お金がないのにお金に困っていないホームレス

西野亮廣氏(以下、西野):これ(クラウドファンディングは“信用の両替機”であるということ)を踏まえたうえで、もう1回「お金とは何か」というところに話を戻します。お金とは何か。信用である。そう言われてもピンとこないと思うんですが、現代のお金を説明するうえで非常に便利な例がひとりいて、ホームレスの小谷って知っている人いますか? 正直知らないという方、どのくらいいますか?

(会場挙手)

あ、知らない方もけっこういらっしゃいますね。ホームレスの小谷というやつがいるんです。こいつはホームレスです。5年間、正真正銘ホームレスやってて、この5年で25キロ太ったんですよ。

毎日、寿司食ってるんです。好きなときに、好きなところに行ってるんです。先々週はハワイに行っていて、先週は台湾に行っていて、来週はスリランカに行くんです。なんか海外飛び回ってるんです。理由は行きたいから。

僕たちが思う、新宿かどこかで寝転んでいるホームレスのイメージとはちょっと違いますよね。好きなものを食べて、好きなところを飛び回って、なんか幸せそうなんです。ここ、ポイントです。彼、お金を持ってないんですが、お金に困ってないんです。

これって僕たちの、これまでのお金の常識とズレてませんか? お金に困っているときって、お金が無くなった瞬間だったはずですよね。でも小谷は、お金を持ってないのに、お金に困ってない。

なんでそんな離れ業が可能なのかというと、彼が現代のお金を確実に捉えていて、先回りしているからです。彼の働き方というか、どういう活動をしているかを知っていただくと、非常におもしろい生き方をしています。おもしろいというか、非常に現代的で近未来的なんです。

50円の日当でそれ以上のものを得ている

彼(小谷)は、なんでも屋です。「BASE」というネットショップで、自分の1日を50円で売ってるんです。例えば、あるお姉さんが「私の家の草むしりに来てください」と、朝8時から夜8時まで働いてくださいという条件で買うとします。50円で来ました。多少遅刻はしますけど、50円なんで、そこは期待しないでください。

一生懸命がんばるんです。50円で、30代のおっさんが、朝からがんばって草むしりをするんです。むしって、むしって、むしって、むしって、昼になりました。お姉さんも、たぶんシャレで50円で買ったものを、さすがに申し訳ないと思って、たぶん、昼ご飯をご馳走すると思います。

小谷、確実に食べます。おかわりもします。昼から夜まで、また草をむしり続けるんです。むしって、むしって、むしって、むしって、夜8時、つまり約束の時間になりました。朝8時から夜8時まで、50円で働きました。「時間になりました、じゃあ帰ってください」って、たぶん言えないと思うんです。

お姉さん、たぶん、夜ご飯もご馳走するんです。小谷も食べますね。おかわりもします。それで、昼も夜も共にしてると仲良くなっちゃって「ちょっと飲みに行きませんか」くらい言いだす。結局、お姉さんは昼(ご飯)代出してる、夜(ご飯)代出してる、飲み代も出してる。

でも、飲みの席で絶対に言うのはこれです。「小谷さん、今日は本当にありがとう」。やたら感謝するんです。50円でこんなにやってくれて、本当にありがとう。

お金の代わりに感謝を稼ぐ

これ、入口の値段設定を8,000円とか10,000円とかに設定してると、ここまでいってないと思うんです。小谷もお金を受け取らないものだから、なんか、それ以外のものを返さなければいけないというバイアスが働いて、昼ご飯になり、夜ご飯になり、飲み代になり、さらには、すげえありがとうみたいな、感謝の気持ちになった。

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