね。ちなみに、1個前のオフィスがたまたま居抜きでおしゃれなオフィスだったんですよね。そのときはそんなに意識せずにというか、むしろ、「え、こんなおしゃれなところに入れるんだ」と思ったぐらいでした。その居抜きのオフィスに入れなかったら、もしかしたらもうちょっと早いタイミングで考えていた可能性もあるかなあとは思っています。

伸びている会社はオフィスを3倍広くすべき

沢木:移転しすぎですよね。だって、2~3年ぐらいで4回ぐらい替わっていません?

宮田:最初のオフィスに3年いたんですよ。3年、1年3カ月、11カ月、ここって感じですね。1つ前のオフィスは小さいところに行き過ぎました。とはいえ、それでも2つ前のオフィスの2倍だったんですよね。2倍のところに行こうと思ったら、株主から「いや、絶対3倍にしたほうがいいよ」と言われたんですよ。

でも、そんなに投資するのは怖いなと思って2倍にしたんですが、やっぱり成長期というか、伸びている会社は3倍ぐらいにするのがセオリーなんだなと痛感しました。9ヶ月で移転しなきゃいけなくなって、結局このオフィスは前のオフィスの3倍の広さだけ決めて探し始めたという感じですね。

今西:沢木さんはいかがでしょうか。

沢木:さっき言ったように、成長するタイミングなので、どんどん採用をしていくタイミングでやるべきだと思っています。先ほどお話したように女性がどんどん増えていって、子どもがいる女性を採用するのであれば、そういった人たちに突き刺さるような環境にしたほうがメッセージングしやすいので、そういうタイミングかなあと思います。

もともと考え始めたのは、前のオフィスが雑居ビルで、エレベーターがガコンガコンいいながら、閉まるボタンがないぐらいの古いオフィスだったんです。まだマンションの一室だったので、女性からすごく怒られたのが、トイレが男女共用なんですよ。しかも、執務スペースのすぐ横にあるので、音姫がマストみたいな感じだったんですけど、それをすごく嫌がられて。

これだったら女性が入ってこないぞというところから、女性に受けるようにと言うわけではないんですけれども、オフィスのつくり方をメンバーを交えて、みんなの総意の中でコンセプトをつくりながら決めていったと。

やっぱりそういったところ(採用面接)で、(オフィスに)実際に来てもらうので、来てもらうとみなさんの意欲などが上がって採用につながったりしますので。基本は採用をグッと強化するタイミングでなにかを変えにいくとか、制度をアジャストをしにいくというのをやっている気がします。

採用とオフィスには密接な関係がある

今西:今のお話で、採用とオフィスって密接な関係があるなと思いました。オフィスを替えて採用にすごく効いたみたいな肌感や成功事例ってあったりします?

宮田:やっぱり来た人がテンションが上がると思いますし。あとは、最近採用って例えばWantedlyさんみたいな求人広告を出して終わりだなって。同じ職種でもたくさん切り口を変えて出さなきゃいけなかったりすると思うんですけれども。

インターネット上で目立とうとすると、やっぱり写真がなによりも大事なんですよね。例えば、Facebookのニュースフィードに流れてきたときにクリックしたくなるかどうかって、写真がほぼ9割決めていると思っています。なので、オフィスのきれいさとか、楽しく働けている写真って、けっこう会社の資産だと思っているんですよね。

このオフィスをつくるときも、写真を撮るポイントはけっこう考えて、何ヶ所もここ撮れそう、ここ撮れそうみたいなことは設計のときからやっていました。そもそもなんですけど、面接に来てもらう以前に求人で知ってもらうために、よりクリック率が高い写真にするために、写真を撮るポイントとかも考えてつくってあります。

今西:なるほど。それは非常にありますよね。おかんさんもけっこう。

沢木:PR機会としていいですよね。最近、オフィスに行ってみましたというように、いろんなメディアとか各社さんがやってたりするので、いろんな露出の機会があるし。一方で、どの会社さんでもやっているようなオフィスだと、わざわざ取材に行こうという話にならないので。「いや、うち靴脱ぐんですよ」というからさすがに来ていただきたりできますので、採用を促す意味では重要ですね。

