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キンコン西野氏が指摘する、「クラウドファンディングは金の成る木」であるという誤解

キンコン西野氏が指摘する、「クラウドファンディングは金の成る木」であるという誤解

2018年4月14日、早稲田大学井深大記念ホールにて、日本イーコマース学会シンポジウム「そのうちAmazonに駆逐されて終わってしまう」が開催されました。イーコマース市場が急速に拡大していく中で、従来の商売の在り方も大きく変化しています。第1回となる今回は、これから訪れる変化を想像し、覚悟し、受け入れるために、まずは変化を意識するきっかけとなることを目指して催されました。本パートでは、クラウドファンディングで1万人に支援された『えんとつ町のプペル』の制作過程を事例に、西野氏がクラウドファンディングへの誤解について解説しました。

シリーズ
第1回日本イーコマース学会シンポジウム「そのうちAmazonに駆逐されて終わってしまう」 > 第1基調講演(西野亮廣氏)
2018年4月14日のログ
スピーカー
キングコング 西野亮廣 氏

お土産は生きていくうえで必要である

西野亮廣氏(以下、西野) なんで僕たちはお土産を買っちゃうのか。お土産屋さんはなんで駆逐されないんだ。何か理由があるなと考えて、それはなんなのかを掘り下げていった。 そこで見えたのは、お土産というのは、そのときの思い出を、思い出させる装置として必要であるということです。すごく楽しかったシンガポールの旅行を思い出す装置としてマーライオンの置物は必要だし、パンフレットを読んだら、演劇の感動を思い出すことができる。 つまり、お土産は、本だとか、CDだとか、有田焼とかの側にカテゴライズされるわけではなくて、水だとか、牛乳だとか、米だとか、パンだとかの生活必需品側にカテゴライズされるということがわかった。 そうか、お土産は生きていくうえで必要なんだ、だったら自分の作品をお土産にしてしまえばいいと思ったんです。 お土産にするためにはその前の体験が必要です。マーライオンの置物ならシンガポール旅行、パンフレットなら演劇という体験がないと、お土産として機能しないので、体験をデザインすればいい。 じゃあ絵本がお土産になる体験ってなんだろう、と考えて、僕の家に、絵本の原画が200枚くらいあったんで、この原画の貸し出しを無料にして、全国誰でも西野亮廣絵本原画展を開催していいですよ、とSNSで投げました。 すると、長崎では高校生の女の子が、大分ではサラリーマンの方が、名古屋では中学生が、横浜ではOLさんが、北海道ではどこぞの市長さんが、西野亮廣絵本原画展を各々銘々開催してくださった。 絵本の原画の貸し出しはもちろん無料で、その代わり、「出口で絵本を売らせてくださいね」と言ったところ、絵本が超売れた。つまり、その絵本は決して本として売れたわけではなくて、絵本原画展のお土産として売れたということです。

売り物に合った売り方をデザインする

これですごい売れるということがわかったので、僕がやらなくてはいけないことは、あと1つだけです。この、絵本原画展の回転を止めないだけ。 国内外で、去年から『えんとつ町のプぺル展』をずーっとやってて、100万人ちょっと来ているので、その出口で『えんとつ町のプペル』が、お土産として何万部も売れているということです。つまり、本来の売り場である本屋さんやAmazonでは売れたらラッキーぐらいにしておいて、本丸は個展会場。

だから、個展にはすごく労力を割いて、力を入れています。でも、個展を止めなければ売り上げが止まることもないので、理論上のメガヒットしかない。つまり100万部売れることは決まっていて、あとは、10年かかるか5年でいくのかというだけの話です。そうやって、確実に売れる売場を作っちゃった。 ものを売るときは、売り物にあった売場を作ってあげなければいけないと思っているんです。普通、本を出したら、本屋さんで2週間くらい平積みになって、3週間くらいで棚差しになって、1ヶ月くらい経ったら、棚から消えていく感じ。 本は「この期間内で売ってください」という制限期間みたいなものがあるんです。でも、例えば、売っているものが魚だとか肉だとか腐っていくものならともかく、本は腐らないので「1ヶ月以内で売ってください」というのは、あくまでも本屋さんの都合。 『えんとつ町のプペル』はそうじゃないんですよ。これのすごいところは、5年後も10年後も売り場があるということです。『えんとつ町のプペル』と『えんとつ町のプペル』の売場を同時に作っちゃった。そして、お土産として売った。 ポイントはお土産です。お土産はもう5年、10年は廃れないと思います。(時代の変化のスピードが速くて)人も体験も流れて行ってしまうので、その出口でお土産を売るということは外せないと実感しています。お土産は売れるということは、けっこう数字にも出ました。

得意分野を持ち寄って1つのものを作る

次に、『革命のファンファーレ』にも書いたんですが、こっち(作り方)のほうが大事だと思っています。『えんとつ町のプペル』という絵本は、これまでの作り方と大きく変えて、分業制で作ったんです。

