「情けは人の為ならず」が目に見える時代になった

西野亮廣氏(以下、西野):何が言いたいかというと、いいやつが勝つ時代になってきたんです。これまでだったら、人のために立体的に動いてるやつって、人のためにはけっこうやったけど、情けは人のためならずって本当なの? っていう時代だった。要は、他人のために動いても、返ってくるルートがなかった。

でも、もうクラウドファンディングとかオンラインサロンとか、お金が返ってくるルートができたので、いいやつが勝つ、嘘をつかないやつが勝つという、わかりやすい時代になった。

いい例があるんです。『革命のファンファーレ』にもちらっと書いたんですが、先月、僕、『しるし書店』っていうサービスのアプリをスタートさせたんです。

『革命のファンファーレ』

例えば、僕たちが本を読むとき、読み方は2つあると思うんです。最初から最後まできれいに本を読むAパターンの人と、気になったところに付箋を貼ったり、線を引いたり、メモったり、楽しかったページを折ったりという、印を入れながら本を読むBパターンの人の2つに分かれる。

Aパターンの本はブックオフで買い取ってもらえます。でも、Bパターンの本をブックオフに持って行っても、買い取ってもらえない。線入ってるし、付箋貼ってあるし、折っちゃってるし、メモしちゃってるし。要は汚れ、キズ本。Bパターンの本は、市場価値0円ということです。

でも、果たして0円なのか、本当に価値がないのか、という話です。これまでは価値がないとされていたけど、本当にそうなのか。

例えば、孫正義さんが本を読んで、気になったところに線を引いて、気になったページに付箋を貼って、気になったページを折って、気になったことをメモった本があったら、たぶん欲しい人はいるんです。定価より高い値段で。1,500円の本に孫さんが線を入れて、1万円で売ってたら、買いたい人はいると思うんです。

なんで欲しいかというと、孫さんの視点ですよね。つまり、孫さんが何をおもしろがって、どんなことを感じているのか、知りたい人はたぶんいる。孫さんの信用がお金になっているのと一緒です。

「信用」が新しい職業を生む

この「その人が印を入れた本が欲しい」って人は絶対いると思って『しるし書店』という古本屋会を作ったんです。どういうものかというと、読んだところに印を入れてメモ書きをしてページを折って付箋を貼った、そういう本だけを出品するプラットフォーム。

やってみたところ、面白いこともありました。目黒(水海)さんという女の人がいるんです。彼女が出した定価1,500円の本が、3万円で売れたんです。一般の方なので、当然みなさんは知らないですよね。その彼女が印をつけた本が、定価よりだいぶ高く売れた。

なんで売れたかというと、やっぱり、目黒さんが読んだ本が欲しかった人がいたんです。目黒さんが読んで、目黒さんが線を引いた本が欲しかったんです。

じゃあ、目黒さんは何をした人かというと、なんてことはない。ただめっちゃいいやつなんです。この話をすると、絶対、時間が間に合わないので割愛しますが、僕は今週の頭にレターポットっていう、言葉を通貨にしちゃうアプリを作ったんです。

お酒を飲んだら財布なくしちゃうから、もう現金を持ち歩きたくなくて、言葉が通貨だったらなくさないですよね。言葉を通貨にしちゃおうと思って、レターポットを最初に作ったんです。でも、レターポットをバッて出しても、ほとんどの人はなにそれって理解できなかった。

でも、目黒さんが、彼女はデザイナー、イラストレーターなんですが、頼まれてもいないのに、Twitterで、レターポットってこういうことですよって、図解を書いて説明してくれたんです。それによって救われた人もめっちゃいるんです。「そういうことを西野は言っていたんだ」と。

率先して利他的に動いた。人のためになるようなことをやった。それで目黒さんの信用ポイントが、ガガガガガって上がったので、彼女が『しるし書店』でしるし本を出したときに、1500円が3万円という値段になった。こうなってきたら、目黒さんは信用持ちですよね。

テレビタレントは「嘘つき」にならざるをえない

信用持ちって超強くて、例えば、読んだことによって定価よりも本が高く売れるわけですよね。こうなってきたら何が発生するかというと、読書屋という職業が生まれる。

これまでなかった職業です。今まで読書は趣味でしかなかったのが、本を読むことで生計を立てられる。目黒さんも、今そう、読書屋さんです。本を読んでご飯を食べて、本を読んで家族を養っているという、読書で生きている人です。

読書屋になろうと思ったら、信用ポイントがすごく高くないといけない。目黒さんは、読書でもって信用をお金に両替している。『しるし書店』で両替をしているということです。とにかく信用を持っていたほうが、すごく生きやすい時代になってきた。かなり自由が利く時代に入ったということです。

クラウドファンディングの話に戻りますが、クラウドファンディングで勝とうと思ったら、当然信用がないとダメ。そんなことを言うと、じゃあロンドンブーツの田村さんにお金が集まっていないということは、淳さんは信用ないのかという話になってくる。

ないんです、結論。淳さんに限った話ではなくて、テレビタレントは信用ないんです。なんでないかというと、僕たちが、どういう人たちが信用できないかと考えると、やっぱり、嘘をつく人は信用できないと思うんです。

この記事は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

SNSで会員登録

メールアドレスで会員登録

パスワードは6文字以上の文字列である必要があります。