あとは、さっきお話した見せるというところ。要するに採用で応募してこられた方も中を見られる状況です。弊社の場合は完全にオープンに見えてしまうので、逆にカルチャー感をすごく感じていただきやすいと思う。

一番理想的なのは、ちゃぶ台でみんながわいわいランチを食べながらミーティングしているときに面接に来ていただけると、「この会社はあったかそう」と思っていただけるので。そういう意味でいうと、すごくクリックはしやすいけど特色を出しやすいところはありますね。

最適なパフォーマンスを発揮できる状態をつくるには

今西:ありがとうございます、最後に1問だけ。イベントの性質上、働き方や働く環境みたいな視点から、お二人がどんな組織を目指しているかをちょっといただいて、パネルは終わろうと思います。沢木さんからいきましょうか。

沢木:宮田さんが「成功するには100の問題を解かなきゃいけない」って話していたじゃないですか。これ、だいぶ前に、宮田さんから又聞きして。宮田さんもたぶん聞かれている話だと思うんです。それから、社内で僕も真似しまくっているんですけれども。私たちの会社も、可能なかぎり権限移譲をしたいと思っているんですね。

エンパワーメントすればするほど、どんどん新しい施策が生まれてくるし、いろんなアイデアが出てくると思っています。最近、本当に切に思っているのが、僕がいろいろとマネジメントしていたときよりも、手放している今のほうが圧倒的にいい雰囲気なので、そのほうがいいと思います。

ただ、そのときに結局、先ほどお話したように、そういう人たちが最適なパフォーマンスを発揮できる状態をつくれるかというのは、やっぱりこれから生産性とか働き方改革だとか言われている中では重要だと思っています。

環境面もそうですし、コミュニケーション上もそうですし、いかにそれができるかを意識することをかなり徹底しています。

逆を言えば、細かい指示はするつもりがなくて、いかにミッションからズレないかだけを意識させていく。だから、日々1 on 1をやっているのもそれがズレないためですし、先ほどお話した家族会議というところで、必ず行動指針の話とか、ミッションに関連するような話を毎週していたり。ここはくどいほどやっています。

逆に客観的に第三者の方に社内に来ていただいたときも、「御社は気持ち悪いぐらいミッションが浸透していますね」と言っていただけるくらい、そこはどんどんすり込むようなことをしています。

そうすれば、環境の心理的安全や身体的安全の部分と相まって、任せておけばきっとうまくやってくれるだろうというところになるので、その部分をやっていますよね。

人が増えるほど組織のモチベーションは下がっていく

今西:ありがとうございます。宮田さんお願いします。

宮田:最近、なるほどと思う話を聞いたんですけど。リンクアンドモチベーションの麻野(耕司)さんという執行役員の方が言っていたんですけれども。その会社は、いろんな会社のモチベーションの度合いを定量化している会社なんですよね。いろんな会社のモチベーションを、データとして持っていますと。

その方が言っていたんですが、よく言う50名の壁、100名みたいな壁は、データ上はないんですって。ただ、1個だけ確かなことがあって。組織は人が増えれば増えるほど、モチベーションって下がっていくらしいんですよね。

僕たちがやらなきゃいけないというか、やりたいなあと思ってることは、今後人数が増えていく中でも、メンバーのモチベーションが変に下がることがないように、今の良い状態をキープできるようにしていかなきゃいけないと思っています。

そのために情報をオープンにしたり、メンバーが主体的に働ける環境を、すごく気を使いながら、今の良い状態をキープしていければいいと思っております。

今西:はい、ありがとうございます。たくさん質問いただきましてありがとうございました。もし聞きたりないことがありましたら、このあと懇親会で捕まえていろいろ聞いていただければと思います。お二人、いろいろざっくばらんにお話いただきましてありがとうございました。

宮田:ありがとうございました。

沢木:ありがとうございました。