お土産は生きていくうえで必要である

西野亮廣氏(以下、西野):なんで僕たちはお土産を買っちゃうのか。お土産屋さんはなんで駆逐されないんだ。何か理由があるなと考えて、それはなんなのかを掘り下げていった。

そこで見えたのは、お土産というのは、そのときの思い出を、思い出させる装置として必要であるということです。すごく楽しかったシンガポールの旅行を思い出す装置としてマーライオンの置物は必要だし、パンフレットを読んだら、演劇の感動を思い出すことができる。

つまり、お土産は、本だとか、CDだとか、有田焼とかの側にカテゴライズされるわけではなくて、水だとか、牛乳だとか、米だとか、パンだとかの生活必需品側にカテゴライズされるということがわかった。

そうか、お土産は生きていくうえで必要なんだ、だったら自分の作品をお土産にしてしまえばいいと思ったんです。

お土産にするためにはその前の体験が必要です。マーライオンの置物ならシンガポール旅行、パンフレットなら演劇という体験がないと、お土産として機能しないので、体験をデザインすればいい。

じゃあ絵本がお土産になる体験ってなんだろう、と考えて、僕の家に、絵本の原画が200枚くらいあったんで、この原画の貸し出しを無料にして、全国誰でも西野亮廣絵本原画展を開催していいですよ、とSNSで投げました。

すると、長崎では高校生の女の子が、大分ではサラリーマンの方が、名古屋では中学生が、横浜ではOLさんが、北海道ではどこぞの市長さんが、西野亮廣絵本原画展を各々銘々開催してくださった。

絵本の原画の貸し出しはもちろん無料で、その代わり、「出口で絵本を売らせてくださいね」と言ったところ、絵本が超売れた。つまり、その絵本は決して本として売れたわけではなくて、絵本原画展のお土産として売れたということです。

売り物に合った売り方をデザインする

これですごい売れるということがわかったので、僕がやらなくてはいけないことは、あと1つだけです。この、絵本原画展の回転を止めないだけ。

国内外で、去年から『えんとつ町のプぺル展』をずーっとやってて、100万人ちょっと来ているので、その出口で『えんとつ町のプペル』が、お土産として何万部も売れているということです。つまり、本来の売り場である本屋さんやAmazonでは売れたらラッキーぐらいにしておいて、本丸は個展会場。

えんとつ町のプペル

だから、個展にはすごく労力を割いて、力を入れています。でも、個展を止めなければ売り上げが止まることもないので、理論上のメガヒットしかない。つまり100万部売れることは決まっていて、あとは、10年かかるか5年でいくのかというだけの話です。そうやって、確実に売れる売場を作っちゃった。

ものを売るときは、売り物にあった売場を作ってあげなければいけないと思っているんです。普通、本を出したら、本屋さんで2週間くらい平積みになって、3週間くらいで棚差しになって、1ヶ月くらい経ったら、棚から消えていく感じ。

本は「この期間内で売ってください」という制限期間みたいなものがあるんです。でも、例えば、売っているものが魚だとか肉だとか腐っていくものならともかく、本は腐らないので「1ヶ月以内で売ってください」というのは、あくまでも本屋さんの都合。

『えんとつ町のプペル』はそうじゃないんですよ。これのすごいところは、5年後も10年後も売り場があるということです。『えんとつ町のプペル』と『えんとつ町のプペル』の売場を同時に作っちゃった。そして、お土産として売った。

ポイントはお土産です。お土産はもう5年、10年は廃れないと思います。(時代の変化のスピードが速くて)人も体験も流れて行ってしまうので、その出口でお土産を売るということは外せないと実感しています。お土産は売れるということは、けっこう数字にも出ました。

得意分野を持ち寄って1つのものを作る

次に、『革命のファンファーレ』にも書いたんですが、こっち(作り方)のほうが大事だと思っています。『えんとつ町のプペル』という絵本は、これまでの作り方と大きく変えて、分業制で作ったんです。

革命のファンファーレ 現代のお金と広告

絵本は1人で作るものだと決まっていたけれど、「ちょっと待て、なんで1人で作るって決まってしまっているんだ?」という疑問がふつふつと湧いてきて。例えば映画だったら、監督、音響、照明、メイク、美術などなどいろんな方がいらっしゃって、それぞれの得意分野を持ち寄って、ひとつの作品を作りますよね。

テレビのバラエティ番組も、ドラマも、こういうイベントもそうですが、誰それさんが照明をして、誰それさんが司会をして、というようにそれぞれの得意分野を持ち寄って、ドラマや番組やイベントを作っている。

漫画の『ワンピース』もそうです。尾田栄一郎さんがひとりで書いているわけでは決してなくて、編集者とストーリーを詰めている間に、アシスタントが背景を描いてキャラクターを描いて色を塗っている。

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