絵本は1人で作るものだと決まっていたけれど、「ちょっと待て、なんで1人で作るって決まってしまっているんだ?」という疑問がふつふつと湧いてきて。例えば映画だったら、監督、音響、照明、メイク、美術などなどいろんな方がいらっしゃって、それぞれの得意分野を持ち寄って、ひとつの作品を作りますよね。 テレビのバラエティ番組も、ドラマも、こういうイベントもそうですが、誰それさんが照明をして、誰それさんが司会をして、というようにそれぞれの得意分野を持ち寄って、ドラマや番組やイベントを作っている。 漫画の『ワンピース』もそうです。尾田栄一郎さんがひとりで書いているわけでは決してなくて、編集者とストーリーを詰めている間に、アシスタントが背景を描いてキャラクターを描いて色を塗っている。 世の中のことはほとんど分業制で作られているのにも関わらず、絵本は、なぜか知らないけれど、ひとりで作るということで決定してしまっている。 例えば絵ひとつとっても、空を描く仕事と、キャラクターを作る仕事と、色を塗る仕事は微妙に業務内容が違うと思ったんです。「空を描かせたら負けない」という方がいらっしゃるだろうし、「色を塗らせたら僕が一番」という方がいらっしゃるだろうし、「建物をデザインさせたら私が一番よ」という方がいらっしゃる。 であれば、空のプロフェッショナル、キャラクターのプロフェッショナル、色を塗るプロフェッショナルが集まって、得意分野を持ち寄って、映画みたいに超分業制で作ってしまえば、世界のだれも見たことのない絵本が作れるんじゃないかというところが、絵本『えんとつ町のプペル』のスタートです。

なぜ絵本はひとりで作るものだったのか

ただ、こんなアイデアには、なんの価値もないと思うんです。つまり、世の中のものはすべて分業制で作られているんだから、絵本も分業制で作ったほうがいいんじゃないのって考えた人は、たぶん世界中に10万人、100万人、1,000万人、1億人といる。問題は、そのアイデアがなぜ形になっていないか。 誰でも思いつきそうなアイデアが、なぜ形になっていないのか。形にできなかった何かしらの原因があると思って探ってみると、その理由はすごく単純明快でした。再度、申し上げますが、絵本業界は5,000部とか1万部でヒットと呼ばれるような小さい市場なので、売り上げが見込めないんです。 売上が見込めないから制作費が用意されない、制作費が用意されないからスタッフさんにお支払いする給料が用意できない、だからひとりで作るしかない。つまり、絵本をひとりで作る理由のど真ん中にあるのはお金だった。 お金がないからひとりで作るしかない、私もお金がないからひとりで作るしかない。僕もお金がないからひとりでを、繰り返しているうちに、絵本はひとりで作るものだというルールが決まってしまった。 でも、本当はそんな決まりなんかなくて、ひとりで作ったほうがいいものだったら、ひとりで作ったほうがいいし、100万人で作ったほうがいいものになるんだったら、100万人で作ったほうがいい。 『えんとつ町のプペル』の場合は、40人で作ったほうがいいものができるな、と思ったので、40人で作れる体制を作るために何をしなければいけなかったかというと、最初にやった作業は、絵を描くことでもストーリーを書くことでもなくて、資金調達だった。お金を集めないと『えんとつ町のプペル』は作ることができなかった。

クラウドファンディングは金の成る木ではない

じゃあ「どうやって資金調達したの?」という話に入ってくるんですが、もうご存知だと思いますが、クラウドファンディングです。改めて説明すると、クラウドファンディングというのは、インターネット上で企画をプレゼンして、いろんな方から支援していただくという仕組みです。 『えんとつ町のプペル』は、2度のクラウドファンディングで1万人くらいの方に支援していただいて、5,600万円という大きなお金が集まって、それで制作をスタートすることができた。お金はそうやって集まった。 みなさんも今後、何か挑戦するときにお金が要るようになったときに、クラウドファンディングという選択肢がたぶん出てくると思うんです。そのときに踏まえておかなければいけないのは、まず、クラウドファンディングは金の成る木ではないということです。 誰でも彼でもクラウドファンディングやったらお金が集まるなんて甘い話があるわけはなくて、同じ企画でも100万円集まってる人もいれば、1円も集まっていない人もいる。 もうひとつ、ここすごく大事です。例え有名人でも、お金は集まっていない場合がけっこうある。もっと言うと、テレビタレントとクラウドファンディングの相性ってすこぶる悪いんです。 ロンドンブーツの田村淳さんが目標金額1,000万円でクラウドファンディングをやって、確か集まったのは200万円くらいで、結局達成しなかったんです。田村淳さん、ご存知ですよね。Twitterのフォロワーは260万人くらいいて、クラウドファンディングの支援者数は100何十人。 ポイントはいったいなんなのか? 有名であればお金が集まるわけでもどうやらなさそうだ。数々のテレビタレントがクラウドファンディングに挑戦しているんですが、ほとんど失敗しているんです。その原因がわかっていないと、クラウドファンディングに挑んでも失敗してしまうと思いました。

クラウドファンディングは信用の両替機

田村淳さんがなんで(クラウドファンディングで)失敗したか、なんで同じ企画でも100万円集まる人と集まらない人の違いが出てくるのかを分析したほうがいいと思いました。これも本にちらっと書いたんですが、ちゃんと理由があって、クラウドファンディングで勝とうと思ったら踏まえておかなければいけないことは2つです。 1つは、お金とは何か。この問いに対して、きっちり答えを持っていなければいけない。2つ目は、クラウドファンディングとは何か。この問いに対しても、答えを持っておかなければいけない。 順番に結論を言うと、お金とは何か。これはもう方々で言われていますが、信用です。信用を数値化したものがお金。お金のリテラシーの高そうなホリエモンとか、けっこう「信用、信用」って言うんですが、そう言われても、あんまりピンとこなくないですか? この説明は後でもうちょっとじっくり説明するのでいったん置いておいて、次に、クラウドファンディングとは何か。この答えは、信用をお金に両替する両替機であるということです。 クラウドファンディングは両替機である。つまり集金装置ではないということ。クラウドファンディング自体には、集金機能はついていないんです。あなたの信用をお金に両替しますよという、ただの両替機であって、ここをけっこうな人が集金装置として間違ってとらえている。

  
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キンコン西野氏が指摘する、「クラウドファンディングは金の成る木」であるという誤解

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